ハジマリノ歌2 Story7「二国の基地」


隊員はそれぞれトラックを降りる。
「ヒュー。さすがグラナダ。栄えてるねー」
ノルンが田舎から都会へ出てきた少年みたいな声を上げた。
「二つの国が共同で開発した基地だもんね」
「両国の絆、か」
アイナが言い、それに続いてミハエルが意味深に言った。
クラウドも彼らの近くにいたが、別に基地に対して反応はしなかった。
「リカード」
セレーナがリカードを呼んだ。
「情報部に行くぞ。奴らの情報もつかまなければならないし、あの障壁のことも」
「わかりました」
「お前たちはしばらく自由にしてていい。疲れているのなら、施設の休憩室にでも行っていろ」
彼女はそう言い残し、リカードを連れて歩き始めた。
「どーするよ?」
「うーん・・・」
ノルンとアイナが困った風な顔をしている。
その時、ミハエルがクラウドに声を掛けた。
「行くぞ」
「・・・どこに」
「訓練だ」
三人のミハエルに向けた表情が変わった。
「おいおい、マジかよ。確かに戦闘に負けたからって焦るのは判るけどよ、休む時は休んで―」
「黙れ。俺はクラウドに言っている。お前はこのままでいいのか?」
クラウドは黙っている。
「だとしたら、とんだ腑抜けだな。少なくとも俺はそんな奴だとは思っていなかった」
「なんだと・・・」
ミハエルの言葉にクラウドは頭にきた。
「お前はまだ実力不足だ。だが素質はある。伸ばす箇所がまだ残っているんだ。無論俺も、他の二人も」
三人から言葉が消えた。
そこでクラウドが口を開いた。
「わかった、やろう。俺もこのままで済ますわけにはいかない」
「その意気だ。お前たちも付き合え」
彼の言葉を聞いているうちに、ノルンとアイナもやる気になっていた。
「おう!やってやるよ、この野郎」
「もう、私だってあいつらなんかに!」
四人は一致団結し、訓練施設に向かって行った。

その頃、リカードとセレーナは情報部のある建物に着いていた。
「カディスのリカード・マルサスだ。IDナンバーは92047933」
受付の女性にそう伝えた。
「確認しました。ご用件は?」
「これの情報がほしい。行方を調べてもらいたいんだ」
リカードはそう言って、トラックを強奪した部隊のデータをまとめたディスクを渡した。
女性はそれをPCに取り込み、内容を本部へ送る。
「これ、先日バレンシアの基地襲った部隊ですよね。すぐには見つからないかも知れませんよ」
「わかってます。でも、出来るだけ急いでください」
「わかりました」
用件を伝え終わり、二人はその場を離れた。
「私の出る幕はなかったな」
「えっ・・・、あぁ・・・、すいません」
「なにを謝る?」
つかめない性格のセレーナにリカードは困惑していた。
その時、さっきまでいた受付の方から大きな声が聞こえてきた。
「なんでぇよ!だからさぁ、うちの隊の増員を」
その声の持ち主は男で、金髪だがもみあげだけを赤く染めている。
バレンシアの軍服を着用していた。
「あの髪型・・・」
リカードはどこかで見覚えがあった。
「はぁ、もういいわ。わかった、悪かったね。今度ライブする時招待するから堪忍な」
そう言って男が彼らの方を振り返った。
そして、男がリカードのことを見て、何かに気付いた風なリアクションを取った。
「お前・・・」
「シン!」
「やっぱり!お前、リカードじゃないか!!」
シンと呼ばれた男がリカードの方へ向かって走ってきた。
『シン・フェイン』、彼はリカードがバレンシア軍の養成所にいた時、訓練を共にした友人だった。
「おい、どうしたんだよ。お前、前の大戦以来カディスにいるんだろ?あっ、ここ合同基地だからか」
「まぁ、今はバレンシアの隊と行動しているけどな」
その時、リカードはハッとしてセレーナの事を見た。
「知り合いか。今は自由時間だ、好きにすればいい」
そう言ってセレーナは歩いていった。
「あれ、元『パトリオット』のセレーナ・ワルキュリアじゃ」
「そう。クールなんだけどな、それ以上につかめない人で」
リカードは、シンの胸元に光る勲章に目がいった。
「これ・・・」
「あら、気付いた?そう、俺様もパトリオット所属の軍人になったのよん」
パトリオットとは、バレンシア軍の部隊の中でもトップに立つ精鋭部隊である。
「すごいな、出世じゃないか」
「もちろん。なるって言ったろ?養成所時代に。次は総帥だな」
「相変わらずだな、お前は」
リカードとシンは笑いを交わした。

訓練場にはクラウドたち四人の姿があった。
「マジで本物使ってやる気か?」
「レプリカを使ってどうする。安心しろ、俺の銃の弾はペイント弾だ」
ノルンとアイナ、そしてクラウドは個々の実践用の武器を握っていた。
「クラウド、ちょっとこっちに来い」
ミハエルに言われるがままに、クラウドは近づいていく。
そして、ミハイルは彼の額に手のひらを当て、何かブツブツと唱えた。
「なにやってるんだよ」
「聞いていてよかった」
「何が?」
「いや、こちらの話だ。よし、訓練を始めよう。とはいえ、実践用の武器を使った本格的な物だ。油断をすると怪我をするぞ」
クラウドの質問にミハエルは答えず、訓練は開始されようとしていた。
「内容は、クラウド対俺たち三人だ」
その言葉に三人が一斉に彼のことを見る。
「三対一!?」
「ちょ、それは無理があるんじゃ」
アイナとノルンが一斉に言う。
しかし、クラウドは違った。
「何の思惑だか。いいよ、やろう」
「素直だな。始めよう」
ノルンが先頭に立ち、その後方にアイナ、そしてミハエルが配置された。
「開始だ」
ミハエルの号令と同時に、ノルンが駆け出した。
「やるんなら本気だ!死んでも知らないぞ!」
ノルンは走りながら剣を構え、未だに突っ立っているクラウドに突っ込んでいった。
そして、剣を頭上から振り下ろした。
と次の瞬間、クラウドの姿が消えた。
「消え・・・っ?!」
それと同時に背後に気配を感じた。
「うそだろ・・・」
背後に立っていたのはクラウドだった。
「なんだよこれ。俺の体・・・、前と違う」
「今、クラウドすごいスピードで動いたよね・・・?」
クラウドは消えたわけではなく、高速で移動し、ノルンの背後に立っていたのだった。
「何をしている。まだ終わっていないぞ」
ミハエルに言われ、クラウドはノルンの頭をコツンと叩いた。
「なによ、急にどうしちゃったの。クラウド」
アイナは武器を構え、クラウドの攻撃に備える。
しかし、気付いた時には武器は弾かれ、アイナの後方へ飛んでいた。
「さすがだな。初めから制御が出来るか」
ミハエルは二丁の銃を構えて、隙がないほどの速さで連射した。
クラウドは尋常でないスピードでそれを回避し、一気にミハエルの懐に飛び込んで行く。
「これでっ」
「あまい」
ミハエルはクラウドの頭に手を置き、それを軸に彼を飛び越え、背後に回って後頭部に銃口を突きつけた。
「負けた」
「あと少し練習が必要だな」
ノルンとアイナは唖然としていた。
「なになに、あの二人」
「クラウドは突然おかしい速さで動き始めるし、ミハエルはそれを見切ってるし・・・」
二人はクラウドとミハエルの方へ歩いて行った。
「二人ともそんな力隠してたの??ずるいしぃ」
「俺んが先輩なんだよ。負けてられるか。次いくぞ、次!」
クラウドは未だに自分の動きが信じられず呆然としていて、ミハエルはみんなの団結に笑みを浮かべた。
「次だ。始めるぞ」
四人はそれから夜まで訓練を続けた。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: