なんちゃって妄想ワールド(Memory)13


「こっちにもけが人がいるんだ!早く!!」
「こっちが先だ!」
「誰か修理にも手を回せ!沈んだら元も子もないぞ!!」
人の叫び声が飛び交う中、ユウキとミヤケ、ジーク、ナツメが、セナの手術が終わるのを待っていた。
落ち着かず、その辺を行ったり来たりしているユウキ。
ソファに座り、貧乏揺すりを絶え間なくしているミヤケ。
一言も言葉を発しないメディナを抱き、セナの無事を祈るナツメ。
そして、彼らよりもセナを知っているジーク。
彼が一番セナの事を心配していただろう。
間が持たなくなり、ジークがメディナの前に立った。
「これ、渡すべきなのか迷ったのだが」
そう言って1つの指環を取り出した。
それは、ティアとメディナがお揃いで付けていた物だった。
メディナはそれを見てハッとし、泣き崩れた。
「・・・お前が持っていてやれ」
ジークはメディナの手に指環を持たせ、優しく包ませた。
メディナの精神状況は著しく悪かったが、医師は外傷患者で手一杯であったので、ユウキたちと一緒にいた。
「なぁ、ジーク。あいつ、あんなになるまで1人で戦っていたのか?敵の大群と」
ユウキが訊いた。
「相手は1人だった。セナも、相手も血だらけで戦っていた」
ミヤケとナツメがジークの方を向く。
「あいつが1人相手にあそこまで・・・。どんな奴なんだろうな、そいつ」
ユウキの声のトーンは、いつもより低かった。
ジークは考えた。
セナの彼女の事を言うべきか。
他のメンバーに余計な心配をかけさせたくない。
だが、セナの事を理解してもらいたく、ジークは語り始めた。
「あいつの相手だった人は、あいつの彼女だ」
その場にいたメディナ以外の3人が、一斉に驚いた表情をする。
「おい、それじゃあセナは、その彼女と殺し合いをしてたってのか?」
ミヤケが疑ってかかった。
「あぁ、以前見た時の子だった、赤髪の。セナの証言もあるし、間違いない」
ジークが答えた。
「じゃあ、彼女が連合にいたから、1度SIRNを辞めたの?」
ナツメが訊いた。
「そうだろうな。お前らでもその状況ならそうするだろう?」
ジークが答え、訊いた。
「そんな理由があったなんて・・・」
ナツメは、セナがSIRNを退役するとき、「飽きたから」と言って辞めていったのがムカついていた。
だから、今日の今までセナが嫌いだった。
だが、その理由を聞いて、誤解がとけ、何て事をしていたのだろうかと後悔した。
「あいつは優しい奴だ。故に、誰にも迷惑をかけたくないと思っているのだろう」
「バカが・・・。十分迷惑かかってるってのによ」
4人はセナの無事を祈った。

ロンはブリッジで山積みにされた事を猛急ぎでやっていた。
「ホント、シャレになってないですよ」
ピットがぼやいた。
「これが俺たちの責任ってヤツだ。仕方がない」
いつになく真面目な態度のロン。
ピットもそれを習い、黙々と作業を続けた。
その時、1人の兵士が言った。
「隊長。上層部から通達が届いています」
「ん。モニターに映してくれ」
文章がモニターに映され、ロンとピットは唖然とした。
「これは・・・!?」
「チッ、何を考えているんだ上の連中は」
その内容に、2人は賛同しかねた。
「上層部はこの状況を知っているんですよね?」
「あぁ、伝わっていないとおかしい。こんな時に・・・。仕方がない。3人を呼んでくれ」
そう言って、ロンは士官室へ戻った。

艦内放送を聞き、士官室へ来たのは、ユウキ、ミヤケ、ナツメのトリオだった。
「失礼します」
3人が順番に部屋の中へ入る。
ロンが黙って彼らを見ていた。
「これを見ろ」
そう言って、ディスク上のパソコンの画面を180度回転させ、3人に見せた。
3人は近寄り、画面に映し出されている文章を読む。
そして、皆の反応は同じで、驚いた様子だった。
「そんな、この状況で・・・」
ユウキは絶句した。
「上の決めたことだ。逆らえん。今日より君たち3人を派遣隊へ配属する」
只でさえ深刻な状況の今、3人には派遣命令が下っていた。
「何処へ行くかは知らんが、遠方且つ潜入捜査みたいだな」
ロンがため息をついた。
「ミヤケ。お前に偽名を名乗るようにときているぞ」
「偽名、ですか?」
ミヤケが訊き返した。
「『ノゥ・アンノーク』大佐、だそうだ。俺と同じ地位だな」
ロンは苦笑し、ミヤケは複雑そうな表情をした。
「あと、ユウキとアカマにもだ」
「私にもでありますか」
「『モノトーン・アリエル』中佐。『ナイーブ・ルース』中佐、だそうだ。だが、今回の任務はミヤケ中心に動くらしいので、偽名でなくてもいいみたいだ」
ユウキとナツメは顔を見合わせた。
そして、ユウキが言った。
「私は自分の名前に誇りを持ちたくあります」
「わ、私もです」
ナツメも続けて言った。
「そうか。まぁ、自由みたいだしな。だが、ミヤケ。お前は一時的にも名前を捨てねばならんぞ」
「はい、承知しております」
ミヤケはすぐに答えた。
ロンが一瞬の間を置き、それから言った。
「まずは本国へ向かわなければな。船と操縦士は貸し出す」
「いえ、我々3人で十分です。それに、今は人材を削れる状況ではないでしょう」
ユウキが答えた。
「そうか。感謝する」
ロンが立ち、敬礼をした。
「武運を祈る」
3人も敬礼をした。
「隊長もご武運を」
そして、3人は部屋を出た。

部屋を出ると、そこにジークが壁にすがって立っていた。
「派遣、か」
ジークが訊いた。
「あぁ。しばらく帰ってこれそうにない」
ユウキが答えた。
「もう行くのか?」
「あぁ」
単調な会話が続く。
「もう、行くな」
ユウキが言い、ジークが返事をした。
3人がジークの横を通り過ぎた。
すると、ジークが振り返って言った。
「俺がこの艦とクルーを守る。約束する。だから、お前らも3人で帰って来い」
3人が振り返った。
「あぁ、約束だ。帰って来るまでくだばんなよ」
ジークが微笑し、ユウキも微笑した。
そして、3人はサミズを降りた。

数時間後、セナの手術が無事に終わり、さらに2時間が経った時、意識を取り戻した。
ジークがセナの寝ているベットの横で座っていた。
「起きたか?」
ジークの言葉に、セナが反応した。
「メディ・・・ナは・・・?」
「今治療を受けている。命に別状はないらしい」
それを聞き、セナはホッとした表情をした。
ジークは、もう1つ伝えなければならない事があった。
「あのな、ユウキたち3人が遠方に派遣されて艦を降りた」
セナが驚いた表情をした。
「じゃ・・・あ、俺が・・・早っ・・・」
「もう喋らなくていい。それに安心しておけ。俺が艦も、お前たちも守る。今は回復に努めろ」
ジークはセナを無理矢理楽な体勢に戻させ、立ち上がった。
「隊長にも報告してくるよ。ちゃんと寝とけよ」
そう言って、彼は部屋を出た。


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