桜工房(だったところ)

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#7


#7 寝る子は育つ???


 保健室のベッドの上。
 シーツを黒いボブヘアの上までかぶって、静かに寝息を立てる少女がいる。

「モエちゃん、そろそろ起きてくださ~い!」
 緑色のウェーブの掛かった髪をした、目が青く背の低い少女が、ベッドの上の少女の体を揺すった。
 モエと呼ばれた少女は、もぞもぞとベッドの上で動く。
「う~ん・・・。あと五分だけ眠らせてや~ミュウちゃん。水泳部の朝錬でヘトヘトなんよ~」 
「そんなこと言って、毎日ここで寝ているじゃないですか、モエちゃん!」
 ミュウと呼ばれた少女は目くじらを立てる。
「え~? そんなことあらへんよ~。週末は寮で寝てるんやから・・・」モエはあくびをしながらいった。 
「また、そういう屁理屈を・・・」ミュウは呆れた顔をする。「そろそろ教室に行かないと、ホームルームが始まっちゃいますよ」
「ホームルーム・・・? う~ん、あれだけ大勢のクラスメートがおるんやから、うち一人いなくてもなんとかなるやろ~?」
「みゅ・・・。そ、そういう問題じゃないでしょう・・・?」ミュウは脱力した顔をする。
「いっそ、ミュウちゃんも一緒に眠ったら、どうや~? 寝る子は育つっていうやん。大きくなれるかも知れんよ~?」シーツから覗かせた目を細めながらモエは言う。
「保健委員が寝ていたらしめしがつかないですよ~!」ミュウは即座に言った。「みゅ~! ミュウを、あまり怒らせないでください!」
 どこから取り出したのかその手に持ったムチを、パン!と一度引き伸ばした。
 その音を聞いたモエは、直ぐに体を起こした。
「しゃ~ないなぁ。お昼休みにでもまた来よ・・・」
「来なくて良いです!」

 というようなやり取りを、二人がしていると――。

 そこへシオンの肩を借りたアオイがやってきた。
 後ろには、ちょっと退屈そうなディルスも一緒である。

「お早うございます。保健の先生はいるかしら?」
 シオンは保健室の中を見回し、ミュウたちの姿を確認しながら尋ねた。
「先生なら、職員会議に出席していて。ミュウがお留守番中ですよ~」
「あら、それじゃあどうしようかしら・・・」シオンは少し困った顔をした。
「どうしたのですか? シオンさん?」ミュウは首をかしげた。
「えぇ、ちょっとアオイさんを怪我させてしまって・・・」
「えぇ~!」ミュウは驚いた顔をした。 
「あ、大したことじゃないから大丈夫だよー」アオイは腰をさすりながら言った。「ちょっとシャワー室で、勢い良く背中を床で打ってしまっただけだよー」
「背中を怪我したなんて、大変! ちょっと見せてもらって良いですか?」
 ミュウは、体が小さい割りにある力で、有無を言わさずアオイの診療を始めた。

「――うん、どうやら打撲だけみたいだね。これなら安心です」
 ミュウは診察中の新鮮な目つきから、穏やかな笑みを浮かべているものへと変えた。
「ありがとー、ミュウさん!」
「いえいえ、お仕事ですから。まだしばらく痛みが続きそうだから良ければ湿布を出そうか?」
「うん。是非お願ーい」とアオイ。
「じゃ、ちょっと待っていてくださいね?」

 一方、ベッドの上に腰を下ろしていたモエは、座ったままの格好でうつらうつらとしていた。
「あ~、眠ぅ~」
 モエがそういうと、ディルスが嬉々とした様子で躍り出た。
「ならば、オレが目を覚ましてやろー!」
「へ・・・?」
「え? ちょっと、ディルスさん何を――?」

 スパーン!

 シオンが止める間もなく、再びディルスのハリセンチョップが鳴り響いた。
 モエは、今にも眠たそうな青い目をパチクリとさせた。
「『寝ボケ』に対してハリセンチョップ! どう? 少しは目が覚めたか?」自分の肩をぽんぽんとハリセンで叩きながら言った。 
「はぅ~。その逆や~、今の衝撃で余計に眠くなってきたわ~。てことで、お休み~」

 バッタ・・・

 モエは再びベッドの中にもぐりこんでしまった。

「モエさーん! ダメですよ~!」
 アオイに湿布を渡してから、すぐさまミュウはモエの方へ駆け寄るミュウ。
「う~ん、あと五分だけ~。スゥスゥ・・・」

「ダメだこりゃ・・・」ディルスはボソリと呟いた。
「あなたのせいでしょー!」アオイは軽くディルスの頭を小突いた。



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