サムライ長老の見聞録

サムライ長老の見聞録

第2章 疾走寺田屋


浪人たちから逃げるためである。
まるで龍が空を駆けるが如く走った。
竜馬はある場所へ向かっていた。
ある場所とは寺田屋だった。
寺田屋とは、竜馬が上京してから常宿としていたところである。
竜馬たちが寺田屋に着いた頃には、もう夜明け前だった。
「どないしはったんどすか、そない慌ててはって」
「いやぁ、お登勢さんの顔が急に見たくなってのう」
お登勢とは寺田屋の女将である。
「まぁ、うれしおすわ」
このときお登勢には、竜馬たちが逃げてきたことはわかっていた。
「女将さん、何かあったんどすか。えらい外が騒がしいようで」
一人の若い女性が、奥の部屋から出てきた。
「なんやお龍、起きてきたがか」
「竜馬さんどうしたんどすか、それに中岡さんまで」
お龍は竜馬の妻である。
日本で最初の新婚旅行もこの二人がやったのだ。
「話は後じゃ、それより腹が減った。何せここまで走ってきたからのう」
「まぁ竜馬さんったら、支度しますんで待ってくださいな」
竜馬はここまで来ればと、安心していた。





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