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イスティスの隠れ家
蒼き石の物語 -ハノブ前編-
『蒼き石の物語』-ハノブ前編-
蒼き石の物語 13『ハノブ~工夫たちの街~』
この街は工夫の町。だが、もうひとつの顔を持つ街。
多くの駆け出し冒険者はこの街で多くの事を学ぶ。それは明るい未来かもしれない。それは絶望の夢かもしれない。
それを決定するひとつのきっかけとしてこの街はある。
うう・・・腹減った・・・
あたしは布を巻いたヴージュを杖に、のそのそとハノブの大通りを歩いている。
アウグスタをなんとか脱出してここハノブへこれたのはいいんだけど・・・その道のりが大変だった。っていうか地獄?
街を移動するため、旅の資金を手に入れようとギルドに行ったはいいけど、お腹減って台所で食料あさくってたらお菓子が出てきてワーイって感じで食べてたら実はそれがふもふ姉秘蔵のお菓子だったりして・・・その現場見つかって全治2週間(カム姉にお願いしてさえこれだけベットと長い付き合いになった)の大怪我食らったり、なんとか資金調達してハノブへ向かってたら方向音痴が祟ってエルフの集落に飛び込んじゃってこれまたボロボロになったりと・・・まぁ、いいか。思い出すだけでも痛くて痛くて泣ける。
と、まぁこんな感じで涙ぐましい努力の甲斐あって邪羅さんの住んでいるハノブへ来たのはいいんだけど・・・
まさか留守だとはね・・・
邪羅さんの奥さんに話を聞いたところ、「ちょっと用事が出来た」という事で、現在絶賛行方不明中とのこと。正直心配じゃないのかなーって思ってたら、笑いながら。
「いつものことだし、子供生まれてくる時には這いずってでも戻ってくるよ」
っていう言葉を聞いて、信頼されてるなぁ・・・などと、ちょこっといいな、って思ったりもした。
一応奥さんにカム姉さんの茶葉は渡せて依頼は完了したからいいんだけどさ。
だけど・・・
「・・・きつ・・・」
泊まってく? なんて奥さんが言ってくれたのだけど、さすがに図々しいと思いそれは辞退した。
大失敗。
ひとつ仕事を終えた安心感とか色々あるんだろーけど、情けない事に体はすでにボロボロだった。
多分今少しでも座ったりしたら寝る。絶対寝る。
ふと、そんな事を考えていると女性の声が聞こえてきた。これは・・・
その声の主を探す。いた。
その澄んだ声で歌う女性は、まぶたを閉じてゆっくりと声を流していく
ちぎれてはぐれていく雲が 鏡の水面を横切る
自らを疑わず羽ばたく旅鳥は 最果ての地へ
もし今私が風になれたなら 険しい山の頂を越えたら
やがて愛する人の下に 何を届けるのでしょう?
それは愛する人の傍で寄り添っているのでしょう
流れ落ちる涙の果てに 静まり行く冬枯れの季節に
見放された荒野の先に 人は何を見つめるのだろう?
どこかで続く悲しみが 落日を紅く染めていく
震える命がただ望むのは 安らかな母の胸
知らぬ間に夜の闇が包んでも たとえ言葉を失ったとしても
貴方が見えるただ一つの光であればいい
貴方が触れるただ一つの安らぎであればいい
やがて貴方の心の中にそそがれていけばいい
・・・メヌエットか・・・
何度かあたしも聞いた事がある曲。冒険者をしている者なら、酒場とかで結構聞いてる曲。
とても、うん。とても良い。
歌詞も確かに良いのだけど、何よりこの歌が彼女自身にとてもよく合っている気がする。
まるで、その通りの人生を送ってきたかのように・・・
母の胸・・・ね・・・
あ、やべ。あたし以外の人は皆拍手喝采だ。次々と彼女の前に置かれた箱にお金を投じていく。
うう・・・金マジでやばいんだよな・・・あたし・・・
気まずげに視線を動かすと、彼女と目があった。
ニコ、っと微笑む。っく・・・なんだこの罪悪感は!?
非常に気まずい。気まずいんだけど・・・ごめん。マジお金ないの。
杖にしていた槍を背中に収め、あたしは彼女にごめん、と言う感じに両手合わせてジェスチャー。
ぐ・・・苦笑された・・・
情けないなぁ・・・あたし・・・
そんな罪悪感と自己嫌悪であたしは歩く。目指す場所は銀行だ。
「残高がもうないだと!? なんでだ貴様ぁ!!!」
と、銀行に入るなり大声が聞こえた。うう・・・耳がキーンとした。
「お、お客様。他の方もいらっしゃるのですから、もう少し、もう少し声を抑えて・・・」
「これが黙ってられるかぁ!!」
んー・・・なんかこの声聞いたことがあるような・・・えっと・・・誰だっけ・・・
思い浮かぶのは何故かあたしがバイトしてる酒場『クリアレモン』(一度改名させようと店長殴ったけど無理だった)
そして次に思い浮かぶのは・・・酒に酔ったあたしと・・・
「あ~・・・寝癖か」
そうだ。彼は大佐。ダックス大佐だ。特徴のある、寝癖と間違われるようなあの髪型。あと、身長。間違いない。
魔術師であると同時に剣士(剣使ったとこ見たことないけど)、アウグスタの街でよく分からない事務所を開いている、っていう話を店長から聞いた事がある。
「何かして何故か英雄になって何故か落ちぶれて今じゃ悲しい社会の最下層ですよははははは」
とか言った瞬間に大佐から壮絶な一撃(一撃だけじゃなかったけど)を食らった上に店半壊していった、強者だ(その修理代とか支払いまだ終わってなかったよな確か
魔術師としての実力で言えば中の上。剣士としての腕前は謎。でも、何度かあたしが槍と蹴り食らわそうとして苦戦するので、総合的に言えば上のどっか。あたしと同じか、下手すりゃあたしよりも上かも。
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
とりあえずあたしはため息一つついて彼に近づいていく。
「ですから。私ども銀行側はただ貴方様の口座からこちらのリストに載っている方へ送金しただけです。アウグスタ支社に確認しましたが、このリストに関しては既にダックス様もご認識されていると連絡が届いています」
結構切れかけなのかも。銀行員の男性が、少し強目に大佐へ話している。
「かと言って・・・かと言って私の生活費も煙草代も全て空にされるっていうのはどういう事だ!! 只でさえあの破戒神父のせいで無償に近い労働させられていろいろ泣ける状況だってのに!!」
いや、あんたの労働なんか誰も把握してないって。銀行員も同じ意見らしく、すでに非難に近い視線になっている。
「財布をいつの間にか破戒神父にかすられるわ、よく分からないお使いのストーキングさせられるわ、ミオイとシイカを連れてハノブへ興行へ行ってきてください♪ とかこれまた理不尽極まりない要求されるわ!!!」
あんたただ単に愚痴言いたいだけだろソレ。あたしはゆっくりとヴージュを引き抜く。
「カンギはカンギで、あ、私、ちょっと用事ありますんで、とか言って逃げやがるし!!」
素振り~素振り~ヴォンヴォンとか風斬り音が響くけど寝癖野郎は気付いていないようだ。
あ、銀行員と目があった。お、なんかうなづいてる。「殺っちゃってくれません?」って感じだ。
期待には応えるべきだろうね、やっぱ。あたしのヴージュは凶悪な音をいい感じで彼の脳天で鳴らしてみた。
蒼き石の物語 14『暴力娘と不良英雄』
どんな状況に置かれようとも、人はそうそう変化するものではない。
だが、時としてその『変化』は一瞬で人を襲うことがある。例えば感情などだ。
大佐を殴り飛ばして物の見事にカウンター大破したので、その修理代は大佐に押し付けてみんとす。泣いても叫んでも知りません。
そんな感じで銀行で槍の修理代を『泣く泣く』支払ってきましたとさ。あとほんのわずかに残ったお金を生活費に当ててみる。
これで後はカム姉の1000万だけかぁ・・・
どうにも道のりは遠いですよ? ほんと。泣けるよね・・・
あたしはズルズルと大佐の首根っこをつかんで大通りを歩いている。
さて。普段なら大佐の暴走なんぞ見えないふりしてほっとくあたしだけど、今回ちょっと構ってみたのには理由がある。
どうにも今の手持ちのお金では次の目的地である古都まで行けそうにない。っていうか餓死する。
そんな悲惨かつあたしらしい悲しい結末を迎えさせないためにも、この街でフリーの依頼を受けようと思うんだ。
公社からギルドに依頼が行くというのはあくまでギルドに所属している冒険者のための処置だ。
だが、時に一般人からの・・・文字通り『安い』依頼というのは基本公社は扱わない。
公社も一応は企業であるわけだから、そんな安い依頼ばっか受けても仲介料なんてスズメの涙もいいとこだ、ってのが持論らしい。
でも・・・そんな『安い』依頼の中でも、時々化けるものがある。
それが、『探索』だ。
実は以前、あたしはここハノブでそんな依頼を受けたことがある。
その依頼を成功させた時、あたしの懐にまとまったお金が入ったことがあるんだよね。借金に消えたけど。
でも、正直その時受けた依頼は一人ではとてもじゃないけど無理だ。
あたしはその時相棒と一緒にその依頼をこなした。
「うう・・・・」
あ、起きたか大佐。
とりあえず、意識が戻り始めた大佐を適当なところで放り投げてみる。えい。
ガシャーン、って音じゃないな。なんかグシャ、っとか液体踏み潰すような音が聞こえてきた。やっぱりゴミ捨て場に投げるのはまずかったか。
と、あたしが1人で反省していると・・・
「うがー!!!!!」
と、大佐が頭にバナナの皮をのせて復活。お約束だね?
「ななななな、何しやがるこのあま!!!」
あたしって分かってないのかな? それはそれで悲しいなぁ・・・なので、その悲しさを紛らわすためにお腹のあたりを槍でえい。
「うごほっ!?」
ん~跳んだ飛んだ。なかなかいい飛びっぷりだね大佐。かっこ悪いけど。
と、そんな風にのんびりと構えたら大佐の背中に翼・・・っとこれヘイストか!?
見たことのない爆発的な瞬発力で接敵してきた大佐があたしに向かってパンチを放ってくる。
まず、よけきれないか!?
一瞬で槍を構えて戦闘態勢。こういうところで躊躇してたら冒険者でもなんでもない。身内でもなんでも攻撃してきたと認識したらあたしは容赦しない。どっちに責任があるかもこの際知らないことにしよう・・・っと!!
間一髪そのパンチはあたしの横をそれて・・・いや、あえてそらしたのか。あたしの体勢が少し崩れた。
あたしの横を走り抜けた大佐の笑みが見える。
だが甘いって。それくらいこっちも想定内。過去何度ふも姉とちぇるままのお菓子をこっそり盗んでまいちーのせいにしたと思う。相手の心理読まないと命ないんだぞ? あの2人特に容赦ねーし!!(この前は油断してふも姉に狩られたけど
後ろにいるはずの大佐をあたしは見ない。見ないが多分そろそろパンチがあたしの頭あたりに飛んできているだろうから・・・倒れる!!
ゴゥン、って風がさっきまで頭があった場所で唸りをあげる。普通そんな死ねるような一撃するかボケ。
そのまま倒立の要領であたしは重心移動させて両足を上に跳ね上げる。
決まれ!!
だが、これは大佐も分かっていたらしい。避けられたよこんちくしょう。
そうして素早くお互いが自分の立ち位置から移動。あ、ちょっと遠すぎたかも。
攻撃力、という意味ではあたしの方が上だけど、大佐にはなんと言ってもヘイストがある。間合いが遠ければあたしが優位のはずだけど、この場合はそうは言ってられない。っていうか重い武器振り回して外したらあの拳食らうわけか・・・
油断できない・・・さすが大佐だ。もし得物持ってたらちょっと危なかったかも。
じりじりと相手の動きを見ながら・・・あたしは少しずつ自分の攻撃範囲に大佐を入れていく・・・と、おや。
「何してんだおまえらぁ!!」
そこに登場不良っぽいやつA,B,C,D,E,F,G,H・・・ってこいつら合体するのか? この人数は。
「俺らの縄張りに、ずかずか入りやがってぇ・・・どういう了見だ!!」と、A。
そうだそうだとはやし立てるB~H。ここって君らの土地ですか?とか突っ込みたくなるけど、大佐から意識離せないので何も言わない。視線も意識も大佐に集中。どうやら大佐も同意見らしい。
っと、そこにFからこんな一言が。
「こいつら冒険者の癖に俺らにびびってるぜぇ」
あたし&大佐
「「あ”?(怒)」」
阿鼻叫喚の始まり始まり。
ズドーン、とか、ドカーン、とか、やめてー、とか助けてままー、とか人の悲鳴がどこかから聞こえる。
私には関係ないか、とモアレは横を歩くちぇるしーに意識を向ける。
「で、ちぇるさん。ハノブに何の用なの?」
クルネスの副ギルドマスターはギルドマスターに尋ねた。
「なんか、かほんずの兄貴が厄介ごとに巻き込まれてるらしくてね。あいつ前の一件でしばらく動けないっしょ。だから変わりにあたしらが出張ってるわけ」
「私らが出張るほどじゃないんじゃね?」
「まぁまぁ・・・その件で私たちのお財布はホクホクなんだし。他の連中にもしばらく休養代わりにお休みあげたから、これくらいはいいでしょ。暇だし」
最後のそれが理由だな、とモアレは思う。この人はギルドマスターの癖に意外と動きたがりで面倒ごとに首つっこむんだよな。
「ついでにギルドもリフォーム中だし? 居場所ないなら小旅行がてらギルメンのケアくらいはしてやろうよ」
楽しげに言うちぇるしーを見て、モアレは顔を軽く上に向けため息。
この前ギルドで受けた一件で現在ギルドのお財布状況はそれなりに潤っている。ちょうど前々からギルドメンバーであるイスティスの暴走とかふもふの爪とぎとかmythのお遊びメテオとかその他もろもろで痛んでいた建物の中を改装するんだとか。
どっちにしても私はのんびりしたかったのだけどなぁ・・・と思う。
「それで、そのかほんずの兄貴ってどんな厄介ごとに巻き込まれてるわけ?」
「なんか最近ハノブの炭鉱でコロッサス、って魔物が大量発生してるらしくてね。それの関係で色々なんかあったらしいよ」
色々の部分を詳しく聞いてくれよ。
「討伐?」
「んや、鎮圧だってさ。殺っちゃだめ」
「なんで?」
「色々あるんだってさ」
と、そんなやりとりがしばらく続いた後、2人は目的地に着いた。
その建物は木造ばかりのハノブでは珍しく、石造りの建物だ。警邏とかが使ってる施設なのかもしれない。
「ここ?」
「教えてもらった場所は・・・ここだね」
そして彼女たちはその建物に踏み込んでいった・・・
その頃イスと大佐は・・・
「誰が怖がってるだぁ? 私か? 私が怖がってる? 街のごみごときがほざくな!!」
「はいはい。泣かない泣かない。大丈夫大丈夫。もうちょ~っと気絶しないくらいに頭ガンガンと槍で殴るだけだからね~」
・・・・合掌。
蒼き石の物語 15『蒼氷と濁流と妖刀』
時に人は自分を疑うことがある。
今までこうだ、と思っていた事と逆の行動を無意識にとっていることに気付いた時や指摘されたとき。
そして、もうひとつは・・・
まずちぇるしーとモアレが気付いたのは異様な雰囲気だ。
重苦しい気配というものだろうか。それは建物のドアを開いた瞬間から二人にのしかかった。
「・・・なんだこの雰囲気は」
モアレはボソリと呟き、腰から重厚なトゲトゲハンマーを手にとる。
それに頷き、ちぇるしーも同じく腰に吊るしていた弓を手にとった。
ゆっくりと2人は建物内に入った。
広間。普段はここで警邏の連中が集まっているのだろう。机や椅子がところどころに置いてある。
ふと、モアレは部屋の薄暗さに気付く。
おかしい・・・
「部屋が暗すぎるな・・・」
「魔術?」
油断なくあたりを見回していたちぇるしーは静かにモアレに問いかける。
「いや、そんな気配は感じないね。だからこそ一層おかしいわけだけど・・・」
時刻は昼。外は快晴だ。
採光している窓を探してみるが、上を向くと三階まで吹き抜けになっていて、暗さで見えない。
だが、なによりも人がいないことの方が気になる。
・・・確かにおかしすぎるね
「なんとか周り見えるくらいに光があればいいんだけど」
と、呟くモアレは、ふと横に魔力の気配を感じた。
その気配の元はちぇるしー。彼女の体に淡い光が現れる。
彼女は弓を天井に向け、矢を番えていないにも関わらず弦を引く。
「マジカル・・・アロー!!」
その瞬間、彼女の手に光り輝く矢が現れた。
それを・・・放つ!!
矢は天井へ見事に命中。
破壊
ぱらぱらと天井の破片が落ちてくるが、大きめなものは全てモアレの手にあるハンマーで薙ぎ払われた。
「こういう力技はイスの領分なんだけどね~」
「いいんじゃね? 緊急事態みたいだし」
そして、破壊された天井からは空が覗く。
一瞬で周りを照らされた室内。
それを見た瞬間。モアレたちは息を呑んだ。
血文字
そう、明るくなった部屋の壁には血文字が書かれていた。
誰の血かはわからないが、少なくとも壁に字がかけるほど大量の血だ。その血の提供者は・・・生きてはいないだろう。
「悪趣味通り越してるよな、これ」
そう言ってモアレはハンマーを片手にその字に近づいた。
「・・・『人質と共に廃坑にて待つ』・・・か」
「どうやらほんと、これは厄介ごとみたいだね」
「人間の仕業じゃないよなぁ・・・これ」
「多分ね~・・・知恵のある魔物か・・・」
殺気はしない。少なくともこの状況を作り出した魔物はいないようだ。
目を閉じ、ちぇるしーは思考。モアレはそれを見つつ、別の部屋に向かう。
数分後
「あ~・・・何もないなこりゃ」
モアレは頭をかきつつ広間に戻ってきた。
誰か人がいないか確認したが、どうやら無駄足に終わったらしい。
思考を終えたちぇるしーはその報告を聞きつつ壁を改めて確認。
「よし。廃坑へ行こうか」
「げ。やっぱり?」
「やっぱり状況が気になるしね。かほんずの兄貴・・・へっちょさんが無事かどうかの確認もしないといけないっしょ?」
「まーそうだけどさー」
けだるげにモアレは諦めた顔でため息を吐く。
「そういや、気付いてた? あたしらよりも先にお客が来てたみたいだね」
「あ、そうなの?」
「うん。奥のドアさ。全部開いてたんだよ」
犯人の仕業だとも考えたが、それにしてはずさんが過ぎる。
ここまで暗闇を演出した犯人がドアを開けたままにする、という意味のない行動をするとは思えない。
「厄介事だなぁ・・・まじで」
「まじでイスの領分だよな。好奇心で首突っ込むの」
槍を回して何かに突っ込むランサーの姿を思い浮かべ、彼女達に苦笑が浮かぶ。
時は少し戻る。
「おおおおお!!!」
渾身の手刀がコロッサスの胸元に突き刺さ・・・らない。
堅い。人間であれば間違いなく貫く勢いであったにも関わらず、胸に刺さらず振動を与えるだけに留まった。
だが、わずかに動きが止まった。手刀を突きこんだ勢いを殺さずに彼は素早くコロッサスの腕をとり、顎をつかみ巨体を投げる。
「グォォォオ!!」
背中から地面に叩きつけられ、叫び声を上げたコロッサスはそのまま動かなくなる。
「っち・・・気絶だけってのがきついな・・・」
全身傷だらけのその青年の周りには5体のコロッサスが倒れている。
死んではいない。だが、しばらく起きれないほどのダメージは与えてある。
へっちょ従軍僧。元アウグスタ軍の「少佐」。若くして軍を退役しており、現在彼はハノブで医者をしつつ、街の争い事などが起こる度に厄介ごとに首をつっこんでいる。
だが、今回はその厄介の中でもかなり『おかしい』部類だ。
朝、警邏の待機所を訪ねたとき、彼は待機所の異変に気付いた。
壁に血文字が書かれ、廃坑へ来いと言うメッセージが書いてあった。人は誰もいない。
軍で様々な経験をしていた彼だが、こういう事態は初めての経験だ。
とにかく今は行動をするべきと判断し、公社へ連絡はしてはいるが・・・
「金が払われるか不明確な依頼に・・・公社は動いてくれるか、か・・・」
公社は慈善団体ではなく、企業である。明確な金額が提示されない依頼には決して動かないという噂もある。
「っち・・・皆生きてろよ!!」
彼は走り出す。仲間がいるはずの廃坑の奥へ・・・
蒼き石の物語 16『騒音の領主』
音には様々な種類がある。そしてそれらが幾重にも重なった時。
音は騒音と奏音に変わる。
ちぇるしー達が廃坑に向かっている頃、イスと大佐は・・・
「よーしジュース買ってこーい」
「煙草を買って来ーい」
「酒、酒だやっぱ」
「銘柄ちげーよこのボケ」
あははは♪ 気分いいなぁ♪
今あたしたちはハノブの広場にある廃材に座って色んな無茶を言っていた。
不良共叩きのめした後、なんか知らないけどこいつらのボスみたいな感じになっちゃったのよね。
なんというかこういう暴君みたいなのも楽しいよね~
こういうパシリ君たちって、結構貴重なんだよね。
と、こんな感じで女王様気分を大佐と満喫していると・・・
まず、聞こえてきたのは「い」の音。そしてそれはだんだん圧力になって・・・
「いい加減にしろー!!」
ドーンと来たドーンと。
何か衝撃波のようなものか? あたしは座っていた廃材と一緒に吹き飛ばされた。
というか、周囲全部吹き飛んだ。
不良たち、あと大佐。
くぅ・・・どうやら相当の音量だったらしい。頭痛がする・・・
痛む頭を押えてあたしは立ち上がる。
うわ・・・広場すごい惨状・・・
草どころか木も一律薙ぎ倒されている。
だけどこの地面の抉れ方・・・なんか一直線って・・・どんな爆弾を使えばこんな・・・?
視線をその発生源となった場所へ移すと・・・って、女の子? しかもなんか見た事があるような。
「ぐぅ・・・なんか前にも同じようなことが・・・・」
お。大佐復活か。不良共は・・・ダメねありゃ。完全にのびてるわ。
「大佐・・・今の「あれ」。なんか知ってる?」
大佐はあたしと同じ方向へ視線を向けると・・・あ、冷や汗出てる。知り合いだなこりゃ。
「ダ~ックスさ~ん~?」
怒ってる、っていうかなんか変なオーラ出てますよ? というか、さっきの衝撃波ってこの子?
見る限りギターを持っているだけな気がするんだけどなぁ。
って、おや。この子ってさっき歌を歌ってた詩人さんじゃない。
「銀行行くだけ、って言ってたのに、何でこんなところにいるのかな!?」
うわ・・・声が響く響く。頭にキーン来る!?
どうやらさっきの衝撃波は彼女が犯人らしい。でも、大佐の関係者?
大佐変な人だから類は友を呼ぶ、ってやつか。
にしても・・・これはきつい。揺れる揺れる。
槍を杖にしてなんとか立ち続けてはいるものの、すぐには回復しないなこりゃ。
音を使って三半規管とかそこらを揺らしているんだな。物理的な破壊も引き起こしてるとこ見ると・・・直撃受けたら死ぬぞこれ。
でも、どうやって?
かすかに魔力の残滓があるが・・・こんな広範囲破壊魔法なんか聞いた事がない。世の中広いんだなぁ・・・っていうのはこういう時に感じる。
どーしてあたしの周りってこういう容赦ない人多いかなぁ?
平和主義者のあたしとしてはそういうのはご遠慮願いたいのだけど。
「ミオイか」
立ち上がった大佐はボソリと呟く。それが彼女の名前か。
しっかしかなりご立腹のようだ。まったく、大佐何をしでかしたんだか。
「あー・・・悪い。ちょっと変な女に絡まれてさ?」
っておいこら。その変な女ってあたしか?
「そんな言い訳してもまだアーデル神父からの頼まれた事をひとつもしてないんだよ!?」
「あー・・・」
「だいたい大佐が旅費を落としたせいでさっきまであたし詩を歌ってお金稼いでたのに、大佐は遊びまわって~!!」
「あ、いや。決して遊んでいたわけじゃないんだ。いや、ほんとマジで。な?」
「いーえ。信用できません!! 人の裸見るような変態野郎の話なんて聞きません」
ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー
・・・何ですかこの会話?
あの子まだ20歳にもなってないような・・・ってそんな子の裸見た? うわ、大佐変態野郎だったのか。付き合い方変えないと。
と、んなこと考えてる暇ないな。とりあえず止めないと。
「あ~・・・おーい・・・ちょっと~」
「大佐が来てからというもの、なんかトラブル続きなんですけど!!」
「私だって好きで来たわけじゃない!! 文句ならあの外道神父に言え!!」
・・・ムカ
えい。
ズドン
「「・・・・・・(ウワ)」」
ようやっと止まったか。とりあえず穏便に話しを聞いてもらうため、あたしは二人の間に思いっきり槍を叩きつけてみんとす。
二人はだらだらと冷や汗を流しながらこっちを向く。
「とりあえず・・・紹介してくんない?」
ニコリと微笑みを浮かべ、二人にドス声を聞かせる。
「へ~ってことは今大佐家ないんだ?」
「人をホームレスみたいなに言うな。あとそんな哀れなものを見る目で見るな」
そうは言っても面白すぎて無理。
聞いたところによると、いろいろトラブルがあって、現在はワルツというメンバーに加わっているらしい。
まぁ、あたしが言うのもなんだけど、孤独好きで友達陰険(あたし除く)ばっかで金ない大佐には丁度いいんじゃないか?
境遇には同情はするけど。
と、シュボ、とあたしは鞄から煙草を取り出し、火をつける。
それをジーっと見る大佐。うん。上げないからね? 視線でそう言っておく。
「で、あたしたちのメンバーにいるアーデル神父の依頼で、ハノブにいるへっちょ従軍僧を助ける、ってことでここまで来たのですけど・・・」
へっちょ従軍僧・・・あーがほんずの兄貴だっけか。確か、以前がほんずから聞いた事がある。
で、話を戻すと本来アーデル神父1人でハノブに来る予定だったのだが・・・
彼は今アウグスタで起こった麻薬巣窟殲滅戦に参加し、毒盛られて入院中。動くに動けない状態らしい。
そういやあの時がほんず軍僧と派手に暴れまわっていたのって、確かその人だっけか?
即効性ではなかったけど、やっぱりかなりひどい毒だったらしい。がほんずも1ヶ月は動けないって聞いたし。
「でも、たしかがほんずとアーデル神父って仲悪かったよね?」
「ああ、その人のお兄さん・・・へっちょ従軍僧とはとても仲が良いらしいですよ?」
「ふぅん?」
まぁ・・・間々あることか。
「で、代わりに私達・・・私とダックスさんと、後1人・・・シイカがハノブに来たのですが」
「あー・・・まぁ、なんだ。財布を預かってた私が金を落としてな?」
「えーえー。いつの間にか私が管理してた財布がなくなってて驚きましたよ。ほんと」
ジトー・・・っと、すごい不信の目で大佐を睨んでる。うん。大佐、目を逸らしても無駄だからね?
「それで? へっちょ従軍僧とは会えたの?」
「それは・・・」
ああ、見つからなかったわけね。いないもんは助けようがないわな。
手紙は残した、というのを聞いた後、あたしたちはしばらく黙る。思考中ってやつね。
沈黙に耐えかねあたしは大佐に煙草と火を放り投げた後、黙って彼女らの言葉を待つ。大佐そんな嬉しそうな顔すんな。すげーいじめたくなるでしょうが。
あー・・・大佐だけ用事あったんだけど・・・まぁ、口火は切ってやるか。
「本人見つからないんだったら、しばらくこの街に留まるわけ?」
「あ、はい。でも、そのお金なくなっちゃって・・・あたしが街で歌って少しでも旅費の足しになるように頑張っているのですが」
大佐はその瞬間後ろを向く。後ろめたい気持ちがびんびん感じる。
へぇ~こりゃ丁度いいわ。
「ねーねーならさ? 丁度いいからあたしと仕事しない?」
「「仕事?」」
ハモるなハモるな。
「そ。あたし、相棒探しててさ。銀行行ったら丁度大佐いたから拉致したんだ」
「ら、拉致ですか」
といってもほんと、後ろめたい仕事じゃないんだけどね?
公社があんまり金になりそうにない仕事を請けることはないんだけど、その『安い』仕事の中には時折おもしろいものが埋まっている。
以前、あたしはここハノブの鍛冶屋で依頼を受けて廃鉱奥の特殊で非常に稀少な鉱物を『探索』して見つけた。
好奇心で聞いたところによると、その金属はかなり特殊なものらしくて、もともとハノブの鉱山はソレが目的で発展したらしい。
と言っても、街から近い鉱物はとっくに採掘されつくされて、今じゃコロッサスがたくさんいる鉱山奥でしか見つからないらしい。
で、どうやってそんな中で採掘したかというと・・・まぁ、いいや。
「かなりいいお金になるよ? もしかしたらン百万クラスのお仕事になるかも」
古都までの旅費としては十分。仕事の内容はかなりハードできついかもしれないけどね。内心で呟く。
「ほ、本当ですか!?」
おーし食いついた食いついた。
ウケケと心で笑いつつ、いー笑顔で彼女に微笑むあたしを大佐がかなりいぶかしげに見ているが気にしない。っていうかあなたには聞いてません♪
こうして話はまとまっていく。
・・・意外とこういう交渉ごとって向いてるのかもしれないね、あたし。
多分。今クルネスメンバーがあたしを見たら・・・
真っ黒な悪魔の翼と耳と尻尾が見えているかもしれない。
ああ、ギルメンいなくて助かったよほんと♪
などと、そうそううまく行くわけがないという現実を、あたしは忘れているのだった。
蒼き石の物語 17『借金増大』
不意打ちを受けたとき。人は二つの反応をする。驚きと怒り。驚きと喜び。
極論すれば、この二つに分かれる。だが、その反応は大きく異なる物となる。
あたしは大佐とミオイちんを連れ、ハノブのとある一角に来ている。
「ハギンさん。いる~?」
ここは鍛冶屋。鉱山の町らしく、色々な採掘道具とそれによって採掘された鉱物で作られた武器などが置かれている。
そして・・・
「おーイスさんか。金は振り込んだか?」
「いきなりそれかよおっさん」
「イスさんはいつも支払いが後になるからな。念を押しておかないとな」
「だからといってわざわざ振込み用紙まで作らなくても・・・」
などと、あたしとやり取りをしているこの人は、鍛冶師のハギンさん。
冒険者の武器というのはとにかく壊れやすい。特にある程度力のある冒険者の装備はそれに輪をかけて壊れる。
彼はそんな多くの冒険者の装備を直している凄腕の鍛冶師である。
「まぁ、さっき銀行から振り込まれた、っていう連絡が来てたしな。で、何の用だい?」
「ああ、この槍と一緒に頼んでた耳飾。直ってるかな~。って思ってね」
「おーあの耳飾か・・・」
と、彼はごそごそと店の奥にひっこんでいく。
そこへ大佐から話しかけてきた。
「なぁ、イスティー」
「何? 大佐」
「耳飾くらいでなんでこんなところに来たんだ? 俺達は依頼者のところへ行くって聞いてたぞ?」
その通り。あたしは今回の依頼者となるであろう人物から依頼を受けるために来た。
この「依頼を受ける」って結構大事なんだよね。だってこの世はシビア。儲かるであろう、という前提で動いても、実際はその動きが全く儲けにならない事もあるし、むしろマイナスになる場合もある。特に冒険者なんてやってると、そういう事をよく経験するせいか、何か仕事をする際には必ず依頼者と事前に打ち合わせをする。
そして、大佐が言った事はしごく真っ当なことだ。
「ああ、それはね?」
「例の鉱物が手に入ったのか?」
と、ハギンさんが戻ってきた。その手には小さな箱と・・・ん? なんだその包みは。
「んにゃ。まだだよ? ハギンさんとその事でも話そうと思ってね」
「当然買い取るぞ。なんせ、いよいよ例の鉱物が枯渇してきてな。ここ最近じゃ全く見やしねぇ・・・」
「うん。さすがにコロッサスの群れが相手じゃ、それを取りに行こうって冒険者は少ないだろうしね」
「ああ。俺が最後にそれを扱ったのは・・・お前の槍の修理に、だな」
うげ。道理であの値段なわけだ。以前よりも使いやすく、軽くなってるけど、威力が上がってるからからどーも怪しいとは思ってたけど。
「まぁ、500万でも格安だぞ? ある意味ボランティアみたいなもんだな」
「へーへーありがとうございますよ、っと。んじゃ、それの依頼をお願いしようと思ってたんだ。契約しちゃっていい?」
「ああ、分かった」
こんな感じで「依頼」は締結したのであった。
「おい、そこの兄ちゃん」
契約書を書いてもらった後、あたしは耳飾を受け取って、連れの二人と一緒に店を出て行こうとした時だ。
「ん? 私の事か?」
「ああ、アンタだよ。兄ちゃん」
「何だ?」
さもめんどくさい、という感じで大佐はハギンさんと向かい合った。
「アンタの腰にある刀・・・ちょっと見せてくれないか?」
おやいつの間に。大佐の腰にはさっきまでなかった刀がある。ミオイちんが持ってきたのだろうね。
「ん、まぁ構わないが・・・」
と、大佐は腰に差してあった二降りの刀を差し出す。
「ありがとよ」
と、その場でハギンさんは刀を鞘から抜き取る。天下の往来の近くで、んな事すんなおっさん。
「ふむ・・・・」
って、ちゃかそうかと思ったけど、やめやめ。ハギンさんの目がかなりマジだ。ちゃかしたらその刀で斬られそうな雰囲気がある。
二本の刀をじっくりと見て、彼はゆっくりと・・・ため息?
「メルトロード産・・・しかも名工の作りだな、これは・・・」
「ほう、分かるのか?」
「ああ、分かる。分かるけどな・・・」
何かひっかかったのか、ハギンさんの雰囲気はすごく暗い。
「悲劇だな」
「何!?」
そうして彼は刀を鞘に納め、大佐を睨む。
「ああ、悲劇だ。マジで悲劇だなこりゃ」
「何を言っている?」
うわ、剣呑な雰囲気。ミオイちん引いてるぞ大佐~
でも、あたしはこんなハギンさんを始めて見た。普段こんな風に責める人ではないのだが・・・
「小僧。てめぇ何斬りやがった?」
「!?」
ん? 大佐どうした?
「どうにもな。悲鳴が聞こえて仕方ねぇ。その刀。死肉と魂を吸ってやがる」
「・・・・」
「普通人を斬っても平凡な武器に魂は宿らない。だが例外はある」
鞘に包まれた二降りの刀を大佐に放り投げ、ハギンさんは目を閉じ静かに言う。
「ある程度・・・時間の経った人の腐肉を斬った時、優れた武器や防具にはその腐肉の魂が宿る。だがな、それだけならそこらのゾンビ斬っただけでも僅かながらに宿るもんだ。すぐ消えるし、俺も何度も見てきた」
「この刀は違うのか?」
「ああ、違うね。テメェ何人・・・いや、それだけじゃねぇ・・・『何を斬った』?」
「・・・・」
「優れた名刀っていうのは、それだけで作成者や持ち主の生きた魂が宿る。同時にそれが強さに繋がる。純粋で無垢な魂が宿れば、それだけで切れ味だって何倍にもなるが・・・」
「無垢じゃなかった・・・ら?」
ミオイちんが静かに言う。
「悲劇だな。何が起こるかわかりゃしねぇ。特にそれだけ優れた刀だ。俺でも恐ろしくなるくらいに嫌な叫びを吸っている」
「私は・・・・」
「まぁ、別に言わなくてもいいけどな。覚悟しとけよ? その刀は悲劇を呼ぶぞ」
悲劇か・・・怖いなぁ・・・
「どんな狂気を持って『悲劇』を吸ったか知らないが、その代償・・・呪いは自分で払うことだな」
大佐は刀をじっと見つめている・・・が、次には
「ああ、分かっている。私は悲劇さえ乗り越えてやる」
大佐はそう言い棄て。腰に刀を納めそのまま出て行った。
それを見て慌ててかけだすミオイちん。うう・・・なんか真面目な空気だ。苦手なんだよなぁ・・・こういうの。
「イスさん」
「あー何?」
「あの男にはああ言ったけどな・・・」
「うんうん。分かってる分かってる。大丈夫そうだよ? 大佐。仲間いるみたいだしね~」
気にしてたみたいだねハギンさん。言い過ぎたと反省でもしてんのかな?
「ああ・・・それなら安心だな」
「うん。んじゃ、言ってくるよ♪」
すたすたと、あたしは大佐たちを追いかける。ん~・・・鉱山かな? まぁすぐに追いつくでしょ。
そして、あたしが出て行った後に・・・ハギンは呟く。
「それでも・・・イスさん。あんたの首飾りに比べれば、アレはまだまだ甘いのかもしれないな・・・」
彼は仕事に戻る。またすぐに再会できることを祈って。
「大佐~ミオイち~ん」
「あ、イスさん」
と、ミオイちんたちはちょうど大通りのど真ん中で立ち止まっていた。人通り多い中で迷惑だなぁ。
と、まぁ原因は立ち止まっている大佐なんだろうけど。
「大佐~大佐~?」
聞こえてないなこれは。ん~なんかブツブツ言ってるし。
「私は・・・・・・を救おうとして・・・・」
・・・ムカ
「大佐~大佐~? んー・・・・・・・・・・・・・・・・・邪魔」
ズ ド ン
いー感じに大佐の脳天めがけて槍の柄で殴りつけてみんとす。うん。いい音だ。
ミオイちんや周りの人は驚いてるけど、このくらいじゃ死にゃしないって。
とりあえず気絶した大佐の首根っこを引きずり、鉱山に向かう。
ズーリズーリズーリポイズドンガシズーリズーリズーリポイズドンガシ
引きずり投げて首根っこ掴んで引きずり投げて首根っこ掴んで・・・の繰り返し。
ミオイちん泣きそうだけど、とりあえず先急ぎたいので無視。
と、そろそろ大佐が虫の息になり始めた頃、後ろから・・・
「イスティスさーん」
おや、この声は・・・
「双炎くん?」
そう、彼は以前アウグスタに使いぱしりになってもらった『伝達者』の双炎くんだ。
「やっと追いつきました~」
「こんなところでどうしたの?」
彼は腰につけてあるポーチから2枚の手紙を取り出し差し出す。
「これ、ちぇるしーさんと、ハギンさんから預かった手紙です。いや~ちぇるしーさんからお手紙を預かって、アウグスタからここまで来たのはいいのですけど、どうにも迷ってしまいまして・・・ちょうど以前知り合いになったハギンさんのところへ行ったらこっちに向かった、って聞きまして。このお手紙預かりました」
「ふぅん?」
と、あたしはまずハギンさんからの手紙を見てみ・・・・
「って何だこれは~!!!!!」
あたしは爆発した。
蒼き石の物語 18『暗き廃坑』
迷宮。ごく普通の生活を送っている者たちには縁のないものだと思われる。
だが、時にふとした何気ない生活や仕事の中に、それは作られ人を迷わせる事がある。
それは決して冒険者だけの舞台ではない。
イスティスが雄たけびを張り上げているころ、ちぇるしーとモアレはすでに廃坑へと突入していた。
「それにしても・・・」
ちぇるしーは、廃坑に入ってからしばらくして、どうにもおかしい、という印象を持った。
普通、長く放置されている廃校には魔物や、それ以外の何か・・・動物や、はたまた盗賊などがいるものだ。それは決してお約束というモノではなく、そうした場所に、普通人は近づこうとしないためだ。
ひっそりと、静かにさえしていれば、時折興味本位で現れる者から見つからなければ、こうした廃坑や洞窟は格好の隠れ家となる。
だが、時に興味本位ではなく、何か核心を持って現れる者に。闇に潜む者は容赦はしない。
「おかしい」
「ん? 何が?」
「この洞窟・・・おかしくない?」
「うん。何も出てこないね」
ちぇるしーの前を歩く女神官はその手に盾を持ち、前衛となっている。
神官というものは非常に丈夫である、という認識は冒険者の中では通論として存在する。
なぜなら彼らは『神の祝福』を受けており、非常に高い防御力を日頃から身に纏っている。
鎧や盾などあれば、その防御力はさらに強力となる。
そうして彼らは常に前線に立ち、多くの人々をその身で守っている。
そうした神官の1人であるモアレも、多くの戦いを経験してきた歴戦の神官だ。
だが・・・
「普通だったら、ここまで侵入してきた私達を排除しようとか思うはずなんだけどね」
「前もそうだったね。確かシーフ殲滅の依頼受けた時だったっけ」
「・・・ああ」
「ちぇるさんの真名も、確かその時に決まったんだよね」
「・・・・・・」
普段どちらかというとケラケラ笑う彼女だが、表情が硬くなったことにモアレは気付いた。
あんまりいい思い出じゃない、か。
『蒼氷の女神』
それがcool_nessギルドマスターである彼女の真名だ。
戦場での彼女を知る者は誰もがその名に納得せざるを得ない。
決して望んだ名ではなくても・・・だ。
「っと、来たかな?」
モアレの意識が視線の先にある淡い光に移った。
人工的な光じゃない・・・悪意があるな。
「ちぇるさん」
「分かってる」
彼女は腰に吊るしていたはずの弓をすでに抜き取っている。
右手に弓を持ち左手を右肩に付けられた刺青に触れる。
「モアレ」
それだけで、モアレは指示を悟り、祈り、歌う。
『来たれ精霊 歌え戦いの歌を』
意識を集中。右手に持つトゲトゲハンマーを媒介に、彼女は周囲に存在する精霊に呼びかける。
『ここに在るは戦場 今祈るは元素の叫び』
だんだんと集まる元素の精霊たち。
『いざゆかん 戦場へ!!』
ちぇるしーは感じる。自分の中にある元素の魔力が高まることを。最も得意とする魔法を作り出すための力が漲る感覚を。
彼女は左手に弓を持ち替え光に向かって疾走する。
光にだんだん近づく。光はちぇるしーに気付いたのか、光が強まり・・・
その光はゆっくりと固まりはじめ、人型となっていく。
その体から放たれる光は禍々しいものとなり・・・人型となり・・・皮膚があるはずの顔に、凶悪な意思が具現したように骸骨が浮かび上がった。
・・・ワイトね・・・
ゴーストの中でも上位の種族がいる。リッチー、ネクロマンサー、そして今ちぇるしーたちの前に現れたゴースト。ワイトだ。
参ったな・・・こりゃ大物だ。
上位ゴーストであるワイトはリッチーやネクロマンサーに比べれば、大きな力を持っていない。だが、それでも普通の冒険者が二人だけで相手をするような雑魚ではない。
ペロリ、とちぇるしーは舌で下唇を軽く湿らせる。
後ろからはちぇるしーの後を追走するモアレの存在を感じる。
だが、その存在から放たれる意思は決して後退しよう、などという弱弱しい意思ではない。
そう、彼女は神官なのだ。たとえ教会に属していない野良神官であっても、ゴーストを見逃すはずがない。彼らは死という神から与えられた試練を。天に昇り悔いを改める事を拒否し、生あるものから命を奪うことしか考えていない存在なのだから。
ならば自分も進もう。
「ああああああ!!!」
咆哮一閃。進む勢いそのままに、ちぇるしーは左へ飛び、魔力で作られた矢を・・・
「ウォーターフォール・・・!!」
上空へ。天井すれすれを狙って飛び立つ矢は・・・地へ墜ちて・・・いかない。
魔力の矢は進化する。
そしてそれは一瞬を越える刹那の変化。
刹那の時を経て、矢は数万の氷の雨と化し地へ墜ちるのではなく、降り注ぐ!!
「・・・!!」
ワイトは両手を振り上げ無言の叫びをあげる。皮膚無き骸骨の表情は分からないが、効いている事は間違いない。
ワイトに当たらなかった雨はそのまま地に突き立ち、消える。
そして、その地面を踏み越える神官がいる。
モアレ。
ちぇるしーはどこまで計算をしていたか分からない。だが、モアレにとって、絶好のタイミングでワイトの近くへ飛び、その身を一回転。
「いっちまいなよ!!」
ハンマーはその瞬間光輝く。ワイトが発していた怪しい光ではなく、それは信仰と祝福の光。
本来肉体を持たないゴーストを普通の武器で倒す事はできない。だが、神のエンチャントを受けた武器は別だ。
ズガン!!
モアレの持つハンマーはその凶悪な外見にふさわしい破壊をワイトに下した。
「・・・とんでもないやつがいたねぇ」
「うん」
ワイトを殲滅した後、彼女達は小休止をいれることになった。
「あんなのがまだいたら、さすがに私らもたないぞ?」
「・・・」
モアレは黙ってハンマーを見ている。
・・・ダメだなこれは・・・
祈祷の祈りか何かは知らないが、彼女はゴーストを浄化した時は決まって無口になる。
・・・野良神官と言っても、やっぱりアンタは神官だよ。
先を急がねばならないが、かといって追いついて戦闘になった場合。疲れていては話にならないのも事実。
彼女は肩を押さえ、モアレの様子が戻るまでしばらく待つことにした。
「そういや、なんていったっけ? 双炎くんか? 彼に渡した手紙って、何書いたの?」
しばらくして、祈りが終わったモアレはなんとなく、先ほどのワイトの事ではない別の事をちぇるしーに聞いていた。
「イスに何か手紙送ったんでしょ?」
「あ、あれね」
今思い出した。という風に見える。本当に忘れていたのかもしれない。
「カイエが渡しそびれていた手紙と一緒に、盗み食いしたお菓子代を払ってもらおうと思ってね」
「なんかいっつも稚拙な方法でmythのせいにしようとしてるアレ?」
「うん。なんだかんだで、もう1000万くらい食われてるからさ」
「証拠は? 無いと絶対とぼけるぞアレは」
「ちゃんとそこらへん調べてるよ」
苦笑しながらちぇるしーはモアレに向き合う。
「行こう。そろそろへっちょ従軍僧に追いつけるかもしれない。ここまでで彼の通った痕跡はあったけど・・・違う道を選んだんだろうね。あんな化け物いたんじゃ」
「そうかな?」
「少なくとも、彼はワイトを倒してなかった・・・目的地が同じなら、引き返していない分道のりは長くなるしね」
モアレはそれに黙ってうなずいた。
それを見て走り出したちぇるしーを追うべく走り出した。
闇は、まだその先を見通せない。
続く
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