Shionの部屋

2008/03/04
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テーマ: お勧めの本(8116)
カテゴリ: ■ 読書・哲学
西の魔女が死んだ

まいは中学に入ってまもなく、学校に行けなくなった。ほんの1ヶ月もたたないうちに。
学校は自分に苦痛を与えるだけのところ、と言うまいを、ママは理解できない。
困った果てに、ママはまいを祖母(ママのお母さん)に預けることにするが・・。

学校という社会からはみだして祖母の住む美しい田舎で過ごすまいの1ヶ月間の日々を、
本物の「魔女」だという祖母との心の触れ合いを軸に、みずみずしく描いた物語。



★     ★     ★     ★     ★


何人ものオン友さんに、「読んだほうがいい」「あなたのイメージ」と言われていたので、
「いつかは読まないと・・」と思っていた本です。
遅くなりましたが、読了しましたので感想など書いてみたいと思います。

いきなりなんですが・・
私には学生時代、すごくたくさん本を読んでいる友人がいて、
私はその友人のことをとても尊敬していました。
その友人が、ある日、外国の推理小説についてこんなことを言いました。
「私、最初から犯人がわかっている事件を、探偵や刑事が立証していく話が好きなのよね。」
と。

それを聞いて私は、たいへん驚きました。
私はそのとき、
『最初から犯人が解っているなんて、こんなにつまらない推理小説があるだろうか。
私には絶対受け入れられない。』
と思ったからです。

本は、先が見えないから読む気になるのであって、
最初から結末がわかっている物語をあえて読むエネルギーは、
私にはぜんぜん捻出できそうもありませんでした。

そんな私の「読書のこだわり」は今も健在。
だからこの「西の魔女が死んだ」のように、タイトルと最初の1行で物語のオチがネタバレしているような本は、私にとっては読み進むのが億劫な本の最右翼でした。
お勧めされたものの、果たして読みきることができるだろうか・・と不安に思った、というのがこの本の率直な第一印象です。

読了してみての印象はしかし、当初抱いていた先入観や
かたくなに守ってきたこだわりをくつがえすものでした。

学校での女子同士の、息が詰まるような・・神経が磨り減るような駆け引きに疲れ、
田舎の時間の流れのなかに避難してきたまいの、思春期らしい潔癖さや正義感。

まいの目を通して映し出されるのは、思春期の女の子にしか見えない、
現実的な、はっきりと鮮やかな世界です。
綺麗なものは驚くほど美しく、汚いものは目をそむけても逃げられない・・

まいの目の前に展開される世界の1つ1つは、良きに付け悪しきに付け、
どれもしっかりとピントが合って、まいの心に焼き付きます。
大人から見たら大したことではないことも、
まいにとっては自分で知覚した、確かに信じることができる『世界のすべて』なのです。
私は読み進みながら、自分の少女時代の思い出がフラッシュバックしてきて、
胸が苦しくなるような、にがい懐かしさを味わいました。

タイトルから解るとおり、この物語を読み進むことは、死という結末に近付くことです。
最初は縁遠かった他人である「魔女(おばあちゃん)」のことを、
読者は まいにかけられた言葉や、その優しい思いやりを通して、だんだん好きになっていく。

少女らしい孤独で潔癖な価値観が壁となって、生きることに迷子になっているまい、
世界を受け止めきれず持て余しているまい・・そんなまいを、そのまま優しく包み込み、
無条件に肯定し励ます祖母の愛は、まいとともに読者をも癒していきます。
読者は、読み残しのページが少なくなるにつれ、優しい祖母との別れを思いつつ、
ページをめくります。


★     ★     ★     ★     ★



人は、誰もが「死」という結末を手にした物語の主人公です。
「結末がわかっている物語を読むことは面白くない」などと奢っていた自分は、
結末へ向かう途中にある、小さな一瞬一瞬が繋がって人生という織物を織るのだということを
すっかり忘れていたんだと恥ずかしく思いました。


美しい自然の中で展開される静かな物語。
できれば少女時代に、この物語に出会いたかったです。




この夏、この小説は映画になりました。
下記公式サイトで予告編が見られます。
個人的には、本を読みながらイメージした通りの風景・・
魔女の家は、まさに私が心の中で想像した通りでした。


★映画「西の魔女が死んだ」公式サイトへ★




ワールド&アコースティック「フォレスト・ストーリー」~サウンドスケープ 映画『西の魔女が死んだ』







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Last updated  2008/10/27 11:50:01 PM
コメント(8) | コメントを書く


■コメント

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これこれ!  
左一  さん
これは姪っ子の好きな本で、私も読もうと思っていたんですよ~。
しおんさんのお墨付きもいただけたようなので、安心して読めます。

>最初から犯人がわかっている事件
私も「そんなの推理小説じゃねぇ!」と思ってたし「刑事コロンボ」の面白さもちっとも分らなかったクチです^^; (2008/03/05 12:50:57 AM)

左一さんへ>  
しおんw  さん
>これは姪っ子の好きな本で、私も読もうと思っていたんですよ~。
>しおんさんのお墨付きもいただけたようなので、安心して読めます。

>>最初から犯人がわかっている事件
>私も「そんなの推理小説じゃねぇ!」と思ってたし「刑事コロンボ」の面白さもちっとも分らなかったクチです^^;
-----

そうですね、これは・・あと何十年か早く出会いたかった感がありますが(爆)、自然描写などは特に、田舎っ子だった私にはツボでした。

たぶん、女性は誰もが大人になる前に、こういう時期を通り過ぎていると思います。
男子のようなフレキシビリティが無く、非常にタイトに物事を思いつめる時期を、です。
そういう意味で、実に懐かしく胸をかきむしる物語です。物語の流れは本当に静かで、大きな事件は起こらないお話なのですが。

刑事コロンボ、深く頷きました。私も無理でした。
でもこの物語に関しては、ちょっと違うかも、と思います。
お時間ができましたら、どうぞ。薄いのであっという間に読み終わりますよ。


(2008/03/05 01:14:58 AM)

Re:■ 梨木香歩 『 西の魔女が死んだ 』 ■(03/04)  
もるぷー  さん
長女が受験のときに読みました~
とっても気に入ってしまって、その後、梨木さんの本を読み漁ったのを思い出しました。
長女も気に入っています。
そろそろ次女が読んでもいいな。

わたし、犯人がわかっていての解決ミステリー、結構好きなんですよ。
作者の筆力もわかりやすいですよね。
さいきん(?)では、古畑任三郎がそうですね(笑)
(2008/03/05 09:15:07 AM)

Re:■梨木香歩 『 西の魔女が死んだ 』■(03/04)  
olive 2006  さん
昨日本屋さんでぶらぶらしていると、この本大きく宣伝されていて目に留まりました。買おうかと思いながらも息子に頼まれていた森絵都さんの「DIVE」を買ってしまいました。
映画の予告編見ました。こちらも、似たような風景が見れる田舎なんですよ。 (2008/03/05 05:55:14 PM)

もるぷーさん>  
しおんw  さん
>長女が受験のときに読みました~
>とっても気に入ってしまって、その後、梨木さんの本を読み漁ったのを思い出しました。
>長女も気に入っています。
>そろそろ次女が読んでもいいな。

>わたし、犯人がわかっていての解決ミステリー、結構好きなんですよ。
>作者の筆力もわかりやすいですよね。
>さいきん(?)では、古畑任三郎がそうですね(笑)
-----

こんにちは、もるぷーさん。
この本は、女性には非常に強く共感というか、共振(?)するお話だと思います。
私は、「単細胞の男性には、このまいの怒りや思いつめる気持ち、宙ぶらりんの世界でただよう気持ちはわからないだろう!」と鼻息荒く(笑)思いました。
私は梨木さんの本はこれが初めてです。もう1冊くらい、何か読んでみようかな?と思っています。

推理小説、もるぷーさんはいっぱい読んでいそうですね~。
私はアメリカの作品から推理小説という分野に入ったので・・煽って煽ってジャジャーン!という終わり方の読書体験が多く(汗)それに慣らされてしまった感があります。^^;
最近の推理小説を知らないので、これからは少しずつ読んでいこうと思います。
(2008/03/05 07:05:19 PM)

olive 2006さんへ>  
しおんw  さん
>昨日本屋さんでぶらぶらしていると、この本大きく宣伝されていて目に留まりました。買おうかと思いながらも息子に頼まれていた森絵都さんの「DIVE」を買ってしまいました。
>映画の予告編見ました。こちらも、似たような風景が見れる田舎なんですよ。
-----

こんにちは、olive 2006さん。
「DIVE」、面白いですよね~!
・・とはいうものの、私はまだ「上」しか読んでいないのですが。^^;
この本、きっと映画化されるということで、力をこめて(?)売っているのでしょうね。
息子さんには・・うーん、もしかしたら共感できないお話かも・・。お母さんにはお勧めです(笑)。

この物語でちょっと気になったのは、植物名がやたら出てくること。たとえば、キンレンカの葉をサンドイッチに入れたらどんな味がするか、読んでも解らない子が多いんじゃないかなあ、と思いました。
森に生えている木の名前とかね。
私は問題ないけど、我が家の子供たちにはちょっとわからないかも・・それが残念です。

olive 2006さんのお住まいはこの映画みたいなところですかー!
それは、素敵です。私のふるさとに、きっと似たところでしょう。
私が育った野山・・昨年のGWに遊びに行ってたくさん画像に納めてきました。もしよろしかったらどうぞ。(↓)

●ttp://plaza.rakuten.co.jp/shion9/diary/200705250000/

※ここのコメントにはリンクが貼れないようになっているので、●印のところを「h」にして辿ってみてください。 (2008/03/05 07:28:53 PM)

Re:■ 梨木香歩 『 西の魔女が死んだ 』 ■(03/04)  
HANG ZERO  さん
新潮の100冊だったかな...
選ばれていましたよね。
勿論、読みましたよ。
男性が読んでも、なかなかジーンと来るものありましたよ。
若い方にも、是非読んでもらいたい一冊ですよね。 (2008/03/05 10:15:44 PM)

HANG ZEROさんへ>  
しおんw  さん
>新潮の100冊だったかな...
>選ばれていましたよね。
>勿論、読みましたよ。
>男性が読んでも、なかなかジーンと来るものありましたよ。
>若い方にも、是非読んでもらいたい一冊ですよね。
-----

こんばんは、HANG ZEROさん。
この主人公のかたくなで繊細なところ、
男性に魅力はわかるまい!と思っておりました。^^;
そうですか。男性が読んでも感動できる物語なんですね。感想をありがとうございます。

我が家には女の子と男の子がいるのですが、男子に比べ、女子は物事の捉え方が独特で、自らを生き難くする時期があるという気がします。
ほんの一時期のことなのですが、そのときに見た風景というのは鮮やかに心に焼き付いているものだと思います。この独特な年頃を描いているという点で、この物語は貴重だと思いました。

この小説の適齢は、私のようなオバサンじゃなく、主人公と同じ12~13歳でしょうね。(笑) (2008/03/05 10:54:48 PM)

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