ハジマリノ歌 22話「大切ナ仲間」


門兵をなぎ倒し、街の中を走り抜けていく。
市民たちが悲鳴を上げながら逃げている。
「これ、目立ち過ぎじゃないか・・・?」
「時間がないんだ、仕方ないだろう」
レイジにノヴァが言った。
「つってもよぉ・・・」
「誰も殺すなよ。丁重にな」
「これのどこが丁重だ」
白龍までもがキャラに似合わないのに突っ込みを入れた。
リカードたちがいるはずの基地施設の正面に出た。
あとは突入するのみ。
「いたぞ!この、侵入者共め!!」
兵士たちが続々と出てきた。
横一列に施設の入り口の前に並び、銃を構える。
「あれワグナー上官じゃないか?」
「えっ?」
一部の兵士がノヴァの姿に気付いた。
「なんで上官が。隊長、これは・・・」
「い、今は敵だ!侵入者だ!!撃てーっ!!」
号令と共に兵士たちが一斉射撃をしてきた。
ノヴァはDSバリアを張り、全ての弾を防いだ。
「やれやれだな」
「しゃーっ!どかねぇと死んじまうぞ!!」
三人は兵士たちを殴っていき、道を作った。
あとはノヴァについて行けばいい。
ノヴァは迷わずリカードの部屋に向かっていった。
施設の中でも数人の兵士に鉢合わせたが、それらも丁重なもてなしで蹴散らした。
そして、三人はリカードの部屋の前に来た。
すぐに部屋のドアを開ける。
中にはリカードがいた。
「隊長・・・。外が騒がしいと思ったら、あなたでしたか」
「レオンたちはどうした。女が一人会いに来たはずだ」
リカードは黙っている。
三人は部屋の中に入った。
「あなたの考えている事だ。パレもバルドルも俺と同じ意見でした。信用できない」
「信用などしなくていい。俺の指示通りに動けば、それでいい」
「俺はもうあなたの部下ではない!」
その時、部屋のドアが開いた。
「ノヴァ!そこを動くな!!」
バルドルだった。
兵士を率いて部屋を完全に包囲している。
彼は銃をノヴァに向けている。
「ハッハー、お前が動くなよ。こいつの頭が吹き飛ぶぜ」
レイジがリカードの後ろに回り、キャノンを頭に突きつけている。
「貴様ぁ・・・、卑怯なっ!何が目的だ!!」
バルドルが声を荒げてノヴァに向けて言った。
「忘れ物を取りに来ただけだ。もうここには用はない」
白龍とレイジがノヴァの近くによる。
バルドルはそれに気付いた。
「逃がすかぁっ!!」
彼は銃を捨て剣を抜き、ノヴァに向かって行った。
白龍が剣を抜き、それを受ける。
「邪魔をするな。俺たちが倒れれば、世界は終わる」
彼の言葉にバレンシアの兵士たちは不思議そうな顔をしている。
「何をふざけた事をっ!!」
バルドルは白龍を振り払いもう一度攻撃をしようとした。
「ノヴァ」
「殺すなよ。誰も殺すな」
ノヴァの言ったその言葉を、リカードとバルドルは一瞬疑った。
まさかこの男から「人を殺すな」などという言葉が出てくるとは思いもしなかったからだ。
「バルドル。カディスとボルドーが二週間後に大きな戦闘を始める。一応伝えておくぞ」
白龍が時間を稼いだおかげで、すでに空間転移の準備が完了していた。
「しまったっ!?」
バルドルは気付いたが、もう遅かった。
リカードを連れて三人はその場から消えていった。
そこに騒ぎを聞きつけたパレが遅れて姿を現した。
「リカードの部屋じゃねぇか。バルドル?何があったんだ」
「二週間後に戦闘だと?カディスと、ボルドーが?・・・クソッ」
バルドルはからかわれている気がしてならなかった。
「バルドル?」
「うるさいっ!リカードがノヴァに連れて行かれた」
「ノヴァが?」
カリカリした様子でバルドルが部屋を出て行き、パレはその後について行った。

レオンたちは数日、秘密基地の中でリカードの事を待っていた。
「あのさぁ、レオン」
「何?」
マリがレオンに言った。
「何か情報収集とか行った方がよかったんじゃない?」
「駄目だ。俺とトールは顔割れてるし、君はノヴァの使いだろ?」
「でも、流石にトランプとウノで数日過ごすのは辛かったな」
なんとも緊張感のない三人だ。
ただひたすらリカードの事を待っていた。
レオンが暇に耐え切れず、タバコを吸おうと箱を取り出した。
しかし、もうすでに空になっていた。
彼はため息をついて箱を入り口の扉に向けて投げた。
その時扉が開き、その箱がそこに立っていた人物の顔に当たった。
「だ、誰だっ!」
三人に一瞬で緊張が走った。
「なんだ、突然。ノヴァだ」
「ノヴァ!」
マリが嬉しそうな声を出した。
「お前、なんでここが?」
ノヴァの後ろからリカードが出てきた。
レオンとリカードは気まずそうになった。
「久しぶりだな」
「白龍隊長も。という事は・・・」
「おっす。もちろん俺もいるぜ」
レイジが仲良し気に絡んできた。
「でも何でリカードが君たちと一緒にいるんだ?」
トールが訊いた。
「あぁ、さっき無理矢理連れてきた」
「俺たちボルドーで騒ぎ起こしてな。逃げたはいいがお前らの手がかりは何もないし。だから彼の所に言ったんだ」
レイジと白龍が説明した。
レオンは彼らが何を仕出かしたのか気になったが、あえてそこは訊かなかった。
「レオン。カディスとボルドーが二週間後にぶつかる」
その言葉にレオンとトールは驚愕した。
「ちょっと待て、その戦闘はまだ」
「恐らく時の支配者が本格的に動き出したんだ。奴の手駒の一人は突き止めた。誰が本命なのか訊き出そうとしたが、無理だった」
「その手駒ってのは誰だったんだ?」
「ボルドー軍総統、ソフィア=セロだ」
あの場にいた三人以外は、予想だにしない人物の名前に絶句した。
「ボルドー軍のトップが、手駒・・・?」
「カディスに奴がいる事はほぼ確定している。という事はセロをも操れるほどの地位の持ち主」
その場の一同はしばし黙り込んで考えた。
といっても、すでにそれぞれ名前は浮かんでいた。
「ロンド国王」
「またはオドアケルか」
そこに水を差すようにレイジが言った。
「前から気になってたんだけどよ、時の支配者とかってのは何なんだ?」
レオンとノヴァが顔を見合わせた。
「お前、まだ話してなかったのか?」
「お前は話したのか」
「一応。でも、全く信じてもらえなかった」
レオンはそう言いながらマリとトールの顔を見る。
「だってよぉ、いきなり過去に戻されたとかSFチックな事言われたって、信じろっていう方が無理だろ」
トールが言い訳っぽく言った。
リカードを待っている数日の間にレオンは全て二人に喋っていた。
「だが事実だ。俺とレオンは時の支配者と名乗る人物に過去へ飛ばされた」
「・・・詳しく聞かせろ」
白龍が二人に言い、二人は自分たちが今に至る経緯を話し始めた。

話が終わり、一同の間に沈黙が流れていた。
「確かにいきなりそんな事言われたって信じられるはずないな」
「今日はエープリルフールじゃねぇぜ?」
「でも、前にレオンから聞いた話とその・・・」
トールが言葉に詰まった。
「ノヴァだ」
「あぁ、ノヴァの話している事が一致するんだ。元々敵同士だった二人が、嘘で話を合わせるなんて出来るか?」
「事実、って信じるしかないよね」
もう半ば無理矢理納得しようとしていた。
そうしなければ、先に進めないと判断したからだ。
「で、どうする。俺たちもお前たちも、国を追われているんだ」
「どうするったって、やるしかねぇんじゃねぇの?」
「こいつが言うと説得力がないが、それしかないな」
「少数鋭勢か」
「あぁ。二週間後、戦闘の混乱に紛れて一気にロンドのいる王宮まで攻め入る」
ノヴァがそう言った。
「まだ何の確証も得られていないし、極端に劣勢な戦いだ。抜けるなら今だぞ」
レオンが一同に向けて言う。
「レオン」
リカードが口を開いた。
「ん?」
「本当にこんな無謀な戦いをするのか?もう勝負はついているようなものじゃないか」
レオンはそれを聞いて、少し笑顔で言った。
「やらなきゃ終わるんだ。最後まであがいてみるよ」
リカードはそれを聞いてハッとした。
自分は何がしたいんだ。
今の自分に何の目標も、夢も何もないことに気付いた。
「私は降りないよ」
「俺もだ、レオン」
トールとマリが言った。
「しゃーねーな。ノヴァだけじゃ心配だしな。付き合ってやるよ」
「ノヴァ、やるからには勝つ気でいくな?」
「無論だ」
ノヴァがふと顔を上げてレオンを見た。
「ボルドーはともかく、今回はカディスも敵だ。割り切れるか」
レオンはその時マリアとアロウの事を思い出した。
トールとマリが心配そうに彼を見る。
「あぁ、問題いない。覚悟はお前らと一緒だ」
「そうか」
ノヴァは次にリカードを見た。
「お前は国に帰れ。ちゃんと連れて行ってやる。悪かったな、あんな形で」
「いえ・・・」
リカードの心境は複雑だった。
自分の知らないところで、自分以外の人たちは動いていた。
しかも未来を勝ち取る為に、大きな戦いをしようと。
「しゃーっ、二週間後の為に物資の補給といこうぜ」
「行くなら近くの商業都市だな。あそこなら武器も揃っている」
「決まりだ。マリ、リカードを送ってやってくれるか」
「うん、まかせて」
「よし、行こう。ずっとトランプとウノで気が滅入る所だったからな」
「レオン、それを思い出させるな・・・」
たった六人。
彼らはその少人数で国と戦う為に物資調達へ向かい、マリとリカードはバレンシアに飛んだ。

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