卑劣の道、極めます(仮)

愛の四畳半劇場2



「何をしていらっしゃるの?」

 若き聖騎士が振り向くと、見慣れた魔術師の笑顔があった。

 その笑顔に微笑みを返し、若き聖騎士は再び前方に目を向けた。

「海を見ていました。」

「海を?」

 聖騎士の言葉に導かれるように、魔術師もまた、前方に目をむける。

「この海の向こうには、何があるのでしょう?」

 ふたりの視線の先にはどこまでも続く青い海原が広がっていた。

「いつか・・・・・。」

 聖騎士のつぶやきに、魔術師は不安を覚えた。

「・・・・・行ってしまわれるのですか?」

 消え入りそうな魔術師の声に聖騎士は振り返った。

「そのときがきたら・・・・・。」

 聖騎士の言葉に、魔術師は顔を背けた。聖騎士の次の言葉に怯えていた。

 そんな様子に、聖騎士は優しく微笑み、しかし、次の瞬間、いたずらな瞳で魔術師を見ていた。

「一緒に、と言ったらどうしますか?」

 からかうような響きの聖騎士の言葉に、魔術師ははじかれるように顔をあげた。

「えっ?」

 その瞳は驚きに見開かれている。

「私が、ですか?」

 海を渡ることなど、魔術師は考えたことはなかった。しかし、この若き聖騎士は海の向こうを見据えている。聖騎士と離れることなど考えただけで、魔術師の心は引き裂かれそうだった。

「あなたは私を守る盾になってくださると言ってくださったから・・・・。」

 魔術師は小さな声で言った。自分の心を確かめながら。

「えぇ。そのつもりです、いまでも。」

 聖騎士の瞳に魔術師の姿が映っている。不安げに身を竦ませている姿が。

 だが、魔術師の心は決まっていた。離れることなど、出来はしないのだ。

「私はあなたの行くところへついていきます。」

 思いを口にした魔術師にもう迷いはなかった。自然と口元に微笑みが浮かぶ。

 その魔術師の微笑みを、若き聖騎士はまぶしげに見つめていた。しかし、聖騎士にもまた、不安があった。

「士羽様・・・・・。」

 聖騎士は大きく息を吐き出した。

「航海は大変危険だと聞いています。」

 聖騎士の言葉に、魔術師はうなずいた。

「はい。」

 聖騎士は言葉を綴ることが出来なくなっていた。聖騎士自身が自らの言葉を恐れていた。

「私を・・・・・、連れて行ってはくれないのですか?」

 魔術師は小首をかしげた。不安げな言葉とは裏腹、魔術師は微笑みを浮かべたままだった。

 魔術師の微笑みの意味を、聖騎士はわからずにいた。

「そんな危険なところへあなたを連れて行くのは、やはり・・・・・。」

 聖騎士の言葉を遮るように、魔術師はきっぱりと言い切った。

「私は、あなたと一緒ならば何も怖くない。」

 聖騎士は、魔術師の微笑みの理由を、やっと理解した。それはもう迷うことのない者の強さだった。

 そして、聖騎士にもわかっていた。もう離れることなど、出来ないことに。

「そうですね。あなたの盾になるとお約束しました。」

 聖騎士に微笑みが戻った。

「離れてしまえば、守ることも出来なくなりますね。」

 その手をゆっくりと魔術師の方へ伸ばす。魔術師はあらがうことなく、その手に捕らえられた。

「いつか、その時が来たら、一緒に行きましょう。」

 聖騎士の腕に抱かれながら、魔術師は小さくうなずいた。

 城壁を渡る潮風はふたりの頬を優しく撫で、目の前に広がる海はどこまでも青く、ふたりの未来のように明るく揺らめいていた。


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9月8日、クロノス城北西の城壁にて


 書いてるときは楽しいんですけど、読み返すとこっぱずかしいですね^^;

 でも、まあ、どれだけくさい台詞を吐けるか大会なんだから、恥ずかしくて当然かw

 回を重ねるごとに、ノリノリになっていくにょほさんなのでしたw


 続くんですかね、これって^^;

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