ハジマリノ歌 Leonus4「英雄かぶれ」


兵士たちは皆緊張した面持ちだ。
レオンとマリアは他の事でドキドキしていた。
アロウがまだ来ていない。
「何やってんだ、あいつは」
「こんな大事な日に」
未来は変えてしまった。
だからここから先の出来事は彼自身どうなるか判らなかった。
しばらくしてアロウが部屋に駆け込んできた。
時間にはギリギリ間に合った。
「す、すいません」
「ギリギリだ。余裕か」
「い、いえ・・・」
教官に絡まれ、アロウは動揺していた。
机の角に脚をぶつけ、痛がりながら二人の横の席に座る。
「何やってたんだよ」
「ごめん、さっきまで練習してて」
レオンはふと彼の手を見た。
その手は包帯やテーピングでボロボロになっていて、練習の量を物語っていた。
「それだけやったんだ、やれる。信じろ」
「あ、あぁ」
「ちゃんと私も守ってね。期待してるから」
マリアに笑顔で言われ、アロウは何故か赤面した。
「時間だ。各自指定場所へ向かえ」
教官が部屋のドアを開ける。
兵士たちがぞくぞくと部屋を出て行く。
三人も部屋をあとにした。

レオンは自分の剣と純白の鎧を、マリアはローブの下に軽い鎧を装備し、魔力を増幅させる効果を持つ杖を手にしていた。
そしてアロウは適度な防具と弓を装備している。
「俺が前線、マリアが魔術で敵を牽制、アロウは後方から支援してくれ」
「了解」「わかった」
三人が意気込んだ時、教官が兵士たちの前に現れた。
「時間だ。開門!」
門が開かれ、いつも訓練を行っている訓練場が現れる。
その向こう側には装備をした死刑囚が何十人もいた。
ルールは簡単で、敵(死刑囚軍)の後方にあるゴールを目指せばいい。
ただし、チーム全員が生存した状態でないとクリアにはならない。
一小隊ノルマ六人を倒せばいい。
兵士が全員入ったのを確認し、門が閉められる。
それと同時に死刑囚たちが向こうから走ってきた。
「いくぞ」
レオンたちも敵の方へ走っていく。
「お、俺たちもだ!」
「お、おー!!」
それに続いて他の兵士たちもゴールを目指し走り始めた。
「うぉりゃあああ!!」
レオンが早速一人を斬り殺した。
彼の両サイドから迫ってくる敵をマリアが火球で牽制する。
「やっぱあいつらは凄い。でも・・・、俺だって!」
アロウは力いっぱい弦を引き、一本の矢を射った。
それは敵の頭部を捉え、即死だった。
「アロウ、ナイス!」
「まかせとけ!」
さらに三人の勢いは増す。
次々と敵を殺していった。
その様子を見て、他の兵士たちは唖然としていた。
「す、凄い・・・」
「あんな奴らがいたのか」
「ボーっとしてられん!俺たちだって!」
彼らの姿に勇気付けられ、次々と他の兵士も戦いに行く。
「えぇぇぇいっ!!」
一人の兵士が死刑囚を一人仕留めた。
「や、やった。俺にも出来た!」
「死ねぇぇぇ!!」
その完璧な隙をついて、別の死刑囚がその兵士を狙った。
「うわああああ!!」
彼は死を覚悟し、力いっぱい目を瞑った。
だが次に聞こえてきたのは人の叫び声だった。
目を開くと自分の横でさっきの死刑囚が倒れている。
見上げるとそこにはレオンの姿があった。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ・・・」
「ならいい。全員生きてゴールしようぜ」
「は、はいっ!」
「そいつ仕留めときな。ノルマが達成出来なきゃ元も子もない」
さっきの死刑囚はまだ息があった。
兵士は剣を逆手に持ち、止めを刺した。

今回の訓練は国全土に噂として広まった。
死亡者ゼロの上、全員ノルマ達成で任務完了。
それはこの国の死刑制度が出来て以来の快挙だった。
その噂が広まると共にレオンたち三人の名前は広く知られていった。
レオン以外の二人も彼と同じ様な事をしていたからだ。
軍内でも共にあの訓練を受けた先輩後輩の兵士から尊敬され、良くされた。
ある日、三人はある場所に呼ばれた。
彼らが来た場所は、軍本部の最上階に位置する部屋、オドアケル総帥の個室だった。
「失礼します」
レオンを先頭に部屋に入る。
そしてオドアケルの前に整列した。
「君たちが噂の三人か」
彼はいきなりそう切り出した。
「高く評価をしている者もいるようだが、私はそうは思わん」
三人は困惑した。
「それがどれほど愚かな行為か。戦場でやってみろ。死ぬのは自分だぞ」
レオン以外の二人が俯いた。
「それにだ。貴様らがした事は他の兵士にとって為になっていない。違うか?」
オドアケルはレオンの顔を見て言った。
「はい、そうです」
マリアとアロウは驚き、レオンを見る。
「ほぅ、認めるのか。なら何故あんな行動を取った」
「あんな無駄な戦闘で仲間を死なせたくなかったからです」
「無駄だと?」
「はい、無駄です。説明しなくても判るでしょう。あなたはそれほど馬鹿ではない」
「ちょ、レオン」
「初対面の上軍の最高司令官に向かってその口を利くか。まぁいい。他では評価されているのは本当の事だ。今日君たちをここに呼んだのも説教をする為ではない」
三人は姿勢を直し、彼を見た。
「君たち三人には王家直属の兵士として国王から指名を受けている。明日9:00宮殿に向かわれし、との事だ。大した出世だ、おめでとう」
「ありがとうございます」
三人は一斉に礼を言った。
「もういいぞ。明日に備えて準備でもしろ」
「はっ、失礼します」
オドアケルからそう言われ、彼らは部屋をあとにした。
「どう思われました?総帥」
「一番右にいた金髪。奴からは何か目を見張るものを感じた」
側近のクロにそう言った。

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