黎明


もうないのだろうなと思う。
それは多分、自分自身の不安定さとか、不足感というものが
もうあの頃程にはなくなっているからだろう。

大学時代というのは、自分にとっては夜のイメージだ。
授業は夜に始まって、夜に終わった。
校舎の外の景色はいつも夜の闇だった。

キャンパスの、どの光景の思い出も、その背景はいつも黒く塗りこめられている。そして早稲田から、高田馬場の景色もだ。

大学生活の中で、おそらく楽しいことも沢山あったはずだ。
でも、こうして今振り返ってみると、
あの4年間というものは、自分の中ではなんとなく暗くて、
いつまでもやまぬ雨降りのような季節だったような気がする。
そして、あの時代のことを、今も懐かしい気持ちで思い起こす。
暗かったけど、夜明け前みたいな危うさがあった。
危うさ。いつまでも握り締めていては歩けなくなるもの。

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