「ミナコの思考回廊」

「ある少年の憂鬱」


「ある少年の憂鬱」


お願いします。

神様なんざ、信じちゃいないけど。

どこかの誰か。お願いします。

少しの間、僕を休ませて下さい。それを、許して下さい。



嫌な夢を見たんだ。大切な人が死ぬ夢。相手は誰だか分からない。
顔も名前も忘れてしまったから、きっと僕の想像力が生み出した架空の人物なんだろう。
でも、とても懐かしいと思った。そして、とても悲しいと思った。

悲しい気持ちは夢と現実を股ごして、夢から覚めても僕の気分は暗いまま。
もしかしたら、泣いてしまったのかもしれない。ちょっと、寝起きの記憶が曖昧だ。

だから今日は、日がなぼうっとして過ごした。でも外は雨。僕の気分は塞がるばかりだ。



僕の話を聞いてくれる?最近、どうにも頭がおかしいみたいなんだ。

時間が流れるのが遅い。手持ち無沙汰で、それだけで死にたくなる。今、幸せだから、このまま死んじゃおうかな、なんて。
ほら、矛盾している。頭では分かってるんだ。でも、どうしようもない。

だって僕の頭はポンコツで、どうにもおかしいみたいなんだから。


それから、やたらと音が気になる。

コタツのジーという音。スピーカーの待機音。外を走る救急車のサイレン。僕の頭の中の音。


(うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!)


あ、ほらほら、また救急車のサイレンの音が聞こえる。
これは、本当の音だよね。耳鳴りなんかじゃないよね。僕の頭の中だけの音じゃないよね。
救急車は、本当に外を走っているんだよね。

・・・・・・・・・・やっぱり僕、頭がおかしいみたいだ。



唐突に、僕は立ち上がった。

部屋中のカーテンを閉め切って、ステレオ以外のコンセントを根元から乱暴に引き抜いた。
それから最近買ったばかりのsonyのゴツいヘッドフォンを引っ張り出して、大音量で「Sigur Ros」のアルバムを流しながら、
隠れるように布団に体を滑り込ませた。

ねえ神様。お願いだから、もう僕をほうっておいて。

僕はもう、なにも見たくないし、聞きたくないんだよ。




ふと、身体が浮上する感覚。僕は目覚めた。

あれからどれくらい経ったんだろう。部屋は暗闇で、時間さえ確認できない。ヘッドフォンは枕元に転がっている。
重い頭にうんざりしつつ起き上がり、僕はとりあえずカーテンを開けることにした。



きっと僕は忘れないだろう。
このとき僕の目に飛び込んだ、青に緑に、黄色に赤に、真っ白に輝いた、生命の光を。
いつの間にか雨は上がって、代わりに抜けるような淡いブルーが空を覆っていた。

僕は暫く、呆然と窓辺に立ち尽くして。そうして思ったんだ。


この光景を、きっと僕は忘れないだろうな、って。



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