ハジマリノ歌2 Story5「突然の介入者」


指定箇所に到着したのだ。
カディス領『カルタヘナ』。
実のところ、彼らが街に出てきたのは例の連中を探しにきたのではなかった。
買い出し。
突然の出撃だったので、非常用の水や食料、あらかじめ搭載されていた武器しかなかったのだ。
セレーナとミハエルを含む兵士たちは、トラックの守りに残っていた。
「しかし隊長も人使いが荒いぜ。どうやって持って帰るんだよ、こんな量・・・」
ノルンがため息をつきながら言った。
買い出しのメモには水や食料などの一覧が書いてあった。
その量は膨大で、流石に三人で持って帰れる量ではなかった。
「軽トラでも借りるしかないだろ。どっか貸してくれそうなところ・・・」
クラウドが辺りを見渡す。
「あ、ここ食べ物売ってるっぽいよ。買っちゃう?」
「アイナぁ、聞いてたのか?先に軽トラを―」
アイナの発言にノルンが突っ込んだ。
そこにクラウドが割り込む。
「じゃあ買い物は二人がやって、一人はトラック貸してもらいに行く。どう?」
「なるほどな。じゃあここはお決まりの」
「「「じゃんけん」」」
三人はそれぞれ意気込み、それぞれ決戦の前の奇妙な行動を取る。
「しゃー、いくぜーっ!!じゃーんけーん・・・」

「いってらっしゃい」「ちゃんと探して来いよ、クラウドぉ」
「うっせーっ」
クラウドはじゃんけんに負けた。
言い出しっぺが負けるというジンクスはあるようだ。
一人トラックを貸してくれそうなところを探す。
この日は日照りが強かった。
少し歩いただけで汗が噴き出してきそうだ。
太陽の熱をアスファルトが吸収し、さらに暑さを増している。
彼はいっそみんなの元へ帰ってしまおうかと思った。
その時、瞬時に殺気を感じた。
クラウドはすぐに目の前にあったカフェのテーブルを蹴り上げ、それを盾にする。
それと同時に銃声が聞こえた。
街を行き交う人々はそれを聞いてパニックになり、右往左往と逃げ惑っている。
「チッ、外したか」
「なぁにやってんだよ、下手糞」
建物の屋上に人影があった。
所属不明軍の少年、フギンとムニンだった。
その後ろにフレキとゲリの姿もある。
「一人だよ。さっさと終わらせちゃおうぜぇぇぇっ!」
ゲリの言葉と同時に、四人の少年たちは屋上から飛び降り、ブースターで飛行し始めた。
「あいつらっ!」
クラウドは剣を持って来ていなかった。
護身用の銃を抜き、テーブルの影から奴らの動きを伺う。
「隠れてんなよ!」
フギンが鉄球を投げ、テーブルの一部が吹き飛ぶ。
クラウドは場所を変えようと銃を撃ちながら建物の影まで逃げた。
「クソッ、銃じゃあ・・・」
銃での戦闘訓練も受けているとはいえ、普段の戦闘スタイルがあの特殊な大剣であるため、勝手が違う。
ふと周りが暗くなり、咄嗟に頭上を見る。
「はああああっ!」
フレキが空中で大鎌を振り下ろしてきた。
クラウドはギリギリで回避し、大通りに出た。
「もらいぃっ!」
クラウドが姿を見せると同時にゲリがトライデントを突いてきた。
彼は動けず、銃でそれを受け流す。
そのせいで銃は壊れてしまった。
彼は戦う道具を全て失った。
その時、一台のバイクがその場を通った。
乗っている人物がゲリに向けて銃を撃つ。
「んあっ!?」
ゲリはブースターを使って回避し、間合いをおいた。
突然の介入者にクラウドは唖然とする。
「なんだ、てめぇは!」
「ハハハッ、消えろぉ!!」
フギンが介入者に喧嘩腰に言うと同時にムニンがその人物に向けて銃を撃つ。
介入者はバイクから飛び降り、それから銃で応戦する。
「あの軍服・・・、カディス?」
クラウドはその人物の着ている軍服を見て思った。
だが、色が黒。
カディスの兵士が着ている物とは色が違うし、あんな色は見た事がない。
カディスの兵士と見られる人物は腰から剣を抜いた。
「余所見すんなよ」
クラウドに向かってフレキが接近してきている。
そして、大鎌を横振りしてきた。
彼は身を低く伏せ回避し、そのまま体当たりした。
「グッ・・・」
フレキは一旦距離を置く。
「バレンシアの!戦えないのなら早く退け!」
黒い軍服のカディス兵と思われる人物がクラウドに言った。
「俺らは無視かよ、コラァッ!」
フギンがその人物に向けて鉄球を投げつける。
だがそれは剣で切り払われ、さらにブースターに剣を突き刺された。
「なにっ?!」
フギンはブースターをパージし、撤退しようとした。
「なにやってんだよ、お前」
フレキがフギンの手を引き、ブースターで飛んでいった。
「覚えてろよ、てめぇら!」
「あーあ、怒られるぜ、これ」
ムニンとゲリがそれぞれ言いながら彼らのあとを追うように撤退して行った。
「あいつら。待てっ!」
クラウドが彼らを追おうとする。
そこにあのカディス兵と思われる人物が言った。
「追うのか?なら乗れ」
そう言ってバイクの座席を二度叩いた。
クラウドはそちらに駆け寄り、訊いた。
「あんたは?」
「カディス軍特殊任務隊、リカード・マルサスだ」
その名前を聞いて、クラウドは目を丸くする。
「詳しくは後だ。行くぞ!」
リカードはクラウドを後ろに乗せ、銃を渡し、四人を追おうと走り出した。
バイクは一気に加速していく。

食材屋の前で、ノルンとアイナはクラウドの帰りを待っていた。
「遅すぎねぇか?あっちの方が騒がしいけど、まさか騒ぎに・・・」
ノルンがあながち外れていない予想を口にした。
その時、彼らの前をあの四人が飛び去って行った。
「あ、あいつら!」
「まさか、クラウドがあいつらと?」
二人は食料を置いて奴らを追い始めた。
だが到底追いつけるはずがない。
その後ろから一台のバイクが駆け抜けていく。
バイクには二人乗っていて、後ろに座っていた人物に気づいた。
「ク、クラウド?!」
「マジ?」
二人はとにかく追い続けた。

リカードとクラウドの乗るバイクは徐々に四人と距離を縮めていく。
その時、突然彼らの目の前に一人の男の姿が現れた。
「クッ、飛び降りろ!」
クラウドは言われるがままに飛び降り、リカードは寸前でハンドルを切り飛び降りた。
二人は地面を滑っていく。
バイクも車輪を回しながら倒れていた。
「なんだ!?今目の前に急に人が」
クラウドがそう言った。
そう、彼らの目の前に、今までそこにはいなかった人が突然現れたのだ。
リカードもそのせいで対応に遅れた。
その人物は顔の下半分をマスクで覆っている、銀髪の男だった。
エリス・エゼキエル。
あの四人の少年の上官だ。
「なんだ、お前は!」
クラウドが突っかかる。
「威勢のいい。バレンシアにもまだこの様な兵士がいたとはな」
リカードはエリスのことを見た。
顔は半分隠れていて判らない。
その上、前髪もある程度長く、目元が隠れている。
だが、リカードはあの男に何か違和感を感じていた。
「(空間転移か?だが、あれを持っているのは―)」
リカードは立ち上がり、剣を構える。
エリスは彼の方にも目をやり、すぐにクラウドのほうに目を戻した。
「やってみるか、俺と」
「は?」
エリスの突然の言葉にクラウドは唖然とした。
「ふざけるな!俺はあいつらを!!」
「俺があいつらのリーダーだとしたら、どうだ?」
それを聞きクラウドは奥歯を噛み締め、ギリギリと言わせた。
「カディスの、こいつに剣を貸してやれ。どうやら銃は下手らしい」
リカードは黙って歩いて行き、クラウドに剣を手渡した。
「もうあいつらには追いつけない。それにこいつは何を考えているか解らない」
「あいつは奴らのリーダーなんだろ?だったらあいつを倒せばいい」
クラウドは荒々しく剣を受け取り、リカードは少し離れた。
「(誰なんだ、あいつは・・・)」
「来い」
エリスが言うや否や、クラウドは走り始めた。

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