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ハジマリノ歌 別12話「それぞれの道」
レオンと白龍が連れ去られ、その連れ去った連中は目の前から消えた。
「どうなってんだ・・・」
「前に見た事があるわ・・・。紫色の髪の毛。前に、戦場で」
マリアが声を震わせながら言った。
「・・・今はどうしようもない。目の前の事に目を向けよう」
アロウが言い、マリアもそれに従った。
その時、彼らの後ろから何者かが襲い掛かってきた。
二人は気付き、散開する。
「クッ」
「何!?」
バレンシアの剣士、バルドルだ。
「消えろぉぉぉ!!」
彼は再び襲い掛かってきた。
「マリア、退けっ!」
「で、でも・・・」
「ここでお前に死なれたら、あいつにも申し訳が立たん!」
アロウが声を張り上げて言い、マリアは頷いて走り出した。
それを見てアロウはバルドルに標的を絞った。
「そんな時代遅れの武器で!!」
「お前などにっ!」
アロウは矢を放った。
が、バルドルはそれを剣で切り払う。
「もらった!!」
アロウが次の攻撃に入る隙に懐に飛び込んだ。
バルドルは剣を思い切り振り下ろす。
「クソォォォ!!」
避けきれないし防御手段もない。
アロウはヤケクソで矢を握り、バルドルに突き刺そうとした。
その時、どこからか銃声が聞こえ、それとほぼ同時にバルドルの剣が横に流された。
続けて銃声が数回聞こえる。
その内の一発が彼の左肩に命中した。
「グッ・・・」
バルドルはその場での戦闘を見切り、撤退した。
アロウはどこからその狙撃が行われたのか探した。
すると建物の屋上から一人の男が飛び降りてきた。
「大丈夫ですか?」
「あんたは・・・?」
金色のサラサラの長髪で、黄色い瞳。
比較的長身で整った顔立ちの男。
「カディス軍特務隊、『アモン=ラー』です。ワーク弓隊、アロウ・ワーク隊長ですね?噂には聞いています」
アモンという男はアロウの名前を知っていた。
「特務隊って・・・」
「国王の特命が下された時のみ活動する影の組織です。あなた方が知らなくても無理はありません」
アモンは歩き出し、アロウはそれを追った。
「ところで話は変わりますが、レオン・クラインの行方を知りませんか?」
アロウはその言葉に何故か体が固まった。
バルドルはほとんど敵に出くわす事無く自軍の拠点まで到達できた。
だが、何故か撤退するような様子で、ほとんどの物資や武器がトラックに積まれていた。
「なんだ、お前は」
拠点で見張りをしていた兵士が彼に訊く。
「ワグナー隊、バルドル・ヘルモードだ!ここには副隊長がいるはずだ!副隊長を呼べ!!」
騒ぎに気付いた副隊長がその場にやって来た。
「おい、何の騒ぎ―。バルドル!?お前、どこに行ってたんだ。他の三人も」
「他の三人は戻ってきていないんですか?!」
バルドルは愕然とした。
「それに、何故撤退の準備など」
「この戦闘は国の意思ではなかったのだよ。国王は・・・、何者かに殺されていたらしい」
「そんな!」
誰がそんな事を。
バレンシアの誰もが思ったことだ。
「これから全軍撤退、のちにカディスに国王代理が謝罪。そして犯人探しになるだろう」
「待ってください!他の連中は」
「解るだろう?戻ってこないという事は、そういう事だ」
副隊長の言葉にバルドルは何かを感じた。
「あいつらがこの程度で死ぬはずは―」
「・・・割り切る事も、大切だ」
つい声を張り上げてしまったが、副隊長の言葉に沈黙した。
「撤退だ・・・」
バレンシア軍は現戦闘地域から撤退を開始した。
パレは白龍に突然置き去りにされ、いつでも逃げれる状態だった。
「何考えてんだよ、あいつ。まぁどちらにしろチャンスか?さっさとトンズラ・・・」
その時彼の見る先に見覚えのある姿が見えた。
「リカード!」
彼はそう叫び、すぐに倒れている兵士の傍に駆け寄った。
リカードの息は今にも絶えてしまいそうだった。
ふと顔を上げるとその先にはトロイメが倒れていた。
「おい、リカード。何があったんだよ、おい!」
日頃ぶつかり合う仲だが、この時は何か彼は素直になれているような気がした。
そこに、数人の護衛をつけた王家の者らしい人物がやってきた。
「貴様ら、バレンシアの兵士だな!捕らえよ!!」
「待て」
護衛の兵士が彼らを捕獲しようとした時、護られている人物がそれを制止させた。
「その倒れている兵士、リカード・マルサスか」
パレは何故その人物が彼の名前を知っているのかが解らなかった。
ただ、彼は頷いた。
「あっちにも一人倒れていたな。三人を医務室へ。内二人はすぐに手術室へ連れて行け」
護衛の兵士たちは命令に躊躇したが、すぐに言われた通りに行動を開始した。
連れて行かれる前にパレが訊いた。
「あんたは・・・?」
「トール・ロンド、リカードの幼馴染だ。バレンシアは何故か撤退して行ったよ」
トールがそう言い、パレをそのまま連れて行かれた。
見送るトールの元へ、護衛の一人がやって来た。
「私情を挟むのは良くない事ですよ」
「テュール、殺しあうばかりが戦争ではないだろう?ちゃんと情報は渡してもらうさ」
そう言い、トールは王宮へ戻るため歩き出した。
王室にいるロンドの下にオドアケルは呼ばれていた。
彼の横にはクロが立っている。
「グングニル計画のプランは立ったか?」
「もうじき完成する見込みです。しかし、あのような強力な兵器を・・・」
「オドアケル総帥。我々は戦争をしているのだよ。話し合いで決着がつけれなかったから武力でこうして決着をつけようとしているのだ。力が全てだ、そうだろう?」
オドアケルは黙った。
「しかし、ちゃんと動くのだろうねぇ、あの兵器」
「カディスの優秀な人材を集めて造らせています。失敗はないでしょう」
ロンドはフッと笑い、立ち上がって窓の傍へ歩いていった。
オドアケルも椅子から立ち上がる。
「まぁいい。君には期待しているのだ。頼むよ?」
「お任せ下さい」
グングニル、やはりカディスはあの兵器を使用しようとしていた。
電気も付けられず、真っ暗な部屋の中で足組みをし、扉を背にして椅子に腰掛けている人物がいた。
その時扉が開き、部屋の中に外の光が差し込む。
「報告」
座っている人物が言った。
その人物が何かの指揮官らしい。
「はい。レオン・クラインはノヴァ・ワグナーに連れ去られたとの情報を得ました」
「それで、ノヴァは?」
「現在白龍の巣窟のある村を出てボルドーと合流をしようとしています。レオン・クラインはすでに別れているようです」
「戻ってくるのか、カディスに」
「恐らくは」
指揮官はしばし黙った。
そしてこう切り出した。
「お前は現状維持。お前はノヴァを追いボルドーに潜入しろ」
「了解しました」「了解」
暗くてよく見えないだろうが、二人の人物は敬礼をし、部屋の外に出た。
その時、部屋の中に差し込んだ光が一瞬、不気味に笑う人物の口元を照らし出した。
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