ママのSerendipity-セレンディピティ

  ママのSerendipity-セレンディピティ

Essay1

携帯メール


~わたしの夫は性格上気持ちを言葉にしてはっきり伝えるのが苦手。
いいことも悪いことも。
反対にわたしはなんでも言葉にしてぶつけてしまう。
いいことも悪いことも。

会社の帰りに急に飲みに行くことになり、その連絡が夜の9時をまわっていて
わたしの夕食の準備に費やした労力はだいなしに、ということが時々ある。
(もっと早く言ってよ、とかなりがっくり来る。)
そのうえ「早く帰るから」というのはいつも口だけで、たいてい終電を乗り過ごし
深夜にタクシー帰宅。

待っている方は心配で、寝るに寝れないということをわかっているのかいないのか。
夜の夜中に「今から帰る」とメールが届き、豆電球の薄暗い部屋のなかで
携帯の液晶画面が不気味に点滅する。

今までに何度かこういうことがあったけど、こんなときわたしは返信をしないことにしている。
もちろん気になって起きているし、腹もたつし、心配だし…でも
返事なんか打ち出したら文句しか書けそうにない。
かといって「心配してたんだから~」なんてかわいく出るのもしゃくに障る。

だから帰ってきても起き上がらず寝たふりをする。
帰宅した夫は、まずそっと寝室を覗き、シャワーをあびてからごそごそ布団に入り、
そして、いつもわたしより先にいびきをかきはじめる。
わたしの狸寝入りを知っているのか知らないのか。

翌日はなにもなかったように夫は「おはよう」だけ。
うしろめたいのか目も合わさずいつものようにバナナを食べて普通に出勤する。
朝から「昨日はどうしてたのよっ」なんて言いたくないし、こっちも気分が悪くなるから
わたしも普通に「いってらっしゃい」

こうして夫婦、家族ってどれだけ怒っても腹がたってもいつのまにか元に戻っちゃう
ものなのかな…なんか違うよな…なんて悶々としていると出勤途上の夫からのメール。


「昨日はすまんな。調子に乗って飲みすぎた」


この一言があるのとないのとでこっちの気分は180度変わる。

考えれば、たまにしか飲みにも行かないまじめなよい夫だ。
わたしだって昔は深夜帰宅してよく親に心配かけたじゃないの…
休日は子守もしてくれるし買い物にも付き合ってくれるし…
と急に相手の立場になってみたりできるようになる。

ありがとうやゴメンねはできれば口に出してほしいけど、
携帯メールがあってよかった。
20代で結婚しなくてほんとよかった、と変なところで思う。
10年前には考えられなかった一人一台携帯時代。
夫に限らず、口下手な世の中の男性の救世主なのかもしれない。

2006.3

home back next


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: