ディサイション・パワード 3部第32話



ビトレイアルが、アドバンスの停泊している基地を襲撃した。
春はすぐに戦闘体勢に入った。
ビトレイアルの周囲には、4機の機体がいた。
「隊長!アンノーンと新型2機。そして・・・、フォルティッシモです!」
その4機全てに春は驚いた。
「ミイ?!ジミュートも・・・。何で・・・。新型の2機も」
状況が読めず、混乱した。
落ち着きを取り戻そうとし、深呼吸をした。
そして、こう云った。
「彼らの目的は基地ではない。アドバンスだけで様子を窺う」
皆、異存はなかった。
「何が目的なんだ。ジミュート、ミイ」
そして、アドバンスが出撃した。

美衣たちは、5人全員がビトレイアルを降り、出撃している。
艦には、襲撃時から乗っているクルーしかいない。
だが、彼らは逃げる素振りも見せなかった。
見せられないと云った方が適切かもしれない。
彼らに脅しをかけられていたのだった。
『この艦は宇宙へ上がる手段でしかない。下手な行動は、死期を早めるだけだ』と。
よって美衣たちは、全員で出撃できていた。
「スバル、あとは頼んだぞ」
「了解」
スバルだけが集団から離れ、3機が一気にアドバンスへ攻め入った。
『ハル!どうするの?!』
「君たちも出撃してくれ。こちらからも機体を出す」
リリスとフィン、そしてヴュルムが出撃する事になった。
そして、すぐに機体が飛び出した。
「出来るだけ敵機をひきつけるんだぞ」
「分かっている」
美衣たちは出てきた3機を引き付ける様にした。

フィンが美衣に向かって静止させようとしていた。
「ミイ!なんで、こんな・・・」
美衣は高速でフィンの機体目掛けて体当たりをした。
フィンは驚き、咄嗟に回避する。
「これがあなたの望んだやり方なの?」
「何も知らないお前が何を云う」
美衣の冷たい言葉に、フィンは体が凍りそうになった。
もう、自分の知っている彼女ではない。
それだけは、はっきりしていた。
「それでヨウが報われる?それが彼に対する想い?」
美衣は何も聞こえていないかの様に、再び体当たりをしてきた。
「あいつの事は関係ない。それで私を説得出来るとでも思ったか」
フィンは、戦友の豹変様にショックを隠しきれなかった。

リリスがジミュートのフォルティッシモを止めようとしていた。
「ジミュート!聞こえてる?あなたなんでしょ?!」
彼にははっきりと、嘗ての親友の声が聞こえていた。
「聞こえているよ、リリス。まさか君が、再び戦場に戻ってきているとはね」
妙に優しい、そして感情のこもった声色に、リリスは一瞬戸惑った。
「何故、あなたはオーシャンと違う道を選んだの?ハルたちとも敵対するって判ってて」
「これが俺の正義だからさ。君たちを裏切ったわけではない。だからアドバンスも、君たちも、討つ気はないよ」
リリスは驚いて訊いた。
「なら、何が目的なの?」
「それは、まだ云えない。この戦闘の結果を見れば判るさ」
2人は戦闘をするわけでもなく、互いに向き合って話をするだけだった。

ヴュルムの機体を見て、ナセルは見つけた、と思った。
「最後の1機だな、貴様がぁ!!」
ブルーの装甲色で、両肩にガトリング砲とシールド。
両手には、巨大な黒いアームが装備してあった。
ナセルは勢い良くツイントライデントで攻撃した。
ヴュルムは回避し、ガトリングを撃った。
次々と飛んでくる無数の弾丸を、ナセルはツイントライデントを回転させ、全てを切り払った。

それぞれがそれぞれの戦いをしている時、スバルはアドバンスに近づいていた。
だが、アドバンスは弾幕を張り、それ以上は近づけなかった。
「そろそろ使うぞ。ちゃんと掴まってろっ!」
「えぇ、よろしくお願いします」
スバルは美衣からあるパーツを受け取り、搭載していた。

『これは?』
『睦月 ヨウが残した物のサンプルだ。1度しか使えんが、今回の作戦には有効だろう』
『どんな効果が?』
『空間移動だ』

彼の機体は、アドバンスの前から突然消えた。
「敵機、ロストしました!!」
オペレーターの兵士が叫んだ。
春が驚いたように云う。
「あのシステムが、あの機体にも?!警戒しろ!艦に近づいてきているかもしれん」
だが、すでに遅かった。
スバル機はアドバンスに隣接し、ライの指示の通りに装甲を破壊した。
穴が開き、艦内にそこから入れるようになった。
「では」
政府軍の宇宙服を着たライが、機体から降り、アドバンスの中に入った。
スバルはライフルを艦に向け、威嚇をしていた。
その為、クルーたちはどうにも対処が出来ずにいた。
春は黙って考えていた。
「艦を沈めたい、基地を破壊したいわけではない。・・・まさか!」
彼は何かに気付いた。
「あの新型の奪取が奴らの目的か!!」
クルーたちが春の方を向く。
そこに、ミリが云った。
「念のため、私が確認してきます」
そう云って、彼女は格納庫へ向かうべく、ブリッジを出た。

ライは、何食わぬ顔をして格納庫へ向かう。
すれ違う兵士にも怪しまれず、スムーズに格納庫まで来れた。
そして、彼は格納庫内を見渡し、自分が乗っていた機体を見つけた。
「まだ彼らが所有していたか。助かった」
彼が機体に向け、地面を蹴って跳んだ時、何者かの叫び声が聞こえた。
「動くな!」
それはミリだった。
ライは、聞き覚えのある声の方向を向く。
銃口を向け、今にも発砲しそうだった。
ライは銃を取り出し、それをミリに向け、放った。
ミリの真横を通り、彼女の後ろの壁に穴を開けた。
彼女が怯んだ隙に、ライは機体に乗り込もうとした。
「お前っ!」
ミリが狙いを外さずに、彼の頭部を目掛け、撃った。
ライはそれに気付き避けようとした。
しかし避けきれず、ヘルメットを貫通し、米神をかすめた。
ヘルメットが飛び、彼は機体に体をぶつけた。
ミリはその顔を見て、驚いた。
「えっ・・・。ライ・・・君・・・?」
体をぶつけ、痛そうに立ち上がるライの頭から、切れたヘアバンドがハラリと落ちた。
そして機体に乗り込み、起動させた。
「くぅっ・・・。ミリさん、下がっていてください」
ライは彼女を気遣いながら、装備の鉄球で出撃口を破壊した。
「ま、待ちなさい!」
ミリが叫んだが、彼は機体を持って飛び立って行った。

美衣たちはライの機体の姿を確認し、撤退を開始した。
「逃げるのか!?」
アドバンスはすぐに追撃をした。
5機がビトレイアルに収容され、美衣が機体から降りた。
「このままランド軍基地を襲撃する。衝撃に備えていろよ」
美衣の機体の空間転移システムで、戦艦ごと瞬間移動をさせた。
宙域から突然戦艦が消え、春たちは、唖然としていた。

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