三文小説

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完全マニュアル



<完全自動機器の運転マニュアル>

お買い上げ頂いた「完全自動機器」をスムースに運転するには、ダンナさんをいかにマインドコンロールするかがキーポイントとなります。

次に実例をあげて、コントロールの方法を示します。

(1)たまった新聞紙の片付け

ダンナがいる時に、新聞紙を縛って見せます。大切なことは、ダンナの器用さの実力を読んで「それより必ず下手くそに」縛って見せることです。
額にアセを出し、一生懸命やっても、なかなかうまくできないことを示します。ようやく縛った後で、新聞紙が抜け落ちるとか、ヒモが切れるとかしたら最高です。

ソロソロとダンナが近寄ってくれば、しめたものです。首をかしげて「いつもうまくできないの」とか言えばいいのです。
「どれどれ、見せてごらん、チョッとやって見せるよ」といったら、「でもこれ、私の仕事ですから・・」とかいいながらダンナにやらせます。
これからが最も大切なところなんですが、「アラー、サスガ男だねー、初めてやっても、手つきがちがうわ!」とオーバーに褒めることです。
さらに極め付きは「あなた優しいのね、でも、こんなに器用とは知らなかったわ、見直したわ」でいいのです。

そして、また新聞がたまったら、ダンナの前で、新聞の束の方に視線を送ることです。動かなかったら、もう一度、縛るところからやり直します。

(2)他のものへの完全自動化の拡大方法

その後、「あなたの炊いた、ご飯は、なぜこんなにうまいの!」「あなたの焼いた目玉焼き、周りがカりッで、半熟が柔らかいわ、ドウシテ?」
「自動洗濯機でも、こんなに綺麗に洗濯できるのね!」などと、完全自動化のレパートリーを増やしてゆけばよいのです。

今まで、少しもやらなかった人に、急にこんなことすると疑われるわ、と思う場合は、今までダンナの「隠れた才能に気が付かなかったわ」とすっとぼけていれば、良いのです。

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