Marybow

自分の顔

自分の顔


以前、役者仲間だった女性が、芝居のパンフレットの自己紹介欄にこんなことを書いていた。

「私はまだ自分の顔を自分で見たことがありません。」

それを見た私は、なに言ってんの?嘘でしょ?鏡で毎朝化粧してるじゃん。
とか思っていた。

しかし、最近になってようやく意味がわかってきた。
自分の顔を見たことが無いと言うのは、自分の目で直接自分の顔を見たことが無いと言うことなのだ。
つまり、自分の顔を見るときは必ず鏡に映さなければならない。
写真に撮るとか、映像にするとか方法はあれど、自分の目で直接自分の顔を見るということは不可能なのだ。

自分の目で直接自分の顔を見る。
考えもしなかったことだ。
確かに日常、自分の顔は見ている。
しかし、直接見たことは無い。
鏡に映る自分があたりまえすぎて考えもしなかった発想である。
しかも、時間をかけないと理解もできなかった。

こんなことに気付いた彼女はすごいと思う。
自分という人間を本当によく見ているんだなと思った。

自分の顔を自分の目で見る。
本当に一生かかっても不可能なことだ。
同時に、とても怖いことだ。
つまりは、自分で把握している自分の顔とは違う顔を、他人は見ているのだ。
そう、自分で把握しているとは左右逆転した顔だ。
他人が一体どういう映像で私を見ているのか。
確かめようも無い。

怖い。
しかし、とっても楽しいことかもしれない。
自分が絶対に知りえないことを、自分以外の人間は知っている。
なんだか不思議でちょっと面白い。

一体他人にはどこまで私が見えているのだろうか。
それを考えると、怖い反面、ちょっと面白くなってくる。

「私はまだ自分の顔を自分で見たことがありません」

あたりまえすぎて気付かなかった、とっても面白い言葉だと思う。

 Oct.23/2004

★戻る★


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: