ディサイション・パワード 3部第29話



ディフェンスは敵の追撃を受ける事無く、どうにか本国へ帰投することが出来た。
1人の少年と1人の少女を除く者が、再びこの地に戻ってきた。
春と話していたジミュートは、弥生に会うためにすぐ下船しようとした。
春の部屋から出ようとした時、ジミュートが云った。
「ハル、お前は何があっても歩む道を踏み違えるなよ・・・」
春はジミュートの言葉を訊き返した。
「どういう意味だ?」
ジミュートは答えぬまま、部屋を出て行った。
春は悪い予感がしたが、何故かそこから動いてはいけないような気がした。
そこにライが入れ替わるように部屋へ入ってきた。
「失礼します」
相変わらず姿勢の悪い格好だった。
棒立ちだった春は我を取り戻し、ライに方を向いた。
「どうした?」
「本社より帰投命令がでました。ここのエージェントと入れ替わり、という事でしょう」
春は、そうか、と云い、付け足すようにこう云った。
「今まで、色々とありがとな」
ライは驚いた様な顔をし、いえ、と云った。
そして、彼は機体を残し、艦を降りた。

その頃、メンフィスでは事件が起きていた。
スバルとナセルが突然裏切ったのだ。
機体に乗り込み、格納庫を破壊し、無理矢理出撃し、もう戻って来なかった。
騒然とするクルーたち。
リスもこの状況が理解できなかった。
「ノゥ・アンノークに嵌められたのか・・・?」
彼女は、彼らを自分の隊に送ってきたノゥを疑うしかなかった。
とにかく、本国へこの事を報告をしようとした。
回線を開き、誰かが出るのを待った。
少しして、通信に応答があった。
『サンダーボルト隊長か。どうした?』
「スバル・ギザ、ナセル・シリア両名が反乱を起こし、新型と共に姿を消した。今私の隊には追える機体がないのだが」
通信に出た兵士が、スバルとナセルの名前を探した。
そして、兵士が放った言葉にリスは驚愕する事となった。
『その様な者は我が軍にはいないぞ』
「どういう事だ!!」
リスはさらに読めなくなった状況に、ノゥへの疑念が強まった。
「アンノーク少将は!!」
『今は自室におられるかと』
「すぐに彼につなげ!!」
兵士は怒鳴られ、すぐにノゥへ通信をつないだ。
『なんだ、騒々しい』
ノゥがふてぶてしい態度で出てきた。
それがさらにリスへの怒りに火をつけた。
「どういう事です!スバル・ギザとナセル・シリアが新型を奪って逃走したぞ!」
その事態を一番驚いたのはノゥだった。
『それは本当か!?』
「知らないフリでもしようというのですか?」
『フリではない!その状況に驚いているのは私のほうだ』
リスは彼の云う事にリアル感を感じてきた。
『サンダーボルト隊長。あなたも宇宙へ上がってきてくれ。詳しく話を聞きたい』
ここで動かなくては何も変わらないと踏んだリスは、宇宙へ上がる決心をした。

ディフェンスの破棄が決定し、クルーたちは基地の中で次の命令を待っていた。
リオンの死を信じれず、生気を失ったミリを、ヴュルムが付きっ切りで対応していた。
そこにイェルが来た。
ヴュルムは彼がいる事に騒然とした。
「君、なんでここに・・・」
「さぁな。俺が聞きたいくらいさ」
イェルがあの戦闘からの経緯を話した。
ヴュルムはそれを理解し、イェルもミリの横に腰掛けた。
「ミリちゃん。確かに親しい人を失くした事が辛い事とは俺だって分かる。でも、いつまでもそうしている訳にはいかないよ」
ミリが顔を上げ、イェルを見た。
「キツイ云い方かも知れないけど、それじゃあ彼も報われないよ」
ヴュルムはその様子を見ている。
ミリがイェルに訊いた。
「・・・私に、何が出来る事があるの?」
「それは分からない。でも、何かしようとしなければ、何も変わらない」
厳しくも優しいイェルの精一杯の言葉だった。
ミリは普段の様子までではないが、少し生気を取り戻した様子だった。
立ち上がり、ミリが云った。
「ありがとう」
そして、彼女は春に会いに行くと云って、歩いて行った。
ヴュルムがイェルを見て云った。
「すごいな、君は。あんな彼女を」
「こういう事ばかりに慣れている俺って、な」
イェルは少し照れながら云った。

ジミュートは弥生の部屋に行き、今までの報告に次いでリオンの事を告げた。
予想通り彼女は絶句し、泣き崩れた。
ジミュートが彼女を強く抱擁する。
そして、どうにか立てるまでになった。
すると、彼女は涙を拭いながらディスクへ向かい、引き出しから資料を出した。
それをジミュートに渡して見せた。
彼はその内容に驚愕した。
「政府は本当に宇宙に上がる気なのか!」
「今の話で決心したわ。それを結果とします」
震える声で弥生が云った。
だが、ジミュートはそれ以上止めはしなかった。
しかし、こう云った。
「弥生。俺は軍を抜ける」
彼女は彼の方を向いた。
「何故?」
「俺はこれから俺がやるべきと思う事をする。だがそれをやるには軍にはいられない。ハルたちにも迷惑がかかる」
それを聞いて、弥生は彼を止めようとした。
迷惑がかかるような事をしようとしているからだ。
しかし、ジミュートは決意を曲げなかった。
「フォルティッシモも貰っていく。あれがなければ話にならん」
「それも認めません。あれは軍の重要資料にして貴重な戦力です」
「ならば無理矢理にでも俺は行く」
そう云い残し、彼は走って部屋を出た。
格納庫に行くのだと悟った弥生は、格納庫に警告の通信を入れた。
「ジミュート・アサギを出撃させてはなりません!強制的にでも彼を止めてください!」
通信を聞いた兵士が了解し、そして通信を切った。

格納庫へ走りこんだジミュートを待っていたのは、銃を構えた兵士たちだった。
「対応の早いことでっ!」
ジミュートは加速し、手前の兵士を蹴り倒した。
一斉に銃口が彼に向けられる。
しかし、怯む事無く機体に向かって走って行った。
「出撃させるな!扉を閉めろ!!」
ジミュートは、自分の機体が明らかに変わっているのを見た。
「えらいカッコよくなって」
カラーは赤で変わらないが、全身がさらに強固な物で、刺々しくなっている。
武装も多々追加されていた。
それに乗り込み、目を覚まさせる。
「起きたか?行くぞ!」
幾層にもなった頑丈な扉に向け、強化されたセイバーを撃った。
すると、一撃でそれを吹き飛ばした。
そして、彼は飛び立って行った。
辺りは騒然としていた。

春にも弥生からそれが伝えられ、されに宇宙へ上がるよう指示された。
「ジミュートが?!それに宇宙って、お前・・・」
「えぇ、ランドへ総攻撃を仕掛けます。艦は新しい物を用意しています。ご安心を」
「しかし、それではお前の意志とは反する物に」
「いえ、これは私の意志です」
春は唖然とした。
彼は今の弥生の全てを否定したかった。
しかし、彼女の地位を考えると、それは出来なかった。
「分かった、従うよ。何時なんだ?」
「3日後の16:00。あなたたちを含め、5隻の艦を打ち上げます」
「了解した」
全てが崩れ落ちていくのを、春は感じた様な気がした。

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