ハジマリノ歌 16話「裏切りと追放」


通信機のようだ。
各箇所に機材を設置し、最後にノヴァからもらったペンダントを接続する。
インカムを装着し、そして発信した。
すると、すぐにノヴァから反応があった。
「レオンだ」
「お前に渡したのは受信専用のはずだが。まぁいい、何の用だ」
「バレンシアが撤退した理由など聞いていなかったぞ、どういうことだ」
「その事か。訊いてきたという事は知ったという事だな」
「お前がやったのか」
ノヴァは少し間を置いた。
「俺ではない。たしかに俺はバレンシア国王を殺しに行った。だがその時にはすでに殺されていた」
「・・・他に犯人がいるのか」
「あぁ。それはこちらで調べている最中だ」
「手掛かりは?」
「・・・いいだろう。犯人が使用している武器は名高い名刀だ。しかも犯人は凄腕の実力者である可能性が高い」
「そうか。そちらで調べているのならこの件は任せる。こっちはカディス内で動きやすくなった。王子も国を疑っていてな」
「王族が?世も末か」
「彼直々に頼まれた。国の中を調べてくれと。まぁ今回知りたかったのはお前が犯人かどうかだ。用件は済んだ、切るぞ」
「レオン、もうこの回線は使うな。次に接触するのは前に伝えた日だ」
ノヴァは最後にそう言って回線を切った。
レオンはインカムを外し、ペンダントを抜いた。
そして銃を取り出し、ペンダントを床に置き、撃った。
防音設備の整った室内では銃声は外に漏れていない。
ペンダントは粉々に砕け散った。

カディス軍最新鋭の設備が整った管制室にオドアケルの姿があった。
「オドアケル総帥!」
「どうした?」
「不審な電波をキャッチしました」
「逆探知は」
「成功しています」
オドアケルはその情報を自らが見る。
「ほう、なんだろうな、これは」
その反応に兵士は意外そうな表情をした。
「あの、総帥・・・?」
「判っている、基地内からこれが発信されているんだろ。やれやれだな」
彼からは余裕とも取れる感じがかもし出されていた。
そして手の開いていた兵士に命令した。
「アロウ・ワークを俺の元へ連れて来い」
それだけを言い残すと、彼は管制室から出て行った。

ロンドの部屋にトールが来ていた。
いつもは横にいるテュールの姿は今日はない。
「またその話か。今はバレンシアの事だけを専念すればいいと何度言えば解る?」
「それでは前に進まないから言っているんです。それとも、王はそれ以上の事に触れると困る理由でもおありなのですか」
その言葉にロンドが逆鱗し、トールの胸倉を掴んだ。
「誰に向かって口を利いているのか承知の上か!」
「・・・残念です、父上。あなたはもう昔私が憧れた父上ではない」
「貴様っ!」
ロンドはトールを投げ飛ばし、銃を向けた。
「私が王だ!この国の支配者ぞ!!誰も私に逆らえない、屈服しなければならない!!」
「地位に驕れた時代遅れが」
今にも引き金を引きそうなロンドを挑発し、立ち上がった。
「もう話す事はありません。俺は俺でやらせてもらいます。失礼します」
トールはそう言い捨てて部屋を出て行った。

以前二人の人物が訪れた真っ暗な部屋に、また一人違う人物が来ていた。
「トール王子までもが。フッ、今こそ君の存在意義を示せるのではないか?」
指揮官らしき人物が言った。
相手の訪問者は何も喋らない。
「カディス有望の人体実験の成果。最も人に近く人でないモノ、『リプロ』。人より造られしヒト、同じ構造」
「私は人形ではありません」
指揮官の言葉に訪問者が反応した。
「国王には人形、人形と罵られ。見せ付けるがいい、テュール。トールの化身」
「はい、マスター」
その部屋に来ていた人物はテュールと呼ばれた。

自室にこもっていたレオンの部屋にノックの音が響いた。
「国防調査の者だ。ドアを開けてもらいたい」
何故そんな連中が。
彼に思い当たる事は二つあった。
違法電波での通信。
軍内を探るような行為。
それが軍にバレた、それしか考えられなかった。
「おい、いるのか!チッ、打ち破るぞ」
レオンはすぐに剣と銃を手に取り、DSバリアを仕込んだグローブを装着した。
ドンドンと強く壊そうとしている音が聞こえる。
いい加減無理だとふんだのか、次に銃声が聞こえた。
鍵を破壊し、数人の兵士が部屋の中に流れ込んでくる。
それと同時にレオンは殴りかかった。
全員を殴り倒し外に駆け出す。
「チィッ、逃がすな!!」
殴られた兵士たちが起き上がり、レオンの後を追う。
「もし軍内での行動がバレのなら、トールとテュールも危ない」
逃げる前に彼らの元へ向かう事を決めた。

トールもその時自室にいた。
残っていた仕事を進めていた。
そこに誰かが部屋に入って来たのだろう、ゆっくりと扉の開く音が聞こえた。
「テュールか?悪い、今手が離せないんだ」
その瞬間、咄嗟にトールは椅子を持ち上げた。
その椅子に剣が深々と食い込む。
「何のつもりだ、テュール」
彼に闇討ちをしようとしていたのはテュールだった。
「・・・あなたが悪いんですよ、国を疑うような事をするから」
テュールは剣から手を離し、銃を抜いた。
トールは駆け出し、部屋の隅に置いていた剣を手にする。
テュールは銃を撃ってきた。
しかしトールにそれはかわされる。
「お前っ!」
トールは剣を床に突き刺し、それを軸に体を宙に浮かせ、テュールの側頭部を蹴った。
その勢いでテュールは飛ばされ、周りの物を巻き込みながら壁に激突する。
彼は自分の上に積まれた物の中から出てきた。
そのテュールの顔を見てトールは絶句した。
彼の顔面にはヒビが入り、その下からもう一つ顔が見える。
「いい加減終わりにしましょう。もうあなたの存在は邪魔になるようです」
テュールはそう言いながら上塗りされていた顔を剥いでいった。
トールはその中から出てきた顔に再び絶句した。
その顔は、トールそのものだったのだ。
「テュール・・・、お前・・・」
「私は人形ではない」
テュールは再び銃口をトールに向け、容赦無く撃ってきた。
狭い室内では無理だと、トールは部屋を飛び出し、王宮の外に出ようと走り出した。

レオンは王宮内の異変に気付いた。
外からでも聞こえるほど、中が騒々しい。
その時、王宮から街の方へ伸びている階段を降りている人の姿が見えた。
「トール!」
レオンはそれがトールだと気付き、すぐにそちらへ走った。
トールの後ろからもう一人階段を降りてきている人影も見えた。
追われているのだ。
トールは階段を降り切ると、そのまま市街地を走り抜けようとしていた。
「トール!!」
途中で追いつき、レオンが声を掛ける。
「レオン!?」
「チッ、俺だけじゃなくトールまで。なら誰かが俺たちの情報を流したんだ、上層部に」
その発言にトールが表情を曇らせた。
「どうした?」
レオンが走りながら訊く。
「その告発者は、テュールだ・・・」
トールの言葉にレオンは驚愕する。
「なんで、なんであいつが?そんな事」
その時、トールが足を止めた。
レオンもそれを見て走るのを止める。
このまま国を出ようと門を目指していたが、先回りをされていた。
門の前にはあの部隊が待ち構えていた。
「アロウ・・・、何のつもりだ。そこを通せ!!」
「お前が何のつもりだ!隠し事もして、挙句の果てには軍犯か!!」
アロウは部隊に構えの合図を出した。
レオンとトールは目を丸くした。
その後ろからはテュールが追いついていた。
「逃がしません。ここで死んでください、二人とも」
レオンはテュールの顔を見て驚愕した。
髪型が違うだけで、あとはトールと瓜二つの姿だった。
声も以前とは違い、トールのモノに似ている。
「待て、アロウ!お前は利用されているだけだ!」
「何を根拠に!国を裏切った者の言葉など、聞く耳持たんわ!!」
次の瞬間、アロウが右腕を振り下ろした。
それと同時に矢が一斉に放たれる。
二人は信じられないと思った。
「このっ」
レオンはもう仕方ないと思い、右手を前に出す。
「分からず屋が!」
彼の前方にバリアが発生し、矢がその場で食い止められる。
その場にいた全ての者がそれに驚いた。
「何故あなたがその様な物を」
「レオンッ!!」
レオンはトールに近寄った。
「お前も、覚悟はいいな」
トールはすぐに頷いた。
「アロウ、テュール。この国はこのままでは壊れていく」
そう言い、空間転移を始めた。
「逃がさない!!」「逃がしませんよ」
アロウとテュールが飛び掛った。
が、転移は完了し、彼らの姿が消えた。
目の前から消えた『敵』に憤りを露にするアロウ。
「クソッ!」
目の前の建物を思い切り拳で殴った。

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