「ミナコの思考回廊」

「普通」


「普通」


普通に生きてきた。
幸せも普通。不幸せも普通。喜びも悲しみも怒りも、それなりに普通。
普通の学歴、普通の性格、普通の人間。

絵描きを目指している時点で普通じゃない、と言う奴もいたが、人はみな、何かしら好きなことがあるはずで、
それをずっと続けていきたいと思う。それは人としてはきわめて普通のことではないかと、わたしは思うのだ。

精神疾患を患っているなんて普通じゃない、と言う奴もいた。
しかし人間誰しも道に迷うことはあるはずで、過去に現在に未来に、悩み惑う。
それは人間としては、きわめて普通のことではないかと、やっぱりわたしは思うのだ。

普通の恋をして普通の失恋をして。
上にも出ず、下にも出ず。
(もちろん若い頃には、自分は何か特別な存在なのだという自負もあったのだけれど)
ちょうど真ん中の中庸な道を歩んできたのに。

・・・・なぜ、あんなに特別な人に惹かれたのか。
まず同性であるし、実力は上だし、性格は・・・ちょとヘン、かな。

普通の自分が、普通でない人に、普通以上の想いを抱いた。
それ以来自分は、普通じゃなくなってしまった。



朝起きてまずあの人のことを考える。

通学しながら途中で会わないかと思う。

授業中ふと今頃何をしているかと思う。

偶然出会うと少し浮かれる。

帰り道では、カラオケにでも誘えばよかったと落ち込む。

夕食を1人で食べながら、やっぱり誘えばよかったと思う。

眠る前に、また思い出す。

たまにはあの人の夢を見て、起きるなりはしゃぐ。

普通以上に幸せな日々。



ある日、食堂であの人を見つけ、一緒に食事をすることになった。
普通を意識する。普通な顔をして普通に笑い、普通に話す。

内心びくびくしながら。普通に、普通に、普通に・・・・・・。



ああ、普通がどんなものだったかなんて忘れてしまった。







(5月1日の『あなた』の誕生日に。今は亡き『あなた』に、この文章を捧げます)


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