中国外交部の高官は、「(乱入は)真実ではない」と否定しているとAFPは伝えているが、オーストリアのメディアは、「首脳宣言が出されなかったのは初めてでも、中国が難癖を付けて文言を調整させようとAPEC議長国の執務室に殴り込んだのは、これが初めてではない」と伝えているようだ。アメリカ発の中文メディアが報道している。
2016年7月12日にも、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は南シナ海での中国の海洋進出をめぐり、中国が主権を主張する境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定したのは、まだ記憶に新しい。しかし中国はこの判決を「紙屑」として無視したまま、ウヤムヤのうちに「なかった物」としてしまったのを、覚えておられる方も少なくないことだろう。
このようなルール違反は、中国なら、いつでもやる。
11月14日付のコラム <安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録>
に書いたように、安倍首相は習近平の目の前で「『一帯一路』は潜在力のある(ポテンシャルの高い)構想で、日本は第三市場での共同開拓をも含みながら、中国側とともに広範な領域で 協力を強化したいと願っている」と誓っている。
一帯一路に協力するのに反対する意見が自民党の中にもあり、安倍首相およびその周辺は盛んに「国際スタンダード」を中国に要求しているので心配には及ばないと主張している。
ハーグの判決まで「紙屑」として扱い、APEC議長国の執務室にまで乱入して中国に都合のいい方向に国際社会における首脳宣言を捻じ曲げようとする中国に対して、「国際スタンダード」も何もあったものではない。
APEC執務室に乱入した中国代表──国際スタンダードなど守るはずがない
2018年11月19日(月)17時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)