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ハジマリノ歌2 Story6「実力の差」
だが、それは軽々と回避される。
「まだ無駄が多いな」
「この・・・、クソォォォ!」
クラウドは挑発に乗り、再びエリスに斬りかかる。
リカードはその状況を見て、倒れているバイクに駆け寄りバッグの中から何かを取り出した。
「あの男、・・・強い」
取り出した物とは小型カメラだった。
すぐに戦闘の様子を撮影し始める。
クラウドが四度目の攻撃を仕掛けた。
エリスはついに動いた。
スッと攻撃を回避し、クラウドの腹部に蹴りを喰らわせた。
「グハッ・・・」
クラウドが腹を押さえ、怯んだ。
さらにエリスはそこに蹴りを入れ、クラウドは数メートル飛ばされた。
「ほぅ、それでも剣は放さないか」
クラウドは攻撃を喰らっても剣は放していなかった。
彼はその剣を支えにゆっくりと立ち上がる。
「武器は・・・、使うまでも・・・、ないって言うのかよ・・・」
エリスはジッとクラウドのことを見据えている。
「なら・・・、嫌でも使わせてやるよ!!」
クラウドはそう言うと、再びエリスに向かって突進した。
彼はまた同じように斬りかかった。
エリスがそれを避ける。
「まだだ!」
クラウドは更に攻撃を繰り出した。
剣を振り上げ、そのまま切り裂こうとした。
「・・・ッ」
その時、エリスが右手を出した。
「無茶な!」
リカードがそう言った。
だが、結果は彼の想像したものとは違うものとなった。
クラウドの繰り出した攻撃は、エリスの右手から一瞬出た『ボウッ』という光によって防がれた。
「なっ・・・」
「あれは・・・」
二人の動揺をよそに、エリスは表情一つ変えずにクラウドに蹴りを喰らわせ吹き飛ばした。
「クッ・・・、斬撃も効かないのかよ・・・。なら」
クラウドは立ち上がり、剣を構えた。
「喰らえ!火龍!!」
彼が剣を振り下ろすと同時に、一線の炎の渦がエリスに向けて放たれた。
「素質は『火』か」
エリスはそれにも動じず、右手を真っ直ぐ前に伸ばした。
「あの構え・・・、やはりあれは・・・」
リカードは奴が何かを装備していて、それが何なのか検討がついてきた。
次の瞬間、クラウドの攻撃が直撃する寸前にエリスの前に障壁が生じ、かき消された。
「確定だ・・・。・・・ッ!」
リカードは撮影をやめ、エリスに向かって走っていった。
「おい、お前!それをどこで手に入れた!!」
エリスはリカードのことを見る。
「未来」
彼はそうとだけ答え、付け足すように言った。
「時間稼ぎはもういいだろう」
そして剣を抜き、呪文のようなものを唱え、そしてクラウドのいる方向に向けて振り下ろした。
すると、そこからさっきクラウドが繰り出した『火龍』と似た炎の渦が放たれた。
「なっ!?」
クラウドは瞬時に回避する。
「フッ、また会おうバレンシアの少年。カディスになったお前も」
その言葉にリカードが反応する。
「おい、待て!!」
だが、エリスの姿はすぐにその場から消え去った。
「空間転移・・・。それにさっきのバリア」
リカードはバレンシアの兵士のことを思い出した。
「大丈夫か?」
「・・・はい」
クラウドは唖然として地面に座り込んでいた。
自分だけが使える技だと思っていたのに、あの一撃を見ただけで丸々真似をされた。
惨敗したことと、そのことが彼に二重のショックを与えていた。
「クラウドー!」
そこに女の声が聞こえてきた。
アイナだった。
「おい、何やってんだよ、お前。あいつらは?」
「逃げられた」
ノルンの質問にクラウドが答えた。
そこでアイナが新たな疑問を口にする。
「それで・・・、あなたは?」
リカードの存在のことだった。
「カディス軍特別任務隊所属・・・、リカード・マルサスだ」
彼は一瞬名前を言う事に躊躇した。
彼らは、バレンシアの軍の人間だから。
アイナとノルンは彼の予想通りの表情をした。
「君たちの部隊の指揮官の所へ連れて行ってもらえないか。今のことの報告もしたい」
「あっ、はい!わかりました」
アイナがリカードをセレーナの元へ連れて行こうとした。
「立てるか?」
「あぁ・・・、ごめん」
ノルンがクラウドに肩を貸し、四人はトラックの停めてある所へ移動した。
リカードとアイナは一足先にトラックの周りで作業の指示を出しているセレーナの所へ来ていた。
「隊長」
「ご苦労。街の方が騒がしかったが、何かあったのか?」
「はい。奴らがこの街にいました」
セレーナは表情一つ変えず「そう」とだけ言った。
「で、横の人は?」
彼女は次にリカードのことを見た。
「カディスからの増援です。リカード・マルサスです」
リカードが挨拶をした。
「リカード・・・、へぇ。貴方一人だけが増援?」
セレーナが少々不服そうに言った。
「いえ、カディス・バレンシア合同基地『グラナダ』に複数隊が送られてきます」
「そう」
彼女はリカードに興味を示す仕草を全くしない。
生理的に拒否しているようにも見える。
「で、アイナ。さっきの騒動の話だが」
「それは私から」
アイナが答える前にリカードが割り込んだ。
そして、ポケットからさっきのカメラを取り出し、そこから伸びているコードの先のディスクが入っている部分からディスクを取り出した。
それをセレーナに渡す。
「ふーん、なにこれ?」
「さきの戦闘での映像です」
「撮ってたの?」
「はい」
リカードがそう答えると、セレーナは何も言わずにそれをPCに取り込む。
そして、映像が流れ始めた。
三人は黙ってPCを見ている。
「ここです」
クラウドの攻撃を素手で受け流すシーンだった。
「この剣は私のものです。両刃の物なので、素手で受け流した上無傷などありえません」
「確かに」
リカードは映像を巻き戻し、さっきのシーンをもう一度流す。
「彼の攻撃を受ける瞬間、ここです。一瞬光が見えます」
「ホントだ・・・」
アイナがリカードを見て驚いている。
一瞬一瞬で行われている戦闘の間で、この光を見逃さずに見ているなんて。
「なに?この光」
「この先の映像で判ります」
少し早回しし、クラウドが炎の技を繰り出す映像が流れ始めた。
「えっ、直撃・・・」
「ここです」
「なるほど。障壁ね」
「はい」
アイナは一人置いていかれているような気がした。
「でもあの技術は貴国でしか開発できていないはず」
「そうです」
セレーナは顔を歪ませた。
「今の発言とこの映像はカディスにとって不利でしょ。なんで?」
「俺はカディスを信じてますから」
リカードの真っ直ぐな態度を、セレーナは「ふーん」と言って流した。
「この情報が他国へ漏れた、漏らされた、裏切り者が出たってことは?」
「漏れたということはありえません。軍の上層部の一部のものしか使用を許されていませんから。しかし―」
リカードが言葉を詰まらせた。
「解ってるわ。元ボルドーの総帥のことでしょ?」
「はい」
「じゃあ全否定は出来ないわね」
「しかし、彼女から漏れた可能性は低いです。開発方法や資料を手にしていないはずですから」
「そう」
セレーナは映像を消した。
「判りました。大まかな状況はつかめたし、あとはクラウドから話を聞くわ。アイナ、クラウドを連れてきて」
「は、はい!判りました」
アイナはその場を走り去った。
「あの」
リカードがもう一度話しかける。
「まだなにか?」
「私もしばらく同行させてもらいます。よろしいですか?」
「えぇ、問題ないわ。でも、ちゃんと働いてもらうわよ」
「わかっています」
リカードは一礼をしてその場を去った。
セレーナはその後姿を見ながら言った。
「カディスの陰謀か。まぁ泳がせて様子を見るとしよう。何もなければ、役立つはずだ」
そして、元の仕事を再開した。
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