ディサイション・パワード 3部第14話



オーストラリア基地を奪取したアレンたちは、施設の中にいた政府兵士を1人残らず拘束した。
「これで一段落かな。あとはあいつらが帰って来るのを待つだけ」
作戦が成功し、皆は自然と清々しい気分になる。
アレンの所にリスが来た。
「隊長!作戦成功しましたね」
「あぁ、君らのお蔭だよ。さすがさすが」
彼はリスを褒めた。
「では」
そう云って、彼女はその場を去った。
状況が徐々に有利になって行く中、ネアンとイェルの2人が帰還した。
基地の施設に機体を降ろし、2人が降りてきた。
リスがそれを迎える。
「おっかえり~!無事じゃんか」
妙なテンションの彼女に2人は唖然とした。
「驚いたぞ。まさか本当にここを陥とすとか」
イェルが率直な感想を述べた。
「雑談は後だ。報告に行くぞ」
2人はアレンの元へと向かった。

見回りの報告を聞いたアレンは、上々の収穫だと云った。
「ミイ・ウツミか。この人物は先の戦争で睦月 ヨウと共に行動していたと聞いている」
ネアンとイェルは黙って聞いている。
アレンは上機嫌な様子で2人にご苦労と云い、報告は終了した。
2人は部屋を出て、廊下を歩いていた。
「ミイ、だっけ?あれって知り合い?」
イェルが訊いた。
「見覚えがない。それに俺には仮面の知り合いなどいない」
当然の答えだった。
「まぁ、そりゃそうか」
イェルが軽く笑いながら云った。
そこにネアンがこんな事を云った。
「しばらく敵も攻めて来ないだろう。もしかしたら休暇がもらえるかもしれんな」
イェルがそれに食いついた。
「マジ?そういや、ここにはデッカイ街あったよな。行ってみたいよ」
1人浮かれ調子で、足取りも軽くイェルは自室に戻って行った。

敗戦してしまったディフェンスは、体勢を立て直すべくマレーシア基地へ帰投していた。
春は気を取り直し、リオンたちにこう云った。
「奴らの行動は早い。オーストラリア基地付近の市民も、すぐに奴ら側につくだろう」
リオンたちは彼の話を黙って聞いている。
「そこでだ。リオン、ミリ、マヤに偵察に行ってもらいたい。ヴュルムは艦の護衛に残ってもらう」
それを聞いて、ミリが云った。
「偵察、でありますか」
「あぁ、偵察だ。内部情勢によって我々の取る行動も変わってくるからな」
4人は了解した。
そして、3日後に一般の船に乗り出発する事が伝えられた。

基地奪取から3日後、ネアンたちは、1日の休暇を貰う事ができ、街に出る事にしていた。
「久しぶりだぜ?休暇なんて」
イェルが嬉しそうに云う。
「ホントねー。今まで溜まってた鬱憤、買い物で晴らそ~」
リスも嬉しそうに云った。
ジロンド以外のメンバーで、みんな私服だ。
「早く乗れ」
先に車の運転席に乗っていたネアンが2人に云った。
リスが助手席に、イェルが後部座席に広々と乗った。
軍使用の一般車で、オープンカーだ。
「ネアン、いっけー!」
ノリノリでリスが云い、車は発進した。

リオンたちもこの時、同じ街に来ていた。
船を下りた後、3人は用意されていたバイクに乗った。
余分に人が乗れる様、車体の横に座席が付いている。
運転をするのはリオンで、その後ろにミリが乗り、マヤが横の座席に乗った。
「リオン、運転出来んの?」
「バカにするなよ」
マヤの言葉に、リオンが軽く反応する。
そして、まずは中央街に向けて走り出した。

その頃、ディフェンスではジミュートが春に交渉していた。
「ナガハラ艦長に会いに行かせてくれ」
春が答えた。
「駄目だ。今お前まで出たら護衛の数が少なくなりすぎる。それに何故?」
ジミュートが云った。
「あの黒い機体だよ。ずっと突っかかってんだ。それで、ナガハラ艦長なら何か知ってるんじゃないかって」
春もそれには同感だった。
「確かにな。あの人は今、色んな人物と太いパイプで繋がっていると聞いたこともある」
「頼む、行かせてくれ。真実を知る機会なんだ」
春はしばし考え込んだ。
そしてこう云った。
「2時間だ。それなら俺がどうにか誤魔化す。時間は守れよ」
「すまん」
ジミュートは急いで軍用の数人乗り飛行機に乗り込んだ。
そして、自分の操縦で永原の元へと急いだ。

ネアンたちは2番街へ向かう峠道を登っていた。
後部座席にはリスが買い物をした物が沢山置いてあった。
「お、おい。リス、席代われ」
「イヤよ、狭いじゃない」
イェルは荷物に埋もれる勢いだった。
そして、カーブに差し掛かり、スピードを緩めて走行しようとした時、対向車のバイクが勢い良く突っ込んできた。
ネアンは焦り、ハンドルを思い切りきった。
バイクの運転手もハンドルを思い切りきった。
その時、相手のバイクに乗っていた女が、勢いで吹き飛ばされた。
「きゃあああ」
「ミリ!」
運転手の男が叫んだ。
「危ない!」
イェルがいきなり後部座席から飛び出し、吹き飛ばされた女を空中で抱えて守った。
「ちょ、危な」
「お前はそこにいろ」
ネアンがリスに云った。
彼女の短気な性格からして、相手と接触させると話がややこしくなると思ったからだ。
「イェル、大丈夫か」
ネアンが訊いた。
「ギリギリ・・・」
イェルは女を抱えたまま答えた。
「す、すいません!」
運転手の男が謝った。
「もっと深く頭下げなさい、リオン」
横にいたバイクの男の連れの女が、男の頭を押した。
「いや、俺たちはいいのだが。彼女が」
イェルが抱えている女は気絶しているようだった。
「おーい、大丈夫かぁ?」
イェルは女の体を揺すってみた。
すると、ピクッと反応し、女が目を覚ました。
「おっ、大丈夫?」
イェルが目を覚ました女に訊いた。
「あ、いえ、うん。ありがとう」
女が礼を云った。
2人は立ち上がり、イェルは運転手の男の方に女を連れて行った。
「カーブであんなスピード出しちゃ駄目だぜ。気をつけな」
イェルが運転手に注意した。
「すいません。あと、ミリ、いえ彼女を助けてもらって」
「なぁに、気にすんな。ミリちゃんかぁ。2ケツする時は気をつけろよ」
女はペコッと礼をした。
「イェル、行くぞ」
ネアンに云われ、彼は車の方に歩いて行った。
そして、車に乗り込み、発進しようとした。
イェルがふと後ろを振り返ると、運転手の男が頭を下げていた。
「もう、ネアンはクール過ぎ。お金取ればよかったのにぃ」
「お前が過激過ぎなんだ」
そして、車を発進させた。
「ミリちゃんか。可愛かったな」
後部座席で偉そうに座っているイェルが云った。
「云ってろ、バカ」
リスが愛想が尽きた様に云った。
それを見送った後、バイクの運転手が顔を上げ、横の座席に乗っていた女に云った。
「あのな、マヤがあそこで車体を揺らすからバランスを崩したんだぞ」
「あれ、そうだっけ?」
女が惚けた事を云い、男は呆れていた。
そんな中、助けられた女、ミリだけがずっと車の消えて行った方を見続けていた。
少年たちは皮肉にも、この地で対面していたのだった。

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