☆心の中には宝物がいっぱい☆

水に巻き込まれる



高校生の私はバスで通っていました。
その日は台風がきていて早めに帰宅することになったんだけど、
駅から家に向かうバスのわずか10分の間にハプニングがやってきました。

ある交差点にさしかかったとき「雨がひどくなってきたなぁ~、バス停降りたらダッシュしよ」などと
のん気に考え事をしていると、突然バスが止まりました。
「え?バス停はまだ先やのになんで?」と思って外を見ると、雨が窓を叩き
付けていて全く前が見えません。
「あぁ運転しにくいんやなぁ」と勝手に納得してたけど、いつまでたってもバスは動かない。
運転席では何やら運転手さんがバタバタしていました。
「え?何?どうしたんよ・・・」私以外の人もザワザワし始めました。

そこへ運転手さんの一言。「すみません、バスではもう進めません。今からドア開けます。
水が入ってくると思いますが坂の上まで手をつないで歩きましょう!」
「・・・・???」
バスが交差点のど真ん中で止まってしまったのは、すぐ側を流れる小川が氾濫し、
お椀の底のような地形のその交差点に水が押し寄せてしまったからだったんです。
慌ててまわりを見ると、どんどん水かさは増していき、窓のすぐ下まできていました。
「歩くっていうより・・・泳げってこと?」

そのときは制服姿だったんだけど、生きて家に帰る方法はただひとつ。
泳ぐしかない!!泣き出す人も何人かいました。
年輩のおじさんはブツブツ文句を並びたてました。
運転手さんはひたすら謝っていました。
雨が降ったのも、川がたまたまタイミング悪く溢れ出したのも運転手さんのせいじゃないのに。

「みんな手はなすなよ、そんなに距離はないから頑張って脱出しよう!」
一人のお兄さんの掛け声でみんな荷物を抱え意を決して立ち上がりました。
ジャブジャブ胸もと近くまである水をかきわけ坂を登りました。
坂を登り終えたとき誰からともなく拍手がわき、見事に生還。
(そんなたいそうな・・・;^_^A)

バスを振り返ると車体の半分以上が水の中。
交差点沿いの家も1階部分の3分の2くらいまで浸水してる。
「あの自動販売機はもう使い物にならんやろなぁ」
といつまでものん気なことを考えながら、
革靴のグジュグジュって感覚を味わいながら家まで歩いて帰りました。

後日・・・・
自動販売機よりも私の学生カバンの中身の方が、使い物になりませんでした。トホホ・・・・


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