配当政策によって、株価操作は可能か?



配当政策を具体的に数式であらわしてみましょう。配当成長モデルによれば、株価は、次の式であらわされます。

P0=D1/(Ks-g)

ここで、P0は、現在の株価。D1は翌期の配当。Ksは株式コスト。gは、配当成長率。

さて、この式で、企業価値(株価P0に、具現化される)が上昇する為には、D1が上昇すればよろしい。ということは、企業は、配当を増やせば良いのでしょうか?

配当を増やせば、再投資に回す金がなくなるのです。

つまり、g=(ROE)×(1-payout ratio)なので、
配当を増やすとペイアウトレシオが高まり、g(成長)は、低下します。つまり、配当の増加と、成長率は、相殺し合います。

配当政策とは、翌期の配当金と、将来の成長率の「トレード・オフ」の最適バランスによって決まります。

さて、その最適バランスを説明するのに、現在、3つの理論が存在します。

1.配当無関係理論  (Dividend Irrelevance Theory)
2.手のひらの鳥理論 (Bird-in-the-Hand Theory)
3. 税金選好理論   (Tax Preference Theory)

1.配当無関係理論  (Dividend Irrelevance Theory)
マートン・ミラーとモジリアニの学者コンビが提唱しています。それによれば、税金とブローカーコストを無視する限り、企業価値は配当政策とは無縁であるというものです。つまり、企業価値は、基本的収益力とビジネスリスクのみに依存するというものです。basic earning power and business risk、または、企業価値は、企業が保有する資産が生み出す利益のみに依存し、その利益をどのように配当と剰余金に分割するかには依存しない、と言っているのです。

ピザの例で例えてみましょう。

1枚のピザの価値は、その素材、材質、焼き加減によって生み出された消費者の満足度によるものであって、そのピザをどのように、カットするかには、依存しないよ、ということなのでしょう。

2.手のひらの鳥理論 (Bird-in-the-Hand Theory
ゴードンとリントナーのコンビは、配当性向が上昇すると、株式コストが低下すると主張しています。投資家は、あてにならないg(成長率)よりは、配当利回り(D1/P0)の部分を好む、と判断しているからです。しかしMM(ミラーとモジリアニさん達)は、反論し、ゴードン&リントナーの理論を「手のひらの鳥錯覚」Bird-in-the-Hand Fallacyと揶揄しました。論拠は、「多くの投資家は、受け取った配当を、結局、同じか同類の株式に再投資しているのではないですか?」というものです。

3. 税金選好理論   (Tax Preference Theory)
現在のアメリカ証券税制の下では、キャピタルゲイン課税の方が、所得税よりも低いので、投資家は、配当より値上がり益(キャピタルゲイン)を好みます。また、キャピタルゲイン課税は、実際に株式を売却するまでかかりませんので、たとえ仮に所得税と、キャピタルゲイン課税が同じ金額であったとしても、将来払う税金の方が、現在価値の考え方に照らせば、低くなるのです。つまり、キャピタルゲイン課税を将来払うことに対するインセンティブが生じるのです。さらに、株を相続に使えば、これは、FMV(時価)で譲り受けることになるので、ドナーが保有している間の値上がり益は、非課税となるのです!

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