さるぞうのページ

さるぞうのページ



雲

体調をくずした私は一日ベッドで寝ていたが、ふとトイレに立ったとき窓
から夕日が急にさえぎられるのを見た。
ダウンバーストというほどのものではないが、黒雲が見る見る下方に成長していた。
カメラのレンズを付け替えているいる間に雲は完全に太陽をさえぎってしまった。
パシャリと一枚だけシャッターを切ったときに妻が部屋の扉を開けた。
「病気で寝てたんとちゃうん?」
不審な目線で私を見る。病気を理由に家事も手伝わなかったのに、写真を
楽しそうに撮るとはどういうことか?の意と汲み取った。
こういうときは注意をそらすに限る。
「ちょっとあれ見てみ。今日は春一番が吹いて雷もなったやろ。
 あれは寒冷前線に押し上げられた空気が上空で冷えて一気に下降しよるんや」
「ほんまや、すごいなぁ」
ちょうど良いところに娘も「どうしたん?」と入ってきた。
「あ、お父さんトイレ言ってくるわ。じゃね。」

ふむ。うまい具合に王蟲の怒りをしずめることができた。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: