ハジマリノ歌 Leonus11「過去に」


レオンは見切り、回避する。
そこに煙幕を投げ込まれた。
「クッ・・・」
視界を奪われ、敵の居場所が特定できない。
その時、後ろからクナイが投げられた。
だがそれは鎧の装甲に阻まれ、カンッと音を立てて地面に落ちた。
「効かないか。ならば」
リカードが煙の中を素早く移動する。
レオンはそれを見た。
「煙の動きが違う・・・」
次の瞬間、リカードが彼を直接狙ってきた。
首元に振り下ろされる短刀。
レオンは彼の気配に気付き、それを素手で受け止めた。
刃が食い込み血が滲み出る。
「なっ!?」
「うおおおおおおっ!!」
レオンは剣を振り上げた。
リカードの左腕から血が流れる。
徐々に煙が晴れてきた。
「終わりだ!!」
レオンは止めに入った。
「リカード!!」
その時、後ろからさっきまで倒れていたトロイメが襲い掛かってきた。
それに気付き瞬時に振り返る。
「うおおおおおっ!!」
「くぅっ!!」
トロイメが突き出した短刀をギリギリでかわし、カウンターで剣を突き刺した。
トロイメの腹部にズブズブと剣が食い込み、貫通して肉を引き裂き刃が腰から出てきた。
「あっ・・・、リカード・・・、逃げ・・・て・・・」
レオンは剣から手を離し、銃を抜いてトロイメの頭を撃ち抜いた。
剣の突き刺さったまま、トロイメの身体は勢いでその方向に飛ばされる。
「ト・・・トロイメェェェェェェッ!!!」
リカードが戦友の名を轟くほどに叫んだ。
そして憎しみに刀を握り、地面を蹴った。
背後から駆け寄る敵に、レオンは振り返る。
「レェェェオォォォォォンッ!!!」
「リカードッ!!」
リカードの刀が鎧を貫き、レオンの胴体を捉えた。
と同時に、レオンの放った銃弾がリカードに命中した。
「ガッ・・・」
「ウグッ・・・!」
レオンはその場に倒れ、リカードは少し飛ばされた場所に倒れた。

―約十年前・カディス王国―
「レオンッ、この野郎っ!!」
民家の中から子どもの声が聞こえる。
「んだよ、ホントの事だろぉ!トールのおじちゃんよりウチの父さんの方が強いんだ!」
「絶対違うっ!俺の父さんの方が強いんだい!!」
幼少時代からレオンとトールは知り合いだった。
そこにもう一人少年がいる。
「ちょっと、二人ともやめなよぉ」
「じゃあトール、リカードに聞こうぜ。俺の父さんと」
「俺の父さん、どっちが強いと思う?」
その少年の名は、リカード・マルサスだった。
この三人は幼馴染の関係にあったのだ。
「そんな事言われたって、僕んち父さんいないし、妹病気だから面倒看なきゃいけないし。戦いとかよく判らないし」
よく判らない答えを返す。
「なんだよ、それぇ」
「まっ、いつか判るさ。俺の父さんは凄い人になるんだ、絶対」
トールが胸を張って言った。
そして、彼の言葉は真となる。

「ビーストだ!ビーストが街に!!」
逃げ惑う人々。
彼らの流れに逆らうように敵の行く手を阻もうと立ち向かう者たち。
当時のカディス軍尖鋭隊。
この中に現国王であるロンドとレオンの父親もいた。
「白龍!?なんであんなバケモンが」
「・・・つべこべ言っている場合ではない。蹴散らすぞ、クライン」
ロンドはこの隊の隊長で、その部下でありながら親友であるレオンの父は彼の右腕として活躍していた。
そしてもう一人役者がここにいた。
「隊長!すでに先遣隊が全滅しています!戦闘でヤツを倒すのは不可能―」
今はカディス軍の五本の指の内に入る、白龍だ。
「黙れ、手はある。ヤツを器に封印すればいい」
「封印?!しかしそんな事、誰が」
「俺がやる。そして俺が器になる。器が別にいるに越した事はないが、部下にそんなマネをさす訳にはいかん」
ロンドが力のこもった言葉で言った。
「しかし・・・」
その時白龍が名乗り出た。
「隊長!私が、私の身体を使ってください!」
「駄目だ。お前たちまで巻き込む訳にはいかん」
「失敗したら元も子もありません!少しでも確立のある方法で」
迫り寄る勢いで白龍がロンドに言う。
「ロンド、こいつの力も借りよう。俺がバケモンの足を止めてやる」
ロンドは少し黙り込み、そして意を決したような顔つきで言った。
「・・・すまん、頼むぞ」
「はい!」
「しっかり頼むぜぇ。まっ、印唱える前に殺しちまったらすまねぇって事でよ」
そう言ってレオンの父は剣を抜き、白龍に向かっていった。
「座ってくれ」
ロンドは後に白龍と呼ばれる男を座らせた。
そして身体全体に印を書いていく。
全て書き終わり、次に短剣を抜いて自分の指を傷つけ、鮮血を印の中央に落とした。
「始めるぞ」
ロンドは集中し、呪文を唱え始めた。
「うおおおおおっ!!」
レオンの父は白龍の右足に斬りかかる。
しかし、その強固な鱗の装甲で傷一つつかない。
「んにゃろっ!!」
手榴弾を取り出し、ピンを抜いて敵に投げつける。
接触した衝撃で手榴弾が爆発する。
見上げてみると、ヤツにはほとんどダメージはなかった。
「なんだよこいつ・・・」
一瞬の油断だった。
白龍の尾がレオンの父の右側方から振られ、直撃した。
「ぐわああああっ!!」
そのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
全身が粉々になりそうな痛みで、立つ事が出来ない。
その間に、白龍は彼のすぐ目の前まで迫って来ており、右手を振り上げていた。
「ちぃー・・・、ジ・エンド・・・か。あとぉ・・・頼むぜぇ・・・」
次の瞬間、勢い良く白龍の右手の爪が身体に突き刺さり、その傷口から大量の血が噴き出す。
彼は一瞬の内に絶命した。
その瞬間、あたりに眩い光が立ち込める。
「終始お別れだ、バケモノ」
ロンドの封印が完成していた。
白龍の巨体が印の施された男の身体の中に吸い込まれていく。
男は叫び声のような悲鳴を上げ、数秒の後、あの巨大な姿はなくなっていた。

数日後、レオンたちは避難場所からカディスへと戻ってきていた。
荒れ果てた故郷。
すでに廃墟の居住区。
影も形もなくなった我が家。
誰もが絶望していた。
だが、そこに人々に勇気を与える朗報が舞い込む。
ロンドが白龍を封印した、と。
人々は称えた。
その時国王だった人物を引きずり落とし、彼を王に指示した。
新王の息子であるトールはレオンたちと引き離された。
それと同時にレオンは父親の死を知らされる。
「そんな・・・。父さんは強いんだろ・・・?絶対に負けないんだろ・・・?」
何度も何度も母親に問い続けた。
何度も、泣きながら、地面を殴りつけながら。
その姿をリカードは悲しそうに見ていた。

数年後、彼らはそれぞれ青年になっていた。
自称最強の剣士、一国の王子、そして・・・。
リカードは国を出た。
母と病気である妹と共に。
理由も言わず、何も伝えず彼は姿を消した。


それ以来の再会だった。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: