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ハジマリノ歌 Nova9「使ウ者使ワレル者」
黙って座っているリカードの横にトロイメが同じ様に黙って座っている。
バルドルは足を組み、貧乏揺すりをしている。
その横でパレが何か雑誌を読んでいた。
そこにノヴァが部屋の中に入ってきた。
四人の視線が一斉に彼に向けられる。
ノヴァは彼らの前に立ち、向き直った。
彼の第一声に注意が寄せられている。
そして彼は話を始めた。
「一週間後にカディス侵攻を決行する」
その言葉に四人の表情が険しくなった。
「隊長、それは・・・」
「どういう事だ。この前の戦闘から日が浅いというに!!」
「止めなさい、バルドル!」
言葉を荒げたバルドルをトロイメが制止した。
しかしノヴァは気にした様子ではない。
話を再開し始めた。
「これは上が決めた事だ、覆らない。そこで君たちにシークレットミッションを命じる」
「シークレット、でありますか?」
リカードが訊き返した。
「この作戦は俺の独断だ。だかこれを決行しなければ元々勝機のない戦いだ。負ける」
それを聞き、パレが煽った。
「おいおい、いいのかよ隊長さん。そんな独断だとかさ」
「パレ!でも、確かにそんな勝手な判断が上層部にバレでもしたら隊長」
トロイメがパレにも注意し、心配も口にした。
「バレない為に君たちに任せるのだ。出来るだろう?」
いかにも見下したという風な言い方でノヴァが言った。
するとそれに逆鱗したバルドルがノヴァとギリギリの距離まで近寄り、言った。
「やってやるさ。今に貴様をも超えて俺が貴様に命令する立場にもなってやる」
ノヴァは微笑した。
単純な奴だ。
さっきの発言はバルドルの性格を生かした誘導尋問的モノだったのだ。
もう後には引けないし引かせはしない。
彼にとっては彼らはすでに死んでいる存在。
骨の髄まで吸い取り、捨てる。
今自分がすべき事は以前と同じ様に行動する。
そして、もう一人の時の旅人を守る事だ。
そう割り切っていた。
「作戦の指揮はリカードに任せる」
作戦の説明前にノヴァはそう言った。
「私がですか?」
「不服か?」
「いえ・・・」
リカードは突然の事に戸惑いはしたものの、不服ではなかった。
ただ、不服と感じていた人物も一人いた。
バルドルだ。
奥歯をギリギリと噛み締め、手を目一杯握って爪が食い込み血が出ているほどだった。
リカードはその様子を横目でチラッと見て、消沈した。
「では作戦を説明する」
ノヴァは四人に作戦を説明し始めた。
作戦会議終了後、十時間後に行動を開始するリカードたちはすぐに準備に取り掛かっていた。
実に上手く事が進む。
ノヴァは次の行動に取り掛かった。
リカードたちに命じたのはカディスへの潜入だった。
彼は彼らの起こす事に乗じて作戦を決行する。
前と同じ様に。
その為の準備に取り掛かっていた。
黒のロングコートに茶色の米式ズボンを履き、大型のサングラスを掛けた。
髪の毛も後ろに流し、パッと見ノヴァとは判らなくなっていた。
変装が終わるとすぐにバレンシア王国を後にし、何処かを目指して行った。
夜明け前、リカードたちはカディス王国の正面ゲート前まで来ていた。
門兵が二人立っていたが、彼らはノヴァが事前に潜入させていたワグナー隊の隊員だった。
「これがIDカードだ。C級エリアまでならこれで十分だが、それ以上は無理だ」
「了解した」
彼らはIDカードとカディスの作業着を手渡された。
これから数日をかけて、彼らはカディスの作業員として潜入し、任務を遂行しなければならない。
リカードは門の中に広がる街並みをボーっと見ていた。
「リカード?」
気に掛けたトロイメが声を掛けてきた。
「えっ、なんだ?」
「いえ、リカードがボーっとしていたものでしたから」
「悪い。なんでもないよ」
四人は簡単にカディスの本国へ侵入した。
数日後、彼らは命じられた任務を完了していた。
あとはその時を待つだけとなっていた。
そこにこの間の門兵の一人がやって来た。
「隊長からこれを渡せと言われていた。恐らく通信機だろうから、連絡が入るのだろう」
「わかった。ありがとう」
リカードが礼を言う。
「お前たちに懸かっているんだ。頼んだぞ」
門兵がそう言ってその場を立ち去った。
その言葉を聞き、リカードは気付いた。
自分たちの背負っているモノは重い。
大袈裟に言えばバレンシアの運命を握っているのは彼らだ。
「あの人が言った通り、僕たちに懸かってるんですね」
トロイメが言った。
「あぁ、失敗するワケにはいかない。絶対に成功させる」
リカードが力を込めて言い、トロイメが彼の肩に手を置いた。
「僕たちもいます。頼ってくださいね。バルドルたちもああですが、願いは同じです」
「そうだな。ありがとう」
リカードとトロイメは夜空を見上げた。
翌日、ノヴァから通信機に通信が入った。
「侵攻を開始した。行動に移れ」
指示を受け、彼らは作戦通りに行動を開始した。
その時のノヴァはすでにカディスの城門前にまで来ていた。
「さようならだ、バレンシア」
そう呟き、彼は自分の目指す場所へ向かって行った。
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