ハジマリノ歌 27話「最後の場所へ」


オドアケルはそばにあった小さなテーブルの上に座った。
その間、クロがレオンとノヴァに銃を向けている。
「最初からだ。何故俺たちを過去に飛ばした」
ノヴァがすぐに発言する。
「クックックッ・・・、自惚れるなよ、ノヴァ・ワグナー」
「なに?」
「君たち二人があの『時の扉』を開いたのは偶然だ」
「偶然だと?」
オドアケルは二人を見下ろしながら言った。
「しかし、必然と言えば必然だ。君はグングニルを目指して来たのだろう?」
「感づいていたのか。感じが悪いな」
「あの時のカディスに侵入までする価値のあるものは、あれくらいだ。すでに君はバリアを持っていたしな」
二人は淡々と話を進めていき、レオンも自分の知らなかった事実を次々と知っていった。
「やはりあの部屋がグングニルのメインルームだったか」
「ご名答。出る芽は摘んでおかねばね。先手を打たせてもらった」
「じゃあ、あの空間はお前が・・・。主動力部だったなら人がいたんだろ!」
レオンがオドアケルの顔を睨みながら言った。
「自分の部下に手を下すのは気が引けたがね」
「貴様ぁっ!!」
「待て。奴からはまだ聞かなければならない事がある」
怒りに任せて突っ込もうとしたレオンを、ノヴァが制止した。
「過去に戻された最初の内はほとんど全く同じ時間を進まされた。だが途中から徐々に変わり始めた。それは何故だ」
ノヴァの質問にオドアケルはいきなり笑い始めた。
「ハハハハッ。私とて最初は君に同じ時を送ってもらおうとしていたさ。最後にレオンの手によって葬られる為にね」
レオンとノヴァは黙り込んだ。
「しかし、途中から見たくなったのさ。君たちはこのまま行くとどうなるか、ってね」
オドアケルは止まらず続けて話す。
「一種の賭けだったよ。上手く転べば勝手に殺し合い、同時に消えてしまう。だが君たちは私の予想を裏切った。まさかの展開でね、君たちが手を組むなどと。しかしそれはそれで面白いと思ったよ。そして現実私に辿り着いた。流石だよ」
「気まぐれでこうなったのか、俺たちは・・・」
レオンは絶句した。
だが、ノヴァは違った。
「違うな。お前がそんな考えを持つはずがない。そう考えると、今まで話してきた事が全て嘘だと言うことになりそうだが」
そう言うと、オドアケルは何も言い返してこなかった。
ノヴァは核心を突いたと口元を少し緩めた。
「ノヴァ、もういいか。俺は怒りで腹ん中が煮えくり返りそうだ。ようはこいつを倒せば終わる」
「あぁ、そういう事だ。これ以上追求した所で、何も吐くはずないだろう。いくぞ!!」
レオンとノヴァは剣を抜き、オドアケルに向かって行った。

マリアは戦闘で魔術を使い過ぎ、体力が著しく消耗していた。
「大丈夫か?」
アロウが気遣って言った。
「大・・・丈夫・・・」
「はぁ、無理すんな。後方に回りな。そして休んでろ」
マリアはまた何かを言おうとしたが、アロウに見られていたせいか、それを言わずに留めた。
そこにトールが異変に気付いて近づいてきた。
「どうしたんだ!」
「マリアの体力の消費が激しくて。休ませないと、こんな場所にいるのは危険です」
トールは納得して頷いた。
「わかった。君は休んでろ。回復したら戻ってきてくれ」
「わ、わかりました・・・」
マリアを援護するようにトールとアロウが敵を食い止める。
「あなたも守りますよ」
「え?」
アロウの言葉にトールが聞き返した。
「国は俺たちを裏切ったんでしょう?信じたくはないですが、そうであるのなら、守るべきはあなたです」
トールは微笑んでアロウを見た。
「レオンはいい友達を持ったな」
「・・・俺はあいつを信じてやれませんでした。友達の資格なんて―」
「何言ってんだ。君は正しい行動を取った。それでよかったんだ」
彼の言葉に嫌味や不快にさせるような意味は含まれていなかった。
「これが終わったらレオンたちと飲みに行こう」
「はい・・・」
アロウは泣きそうになりながら返事をした。
「そういう話は本当に終わってからしてくれよ?」
そこにリカードが姿を出した。
「俺はもう国には帰れないだろうからな・・・。その時はよろしく頼むぜ、トール」
「あぁ・・・、待ってる」
その時だった。
突然両軍が戦闘を止め、ボルドー軍は撤退し、カディス軍の兵士はバタバタと倒れ始めた。
「ど、どういう状況だ、これは!」
レイジが五月蝿く叫んでいる。
トールは一人のカディス兵士に近寄り、呼吸と脈を診た。
「・・・生きてるぞ?気を失っただけか」
「でもなんで・・・」
奇怪な現象にその場にいた一同が困惑する。
「リカードの友達ってのがこの戦争の黒幕のトコに行ってんだろ?」
「ならそこに行けばいいだけの話だ」
パレとバルドルも彼らの所に来て言った。
「確かに、ここにいても何もならないか。王子」
アロウがトールの事を見た。
「そうだな。黒幕が何かをした可能性もある。行くぞ、王宮へ!」
急に中断した戦闘の真相を握るかもしれない『黒幕』に問うべく、彼らもついに王宮へ向かった。

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