ハジマリノ歌 24話「過去を消して」


「あ、あいつらは!」
ボルドー軍を迎え撃とうとしていたカディス軍の兵士たちが彼らに気付く。
「ここからは別行動だ。・・・武運を祈る」
「「「「「了解」」」」」
六人は散開し、バラバラになった。
「奴らを止めろーっ!」
「チィッ、させねぇっての」
レイジは追ってくる兵士たちの方に振り返り、キャノンを連射した。
次々と撃ち倒していく。
「今邪魔をさせるわけにはいかねぇ。悪ぃなノヴァ、俺はボスを倒す役には向いてないわ。来いや雑魚ども!!」
レイジは足を止め、他の五人への追っ手を一人で防ぐ為戦闘を開始した。

レオンは王宮へ一直線の道を走っていた。
その間、誰も襲ってこないし、守備隊の姿も見当たらなかった。
流石にレオンも不信感を感じた。
そして、何も起こらず王宮の前の長い階段の前まで来た。
そこでやはりワナであったという事がわかった。
階段の上から一人の人が降りてきている。
アモン・ラー、彼だった。
レオンが彼を見つけるとほぼ同時に、階段の前に弓隊が展開した。
レオンは走るのを辞め、立ち止まる。
「やはり来ましたね、レオン」
「ハメられた、って言えばいいか?クソ野郎」
弓隊の中に指揮官がいる。
アロウだった。
「レオン、最後通告だ。投降しろ」
レオンはしばし黙り、アカンベイをしながらこう言った。
「やなこった」
「そうか。照準」
アロウは弓隊に攻撃の準備をさせる。
「どうするんです?レオン」
アモンの質問にレオンは答えない。
「全隊、てーっ!」
アロウの号令と共に一斉に矢が放たれる。
迫ってくる矢にレオンは動じる事無く、黙って右腕を前に突き出した。
「黙ってそこをどけ」
次の瞬間、レオンは最大出力でDSバリアを展開した。
「何っ!?」
「ほぅ」
矢はバリアに跳ね返され、逆に弓隊の兵士たちを次々と射抜いていく。
弓隊は一瞬で壊滅状態に陥った。
「アロウ、お前はテュールの援護に行きなさい。君と彼とでは相性が悪い」
「なっ、しかし!」
「黙って行きなさい。死にたいのです?」
アロウはそう言われ歯を食い縛り、「わかりました」と言い残し、その場を去った。
「さあ、始めましょうか。しかし私は一人ではありませんよ」
「なに?」
そう言ったアモンの後ろから現れたのは、マリアだった。

トールは仲間たちと別れ、一人王宮へ向かっていた。
父親が犯人ならば止めなければ、被害者になろうとしているならば守らねば。
色々な事が頭の中で溢れ返っていた。
その時、頭上から何者かが飛び降りてきた。
トールはとっさに回避する。
そしてすぐに剣を抜いた。
「・・・テュール」
「最後にしましょう、王子。そして私が本物となる」
テュールも剣を抜き、間髪置かず攻撃を繰り出してきた。
「本物を倒して、私が」
「クッ・・・」
まだトールは彼を敵だと割り切れていなかった。
「その程度ですか。残念ですね、では死んでもらいますよ」
テュールは一気に止めを刺そうと剣を振り上げた。
トールは彼に殺されるなら、それはそれでいいのかもしれないと思った。
「本物、か。たしかにお前はリプロかもしれない。だが、俺とお前は違う。ちがうか?」
その言葉にテュールの手が止まった。
「俺はお前と戦いたくない。戦いたく・・・」
「私は・・・、本物に・・・」
その時テュールは何かに気付いた。
それは、トールの後方でアロウが矢を放とうと弦を張り詰めている姿だった。
そしてそれはトール目掛けて放たれた。
「王子っ!」
次の瞬間、一直線に飛んできた矢はテュールの胸に突き刺さった。
「ぐっ・・・」
「テュール!」
突然の出来事にトールは騒然とする。
まさか味方が敵をかばい自分の攻撃を直撃するとは思っていなかったアロウは、愕然として武器を地面に落とした。
「何故だ!」
「解りません、自分でも・・・。生まれてからずっと王子の傍に仕え・・・、その間に施された洗脳をあなたへの憧れが勝ったのかもしれません・・・」
「そんな理由で・・・」
「解っていたんです・・・、本物になどなれないと・・・」
どんどんテュールのからだが冷たくなっていく。
「入り口でレイジが戦っているはずです・・・。行ってあげてください・・・」
「レイジが?何故そんな事を知っているんだ」
「彼も連れて・・・」
テュールは死んだ。
最後に指差した先にはアロウの姿があった。
トールはその場ですぐに泣き出したかったが、こらえ、テュールの亡骸を道の脇に寄せ、アロウの元へ歩いていった。
「レオンの友だちだな。あいつの最期の言葉だ。手伝ってもらうぞ」
アロウは彼の顔を見上げる。
「バ、バカな事を・・・。俺はカディスの兵士です」
「俺はカディスの王子だ」
トールの表情がいつもと違い、権威のありそうな風貌だった。

ノヴァは急に追っ手が消えた事を不思議に思いながらも前を目指していた。
その前方に一人の人影が見えた。
「久しぶりね、ノヴァ」
「やはりお前も来ていたか、セロ。これでヤツが本気で最後にする気だと確信できた」
「そう。でもそれはすでに価値のない発見。あなたはここで死ぬのだから」
「その発言の価値がないの間違えではないのか?ここで死ぬのは、お前だ」
両者はそれぞれの武器を手にし、激しい戦いが始まった。

白龍は飛行し、一気に王宮の屋上から内部に侵攻していた。
中にいた少数の兵士で、出会った者は全て倒した。
そして、早々に王の間の前に着いた。
扉に手をかけようとした時、背後に気配を感じた。
白龍は振り返り、後ろを確認した。
すると、そこにはあの人物が立っていた。
「やはりあなたでしたか」
「前とは違って完全体にはなっていないのか。しかし、利巧過ぎるのも考え物だな」
そこに立っていたのは、彼らが探している時の支配者、その人だった。

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