ポーターの５つの力モデル

ケース分析の中に、外部環境分析があります。外部環境分析をするには、ポーターの５つの力モデルを利用します。

企業をとりまく外部環境の性質を論じる際に有益なフレームワークがハーバードビジネススクールのマイケルポーターの５つの力モデルです。このモデルはある産業における競争の状態を決定する５つの力に焦点を当てます。

ポーターによれば、これらの力が強ければ、ある産業において、企業が価格を上げ、利益を得ることがより困難となります。したがって、強い競争力は産業における既存企業にとって、「脅威」とみなされます。弱い競争力は「成長機会」とみなされます。既存企業は利益を生みやすくなるからです。この５つの力の強弱は、時とともに変遷します。

５つの力とは。

①潜在競争者による参入リスク
②既存企業群の中でのライバルの度合い
③消費者のバーゲニングパワー
④サプライヤーのバーゲニングパワー
⑤代替商品の脅威
です。順番に説明します。

①潜在競争者による参入リスク
参入リスクは参入障壁の高さの関数です。エコノミストのジョーベインによれば、参入障壁の源泉は、ブランドロイヤルティー、絶対コスト優位、規模の経済です。ジョーベインの主張に加え、スイッチングコストと政府規制を加えます。

★　既存企業のブランドロイヤルティーが確立されていればいるほど、参入の脅威は減少します。

★　絶対コスト優位は、優位な生産オペレーションを持っているとか、生産に必要なインプットについて優位性があるとか、低金利での借り入れができることから生じ、この場合、参入の脅威は減少します。

★　規模の経済については新規参入者は、小さく参入し、規模の経済の恩恵を受けられないか、あるいは、大きく参入して、巨大な参入コストを支払い、さらに商品価格の下落プレッシャーに苛まされるかというわけで、既存企業に規模の経済がある場合、既存企業にとっての脅威は減少します。

★　スイッチングコストは、PC業界におけるマイクロソフトとアップルの例を考えればわかりやすい。アップルを持っている消費者は、マイクロソフトのウインドウズに変更すると、プリンターからソフトから何から何までウインドウズ仕様のものに買い換えねばならず、過大なコストが発生します。このことを、既存商品に「ロックイン」されるといいます。過大なスイッチングコストが発生する場合、既存企業にとって参入の脅威は減少します。
★　政府規制が働く場合にも参入の脅威は減少します。

★　参入障壁の高さは、産業における利益率の最大の決定要因の一つであるという実証結果が報告されています。参入障壁が高い業界には、薬品、家庭用洗剤、商用航空機があります。

②￥t既存企業群の中でのライバルの度合い。ライバル力が弱ければ、企業は価格を上げ利益を得ることが可能となります。産業におけるライバルの度合いは、産業の競争構造、需要条件、産業における出口障壁により決定されます。

★　競争構造は、「fragmented」か「consolidated」で計ります。フラグメンテッドな産業は多くの中小企業がひしめいているのに対し、コンソリデイテッドな産業は、少数の大企業による寡占か、極端な例では、独占企業により構成されます。フラグメンテッド産業は脅威となります。コンソリデイテッドな産業の場合には、分析はやや複雑になります。時に、寡占企業は、暗黙の了解で、価格協定に入ることがあります。（明らかに価格協定をやると、つかまります。）しかし、この暗黙の価格協定は、もろく、こわれやすい。アメリカのビール業界で、暗黙の価格協定がくずれました。ライバルに対して自社商品を差別化するために、広告宣伝費がかかり、モデルチェンジのためにＲ＆Ｄの費用がかかります。いずれにせよ、寡占状態の産業における高いライバル度合いは、明らかに脅威となります。

★　ライバル度合いが高かったとしても、好景気のため、需要が増大している場合には、ライバルも皆売り上げる余地があります。しかし、不景気となり需要を取り合うような事態になると、ライバルはこぞって価格を下げ始めます。つまり、その商品に対する需要の低下は、脅威となります。

★　出口障壁が高い場合には、企業はたとえ利益率が低くても撤退をせず、その産業にロックインされます。撤退に伴い、従業員に特別退職印を支払わなければならないとか、その企業に特有の生産設備を売却したい場合に、二束三文での売却を仕入れられるから、または、経営者心理として、撤退はしたくない、というのがあります。出口障壁が高い例として、アメリカの鉄鋼業界が良い例です。高い出口障壁は、脅威となります。

③　消費者のバーゲニングパワー
ポーターの５つの力モデルの３番目は、消費者のバーゲニングパワーです。消費者とは、最終消費者の場合と、小売店の場合があります。この力が強い例として、自動車の部品があげられます。

④　サプライヤーのバーゲニングパワー
ポーターの５つの力モデルの４番目は、サプライヤーのバーゲニングパワーです。インテルを想起すれば、理解は容易いでしょう。

⑤　代替商品
ポーターの５つの力モデルの最後は、代替商品の存在です。例えば、映画産業とレンタルビデオ産業は、良い例を示します。

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