FUTURE (仮)

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送りつけ小説


 桜花天舞さまに送りつけた小説第2弾
 ヒロインはコレットさんです。


アンブロシア


――――今、私は笑えているのでしょうか?

あまりのも突然だった。あなたから告げられた別れの言葉。
生きていれば、そして会いたいと言う気持ちがあればまたきっといつか会える。
でも、私はあなたに会う事はもう二度とない。そんな気がします。


 人の出会いと別れは、何の前触れもなく訪れるもので
 出会いがあれば別れがあり、また出会い、別れ・・・
 それは必然的であり、それの繰り返し
 互いに「会いたい」と強く望めばまた巡り合える
 逆に、どんなに離れたくはなくても決して避ける事の出来ないこともある
私はあなたとの邂逅はきっと一生の中でも一番大切な思い出として、いつまでも心に刻まれたまま・・・


今日はいつもより晴れ渡り、清々しい気分にさせてくれる。
その所為か、お客様の顔も、そこを行く人々も輝いているように見える。
―――――でも、私は朝から・・・いえ、きっと夢を見ているときから、何か嫌な予感がしていた。そしてまだ、その不安は拭いきれてはいない。

 けれど、折角来てくださっているお客様の前に暗い顔なんて見せていられない。
いつものように笑顔で迎えなきゃ。気を悪くさせてしまうわ。それに、笑っていれば悪い事なんて起きないもの。

 そうやってお客様とお話をしているうちに、心の中にあったモヤモヤとしたものが薄らいでいき、私は普段通り仕事をこなしていった。
―――あの人が現れるまでは・・・

 ここの常連さんとお話をしている時、あの人はやって来ました。
 いつものように・・・今日もお花を買ってくれるものばかりだと思っていました。
「あら、いらっしゃいませ!」
 私はいつものように声をかける。
常連の人は仕事の邪魔をしてはいけないと、すぐに帰っていき、二人きりになった。

「大神さん、お花の注文ですか?」
 私は笑顔や照れている顔しか見た事はありませんでした。
でも、今日の大神さんは違う事にすぐ気がつきました。
どこか・・・瞳の奥が物憂げで、私は初めて大神さんのそんな表情を見ました。
私は何とか大神さんに元気になってもらおうと明るめのお花を探し始めました。
 そういう時、私はいつも和やか、或いは温かい気持ちで花を探す。それも、きっとお客様も幸せな気持ちに慣れると思っているから。けれど、私らしくなく焦りながら探していた。
「いや、そうじゃなくて・・・」
 大神さんのその一言で私の手はまるで電池が切れた玩具のように、ピタリと止まった。
 花屋にお花を買う以外、何をしに来るというのでしょう。
 段々朝から感じてきた不安がこみ上げてきた。

ゆっくりと開かれる大神さんの唇
     急に怖くなって震えだす私の身体
―――――イヤッ!聞きたくない!!
理由は分からない
本能的に拒否をする
耳を塞ごうかと思いました
     けれど・・・

私の身体はまるで氷付けになったかのように少しも動けなくて・・・結局聞いてしまった・・・。
「あの・・・じつは、俺・・・一週時間後に日本に帰る事になって・・・」
 一週間後・・・? そんな!いくらなんでも突然すぎる
私の予感は見事に的中した。
 こんな事で当たってもちっとも嬉しくはない・・・。
「まあ、そうなんですかぁ?」
 大神さんはゆっくりと頷く。
「だから・・・コレットさんにも一言、言いに来たんだ」
 私は泣きたくなった。何もかも忘れて泣き崩れたかった。
 けれど、大神さんはこんな花屋の娘であるだけの私のところにも律儀に挨拶にきてくれた。

それなら、笑っていなきゃ
     笑って大神さんを送らなきゃ
私は今、ちゃんと笑えていますか?

「一週間後なんて突然で準備とか、色々大変じゃないですか?」

―――――違う!私が言いたいのは・・・・・・伝えたいのは・・・

「私・・・大神さんがお花を会に来てくれるの・・・嬉しかったんですよ」

それは本音
     けど、もっと他にいたい事が・・・!

「でも、仕方ないですね。それじゃ、日本に帰っても、元気で頑張ってくださいね!」
「コレットさんもお元気で・・・それじゃ、これで」
 そういうと大神さんはニッコリと・・・でもどこか淋しそうな笑顔を私に向け、去っていきました。
 私はその背中が段々と小さくなるのを暫く見つめていました。
 いえ、きっとその場から動けなかった、というのが正しいのかもしれません。
 このまま、立っていられなくなりそうになりました。
 今すぐ誰かにしがみ付いて思いっきり泣きたい・・・。

~~~~~
その夜、私は一睡も出来ませんでした。
何気なく窓を見ると、美しく光る夜景はなく、巴里の町は静まり返って、空を見上げると流れ星を見つけました。
 無意識に・・・すぐ願掛けをしました。
 出来れば・・・いいえ、願い事が一つ叶えられるのなら・・・

大神さん!日本に帰らないで下さい・・・

 心の中でそう叫んでました。もしかしたら、声になっていたかもしれない。
―――――あの時にいえなかった一言
 たった一言なのに何故いえなかったのでしょう? 言ってしまえばどんなに楽だったでしょう。大神さんはもしかしたら巴里に居続けてくれたかもしれないのに・・・。
 私が言ったところでそうなるとは限らない。それに、大神さんを困らせるだけだ。
 同じような事を考えて、考えるだけじゃ無意味だと思っていても考えてしまう自分が惨め。
 深く溜息をついて再びベッドに潜り込み、横になる。

瞼を閉じればあの人との思い出が・・・
     瞳からは熱い雫が溢れて止まらない。

―――――いつから?
     私が大神さんの事が気になり始めたのは・・・
     気付けば私の心の中は大神さんの事でいっぱい・・・

・・・笑顔を見たときから?
 彼の笑顔は人を惹きつけるから、間違ってはいないけれど、私が最初に好きになったのは声。
 それからずっと気になり始めて、殆ど一目惚れに近い状態。
 そして、背中・指先・・・最初は恥ずかしくて直視できなかった真っ直ぐで優しさに満ちた黒い瞳・・・。
 会う度に好きになっていくのがわかった。
何もかもが好きになって。何もかもが新鮮で。初恋、だったのかな?

 以前、恋人同士で来るとお花を安くするっていう催しをしたときに、シーさんと一緒に来たのを見て驚いちゃった。
 でも、大神さんったら演技が下手なんですもの。すぐカップルじゃないってわかった。
 そんな不器用なところも好きで、思わず吹き出しそうになったのを堪えたっけ。
 何より、あの人の人の良さや優しさに何度ときめいたかしら?

 そう、これからはそんな思い出は増えていかない。一つ一つがただの思い出になってしまうのね。 無常に時が流れてしまうだけ。

これから、だと思っていたのに・・・
     折角、巴里も落ち着いてきたというのに・・・

 最初っから私のこの思いが実るとは思っていない。
 だって、シャノワールの人たちといつも仲いいのを見かけるし、遥か遠くトーキョーから大神さんに会いに来た女性達が来た事もあったこともエリカさん達に聞いて知っている。
 大神さんの周りには素敵な女性が沢山いるんですもの。

この気持ちに嘘はないし、劣っているとも思わない
     けれど、たかが花屋の娘というだけ
     お客様と店員というだけで、他に接点はない
 ・・・悔しいな
     それでも、大神さんが幸せならばそれでいい
     思いが届かなくったっていい
     ただ、ずっとあなたの側に・・・
     あなたのことをずっと見つめられればそれだけで良かったのに・・・
     それ以上は何も望まない
だから、だから・・・

 そのまま朝が来てしまった。
 この世に明けない夜はない。
 綺麗な朝焼けがカーテンの隙間から差し込み、目に染みる。
 朝なんて来なければいいのに。そうすれば大神さんが遠くに離れる事なんてないのに。

 今日、私はお休みの日なのでこのままもう少し寝ていよう。
 今は何もしたくないし、やる気も起きない。
 食欲もないけれど、流石にそれは明日からの仕事に支障を出しかねない。
ちょっとだけご飯を食べてあとは一日中部屋に篭った。

―――――――大神さん・・・―――――

 次の日、私はまたいつものように支度を整えて店へ出た。
 目が腫れていたけれど、水で濡らしたタオルを当てていた所為もあり、なんとか目立たなくなっていた。
 そして案の定、お客様は気付いていなかったようだ。
 ただ、然程親しくもない間柄で泣いていた事を聞くというのは野暮だと触れなかったというだけかもしれないけれど。

そして閉店前。
 今日はシャノワールの人が来なかったのは救いかもしれない。
 もし来ていたら話題になっていただろう。下手に触れたら泣いてしまうかもしれない。ただ辛い思いをするだけなら良いけれど、迷惑を掛け兼ねない。
 きっと皆さんも淋しいんだろうな。
なにか絆を感じられるし、もしかしたら私より辛いのかもしれない。
 私は大神さんが花屋に来なければ会う事もないだろうけど、彼女達は恐らく大神さんが帰国するまでは同じ場所で働くのだから。
 けれど、そのかわり何時でも行く気になれば日本に行けることが出来る。
 私は会いに行ける口実がない。

 逆にトーキョーの人は嬉しいだろうな。これから好きな人と一緒にいられるんですもの。
 全員、会った事はないけれど何となくわかる。でも、ライバルが多くて大変ね。
 大神さんはその中から誰かを選ぶのかしら?
 そうでなくてもきっとそんな日は来るのでしょうね。
 大神さんが選んだ女性を見てみたいな。きっと、とても素敵な人なんでしょうね。

 あら、色々な事を考えていたらもうこんな時間。急がなきゃ。

「あの、コレットさん・・・」
 え?今の声は・・・
「どうしたんですか、大神さん?」
 振り向くとそこにたっていたのはやはり大神さんでした。
 忙しくてこの時間にお花を買いにきてくれたのだろうか?けれど、大神さんのような人がいくら忙しいとはいえ、閉店してから30分近くも過ぎているのにそれはないだろうな。
 ・・・では、何故?何しに来たのでしょう?

「少し時間をもらえるかい?」
わけがわからないけれど。かといって嫌、というわけでもないから断る事もない。だから私は同意した。

「昨日も来たのだけれど、休みの日だったんだね」
「ええ」
「その代わり、これを買うことが出来たけれどね」
 私の目の前には花束。
「これを、私に・・・?」
 大神さんは黙って頷いた。
「流石にこれを渡す本人がいる時に買うのは恥ずかしかったしね。何よりもコレットさんを驚かせたかったんだ」
 大神さんは、できればこの店で買ったのを渡したかった、と続けた。

大神さん、それって・・・

「また、ここに来るのは何時の話になるかわからないけれど、俺のこと覚えていてくださいね」

・・・だめ・・・です。そんな風に気を持たせることなんて・・・

「コレットさん、また・・・いつか会える日を楽しみにしています」

     優しくしないで下さい。・・・期待しちゃうじゃないですか・・・

「その日まで、どうかお元気で」

今までに見たこともないくらい優しい笑顔
     ・・・私だけに向けられている・・・?

すうっと差し伸ばされた手。
 私は何かに引かれるように手を出した。

「日本では、約束する時にやる事があるんだ」
 握手の後、そう言って、小指を差し出してきた。
 私もそれに倣って小指を差し出す。絡められた指を見ていると何だか、いつもより動悸が激しくなってきている。
 きっと、今の私の顔は真っ赤になっているでしょうね。顔が凄く熱い・・・。
ちょっと恥ずかしいな。私の気持ち、バレたかしら?
今はまだ、この想いは秘めておきたいから・・・
薄暗いから、気付いていませんよね?

・・・小さな沈黙・・・
・・・このまま時が止まってくれたらいいのに
 私は何度、そう願ったことでしょう?
出来れば送ってもらいたい。でもこれ以上一緒にいたら我侭を言ってしまいそうで・・・怖くて・・・

「では、俺はこれで失礼します。夜道には気をつけてください」
「は、はい。大神さんも、お気をつけて」

 それから彼は背を向け帰って行きます。
 私はふと花束に目を向けた。
 そして、驚きました。

 だって、大神さんが私にくれた花は・・・カンパニュラ、カランコエ、セントポーリアに真紅の薔薇・・・。花を束ねているリボンにはミヤコワスレのドライフラワー・・・

 大神さんはこの花言葉を知っているのでしょうか?
 いいえ、知らなくてもいい!私はもらえただけで嬉しい。
 私も伝えなきゃ。小さな事でもいいから。
 急いで妥当な花を探した。それはすぐに見つかってくれました。
「大神さん!待って!」
 何とか間に合ったようです。大神さんはこちらへ戻ってきました。私も、彼のもとへ走し寄りました。
「あの、これ・・・大神さんに花束のお礼です」
「俺に?ありがとうございます」
 受け取ってくれた花をみて大神さんは微笑んでくれました。
 つられて私も笑みをこぼしました。

 もう一度挨拶してお互いに帰っていきました。

~~~~~
 船上にて―――――・・・

「コレットさんがくれた花、大事にします」
 大神はそう呟いて花を見つめた。
 彼の手の上にはラベンダーの花が美しく咲いていました。

 ラベンダーの花言葉。それは・・・・・



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【補足;花言葉】
アンブロシア 幸せな恋/ミヤコワスレ(4/2)また会える日まで
カランコエ(小さな沢山の思い出、あなたを守る)/ラベンダー あなたを待っています
セントポーリア 小さな愛/カンパニュラ 思いを告げる、感謝

この花々を見て、ここで「これ花屋に売っているの?」という突っ込みはしないで下さい(笑)薔薇はちょっと大胆ですが、まあこれらを花束にするなら量的に必要だと。
因みに私の誕生花なかでいちばん受けたのは「慌てもの」です(笑)合ってる。
~~~~~
【後書き】
 <鶏)謎>ガラになく、少女趣味に走っちまったい!!(そこ!引かないで下さい・・・(^△^;))
 さあ、2ヶ月くらい前に前作を出してそれからなんて進めるの遅いのでしょう?色々手を出しすぎ、が一番の原因でしょうが。
 何か、レニの小説よりちいとばかし長くなってる。でも、ホントはもっと長かった。短くしました。私は無駄な分を書くのが好きなようで。
 もう、ダメダメですね。もっと精進せねば!!
 では、これにて失礼します。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。



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