All or Nothing。 何もかも世界の全てを飲みこんで吸い込んで、黒。混沌の色。あらゆる醜さとあらゆる美しさ、両方を知って濁るのか。黒は不純か。知りたくなくても知ってしまった切なさ、この世を全部手に入れた確かさ。善も悪も豊かさも貧しさも熱さも冷たさも、黒の中に混ぜ込まれ、塗り潰されてゆく。 あるいは宇宙空間に広がる漆黒の闇。それはまさに無。何も反射するものを持たないこの色は、「黒い」のではない。そこには何も存在しないのだから。ない、ということへの恐怖の色。いちばん怖いのは、何も持たないこと。守るべきものもすべも手の中にない、支えのなさ頼りなさ、足下のぐらつく思い。 何一つ残らず吸収されてしまいそうな。かけらも掬い取られず皆こぼれおちそうな。自分が有るということが分からなくなるかもしれない不安。たたかってもたたかっても勝ちはない。できることなら自らが闇に巻き込まれてでも証を立てたい。真暗の中にも自分を見つけられるならば。欲しいのは見通す力と信じる力。でなければ見つめてはならない。闇に目を向けると疑いが始まる。思いは黒く黒く塗り込められてゆく。次第に自覚する。遠のく意識の中、己が失われる感触だけがはっきりする。