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ハジマリノ歌 18話「彼女の役割」
「お、遅い・・・」
レイジは疲れたのかその場に座ってしまった。
でもたしかにマリがなかなか中から出てこない。
せっかく見送りをしようとしているというのに。
その時、中から誰かが出てきた。
二十代前半位でカディスの軍服を着た若い丹精な顔立ちの男だ。
そして唐突にこう言った。
「えっ、もしかして見送りしてくれるんだったの?ごめーん」
三人はキョトンとして男の事を見る。
「あっ、私よ私。マリ」
「マジ?」
男は自分の事をマリと名乗った。
「言ってなかったっけ?私の特技よ、変装。それで私を選んだんじゃなかったの?」
マリがノヴァに問うた。
レイジと白龍も彼を見る。
「あ、いや・・・、そうだ。だからお前をあそこから連れ去ったし、今回使う事にした」
あからさまに嘘だった。
「よくも抜け抜けと」
レイジが小声で言う。
白龍も呆れた様子だった。
「と、とにかく、頼んだぞ。こいつとこいつだ。きっと生きて収容されているはずだ」
ノヴァがリカードとパレの顔写真をマリに渡す。
その片方を見てマリが言った。
「ちょっと、この人あの時助けなかった・・・」
「あの程度で死ぬような柔な奴は俺の下にはいらん。・・・」
彼が確信しているのはパレとバルドルが生きていて、トロイメが死んだという事だ。
リカードにおいては全く情報が入ってこない。
あれからどうなったのか、正直判っていなかった。
「うん、じゃあ行ってくるね。名刀使い探し、よろしく」
「ちょっと待て」
白龍が彼女を呼び止めた。
そしてそっと手を差し出す。
彼はマリに何かを手渡した。
「これ・・・」
「DSバリアだ。俺にはもう必要ない。あると便利だろう」
白龍もカディスでは地位を持った人間だった。
当然それを所有していた。
「うん、ありがと。じゃあ」
マリはそれをグローブの中に忍ばせると、瞬時にその場から姿を消した。
マリはカディスへ空間転移をし、到着をした。
早急に任務を遂行する為、まっすぐ収容所へ向かおうとした。
街の中を颯爽と駆け抜けて行く。
そして、恐らくリカードたちが収容されていると思われる場所に来た。
中に入ろうとした瞬間、後ろから突然肩を叩かれた。
ビクッとして、ゆっくり後ろに振り向く。
「交代の時間か?」
収容所の見張りの兵士らしい。
「あ、あぁ。面倒だよな、この地味な仕事」
「ハハッ、たしかにな。じゃ、頼んだぜ」
案外簡単に信用された。
気を取り直し、改めて中に入る。
そして、一部屋一部屋見て回った。
十数部屋目、ドアを開ける。
それと同時に部屋の中にいた男が振り向く。
「いたっ」
マリは思わず声に出した。
部屋にいたのはリカードだった。
「何です?食事のトレイはもう持っていかれたでしょう?」
「リカード・マルサスですね。ノヴァ・ワグナーを知っていますか?」
その名前にリカードが反応する。
「あの男がどうしたんだ」
「私はあの人の命であなたとパレ=ロワイヤルを脱獄させに来ました。何も言わずついて来てください」
思わぬ言葉に彼は不審がった。
「信じてください。私が責任を持ってバレンシアまで連れて行きます。レオンたちを助けられるのはあなただけなんです!」
「レオンを・・・?」
「今、彼はカディスから追われています。その上国際指名手配・・・。このままじゃ―」
その時、部屋のドアが開く音が聞こえた。
「おい、何をやっている!」
他の見張りの兵だ。
「クッ、急いで!」
マリはリカードの腕を強引に引っ張る。
彼の体は無理矢理連れて行かれた。
「どいてー!」
マリは兵士に蹴りを食らわせ、リカードを連れて廊下を走り出した。
「もう一人の居場所は?!」
「えっ、多分下の監獄」
それを聞くとすぐに階段を見つけ、下の階へ降りた。
そして、走りながらパレを探していく。
その時、リカードが叫んだ。
「パレ!おい、通り過ぎたぞ!!」
「えっ?」
彼に呼ばれ、マリは少し引き返す。
「リカード!?おいおい、何の騒ぎだよ」
「俺にもよく判らない。だが、彼が」
リカードがマリを見る。
「残念だけど、私男じゃないのよね」
そういうと、被っていたマスクを取った。
中からマリの顔が姿を現す。
二人は唖然として見ていた。
「ちょっと離れて」
そう言うと、マリはDSバリアの入っている方のグローブを格子にくっつけた。
次の瞬間、バリアを生じさせると同時に、格子が破壊された。
「さぁ、早く!」
何が起こっているのか判らないまま、パレは牢屋の外に出される。
「貴様らっ!!」
見張りの兵が追いついて来た。
「まずいぞ!きっと増援も来る」
「俺脱獄する気なんか更々なかったのによぉ」
「飛びます!つかまって!!」
リカードとパレはマリにくっ付く。
そして、空間転移を開始し、その場から消えた。
その頃、バルドルはカディスの壁門の前まで来ていた。
連れの運転するジープが止められる。
「何で俺があいつらの迎えなど」
捕虜返還を伝えられ、彼が捕虜の迎えに来たのだった。
ジープから降り、門の方へ向かう。
その時、彼の目の前に三人の人間が突如現れた。
「なっ・・・」
バルドルはその光景に目を疑った。
「バルドル、お前なんでこんな所に」
それはマリ、リカード、パレの三人だった。
「それはこちらの台詞だ!何故お前らがこんな所にいる!!」
「えっ、それは彼女が・・・」
三人の視線がマリ一点に注がれる。
「ヤバッ、門兵に見つかったっぽい・・・。あのジープあと三人乗れます?」
バルドルは少々困惑気味だった。
「どの道捕まれば殺される。無理矢理にでも乗るぞ」
三人はジープの方へ走っていき、状況が全く把握できないバルドルのその後を追って行った。
四人が乗ると同時にジープは走り出す。
その時リカードが気付いた。
「このジープに乗って逃げたとバレるとまずくないか?」
辺りが沈黙に包まれる。
「き、気にしなーい!ダイジョーブ、きっと。いや、絶対・・・」
マリが根拠もない事を言い、三人はこれから先の事を考えると思いやられた。
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