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2話:対面

「ああぁぁああぁぁぁ!?」
 唐突に竜胆が叫んだ。
「どうした?竜胆」
「どうしたのです?竜胆」
 そこにいた水仙と、知的そうな青年が声を合わせて言った。
「なぁんで葵が俺様の座布団に座ってるんだよッ!」
「ああ、そんなことか」
「お父様のお葬式のために、他の座布団が持っていかれたので、
 お出ししたんですが」
 竜胆はふぅと溜め息をついて水仙にむきなおった。
「ばかっっ!」
「ば・・・」
 水仙がこともなげに、『ば』の部分だけリピートした。多分、少しは傷ついた
のだろう。
「こら竜胆!!姫君に向って馬鹿とはなんだ!」
「お前もそこからどけーっっ!」
 葵はがつんと竜胆の額を殴る。
「はいはい。座布団大魔王さん」
「変なあだ名つけんじゃねーよっっ!!」
 ずず、と水仙が茶をすすった。
「元気なのは大変結構なのですが、埃がたちますので、他で」
「あ、ごめん」
「すみません」
 それでは、と水仙がたちあがる。
「お父様が毎日花や木に水をあげていたので。私も行って来ます」
 竜胆はおぉ、と変事をして、置いてあった菓子にかぶりついた。

「この城の庭は、すごく広いですね。昨日までは、上から見ていただけ
 だったので、あんなに小さく見えましたのに」
 そんな一人ごとをいいながらも、川の石の上をぴょいぴょいと飛び越え、木に
水をやっている水仙であった。
「・・・あら?」

「座布団大魔王さんのせいで水仙様が出て行ってしまわれたじゃないですかっ」
「だーかーらーっ!変な名前で呼ぶなっての!!」
 喧嘩にはならないものの、言い合いを続けている二人。(痴話喧嘩ともいう)
「まぁ、そんなことはともかく・・・。ほら。見てください竜胆」
「んあ?」
 葵は外を指さした。
「あの女の子、最近ここに来たようです。ほら、池を見ている――」
「あぁ、あいつか。そんであいつがどうした?」
 溜め息をついて葵が立ち上がる。
「彼女は、長い間別の家で育てられた、水仙様の妹らしいですよ。いえ、
 本当にそれだけのことです」
 竜胆はじっと彼女を見つめる。
「そういえば、目とか顔立ちとか、似てるっちゃ似てるなぁ・・・」
 ふっと天井を見あげた竜胆は、葵に声をかける。
「んー・・・水仙遅いから、ちょっと見てくるわ」
「はい。・・・川に突き飛ばしたりしないでくださいよ」
「あったりめぇだろ!!俺がそんなことすっか!!」

 水仙は一か所で立ち止まっている。ずっとここにいたらしい。
「やはり・・・届きませんか」
 後ろから竜胆が追いつく。
「なにやってんだ、こんなところで。まさかずっとここにいたんじゃ・・・」
「ええ。大人は届くんでしょうが、となりの石まで行けなくて」
 竜胆はふぅ~っと溜め息をついた。
「じゃ、俺がむこうやってくる。どっかで座ってな」
「わかりました。有り難う御座います」
 いつものようににこり、と笑って見せた水仙は、竜胆を送り出した。

「まったく、世話焼けるんだから・・・」
 竜胆はかがんで、木に水をやっていた。そして、何故か笑いがこぼれる。
「しょーがねぇか」
 すると、後ろからとんとん、と肩を叩かれる。
「ん?誰だ?」
「こんにちは。なにやってるの?」
 そこにいたのは、自分よりかなり小さい少女。水仙の妹らしき人物で
あった。
「え、あ・・・水やり・・・」
「そう。あ、あの木はさわると痒くなるから気をつけてね」
 ゆびをさして説明する少女に、竜胆は少し質問をする。
「お前・・・名前は何ていう?」
「あたし?あたしは菫。お兄さんは?」
 このぐらいの歳の少女に『おじさん』扱いされなかったことを、竜胆は
感心した。
「俺は竜胆、だけど」
 菫はくすくすと笑った。そのようなところも水仙と似ている。
「よろしくしてね、竜胆」
 いきなり呼び捨てする菫に、がくっと頭を垂れる竜胆であった。

続く


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