同罪





私は目をあげると、それに気が付いた。
どこから迷い込んできたのか、ひらひらと舞う蝶々。
その色は白いようであり透明なようであり、見つめれば見つめる程に不思議なものだった。
そしてその動きは余りにも不規則、そして軽やかでやわらかく、
下手をすれば地に落ちてしまうようであり、
それでも力強く命を繋ぎ止めている気もした。

私はそれが欲しい、と思った。とくに深い意味も無いのだが。

しかし私は知らないうちに立ち上がり、まるで幼い子供のようにそれを追いかけ始めた。
蝶はそんな私を笑うように、あと少しのところでふわりと伸ばされる手をかいくぐり、なかなか捕まらなかった。
そしてその小さくはかない命を追っているうち、私は何時のまにか夢中になり、それしか何も見えなかった。
途中で神無とすれ違った気もしたが、気にも留めなかった。
私には聞こえる気がしていたのだ、それの声が。


おいで、・・・・・・・・・・・・・・・こちらに。


ただの幻、思い込みかもしれない。
でも、その時の私には、確かに聞えている気がした。

その声に引かれ、惹かれ、感じるまま、欲しいままに手を伸べる。

十五分くらい、そうして追いかけて居ただろうか。
目で蝶の動きをずっと見続け、ようやく慣れてきたせいか、私には好機というものが判ってきていた。
私は今だ、とばかりに手を素早く差し伸べようとしたその時、

灯が消えた。

突然前から伸ばされた手にあっさりと蝶は包み込まれ、悲鳴をあげる。
私は呆然と、その永遠かとも思われる一瞬を見守っていた。
夢から覚めたような、興醒めのようなひどく黒い感情に心は支配される。
「これが欲しかったのか」
声は現実を突きつけるような、それでいて穏やかで無表情だった。

私は彼の顔を見ようともせず、ただ首を横に振った。

すると彼は、あっさりと気が変わり、玩具に飽きてしまった子供のように「そうか」と呟くと、
手の平の中身をぱらぱらと地に落として平然と踵を返した。

先程までしっとりと綺麗に生きていた色はくすんだように見え、私はそれを直視しなかった。
・・・・・私はこれを手に入れ、何をしたかったのだろうか。
うっとりと手の平に入れ、眺め、終いには籠の中にでも入れてずっと自分だけのものにしたかったのだろうか?

私は最後に蝶だったものを一瞥し、彼の後を追い始めた。




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