七宝519の好きなMONO!

+秘密+


あたしを見下ろしてる彼が、あたしに手を伸ばしながら小声で言う。
(そんな高いとこ、登れないよ)
戸惑ってるあたしをせかすように、彼が降りてきた。
「いいか!そこに足と手をかけて、一気に登ってしまえ!」
簡単に言うけど・・・。
「ほら!いくぞ!」   「えっ!?」
次の瞬間、急に空が近くなった。あたしの腰持って、彼が上へと押し上げる。精一杯手に力込めて、上に登りきった。
 吐く息が白い。夜空にゆっくり消えていく。
「いい眺めだろ?」 遅れて登ってきた彼の声に反応する。
「星。きれいだね」 「そうだなー!」
目の前には木があって、後ろは工事現場。木と木の間から公園のすべり台が少しだけ見える。
「さぁ!始めようゼ!」 いじわるそうな笑みをうかべて、彼は木をゆらし始めた。
「キャー!木がゆれてるー」「怖い!」
公園の方から二人の女の声。あたしの友達2人だ。
その声を聞いて、あたしの横の彼は笑いながら、さらに大きく木をゆさぶる。楽しそう。
「おまえもやってみな!」 あたしもいっしょにゆさぶってみる。
(あたし、何してるんだろう?)

 先に好きになったのは、友達の方だった。だから、言い出せずにいた。そしたら・・・つきあい始めちゃった。あいつ、今彼女とかいらない!ってあたしに言ってたのに・・・。
 何人かで、よく遊ぶようになって、今日も塾の帰り、ここでみんなで会うことになった。
 さっきから公園で叫んでるのは、あたしのとなりにいる彼の彼女。
(あたし、何してるんだろう・・・)

「そろそろ行こうか!」 あたしを置いて1人、先に下りて行った。
(もう!勝手なんだから・・・)少しそこに座ったままいると、行きかけた彼が戻ってきた。
「ほら!行くぞ!」 今度はあたしを見上げて言う。
ゆっくりと下りたのに、最後につまずいてこけそうになる。
「おい!大丈夫か?」 ほんの少しだけ心配そうに、彼があたしの顔を覗き込む。照れてることを気づかれないように、コクリとうなずいた。
それを見ると少し小走りに公園へと向かう。
 あたしより先に彼が公園に着いて、話し声が聞こえてくる。怖がらせたことで怒られているようだ。遅れてあたしが着くと、彼女が少しムスっとして言った。
「いっしょに脅かしてたんだ!?」 少しあたしをにらみつける。それに気づいた彼が、あわてて言う。
「オレがやらせたんだ!」 彼女の機嫌は直らない。あたしをかばったことで、怒りの矛先が彼へと変わる。
 彼は、一向に気づいていなかった。
彼女が怒っている理由が、怖がらせたことじゃなくて、あたしと2人でいたことだってことに・・・。
(バカだな~) そう思いながら、なぜか心の中は喜びでいっぱいだった。
 彼女に見せたことのない、あの一瞬を独り占めできたことに・・・。

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