ハジマリノ歌 Leonus8「つかの間の休息」


解放地区になった街の人たちは喜び、騒ぎ回っている。
レオンは宿屋の屋上でタバコを吸っていた。
高々と煙を吹き上げる。
そして、フィルターの付近限界まで吸っていたのに気付き、口から離して地面に擦り付けた。
ふと思い出し、ポケットの中からペンダントを取り出す。
それを空に翳し、ボーっと眺めていた。
「あいつ、何を考えているんだ。ノヴァ・ワグナー」
あの青年の顔を思い出しながらペンダントに重ね合わせる。
その時、ペンダントの横に何かを挿すようになっている穴があった。
近くに寄せて見てみる。
それはイヤホン系の物を挿し込むモノだった。
「奴は信じてはいけない。敵だ」
そう言ってそれをポケットの中にしまった。
箱から一本のタバコを出し、口に咥えて火をつける。
先から煙が出始め、彼も口から煙を出した。
そこに誰かが屋上に上がってきた。
「白龍隊長」
レオンはタバコを地面に落とし、火を踏んで消した。
白龍は彼の横に来て外を眺めるように柵に寄り掛かった。
「まずは初陣ご苦労とでも言っておこう」
「いえ」
「ところでだ。何故あそこで退けと言った?」
「えっ?」
唐突に話を切り出してきた。
「もう勝ちは目前、というか決定していた。それなのに君に伝えろと言われたとマリアは来た」
レオンは黙っている。
「君が気違えているのか、敵と精通しているのか、あの男と俺を会わせたくなかったのか」
その言葉にレオンは驚いた。
たったあれだけの事でそんな予想が立つか。
こいつは何かを知っている。
レオンはそう思った。
「逆に訊いてもいいですか?」
「なんだ」
「あなたは何を知っている」
彼の目付きが変わり、白龍の目を一点に見ている。
白龍もレオンの事を見下ろすように見ていた。
「何を知っているか、だと?君は何を言っている」
レオンはこの時思った。
このまま行けばこいつは自分の敵として目の前に現れる。
ここで殺しておくべきか。
未来を知ってから彼は自分自身が変わっていっているのに気付いていた。
以前なら邪魔なら誰かを殺そうなどと思ったことなどなかった。
「まぁいい。次の戦闘も期待している」
レオンは彼が自分に自分の存在のある事を伝えに来たとしか思えなかった。
白龍は去っていき、屋上から姿を消した。
レオンは傍にあったベンチに腰掛けた。
「チッ、誰もが敵に見えてくる。むしろ未来を知るノヴァ・ワグナーの方が俺に近く・・・」
またタバコを取り出し口に咥えた。
「お前を見張れる場所にいて且つ俺の事を間接的に見張れる地位、技術、権力を持つ者、か。誰だ・・・」
催眠術をかけられたかの様にノヴァの発言、存在が正しく思えてきた。
いや、今の彼にすがれる情報源が彼しかない。
その事に気付いた。
「情報。調べてみるか」
レオンは宿屋を出て行った。

深夜、レオンは解放区にあった情報センターに忍び込んだ。
ここには色んな機器が揃っている。
彼は建物の奥へ進んでいった。
廊下に差し掛かった時、足音が聞こえてきた。
警備員が巡回しているのだ。
さっき見た建物内のマップではこの奥に情報末端のマザーコンピューターがある。
レオンは警備員に飛び掛り、首を絞めて気絶させたあと、掃除ロッカーに閉じ込めた。
「悪いな。これもお前の未来の為と思え」
そう言ってマザーコンピューターのある部屋を目指した。

しばらく進み、目的の部屋の前に着いた。
その部屋の扉にはカードキーとパスワードを必要とするロックがあった。
レオンはその機械の表面をゆっくりと剥がし、何か紙を取り出した。
この手のロックの解除法だ。
「カディスの技術から見ればこんなもの」
レオンは慣れた手つきで次々と作業をしていく。
そして一、二分後ロックは解除された。
素早く部屋に入り、そこにあった普通サイズのPCを起動させた。
ディスクを入れ、それから持ってきたソフトを読み込ませた。
さらに作業を進め、画面に何やら細かい情報が表示され始めた。
「やった、ハッキング成功。虱潰しにやらせてもらうぞ」
ブツブツ言いながらキーボードを叩き続ける。
そして、画面に変わったモノが映った。
『グングニル』。
そこにはそう書かれてあった。
レオンは自国、カディス王国のデータベースに侵入していた。
この時点でグングニルはすでに完成していた。
さらに事細かな詳細を見ていく。
そして全てをコピーし、ディスクを取り出した。
「チョロいな。あんな連中より俺の方が出来がいい。カディスも落ちたものだ」
レオンは剣術以外にもこういう能力も持ち合わせている有能者だった。
「きっとあいつがほしい情報もこれのはず。そうでなくてもこれから先これが役立つ時が来る、か」
ディスクをポケットにしまい、建物を後にした。

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