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ストックホルム通信-環境・野外活動・文化編
我がストロービス
ストロービスとは
ストロービスは私が勤めているFritisの通称だ。本当はStrövarlyanというのだが、長いので保護者、子供たちは通称の方をよく使う。
ここはいろいろな意味で、公立の学校に併設しているFritisとは違う特色を持っている。
先ず、ここは保護者が作る協同組合が運営する施設と言う運営形態だろう。
同じ目的を持つ人々が集い、協同組合を作り、その目的達成のための活動を行うと言った形態は、保育所、余暇活動所、学校、非営利団体と様々に展開されている。
保護者が作った協同組合は運営委員会を持ち、選出された代表の保護者たちが運営委員会の中で細部にわたる運営の仕方を決めていく。
実際の運営は私たち職員が動かして行くのだが、運営委員会に雇用されそこで決められた方針に基づいて働いている形だ。
保護者が運営すると聞かれると、その費用は大変なものになるのではと思われるかもしれないが、保護者の負担は公立のものに通わせるのと同額だ。
保護者たちはその費用を市に払う。そして市から児童一人当たりいくらと言う形で補助金がおり、それによってストロービスは運営されている。
補助金と言うと一部のようだが、それのみが活動の財源であり、ストロービスのような形態の施設では、経費をなるべく削るため、自分たちでできることはなるべく自分たちで行なう方向がとられる。掃除、施設の修繕、改装、備品などは保護者のボランタリーな関わりによってなされることが多い。
2番目の特徴として、ストロービスはスウェーデン野外活動推進協会傘下の施設であることが上げられる。
野外生活推進協会は1892年に設立された非営利団体で、野外で過ごすことを通し、生活を意義あるものにしていくことを目的にしている。家族単位で外に出て行くに連れ、どおせ外に出るのであれば、野外活動を可能にする自然環境のことを重視していこうと言う視点が芽生え始め、その中から幼児を対象とする環境教育の流れが発生した。
長い歴史の中で子供たちに如何に自然のすばらしさと大切さをうえつけていくかという試行錯誤が繰り返され、1970年代以降ムッレの活動という幼児を対象とする環境教育へと整っていった。ムッレ活動は1985年からそれを運営理念の根幹とする保育園がリーディンゲ市にでき、かなり大きな動きへと前スウェーデンへ保育園へムッレを導入する形で広がっていったのである。
そして、ムッレにとどまらず、その上の小学生を対象とするストローバレ、中学生以上を対象とするフリールフサレと成長していった。
スウェーデン人ならば、ストロービスの名前から、ここは野外活動を主体に子供たちが余暇を過ごすことを目的とするFritisということがわかる。
ストロービス以外の野外活動推進協会傘下のFritisは全て学校と併設されており、単独のFritisのみの施設はここだけ。
ストロービスは1989年に、ウラマイが余暇の時間に室内ばかりで過ごす子供たちを野外に出したいと思い立ち、多くの人たちの協力を得て産声を上げ、もうすぐ15歳になろうとしている。
第3の特徴は、移民の多いストックホルム圏で保護者が全てスウェーデン人ということだ。一人中国からの養子の女の子がいるが、外見はともかくスウェーデン人として育っているので、基本的には子供たちもスウェーデン人のみということになろう。
移民が多く集まるストックホルム周辺では、これはかなりめずらしいことだ。
児童数は24人おり、クロッカゴーデンという学校から11人、フォーシュベリスカという学校から13人と2つの学校の子供たちを対象にしている。2つの学校はどちらとも歩いて5分程度のところにあり、ストロービスはほとんど真ん中に位置するという絶好の立地条件だ。
面白いことに24人の子供たちには、全て兄弟か姉妹がいて、
一人っ子がいない。スウェーデンの良好な出産状況を表しているかのようだ。
同僚たち
ストロービスは私を含めた3人の常勤スタッフで運営されている。
1人目は所長の58歳独身スウェーデン女性のウラマイ。第一印象はかなり厳しい雰囲気を受けたが、さっぱりしている上に温かみがあり、自分で人生を切り開いてきた典型的スウェーデン人女性かもしれない。
最初にここで実習をさせてもらい、その間の働き振りを認めてくれ、後日欠員が出たときに私を引っ張ってくれた。彼女を通して、この1年で本当に多くのことを教わったように思う。
先ずは生きる姿勢。
自分の信念に自信を持ち、やれることはあきらめずにやり抜いてみようと、肯定的且つ精力的にいろいろなことを経験してきたらしい。若かりし頃にはスイスや南太平洋でスウェーデン人向けツアー旅行の現地インストラクターをしたり、木材輸送船の従業員として世界各国を回り日本にも立ち寄ったことがあるというかなり多様な経験を持っているようだ。そういった幅広い人生経験を背景に、強く主張し時には語気を強め、物事を推し進めていこうとする企画力、実行力は人々に信頼感を与える。
時に子供たちとの接触がうまく行かず、ひどく落ち込むことがあるのだが、「まだ働き始めて1年もたってないのだからあせることは無い。子供たちに振り回されないよう毅然とした態度を早く掴め」と言われると、本当に習うより慣れろなのだということが身にしみてくる。
子供たちにとって彼女はストロービスの中心で絶対的で怖い存在なのだが、それでもみんなウラマイと言って抱きついていく。彼女が子供たちは叱ってくれる存在を求めていると言うのが、彼女と子供たちとの関係を通してよくわかる。
もう一人の同僚は、スウェーデン語を話す地区から移り住んできたフィンランド人。
彼はスポーツが得意で、特に雪が降り始めると歩くスキーの競技会参加でソワソワしだす。ストロービスは野外活動が主体の上に、暴れん坊の子供たちが多いので、そういった子供たちにとっては絶好の遊び相手だ。
温厚で真面目な人なのだが、小さな子供を3人抱えストロービスのすぐそばに住むため、かなりの頻度で仕事に家庭を持ち込むのが私には理解できない。彼もわが家同様エストニア人の妻という、移民国に移民同士で家庭を築いており、親類縁者の力を借りることなくして家庭の煩雑事を処理していかなければならないので大変なのはわかる。でも、いくら職場が子供に関わるところで融通が利きやすいといって、きちんと線引きができない部分を感じ納得がいかないのだ。
少ない人数で3人が役割を分担し分業体制で動いているため、他の人の動きがいまだ余りはっきりとした形で見えてこない。今の彼の仕事の仕方に対する不信感を不公平感につなげていかないようにすることが、解決策かもしれない。他人のことは他人のこと、ストロービスの運営に問題は出ていないのだし、とりあえずは自分のできることを高めていくことに専念すべきだろう。
仕事を始めだし、新米といっても最初から他の2人と同じように子供たちと接しなければならず、かなりの緊張感と失敗に伴う挫折感の連続だった。それでも、うまく乗り越えてこられたのは彼らの励ましと補助によるところが大きいだろう。
*この後、2007年に閉鎖されるまでに運営内容にかなりの変動があった。
詳細はブログの中をたどってほしい。
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