ハジマリノ歌 Nova11「仲間ト手駒」


「おいおい、お前敵陣のど真ん中じゃねぇか。逃げるならもっと遠くに―」
「もう一人会う人間がいる」
ノヴァはレイジにそう答えた。
そして歩き始めた。
レイジは頭をかき、とりあえず彼の後について行こうとする。
隣にいた囚人も一緒に歩き出した。
「お前もいい迷惑だよな」
レイジが囚人に話しかける。
囚人は黙ったままだ。
それから何か会話を交わす事もなく、黙ってノヴァの後を歩いていた。
その時近くで爆発音がし、三人は武器を構えた。
「あいつらか。おい」
ノヴァが荒々しく呼びかける。
それにレイジが反応した。
「あ?」
「俺の探しているヤツは、そうだな・・・。翼や尾の生えた人間だ」
「なんだよそれ」
ノヴァの表現にレイジが冷たく言った。
「そいつ以外は全員殺せ。邪魔になるだけだ」
そう言い、彼は銃を取り出し、走り出した。
「あー、もう。どれだけ勝手な奴なんだよ」
レイジも自慢のキャノン砲を構えてノヴァの後を追い、囚人もそれらを追った。
ノヴァは爆発のあった方へ向かい、壁越しに慎重に辺りの様子を見た。
するとノヴァは武器を収め、そのまま歩き出した。
レイジと囚人は不思議そうに思いながらも、武器を構えながら彼の行った方へ向かった。
そこには三人の兵士が倒れていた。
一人は腹部を剣で貫かれ、頭部を撃ち抜かれている。
そこから少し離れた場所で刀で身体を貫かれており、その近くに銃で撃たれた兵士が倒れていた。
「なんでこんな市街地に兵隊が?」
レイジが訊いた。
誰も返事をしない。
剣が突き刺さり、頭部を撃たれている兵士はすでに死んでいるのが見た目で判った。
ノヴァは刀の刺さっている兵士の前で立ち止まっていた。
囚人が彼に近付いていき、レイジもそれについて行った。
「お前ら、治癒術を使えるか?」
ノヴァが突然訊いた。
「俺には全く縁のない言葉だな」
レイジはお手上げ、といった風に手をあげた。
だが、囚人は倒れている兵士に近寄り、しゃがみ込んで見た。
「助けるの?」
初めて喋った。
少し高い、女の声だ。
ノヴァは意外だという表情を一瞬見せた。
「・・・助かるか?」
「応急処置程度なら。助けられるかは、保障できない」
囚人はそう答えた。
「やってくれ」
ノヴァがそう言い、囚人は兵士の傷の前に手を差し出した。
するとそこに淡い青の光が現れ、少しして消えた。
「この状態で処置できる場所へ。そうしたら、私がやる」
この囚人はヒール系の術が得意らしい。
ノヴァは頷いた。
するとレイジが近付いて来て、兵士を担ぎ上げた。
「はぁ、お前の考えてる事が全く判らねぇ」
「言葉と行動が矛盾しているように見えるが?」
「るせぇ」
レイジはノヴァがこの兵士を助けようとしているのが優しさに見えた。
もちろんこの事は未来ではなかった事。
レイジのノヴァへの信頼度が少し高まった。
「それとよぉ、お前。同じ檻ん中入れられてたけど、名前訊いてなかったな」
レイジが囚人に訊いた。
「マリ。『マリ=ド=メディシス』。あなたは?」
囚人はやはり女性だった。
「レイジだ。えーと、俺たちの救世主さまは?」
なんだか和やかな雰囲気になってきた。
未来が変わってきている。
レイジと共に収容されていたこの女。
そして、何よりここで自分ともう一人しかいない時を旅する者が。
レオン・クラインが瀕死の重傷を負って倒れていた事が。
「レイジ。お前は人間の心を忘れた冷酷な奴だと聞いていたが」
こんなお調子者だとは。
未来ではこんな事、一度もなかったのに。
「・・・ノヴァだ。無駄話は終わりにしろ。目的の人物に接触―」
その時彼の視線の先に倒れている兵士の姿があった。
こいつが大事な人材を、と兵士に近付く。
徐々に明らかになる正体。
向こうで死んでいた兵士と同じような格好。
忍者、リカード・マルサスだった。
ではあちらで死んでいたのはトロイメという事になる。
自分の派遣した部下だったとは。
ノヴァは彼らの能力を見縊っていた。
その時、リカードの目が薄っすらと開いた。
彼は驚いたように一瞬身体をビクつかせて、力なく空気が漏れるような声で言った。
「た・・・いちょ・・・」
「まさかここまでやってくれるとは。君の力を見縊っていたようだ」
ノヴァは冷淡にあしらう。
「精々敵の本拠地の中心で、助けも来ぬまま息絶えるがいい」
リカードの目が小さく開き、驚いた様子だった。
「そいつも助けんのか?」
レイジが言う。
「いや。先に進むぞ」
ノヴァは自分の部下を見捨て、先に進んだ。

マリアは城門を死守していた。
頼みの白龍は戻ってくる気配がない。
バレンシア軍はカディス侵攻を前々から考えていたらしく、側方にも部隊を潜ませていた。
正面からの攻撃にしか備えていなかったカディス軍は、一気に城門付近までの侵攻を許してしまった。
「キリがない!なんで戻って来ないのよ、レオンも、隊長も・・・」
そんな事を考えている時だった。
それが敵に隙を与え、マリア目掛けて攻撃をしようとしていた。
マリアはそれに気付いたが、体が動かない。
「魔力の使いすぎ!?」
敵は銃を構え、引き金を引こうとした。
その時だった。
一線の筋が彼女の横を通り過ぎ、その敵に命中した。
「大丈夫か?」
マリアはその声の方へ振り向く。
そこにはあいつが立っていた。
「アロウ!?なんであんたがここに」
「本国が敵軍から侵攻されてるってな。そりゃ戻って来いとも言われるさ」
レオンやマリアと違う部隊に入れられ、会うのは数ヶ月振りだ。
「疲れてるんだろ?休んでな。あとは俺たちが」
そう言うとアロウは何か合図をするように右手を挙げた。
すると、彼の後ろから数十人の弓を持った兵士が駆けて来た。
そして敵のいる方へと弓を構えた。
「アロウ・・・?」
「弓で大出世。レオンのお陰だ」
彼は自分の隊を持つほどに出世していた。
「A小隊用意、B,C小隊も準備を怠るな。A小隊に続けて攻撃だ」
次々と指示を繰り出す。
「目に物見せてくれる。てーっ!!」
アロウの号令と共に一斉に矢が放たれた。
それらは次々と敵に射抜いていく。
中には味方の姿もあった。
「ちょっと、アロウ!?」
「これが俺たちの戦い方だ。上からの命令通りだがな」
マリアはゾッとし彼を見たが、アロウはいたって平然としている。
「安心しろ、致命傷にはならない。うちの隊の役目は捕虜の確保」
「捕虜?」
「まっ、捕虜にして利益の出る奴なんか滅多にいないけどな」
ワーク弓隊。カディス軍の特殊部隊となる予定の部隊だった。
オドアケル総帥御用達だ。
「マリア、レオンの姿が見えないが」
「レオンは中にいた敵を追っていって、そのまま・・・」
「・・・探しに行こう。ここは任せるぞ」
二人はレオンを探す為に城門の中に入った。

ノヴァたちが城門へ向かって歩いている時だった。
突然頭上から襲い掛かってきた影があった。
ノヴァはDSバリアを張り、それを防ぐ。
レイジはその姿を見て騒然とした。
「お、おい。そいつはヤバいぞ。勝ち目はない・・・」
「白龍将軍・・・」
マリがその人物の名前を口にした。
「レイジ、お前は収容されているはずだが。それとその肩の兵士、返してもらおうか」
白龍はそう言った後ノヴァを見て言った。
「どこかで会った事があるか?」
「さぁな。率直に言う。俺と一緒に来てもらう」
「何を言っている」
白龍はサッとノヴァの言葉を掃き去った。
「お前が忠誠を誓う者が黒幕と言ってもか?」
「どういう意味だ」
白龍が訊き返す。
「何年前だったか、カディスに白龍が襲って来た。それは現カディス王ロンドの仕業だ」
ノヴァの言葉に白龍は目を丸くする。
「貴様、それ以上国王を愚弄するような事を―」
「事実だ。お前がどう喚こうが、変わらない」
その時だった。
「白龍隊長!!」
マリアとアロウが走ってきた。
白龍が振り返る。
突然、マリアは途中で足を止めた」
「マリア?」
「レ・・・レオンッ!!」
彼女はレイジの肩の上にいるレオンの姿に気付いた。
「騒がしくなってきた。敵軍の人間と接触していた場所を見られては、お前のとるべき行動は唯一つだ」
白龍がノヴァの方へ振り向く。
「真実を見せてやる。飛ぶぞ」
ノヴァは空間転移を使おうとしていた。
レイジとマリが彼の近くに寄る。
「待て!!レオンをどうするつもりだ!!隊長も!!」
アロウが叫んだ、が白龍はそちらには振り向かなかった。
ゆっくりとノヴァの方へと歩を進めて行き、転移範囲内に入った。
アロウとマリアは彼の行動に驚かされた。
「隊長!!」
「レオォォォォン!!」
武器を構えてノヴァに攻撃を繰り出そうとする。
ノヴァは彼らを見下したように言った。
「地面を這い生き続ける者たち。大人しく世界の行く末を見ていろ」
そう言い捨て、彼らの姿はそこから消えた。

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