海水から塩の作り方



 作り方はいたって簡単です。きれいな海で海水を汲み、強火で熱するだけです。この塩作りの副産物としてにがりも抽出できます。豆腐つくりに欠かせないにがりが入手できない場合には、この方法でにがりを取り出すことができるわけです。市販品のにがりを使うよりもずっとうまい豆腐が作れるようですよ。





塩70g、にがり20ccをとるのに必要な材料

海水 5リットル

用意しておきたい器具

海水運び用ポリタンク 輪ゴム さらしの布 海水汲み用バケツ
海水汲み用長靴 海水を煮詰める大きい鍋 わりばし 木のしゃもじ
火傷防止用手袋 コーヒーフィルター じょうご  





Let’s start!

作り方  
  【海水を汲む】
 きれいな海で、海水を汲みます。ポリタンクの口をさらしの布で覆い、輪ゴムでとめてフィルター状にしておき、海水を注ぎ込みます。海水の成分のうち、塩分は約3.4%で1リットル(約1Kg)の海水から理論上では25gの塩が取れます。今回は15リットルをポリタンクに入れて持ち帰りました。(着替えはもっていった方が良いでしょう。波をあびてずぶ濡れになりました)

  【濃縮】
 大きい鍋に海水を入れて、10分の2くらいの量になるまで強火で煮詰めます。摂氏100度の1リットルの湯に溶けていられる塩の量は280gですので、濃度が22%(始めの海水濃度の約7倍の濃縮状態)になると塩が結晶の形で現れてきます(析出)。

3 【析出】
 木のしゃもじなどでかき混ぜながら、10分の1の量になるまでさらに煮詰めます。(真ん中に立てている割りばしは、海水の水深を計るため線を書き込んだ割りばしです)

4 【ろか】
 10分の1量になるころ、海水が白くにごってきます。硫酸カルシウム(CaSO4)の析出がはじまったのです。これは水に溶けない成分なので、コーヒーフィルターなどでろかして取り除いておきます。鍋の底にもカルシウム化合物が析出しているので、こそげ取っておきます。

5 【塩の濃縮】
 ろかして透明になった海水を、中火でさらに煮詰めます。ボコッボコッと沸騰して、塩水が周りに飛び散りますので、火傷防止のために手袋をして絶えずかき混ぜます。見る見るうちに塩が白く析出しはじめ、シャーベット状の塩が現れてきます。

6 【にがりの分離】
 水分を含んで流動性が残っているいるうちにコーヒーフィルターでろかして塩を取り出します。フィルターに残った真っ白いものが塩で、ろかした溶液が豆腐の凝固剤に使う「にがり」です。

7 【乾燥】
 このままでもりっぱな塩ですが、余計な水分をとばすためにフライパンで焼いてみました。みなれた塩のできあがりです。写真右上の薄ピンクの容器には副産物としてとれたにがりの溶液が入っています。




ここでの「こつ」
※1 【海水】
 地球が生まれたころの原始の大気には、塩化水素を含んだ空気が地球を覆っており、塩酸の雨となって降り注いだようです。その塩酸は地上のナトリウムなどの金属を溶かし、塩化ナトリウム(塩)となって海水をつくりました。

※2 【海水の成分】
 金属化合物である「塩(えん)」が、海水1リットルあたり約34g溶けています。そのうち食塩とも呼ばれている塩化ナトリウム(NaCl)は77.9%(25g)あり、順に塩化マグネシウム(MgCl2)9.6%、硫酸マグネシウム(MgSO4)6.1%、硫酸カルシウム(CaSO4)4.0%、塩化カリウム(KCl)2.1%、その他0.3%となっています。
※3 【大きい鍋に海水を入れて】
 海水の量を把握するために、煮詰める前に割りばしで水深を計って、マジックで線を付けておきました。こうしておくと蒸発した海水がわかりやすく便利でした。

※4 【硫酸カルシウム】
 豆腐づくりのにがりとして利用できます。硫酸カルシウムは保水力が高く、豆腐づくりのときに使いやすく、またできあがった豆腐も舌触りの良いなめらかなものとなります。

※5 【水分を含んで流動性が残っているいるうち】
 水分が残っているうちに加熱を止めないと、ガチガチになった塩が鍋にこびりついてしまいます。塩は、もともと金属化合物でもあり、鍋にこびりついた塩は容易には剥がれません。不用意に塩を鍋にこびりつかしてしまうと、鍋そのものを潰しかねません。
※6 【凝固剤に使う「にがり」】
 海水は、最後の水分がなくなるまで煮詰め続けることはしません。これはにがりといって、塩化マグネシウム(MgCl2)や硫酸マグネシウム(MgSO4)などの苦みを感じる成分があるためです。にがりは液体で、豆腐をつくるときの凝固剤にも使われている成分です。にがりを塩から分離しないまま煮詰めると、鍋にこびりついてしまうため、途中でろかしてで分離させます。ただ、にがりは身体に大切な元素も多く含み、純粋な塩化ナトリウム(食塩)に加えると塩味に深みを持たせることができることから、隠し味として調味料のように利用するといった使い道や前述の豆腐のにがりとしての使い道があります。


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