ハジマリノ歌2 Story3「初戦」


「遅いぞクラウド」
ミハエルが大剣を使う少年に向けて言った。
「ごめん。でも、話はあとだ」
『クラウド・ラン』、彼もワルキュリア隊所属の兵士だ。
クラウドはそう言うと一番近くにいたトライデントを持つ少年に攻撃を仕掛けた。
「ハハッ、きやがった」
少年はトライデントを構える。
クラウドは勢い良く大剣を振り下ろす。
それは少年が受け止めた。
「そんなもんで!」
次の瞬間、クラウドは剣を持ち方を変えて、対になっているもう一つの剣の方を振り上げた。
「なにっ!?」
少年の体は弾かれ、宙に舞った。
すかさずミハエルが空中で身動きの取れない相手に向けて銃を撃った。
だが、少年はブースターを使ってそれを回避する。
「一人じゃねぇって!!」
そこに鉄球を使う少年が突っ込んできた。
その間に、重火器を使う少年が次々と施設の破壊活動を行っている。
「クラウド、アイナ!あいつを止めるぞ。他はできるだけ構うな!」
「あぁ」「うん!」
クラウドたちは攻撃目標を一点に集中させようとした。
攻撃をしてきた鉄球の少年は完全に無視をされる。
「あぁ!?てめぇらぁぁぁ!!」
「『フギン』、『ムニン』を守るのが先決かもよ」
「『ゲリ』、てめぇ!俺はまだ一人も殺してねぇんだよ!!」
鉄球の少年がフギン、重火器を装備している少年がムニン、そしてトライデントを使う少年がゲリというらしい。
二人が言い合っている間にクラウドたちはムニンに向けて攻撃を開始した。
「これ以上被害を増やすわけにはいかない!」
ミハエルが銃を撃つ。
ムニンは気付いてブースターを使い、回避した。
「えーいっ!!」
アイナがすかさず特殊な武器で斬りかかる。
だがそれは最後の大鎌の少年によって防がれる。
「邪魔はさせないよ」
「クッ・・・」
少年はアイナを切り払い、体勢が崩れた所に斬りかかろうとした。
その時、少年は横から攻撃を仕掛けてきたクラウドに気付いて攻撃をやめ、回避した。
「『フレキ』ぃぃぃ!!そいつは俺の敵だぁぁぁ!!」
「うざいよ、お前」
フギンが叫びながらクラウド目掛けて鉄球を投げつける。
大鎌の少年はフレキというらしい。
クラウドはそれを剣で防いだ。
「こいつら・・・」
予想以上に強い四人の少年たちに、クラウドにも多少なり焦りが見えた。
そこに、バレンシア軍仕様の黒いトラックがこちらに向かって突っ込んでくるのに気付いた。
「避けろ、クラウド!」
ミハエルが叫び、クラウドはトラックの前から退避する。
「時間切れ?」
「ケッ、どっちにしても俺は弾切れだ」
「おい、終わりだぜ、フギン」
「チィィッ!」
トラックはその場を猛スピードで通り過ぎ、四人の少年たちはそれを追うようにブースターを使って撤退し始めた。
「逃げる気か!?」
「させない!!」
クラウドが彼らを追おうとする。
「クラウド!」
そこに、さっきのトラックより一回り大きい大型トラックが彼の傍で止まった。
「ノルン?」
運転をしているのは、あのノルンだった。
「追うぞ、早く乗れ」
彼は他の二人にもそう指示し、三人は後ろの荷台に乗り込んだ。
それと同時にトラックは走り出す。
「ちょっとぉ、何処行ってたのよ。急にいなくなるし」
アイナがノルンに文句を言う。
「隊長の命令だよ。部屋出る前に呼び止められてさ」
彼の横を見ると、助手席に上官クラスの者が持つ帽子をかぶった女が座っていた。
その人物こそ彼らワルキュリア隊隊長である『セレーナ・ワルキュリア』だ。
茶色の長髪で、キツそうな顔つきの女だ。
何ら反応を見せず、依然として腕を組み先を見据えている。
「まっ、隊長の判断が正しかったってコトさ。見てみろ、他の隊は全く動けてねぇ。後ろを走ってるのもウチの隊のだしな」
そこにセレーナが始めて口を開いた。
「あれ一台の強奪を許してしまったのだ。偉い口は利けん」
その言葉に周りの空気が引き締まる。
「逃がさせんぞ、絶対に」
ワルキュリア隊は強奪されたトラックを追った。

基地からの離脱にとりあえずは成功した少年たちは、トラックの中で休憩を取っていた。
しかしその中に不満を漏らしている者が一人いた。
「まだやれた!なんであのタイミングで撤退なんだよ、エリス!!」
フギンが撤退のタイミングに文句を言っていたのだ。
「施設の破壊は十分だ。それに、弾切れにブースターのエネルギー残量もそろそろ限界だっただろう。あのまま続けていたら失敗だったぞ」
助手席に座っている指揮官らしき男、『エリス・エゼキエル』が言った。
銀髪で髪の毛は伸びている。
彼の顔下半分はマスクに覆われており、見えている部分である目は冷酷そうだ。
「それに、ある程度被害を与えれたら撤退しろと命令をしたのは『オーディン』だぞ?」
その名前に四人の少年が一斉に反応した。
「オーディン・・・」
「じゃあ仕方ないじゃん。フギン、残念でした」
ゲリがからかう様に言った。
その時、エリスが何かに気付き、そして言った。
「まだ追ってくるか」
少年たちが後ろを見やる。
数百メートル後方にバレンシアの大型軍用トラックが追って来ているのが見えた。
「俺が蹴散らしてやるぜ」
そう言ってムニンがトラックに配備されてあったロケットランチャーを手に取った。

強奪されたトラックに動きが見られた。
荷台の扉が開けられたのだ。
「マズイ、攻撃してくるつもりだ」
「は?」
セレーナの言葉にノルンが聞き返した。
次の瞬間、トラックからロケット弾が撃たれた。
「回避しろ!!」
セレーナが叫ぶ。
ノルンは焦りながら思い切りハンドルを切る。
その場に緊張が走る。
どうにかギリギリ回避出来、弾はトラックの真横を通り過ぎた。
だが、その直後にロケット弾が何かに着弾したらしく、爆発が起こった。
「しまった!」
セレーナが窓から身を乗り出して後方を見、そして崩れるように椅子に項垂れた。
「やられたな」
ミハルドがそう漏らした。
弾が命中したのはもう一台のトラックだったのだ。
クラウドは唇を噛んだ。
「隊長。私がライフルで応戦します。許可を」
「いいだろう。任せる」
ミハルドが言い、セレーナは迷わず許可を出した。
彼は配備されているライフルを取り、命綱を腰につけ、梯子から荷台の上に上がった。
もう一方のトラックで、双眼鏡を覗いていたゲリがそれに気付いた。
「なんか出てきたぜ」
「フン、知らねぇよ、そんなもん!」
ムニンは二発目を撃った。
「クッ」
ミハルドは照準を合わせ、ライフルを撃った。
それはロケット弾に命中し、発射されてすぐに撃ち落された。
近くで爆発が起こったため、少年たちの乗るトラックに大きな衝撃が襲う。
「当てた!?撃たれた弾に!?」
「嘘だろ?」
この状況にエリスが指示を出す。
「奴らの足元に落とせ。今奴らを討つのは無理だ」
「逃げるってのかよ!」
フギンがまた反応する。
「万全の態勢で臨んだ方がいいだろう。それとも、お前はここで死ぬか?」
その言葉にフギンは言葉を失う。
「やれ」
その合図と同時にムニンはロケットランチャーを撃った。
直撃を狙って撃ってくるとよんでいたミハルドは反応できなかった。
「隊長!」
弾はトラックの前で地面と衝突し、爆発と同時に粉塵を舞わせた。
視界を奪われノルンは操縦不能になる。
「とにかくハンドルを切れ!今撃ち込まれたら終わりだ!!」
セレーナが急いで指示を出す。
ノルンは見えない視界の中トラックの方向を変えようとする。
ミハルドは荷台の上で振り落とされないようしがみ付いている。
そして、やっと粉塵の中から脱出できた。
しかし、相手のトラックはすでに遠方へ行っており、すぐには追いつける位置ではなかった。
「クソッ!」
セレーナはトラックの扉に思い切り拳をぶつけた。

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