ディサイション・パワード 3部第1話



前大戦から15年という長い月日が経っていた。
現在の情勢は、地球・宇宙間の争いもなく平和な日々が続いていた。
4年前、地球側の世界政府の最高議長に睦月 弥生が任命されていた。
若干30代後半の彼女が任命された理由は、政治的な能力が優れていたからだ。
それともう1つ。人類最大の敵「戦争」という物の知識も豊富というのもあった。
戦争を憎み、そして地球と宇宙が協力し、技術を発展させていく。
弥生は常にその心構えを持っていた。

閣議が終わり、弥生は疲れた顔をして自室へと戻った。
部屋の中には、サングラスをかけた1人の厳つい男が立っていた。
「お疲れ様」
弥生はえぇ、と一言云い席に着いた。
男の顔には深々と傷が刻み込まれていた。
それは、浅城 ジミュートだった。
地球へ戻り、政界へと進出した彼女のボディーガードとしていつも横についている。
2人の間には、結婚をしていないものの1人の息子がいる。
そろそろ15歳になるその息子は、世界政府直属の防衛軍に入隊している。
防衛軍といっても、災害が起きたときなどにディスや『BM』(バトルマシン)を使い、救援するのが主な仕事だ。
「今日は早く仕事が終わりそうよ。久しぶりにリオンと何処かへ行かない?」
弥生の云うリオンとは、『リオン・ムラサメ』。
2人の息子だった。
息子といっても養子だった。
2人は彼の名前を1字も変える事無く、来た時のままの名前で戸籍登録している。
「そうだな。久しぶりにリリスたちの所へ行かないか?」
彼らの関係は未だに続いていた。
リオンもリリスやフィンの事を家族のように好きでいた。
弥生はいい返事をし、すぐに仕事を終わらせようとした。

だが、この日に起こる事件によって家族団欒の時間はなくなった。
仕事中の弥生の元に内線の電話がかかってきた。
受話器を取り、内容を訊く。
電話の相手はかなり焦っていた。
『う、宇宙側から抗議が!』
弥生は意味が解らなかったが、とりあえず管理室へ向かおうとした。
「今日の予定はなくなりそうね」
部屋を出る前に弥生が云った。
「仕方ないさ」
ジミュートに見送られ、弥生は部屋を後にした。

管理室に入り、彼女は人々の慌しい様子に唖然とした。
そして、近くにいた兵士に訊いた。
「どういう事?宇宙から抗議って」
兵士が慌てながら云った。
「地球が核兵器を所有しているのではないか、と急に抗議の通信が。議長に話があると云っていました」
弥生は兵士に礼を云い、すぐに通信機の所へと階段を下りて向かった。
「議長!」
必至に宇宙側の代表の相手をしていた兵士が助かったと言わんばかりに云った。
「どういうことですか?地球側が核を所有しているなどと」
弥生が怒りを露にして云った。
『それはこちらの台詞だ。核の破棄だ何だと云いながら、結局はランドへの脅威は残っているのだろう!』
宇宙側の代表も相当怒っている。
核兵器は、前大戦以降所持自体が全面禁止され、勿論地球側は核を破棄し宇宙側も核開発は行わないと決定されていた。
「今までの代表たちが必至に唱えてきた事でしょう。私がそれを裏切るはず」
『黙れ!』
弥生が全部を云い終わる前に罵声を飛ばしてきた。
そして、最終警告のようにこう云ってきた。
『これから派遣団を地球へ降下させる。徹底的に探させてもらうぞ』
弥生はそれを聞き、大声を張って怒った。
「そんな。こちらの云う事が信じられないと云うので?」
向こう側は弥生の言葉を聞かず、そのまま通信を切った。
管理室内に沈黙が流れる。
そこに、1人の兵士が云った。
「議長。やはりここで身の潔白を証明しておいた方がいいのでは?あちら側も攻撃をしてくるという風でもないようですし」
弥生は兵士に云われ、少しずつ気を落ち着かせていた。
そしてこう云った。
「そうね。下手に云い合って、なんて事にだけはなりたくないわ。さっ、みんな仕事に戻って」
兵士たちは仕事に戻り、弥生は自室へと戻った。

数日後、宇宙から派遣団が降下してきた。
だがそれは武装したディスやBMで、いきなり攻撃を開始してきた。
弥生は突然の出来事に少し戸惑った。
「チッ、本部へ向かって来てるんだろ?何が目的なんだ、奴らは!」
ジミュートが怒りを露にする。
弥生は今までにないほど悩み、そして、とうとうこの決断を下した。
「自衛権の発動です。しかしこれは戦争ではありません。あくまで国を守る為の手段です」
彼女の言葉と共に、防衛軍も動き始めた。
「お前たちにとっては初の実戦だ。だが心配することはない。訓練通りにやればいい」
防衛軍の鬼長官として恐れられている如月 春中将が云った。
彼の管轄内にはリオンの姿もあった。
リオンは中々筋が良く、愛用のディスも持っていた。
彼は今までに数々の手柄をたて、賞された事もあった。
勿論この手柄というのも救援活動などである。
「では、各機出撃!」
春の号令と共に防衛軍が派遣団の討伐へ赴いた。

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