なんちゃって妄想ワールド(Repetition)8


「流石に2隻では厳しいですが」
アリスはセピアに乗っているジンに話しかけた。
『次の援軍を要請している。少し時間を稼げば来るはずだ』
ジンはアリスに援軍の事を知らせた。

5隻の連合艦隊の中にはライジンの姿もあった。
「気付いてたみたいね。少し早いけど第2段階の準備、しておいてよ」
3人の少年にトミィは云った。
彼らは命令を訊き、移動用の射出艇に乗り込んだ。
「正面の艦隊から通信が入ったらポットを出して」
トミィは淡々と指示を出す。
「艦長!敵艦2隻、こちらに照準を合わせてきました」
「ロックされないように気をつけて。面舵40、相手が攻撃してきたと同時に主砲1番2番を同時に発射」
指示を出し終えた時、港の正面を攻撃していた艦から通信が入って、作戦が第2段階へと移行した。
「射出艇、出して」
号令を出し、射出艇は基地方面へ向けて射出された。

その光景は2隻からも確認できた。
「脱出艇?5隻から10数機射出された模様」
ミクの報告を訊き、アリスは意味が分かっていなかった。
「何?脱出艇?」
港正面を防衛している艦から通信が入り、やっと状況が判断できた。
「まずいわ。艦は囮よ!早くアレを沈めて!」
アリスは焦った口調で叫んだ。
連合の作戦第2段階は歩兵で直接軍施設へと侵攻するという大胆なものだった。

トオルとスゥがモノトーンと合流するために戦闘海域に入った。
「目的の艦はどこだ?」
トオルは首をかしげた。
確かにここにいると知らされた。
なのに艦の姿がない。
その時トオルの目に入ってきたのはシュウの機体だった。
「おい、シュウ!艦は、艦はどこに」
『いない』
トオルの質問に一言シュウは応えた。
そこに、母艦から通信が入ってきた。
『シュウ、トオル、スゥ聞こえる?』
アイの声だった。
「聞こえます」
シュウが短く応えた。
『SIRN軍からの情報で、射出艇が基地方向に放たれたらしいの。だから、今から基地の方に向かってくれる?』
いきなりの指令に3人は動揺した。
「向かってくれるつったって、武器も何も・・・」
トオルは答えた。
まさか地上での戦闘があるとは予想できず、自機に自分の武器を積んでいなかった。
『勝手ながら整備士に頼んで積ませてもらったわ。どう?』
アイの用意周到さには呆れるほかなかった。
「準備いいんですね。分かりました、行ってきます」
3機は基地へと降り立った。

「マサキ、クシィ。状況が変わったわ。今から地上戦、いける?」
ブリッジに呼ばれた2人はそう指令を下された。
「いつでもいけます」
そう云って、分かっていたかのように射出艇に2人は向かった。
「地上戦か。人と直に接するの好きじゃないんだけどな」
射出艇に乗り込む途中にマサキが云った。
「迷っているならお前は出るな。死ぬだけだ」
クシィはクールに云った。
冷淡な口調ながらも同胞を気遣った言葉に、マサキは意外に思った。
「お前でもそういう事云えるのな」
2人を乗せた射出艇は発射した。

次々に上陸する連合兵。
基地内からはSIRNの兵士が出兵し、応戦している。
そこに支援といった形で戦場を駆けていたのはエクアル軍所属の3人だった。
「チィ、さっさと退けよ。死ぬぞ」
トオルは愚痴を飛ばしながら専用武器の『ツインジャベリン』で敵兵をなぎ倒していく。
「殺したくないのに・・・」
スゥも専用武器『ニードルボウ』で敵兵を射抜いていく。
鋭く尖った矢先は敵を逃す事はない。
「邪魔をするな」
2本の刀を使い、一気に敵を倒していくシュウ。
それは、以前の彼とは思えない姿だった。
しかし、兵士は1人たりとも死んではいなかった。
「いい加減そんな事ばかりしてると後ろから討たれんぞ」
トオルはミネウチで敵を殺しはしないシュウに忠告した。

マサキとクシィが上陸した時、辺りには同胞の死体が散乱していた。
前回とは違い、ゲームではなくなったこの戦いではナノシステムは導入されていない。
よって死体は爆散する事無くその場に残っていた。
「あいつらだ、きっと」
マサキはあの3人の事をイメージしていた。
「急ぐぞ」
クシィは一足先に走り始めた。
後を追うように走るシュウ。
少し行ったところで戦闘は行われていた。
「あん?何か来たぜ、2人」
「変な武器持ってんなぁ、他のヤツに任せて俺らあっち殺ろうぜ」
3人の少年は一般兵を他の兵士に任せ、マサキとクシィに襲い掛かった。
「クッ、何だ!?」
フルが『砕玉』を投げつけてきた。
砕玉は前大戦で戦死した『マイク・ロト』が使用していた専用武器で、フルが使っているのは少々型が違う。
マサキは両手に持ったカマのような武器でそれを切り払う。
『ショーテル』と呼ばれるこの武器はマサキが使用している専用武器だ。
回避したマサキの後ろから、リンジが大ガマを振り下ろしてきた。
大ガマは『スキーズ』という物で、到底人が触れる大きさではないが、リンジは例外で使用できる。
「オラァァァァ」
奇声を上げながらの攻撃を辛うじて回避するマサキ。
「2人相手は少々厳しいか」
マサキは苦戦を強いられていた。

クシィはフライドと交戦していた。
クシィの使う『ソードウィップ』と呼ばれる、ムチ兼剣の役割を果たす特殊武器である。
フライドは予測できない動きの武器に翻弄されていた。
しかし、タダでやられるようなヤツでもないフライド。
一筋縄ではいかなかった。
『トライデント(先が3つに割れた槍)』で応戦する。
5人は人間業とは思えない戦いをしていた。

アリスは2隻で5隻を相手にしていて、それがかなり無謀な戦いだったと身に染みていた。
「損傷率50パーセント超!危険です!」
まだ沈みはしない。
だが各機関に障害も生じている。
「クッ・・・何か手は」
もう何も手が浮かんでこない。
セピアも損傷が酷い。
このままでは負ける。
アリスが絶望した時、一筋の光が見えた。
増援だ。
「こちら、SIRN艦ドール基地所属『ネガ』。隊長のジーク・マクナルドだ」
『ジーク・マクナルド』は最上級クラスの指揮官の1人だ。
「ジーク・・・まさかそんな大物が・・・」
モノトーンのクルーは騒然とした。
「主砲、対艦魚雷2、4、6、8番一斉射撃!」
ネガから一斉に主砲と魚雷を発射した。
回避し切れなかった2隻の戦艦が撃沈した。
「何・・・!?2隻も・・・」
トミィは自軍優勢だった戦局を一気に覆されそうになり、困惑していた。
「さて、最後は私直々に手を下してくれる」
「隊長自ら、がですか?」
答えないままブリッジを後にした。
「長い間戦闘に出んと腕は鈍るだろうからな」
パイロットスーツも着ないまま愛機に搭乗し、出撃した。

セピアではジークが出撃した事がジンにも知らされ、ジンはそれを援護するように指示した。
「まさかジーク殿が自らとは」
ジンは少々意外そうに云った。

ジークは戦闘に出るのが久しぶりとはいえ、腕はほとんど衰えた様子もなく、戦艦相手に互角の戦闘を繰り広げた。
「撤退しないのならば、仕方があるまい」
そう云って、敵艦に止めをさした。
「これが・・・軍の上に立つ者の力・・・」
モノトーンとセピアのブリッジには身震いさせる様な空気が流れていた。

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