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イスティスの隠れ家
蒼き石の物語 -ハノブ中編-
『蒼き石の物語』-ハノブ中編-
蒼き石の物語 19『激槍刃破』
人間は『痛み』に弱い。物理的な『痛み』、精神的な『痛み』。
確かに個人個人で差異はあるが、それでも人は『痛み』に弱い事は変わりはない。
なぜなら『それ』を意識した時点で、弱さを証明するのだから。
はいバタン。っていうかマジで痛い。。。。
あたしに来た手紙の内容は、こうだ。
拝啓
すまん。こっちの手紙渡すのを忘れていた。
さっき渡した耳飾りだが、なかなか修復にてこずってな。
色々専門の職人にまわしてたらいつのまにか
2000万
経費にかかっちまった。だが、これを直すのを依頼されたときに「金に糸目はつけない」って言ってたから大丈夫だよな?
ということで、今回ばかりはこっちも非があるわけなので急ぎというわけではない。
とりあえず分割でもいいから頼む。
敬具
追伸.一番金が動いたのは、お前に依頼された『呪い抵抗』だ。専門の呪術師がなかなか見つからなくて、アリアンで一番腕が立つ呪術師に頼んだらとんでもなく強化されていた。それだけで1000万だったわけだが・・・一応連絡しておく。
「うぉぉぉぉ!!! 馬鹿か貴様ぁあああああ!!!」
(激怒
いや、確かに依頼したよ? しましたよ?
だけど、なんで2000万ですかコラ?
確かにあたしも悪いけどそれはないんじゃないかなぁ~(切れ気味
うん。もうアレだ。踏み倒すか? マジで踏み倒すか?(マジ切れ気味
あ~でもなんであたしあんな事言っちゃったんだろ~どーせ不幸な呪いは消えないのに~(落ち込みに移行
もー不幸だよ~不幸すぎるよ~(号泣モード
って感じで四つんばいで自分の状況に泣いてみんとす。
「ダックスさん。イスさんなんか感情の起伏すごいね」
「ああ、いつもあんな感じなんだよな。落ち込んだと思ったら、いきなり切れたりして・・・巻き込まれるほうはいい迷惑なんだよな」
「ああ、なんかそんな感じしますよね? そういえばちぇるしーさんから手紙の依頼を受けたとき、すぐに逃げるように言われてたっけ。僕は帰りますね」
って好き勝手言って~・・・狩るぞコラ?
と、あたしは双炎くんの言葉で思い出す。ああ、そういえばちぇるままからも手紙来てるんだっけ。
さて、その内容は・・・
To.イス
元気~?ヾ(゚ω゚)ノ゛
今クルネス家はね、あの事件でもらった報酬でお家の修理をしてるトコだよ~
さて、今回イスにお手紙出したのは、
お菓子消失事件の犯人が分かったことをお知らせするためで~す。
前々から、あたしやふもふとかのお菓子が”頻繁に”なくなってたのは知っているよね?
で、この前カイエとヒラリンに密偵してもらってさ、
犯人特定するために色々動いてもらってたのよね~
うん。単刀直入に言いますね。
イスに、お菓子代1000万を請求します☆
サクサクッと払ってちょうだいね^^
でないと...イスのあーんな写真やこーんな写真を
色んなトコへばら撒いちゃうぞぉ?(提供はモアレねb)
とりあえず、サンプルをひとつ入れとくから~♪
んぢゃ、次会ったときにお返事を待ってるね。
またね~♪ヾ(゚ω゚)ノ゛
From.ちぇる
・・・
・・・
・・・
「ふ・・・・ふふふふふふふふふうふふふふふふ」
ああ、空が青いなぁ・・・
「あ、なんかイスさん壊れたよ? ダックスさん」
「うむ。危険な兆候だな。もしかしたら私たちも逃げるべき状況かもしれん・・・」
「おい寝癖」
ドス聞いた声で大佐を呼ぶ。
「う・・・な、なんだ」
「いくぞ」
と、あらあらどうしたの? 二人とも。ちょ~っと殺気だった目で睨んだだけじゃないの~あははははは♪
うんうん。分かった。この世は皆敵ね?金絡むと。よし、そんじゃお姉さん頑張ってお金稼いじゃうぞ~あははははは♪
はたから見たらどう見ても壊れたとしか表現できないような高笑いをあたしは街中で上げる。
で、数時間後
「いやああああああああああああああ!!!!」
「イスティー!! 死ぬ!! これ死ぬ!! マジでやばいって!!」
うっさ黙ってサクサク殴れ。
今あたし達はミスリル鉱山にいる。
非常に貴重とされているミスリルだが、ここハノブでもいくつか取れるんだよね。
でも、あたしの狙いはここじゃない。
この鉱山は、廃坑の奥に続く道が続いている抜け道があるんだ。
以前その抜け道を発見したんだけど、一つだけ欠点が。
っと、右からガーゴイルが火を吐いてきた。あたしはそれを槍で打ち返す。はい消えた~。
大佐もなんだかんだと目の前のロックゴーレムを仕留めている。
ミオイちんは後ろで控えている。いざという時、彼女の音楽は一番の武器になるだろう。
うん。敵が多いんだよね? 一匹しとめているうちに十匹来るくらいわらわらと出てくるんだよなぁ~
この鉱山が採掘されずに残っているのはこういう理由がある。とにかく魔物が多く、でもミスリルが採掘できる唯一の鉱山なので廃坑になっていないってだけでいまだに入り口潰されていないんだよね。
以前公社に依頼されて魔物を駆逐しようとしたギルドがあったらしいが、結局数で押され失敗してしまったらしい。
だけど、そんなところにこそ金の種は転がっているもの・・・と!!
あたしと大佐の刃が次々と魔物たちを消していく。
さて・・・そろそろ頃合かね?
「大佐!! ヘイストを頼む!!」
「了解!!」
あたしは前に出て槍を横薙ぎにする。吹っ飛ぶ魔物たち。
そこに強い力が加わるのを感じる。
大佐のヘイストは特殊だ。効力は数秒しかもたない。だが、代わりにその効力は普通のヘイストの比ではない。
「ナイス大佐ぁ!!」
「当然だ」
と、そこであたしはミオイちんのとこまで下がり、彼女の細い腰を横抱きにする。
「「はい?」」
うんうん。不思議だよね? なんであたしがミオイちんを横抱きにするのか不思議だよね?
答えはこうだ!!
と、あたしはヘイストの速度を利用してポーンと魔物たちを飛び越える。
「っておい!?」
大佐に群がる魔物。
「大佐~囮よろしくぅ♪」
ウィンクひとつしてあたしはそのままダッシュだ。
「こら、てめ!! 何を言って・・・って、こっちくんなこっちくんなぁぁぁぁぁ!!!」
さ~てとりあえず第一関門突破ぁ~♪
前もこうして相棒のキルくんに任せて先に進んだんだよね。ちなみに彼は瀕死になりつつもそれを全部叩き潰したけど、大佐はどうなるっかなぁ♪
ふむ・・・目的地まで後少しだけど、借金返すにはどれくらい鉱石集めりゃいいのかなぁ・・・
暗い廃坑の先はまだまだ見えない。
蒼き石の物語 20『暗き影』
闇ある暗い場所に貴方は何を見るだろう? 恐怖か、悲しみか、それとも・・・?
だが、ひとつ共通点がある。それらは決して闇だけのせいではない。
人は、どこにでも闇を見ることが出来る。それが闇の存在なのである。
「ん?」
「どうしたの? ちぇるさん」
「いや、なんか今イスの高笑いが聞こえてきた気が・・・」
イスティスが大佐を囮にミスリル鉱山を爆走している頃。ちぇるしーとモアレは廃坑の奥に来ていた。
「それにしても・・・多いな」
「コロッサスの巣ね。表に出たら一斉に蹴りくらうね」
彼女たちは今廃坑奥の一歩手前にあるコロッサスの巣にいた。
岩越しに体を隠しながら彼女達はコロッサスたちの様子をうかがっている。
廃坑の奥は現在B9まで確認されている。
警邏の詰め所に書かれてあった『人質と共に廃坑にて待つ』、というのはおそらくこのB9の事だとちぇるしーは考えていた。
ワイトがいたのは誤算だったが、その後は特に何もなくここまでたどり着いた。
「最後の難関だね」
「ウォータフォールを使えば、足止めは出来ると思う。だけど、あいつら体力あるから一発じゃ倒すのは無理だと思う」
強行軍で怖いのは背後からの強襲だ。
もし、前に進んだときに背後から追撃を受ければどんな強者でも脆い。前と後ろを囲まれれば逃げ場なく8方から攻撃を受けるからだ。
「こういう時は前衛組に突っ込んでもらうんだけどねー。ふもふとかイスとかに・・・っていうかイスは勝手に突っ込むか」
「ありありと浮かぶねその姿」
そういえばイスは確かハノブにいたはずだけど・・・今どこにいるんだろう?
と、そこへどこかで聞いた事のある声が・・・
ちぇるしーは自分達が来た暗い道を見た。
あたしはミオイちんを横抱きに猛ダッシュしつつ煙草を取り出す。
槍はすでに背中に納めている。
「イスさん・・・大佐大丈夫かな?」
横抱きされたミオイちんから質問。
「大丈夫じゃない?」
大丈夫じゃないだろうなぁ・・・大佐結構ひょろいから、あの大群を叩き潰すなんて体力ないだろうね。ヘイストあるから多分逃げられるとは思うけど。
あたしは煙草に火をつけてミオイちんを適当にあしらう。
最後の問題はこの先なんだよね。コロッサスの巣。
「そういえば、この依頼って鉱石探すんだよね? どんな鉱石なの?」
「ああ、そういえば説明してなかったな」
今回の依頼で受けた鉱石というのは、いわゆるレアメタル、っていう金属が含まれた物なんだよね。
聞きかじりでうる覚えなんだけど、そのレアメタルと普通の金属を混ぜ合わせると非常に堅い硬度を持たせることが出きるらしい。
そのため、この鉱石自体がかなりの価格で取引されているらしい。
でも、加工した武器とか防具はもっと高いのだけどね・・・
あ、でもこの槍にも使われてるのよね。確か。
いざとなったらこの槍を売るしかないのか・・・やだなぁ・・・これ、プレゼントで貰ったのよね。
「はぁ~~~~・・・・・」
ため息が出るが仕方ない。借金返す可能性があるのって、今のところこの依頼だけが頼みなんだし。
まぁー頑張ろう。うん。落ち込んでても仕方ない。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
・・・あら? なんか大佐の声が・・・って、あら? なんか遠くに見えるのは・・・
「・・・ダックスさんの声?」
さっすが詩人。あたしでもかすかに聞き取れたこの声を聞き分けるとは。
「・・・イスさん・・・これ、危ない・・・」
「大佐っしょ? あれ」
「うん・・・だけどね? 大佐だけの声じゃないの・・・・・」
「・・・まさか・・・」
嫌な予感が。すげー痛い予感がする。
あたしたちが来た暗い道を。あたしは見返す。
「っくぅ!?」
大佐は降りかかるガーゴイルの爪を右の刀、銘『雷電』で受け止める。
そのまま素早くもう一振りの左の刀。銘『震電』で薙ぎ斬り捨てる。
・・・やばいな・・・
すでに彼は十数という魔物たちを斬っている。だが、先ほどから彼はジリジリと後退させられている。押されているのだ。
今はまだいい。いざとなればヘイストもある。なんとかギリギリだが、追い詰められてはいない。
だが大佐は1人だ。体力にも限界が存在する。すでに彼の体には無数の傷が付けられている。
正直いつまでこの拮抗した状況が続くかわからない。
「この代償は高くつくぜぇ・・イスティ・・・!!」
だがどうする!? 撤退したらあんの外道娘の事だから、絶対俺の分の報酬払うわけがない!!
と、そこまで考えたところへ・・・
「いたー!!!!!!」
「は? ってうわぁぁぁぁ!!!???」
ヒュン、という独特の音が響いたと思った瞬間。ダックスの顔をかすめ、後ろから次々と矢が飛んできた。
間一髪それを避けた大佐。だが、大佐を襲っていた魔物たちはその矢を避けきれず、次々とその餌食となっていった。
「な!? ななななな!?」
「ヒック・・・ヒック・・・・」
彼の視線の先にいたのは一人の少女だった。彼はその少女知っている。
「シ、シイカ!?」
「あたし忘れてどこいってるのこの駄犬ー!!!!!!」
「ひで・・・」
「もうもうもう。ぜ~~~ったい許さない!!」
彼女の名はシイカ。今回ハノブへ一緒に来たワルツメンバーの1人。
やべ・・・イスティの勢いに呑まれてすっかり忘れてた・・・
彼とミオイが外へ出ている間、彼女はなけなしの金でとった宿でお留守番をしていたのだ。
すぐに戻ると言っていたのがまずかった。
すごい怒ってる。ツインテールにしている髪が怒りのオーラのためか、浮かび上がっているように見える。
小さな体に大きなパワー・・・というべきか、彼女はミオイ同様感情が爆発するときがあり、その時、とんでもない力を見せる。
以前、ダックスはこの少女と
一度戦ったことがあり
、そのときはからくも勝利してはいるが・・・
「街の人に聞きまわって、ようやくここまで来れたのに・・・あたしを放って遊んでるなんて~」
この状況を遊びというお前の感性がまず遊んでないか?
そう思う言葉を飲み込んで、ひとまず彼女を説得しようとしたダックスだったが、後ろから迫ってくるロックゴーレムの剣を間一髪避ける。
「この状況はまずい・・・・な」
と、そこへ。シイカは弓を引いた。そしてその弓にひとつの変化が現れた。
弓に妖精のような光の球体が集まりそれが収束していき一つの光の矢に変わる。
「げ」
「気高き誇りと森羅万象の力と理を私に与えたまえ・・・・」
ボソボソと彼女はゆっくりと詠唱を行う。その両目一杯に涙をたたえて。
「どこかの泣き虫神官か貴様は!?」
迫るガーゴイルの爪をよけ、彼は高速詠唱開始。
素早く自身にヘイストをかけると、襲われること覚悟で彼は魔物の群れを跳ぶ!!
「ブレイジングフェアリー!!!!!!!」
その瞬間。彼は背中に爆撃をくらったように吹き飛んだ。
暗き道に光が生まれ、そして消えていった。
暗き闇はまた静かに戻っていく。
蒼き石の物語 21『合流』
人は寄り添うもの。それは何故か。
困難に打ち勝つため、孤独を恐れるため、ただ何か関係を持ちたいため。
それ以外にも多くの理由はあるが、最後にはひとつの結論に行き着く。
人は、一人で生きて行ける者ではない。そもそも思い出や経験がなければ、孤独という存在自体が存在しないのだから。
「さ~てどうしようかなぁ~」
あたしはミオイちんを横に抱えたまま全力疾走中。
後ろをちらっと伺うと、大佐がこちらに向かって全力疾走中。ついでに魔物の群れも全力疾走中。そしてその後ろから何故かガンガンと爆発音が連続で響いてくる。
意味わからん。
何かに追い立てられているのはなんとなく分かるけれど、なんで爆発が?
威力から見て、まいちーのメテオとかに比べれば幾分劣るけれど、十分殺傷能力はあるようだ。
って、おや? ミオイちんが後ろ向いたまま固まってる?
「・・・・・・・・・忘れてた・・・・・・・・・」
やっぱり意味わからないけれど、原因は分かっているようなので、とりあえず後で事情聴くか。
なんだかんだでやっぱり人一人を抱えたままダッシュは堪えるのよね。
でも、このままだとコロッサスの巣に飛び込んじゃう事になる。それは・・・・
あ、まずくねーや利用してやれ
「ミオイちーん」
「な、なんですか!?」
「舌」
「へ?」
あたしは疾走しながら腰の槍を左手で引き抜き、目の前にある壁に全力で投擲!!
速度ものっているから、ヴージュは回転しながららくらく壁にめり込む。
そしてあたしは・・・
「噛むなよー!!」
「うひゃあああああ!!!???」
そのままの速度と勢いで、槍の柄に飛び乗りジャンプ。
壁の高さ自体はだいたい4mほど。魔物たちをまくには十分な高さだ。あいつらに槍を登るなんて知識があるとは思えないしね。
そのまま着地して、魔物たちを伺うと・・・おや、すぐそこにコロッサスの群れ? うわ危ね。あと少し判断が遅れたらOUTだったかも。
魔物たちの相手はコロッサスにお願いしよう。ちょっとした誘導になるはずだし、なにより彼らはそれなりに知性を持っているって話だし。あたしの顔を覚えられると後々厄介だしね?
大佐はとりあえず助けておくか。
「大佐!! こっちー!!」
あたしは声を張り上げ大佐に呼びかける。魔物たちにも気付かれるかもしれないけど、大佐のヘイストがあればなんとかなるでしょ。っていうか爆発がドンドン近づいてきたなぁ。
あたしの声に大佐は気付いたようだ。槍をしっかりと見た。
そして彼は高速詠唱を・・・・
あ、追いつかれた。潰れた。うわグシャっていいましたよ? 怖いなぁ・・・・
そういえばああいう神経集中する術って結構難しいらしい。さっきは成功したけど、今回は後ろからのプレッシャーと疲れで失敗したんだな。
「ダックスさーん!!」
あたしがうんうんと納得している横で、ミオイちんが悲痛な叫び声をあげる。
って、あら? 今何か声が・・・・
「ちょっと、モアレ、もうちょい、もうちょーい!!」
「ちぇるさん重くなったんじゃない!?」
「あ、この!? 後で覚えてなさいよ!!」
「あーはいはい。んじゃ、行っくよー!!」
って、あら?
そこにいたのは・・・
「ちゃるままー!?」
「あ、イス!? お菓子代返せー!!」
そこかよ
なんかどんどんあたしの予定から離れていくなぁ・・・?
蒼き石の物語 22『出会いは強烈に』
契約とは相互の意思が同調したときに行われる行為である。
それは書面などで表される。
だが、もしもその意思がとられず契約された場合は・・・・
大抵が破滅か・・・少なくとも良い結果には繋がらない。
「で、ちぇるママたちは がほんずの依頼の代役としてここまで来た、と」
ちぇるままからの強烈な一言のあと、モアレちんがコーリングで大佐を救ったり、一緒に転移してきたシイカちんからの一撃を食らって大佐が黒こげになったり、黒こげになりつつあたしのとこに飛んできた大佐に一撃いれて地面にたたきつけたり、生死の境をさまよう大佐を間違えて危うくトドメ刺しそうになったり(あたしが)、なんとか生き返らせようとなんのかんのモアレちんたちの一大ドラマがあったりと波乱がちょこっとあったが・・・説明めんどいので割愛。ってか、まぁどうでもいいや。
とりあえず落ち着いたところでちぇるままたちの事情を聞いたところ、どうやら大佐たちと状況は似てるっぽい。あたしはとにかくちぇるままチームと大佐チームの目的であるへっちょ従軍僧はコロッサスたちの巣の奥にいるらしい。
「うん。さっき事情話したとおりコロッサスの巣をどう越えるかが問題になってたわけだけど・・・」
ちぇるままが後方に視線を動かすと、その先にはコロッサスたちとあたし達が越えてきた魔物の群れが一触即発の雰囲気で対峙している。
コロッサスとミスリル鉱山の魔物の中は悪いと聞いていたが、ここまでひどいとはね。
正直あたしにはどうでもいい話だが、今の状況はある意味チャンス。
ひとまずここを越えることを優先して先に進んだわけだが・・・
「気付かないうちに大所帯になっちゃったなぁ・・・」
しかも借金鳥と化したちぇるままとモアレちんがいるし・・・厄介な。
どうやって巻くか考えていたとき、奇跡の生還を果たした大佐から声がかかる。
「・・・・イスティ」
「なに大佐?」
「報酬全部俺のモピ!?」
聞こえなーい聞こえなーいとりあえずもう一回寝とけ。
ちゃきちゃきと大佐を叩き寝かせたあたしはとりあえず単独行動をとろうとさっき提案したのだけど、見事にちぇるままに却下されちゃったのよねー(理由は逃げるから、らしいね?信用ないなぁ・・・
そんなわけで、とりあえずへっちょ軍僧を先に探すことになったわけだけど。
「目星はついてるの?」
「廃坑の奥、ってだけで特に情報はないのよ」
「なんていうかちぇるままらしい当てずっぽうだねぇ・・・」
「やかましい!!」
そんなやり取りをしつつ、ここB9Fにたどり着いたあたしの目に飛び込んできたのは・・・
「はぁぁぁぁぁあ!!」
彼の重い一撃が、炎を吐く魔物の腹へ突き刺さる。
だがそれでも、魔物・・・鳥の魔物に効いた様子はない。
まずいな・・・・
彼・・・へっちょ従軍僧は、今の状況に焦りを覚えていた。
廃坑の奥といえば、ここB9Fなのだが、コロッサスの群れを抜け、ここに来たとき、その鳥の魔物は現れた。
正直強い。
彼が回復の技を持っていなければ、何度殺されたか分からないほどにこの鳥の魔物は強靭な肉体と強力な剣の一撃を持っていた。
「だが!!」
振り下ろされた剣をバックステップで避け、彼は腰を落とす。
負けるわけにはいかん!!
この先にはおそらく警邏の仲間達を攫った魔物がいる。
それは予想ではなく確信。
以前からこの廃坑には不信な空気が漂っていた。いや、正確には『もう一つの鉱山』。
パブル鉱山からだ。
軍僧たちはその原因がパブル鉱山に封印されていた魔物のせいだと分かったとき。ひとつの案が採用された。
ビーストテイマーと呼ばれるものたちを雇い、その者たちの知識と使役の力で封印をとかれないようにするためだ。
なぜビーストマスターなのか? 彼らの魔物に関する知識はまさにその名にふさわしい物であり、その知識によって作られた城や街、砦は魔物にとって難攻不落の城塞として機能している。
つまり、彼らはこと魔物に関してはどんな職業の者たちよりも優秀な学者なのだ。
だが・・・・・
彼らは裏切った。いや、そもそも彼らが本当に人間だったのかさえ、今では分からない。
ビーストマスターたちの代表として、従軍僧の前に立った少年を間違いなく人間だと判断したのは従軍僧本人だ。
・・・あれは何者だ・・・・?
その時、鳥の魔物が持つ剣を避けた従軍僧の背中にすさまじい衝撃が飛び込んできた。
「ぐぁぁぁぁ!?」
なんとか体勢を整えつつも・・・従軍僧は立てない。
彼の視線の先にいる魔物が、もう一体増えていた。
凶悪な顔を持つ黒い悪魔が炎を纏い闇から現れたのだ。
軍僧の背中にたたきつけられた物の正体は、どうやらその炎。
「っく・・・油断したか!?」
軍にいたときにはありえないミスだった。敵は一人と思うな、という戒めを忘れていた結果がこれだ。
なんとか立ち上がりつつも、この鳥と悪魔の化け物の隙を見て回復の技を使えるとは思えない。
軍僧の脳裏にちらついた死という概念が強く浮かび上がったその時。
「邪魔」
その一言で、鳥と悪魔は吹き飛んでいた。
ついでに次の瞬間には彼も空高く舞い上がっていた。
あそこにあるのは例の鉱石じゃん!?
あたしはいちもにもなくダッシュをかける。
って、なんか変なのがいますよ? 鳥と悪魔? すごく邪魔ですよ?
「邪魔」
の一言をかけつつ、とりあえずあたしは横薙ぎでそいつらを吹き飛ばす。
金が絡むと妙に力が沸くんだよな。あたしって結構俗物だなぁ・・・でも借金返さないといけないし?
ホームランを叩き出したあたしは、さらに目の前にいる『物』も一緒に吹き飛ばしてみんとす。
目標の物は・・・
「って、ただの光ゴケじゃん」
あたしはため息と共にそのコケをむしりとり、地面にたたきつけたあと・・・
モアレちんからの強烈なつっこみのホールが頭に突き刺さった。
痛い・・・
蒼き石の物語 23『魔物の正体』
どんなものにも裏がある。人はそれを本性と呼ぶ。
それが善であるか、悪であるか、そんな事は関係ない。
ただ、どんな物にもどんな人にも。
気付かぬ本性は存在する。
「ってことで、私たちは貴方を追ってここまできたわけ」
さてさて、なにやらちぇるままがミオイちんと一緒に軍僧と話し込んでいるけど、一体なんだろね?
とりあえず暴走するなと縄でグルグル巻きにされて、しかも丁寧に口に布あててしゃべれなくされているあたしをまずはどうにかしてほしいなぁ・・・
一応話しは聞いておいたほうがいいかな?
「助かる。後少しでやられていた」
「助け方はアレだったけど、まぁ「アレ」はいつもあんな感じだからさ。気にするな、っていうのは無理だろうけど無視してOKだから」
うわひでちぇるまま。最近容赦ないんだよなぁ・・・お菓子の件も含めて、「少々」壊しすぎたか。
「でも、廃坑の奥、って本当にここでいいの?」
「ああ・・・今廃坑となっているもので一番でかいのがここだからな・・・それに」
「それに?」
「あんたら、コロッサスの巣を通ってきたんだよな?」
「え、あ、うん」
まともな方法ではなかったので、なんだかちぇるまま後ろめたそうだ。
「実はな。今ハノブでは秘密裏にコロッサスと和解の契約を結ぼうとしているんだ」
「・・・・魔物と?」
それは驚きだなぁ・・・コロッサスって確かに人型だけど、知恵とかはそこまで高くなかったと思ってたんだけどな。噂によると、彼ら自身ゴーレムみたいな存在で、中身がなんなのかは分からないけど、意思疎通は無理だと思うのだけど。
「ああ・・・驚くのは無理ないな。だが、彼らの知恵は実はなかなか高い。実際、ビーストテイマーに依頼すれば意思疎通は可能なんだ」
ふぇ~・・・それは意外。
「この契約のおかげで、B9までしか開発できなかったこの廃坑をさらに掘り進めることができるようになる・・・予定『だった』」
「だった?」
そこから彼が話した内容を要約するとこうだ。
廃坑奥にはレアメタルが残っているというのは、ハノブに住む人間ならば誰でも知っている。だが、そこにいくにはコロッサスの巣を通っていかなければならない。そのため、今までは鉱物について知識のない冒険者を雇って採掘を依頼したり公社に依頼をして採掘を進めていたが、これでは効率的ではない。
だが、最近になって事態は変化する。
以前から魔物の巣窟のひとつと言われ、さらに凶悪な悪魔の封印がされていたバブル鉱山の魔物たちをビーストテイマーたちが沈静化することに成功したのだ。
これに目をつけた鉱山の持ち主が彼らに依頼をしてコロッサスたちとの意思疎通を図ることを計画。
「おかげでコロッサスたちの駆逐は全面禁止。確かに和平をしようと言ったほうからそんな事は出来ないからな」
計画は順調かと思われていた・・・・が。
「最近になって、ビーストテイマーたちの反乱が起こったわけだ」
ビーストテイマーたちのうち、半数以上が実は魔物であったかもしれない、と軍僧は語る。人の目をごまかせるほどの高位悪魔と、それに結託したビーストマスターにより、今ハノブの裏では様々な抗争が起こっている。
「それで、協力を弟とアーデルの2人に頼んだわけだが・・・・」
事態は一気にあちらに傾いたわけだ。
「意思疎通をするはずだったコロッサスは以前よりも凶悪化しちまったし、なにより他の高位の魔物たちも少なからず引き寄せられているみたいだ」
ちぇるままとモアレが目線を合わせている。ってことは何か思い当たったんだな。引き寄せられた、ってところに。
「本性を現したビーストテイマーや悪魔たちが何を考えているのか、正直分かんねー・・・だが、このままだと・・・少なくとも警邏の連中に命があるとも思えない」
少なくともここに軍僧を呼び出した時点でバリバリ殺意あると思うのだけどね?
なんにしてもいかないわけにはいかなかったのだろーけど。
「公社に依頼は?」
「した。全部話した。っつか、少なくともこの件に関してはほとんどの事に公社も足つっこんでいるんだ」
多分動いてはいるのだろーけど・・・とにかく公社は仕事が遅いことで有名だからなぁ。
「コロッサスの件も、どこまで契約が進んでいたのかわからない。だが・・・もし操られていたとしても。俺の勝手で命を落とさせることもないしな」
ふぅん・・・そういうところは聖職者なわけだ。
「だが、私が見る限りでは先ほどの魔物たちくらいしか見当づかないがな。凶悪な魔物とやらには」
と、大佐も口を開いた。確かに、僅かではあるが、時間は経ったはずなのに他の魔物の気配はない。
「・・・・・いや、いるねぇ・・・・・」
と、モアレちんが呟く。
「うん。何かとても嫌な音が聞こえる感じがします」
ミオイちんまで何か感じているのか。
あたしには全然そんな悪い気配は感じないのだけど。それは他の人も同じらしい。
「その気配。追える?」
「追うだけなら無理じゃないけどね。特定するのは無理。気配が結構分散しちゃってるから」
「貴女は?」
「・・・・なんとかしてみます」
ミオイちんはギターを取り出し、ゆっくりと奏でていった。
その音は静。
そして彼女の二つ名は『騒音の領主』。
音が届く範囲は全て彼女の領域、支配圏なのだ。
「音が反響する、僅かな違い・・・あたしは絶対『聞き』逃しません」
そういって彼女はすこしずつ、廃坑奥に向かって歩き出した。
その後を、ちぇるまま、モアレちん、大佐、シイカちん、軍僧が追っていく。
って、待て待て待て待て!! あたしを置いていくなぁーーーー!!!
「んー!! んーーーーー!!!!!! んんんーーーーー!!!!(泣」
蓑虫が跳ねるとこんな感じなんだろーなー・・・なんて、どこか虚しい気持ちが湧き上がりつつも、あたしはとりあえず跳ねまくって存在をアピールしてみる。
・・・きづいてない・・・・(号泣
さめざめと涙があふれてくる。
そりゃ勢いあまって色々やっちゃったけど、さすがにこれはひどくね?
蒼き石の物語 24『連携』
人と人は互いに協力しあうことを知っている。
そしてそれは獣であろうと、植物であろうと、生きる上で必ず必要となるものだ。
完全な個であることは、完全な孤独であることは・・・
実は不可能なのである。
さて・・・
現在絶賛蓑虫中のあたしはあたりを見回す。
今のところ特に変なのは出ていないけど、この蓑虫状態だったらアレだ。やられ放題?
ちょっぴり寒気がしつつも、どうにか抜け出せないかと・・・もぞもぞもぞ
一分後
「・・・」
五分後
「・・・・・・」
十分後
「#############################################」
だー!!!!!!
あんの変態神官(モアレ)が!?
どうして神官なのにこんなにきっちり締め上げることができるんだ!?
いや、っていうか縄を持っていたのもモアレちんだし、普段一体何のために持ってんだ?
・・・拉致?
・・・幼女?
・・・幼女拉致?
とっても怖い想像を思いついてしまいガタガタとしばらく震えた後、とりあえず深呼吸して落ち着いてみんとす。
状況を整理してみようか。
今は廃鉱の奥深く。
さっきまでかなり凶暴な魔物がいた。
ここにきた通路をちょっと戻るとコロッサスとミスリル鉱山の魔物たちが盛りだくさん。
仲間は全員奥にいっちゃった♪
ヴァー・・・・なんていうかこれって絶望的じゃね?
愛用のヴージュも思いっきり壁に突き刺さってるし。
こうなってしまったらゴロゴロ転がるしかやることないゴロゴロ~ゴロゴロ~
ふと、さっきの話を思い出す。
今回の問題となっているのはどこだろう?
おそらくビーストマスターと、封印されていた魔物たちなのだろうな。
だけど・・・何かもっと大事なことを忘れている気がするのはなんでだろう?
結局ビーストマスターの目的ってなんだろう。
封印されていた魔物たちを復活させることならすでに終わっている。だけど、その上で何故コロッサスを凶暴化させた?
何よりも冒険者であるはずのビーストマスターが高位悪魔に協力するメリットは?
「・・・ん~~~~・・・」
あんまり頭のよくないあたしだけど、今回はそっち方面で走っているわけじゃないから第三者の目で見ることが出来る。こんな事、誰でも思いつくと思うのだけどね。
「ふぁふぇふおほのひょうはいはぁ~ふぇ~(だけどこの状態じゃあ~ね~)」
ああ、こんな風に声でるのか。
なんとなくそんなことで納得しつつ、ぴょんぴょん跳ねてみる。
ふむ・・・間接は動かせるようだし、これなら立ち上がることは出来そうかな?
(転がって)ごろごろごろごろ・・・(壁に背中を押し当てて足で登って)よいしょよいしょ・・・
ううん。他の人から見たらかなり怪しい姿だよなぁ・・・・
さて、目的はあたしの槍。壁に突き刺さったままのあたしのヴージュは刃が先端を包むような形状になっている。うまくその刃に縄をこすり合わせれば・・・・
(ゴシゴシ)んしょ・・・んしょ・・・
うう・・・むずかしい・・・
でも、普段は刃を使わずに芯の方で殴るようにしてるから刃こぼれは少ない。
五分ほど悪戦苦闘して、なんとか・・・・・・・・あれ?
「じー」
・・・さて、あたしの目の前にいるこの子は・・・確か・・・
「ひぃかひゃん(シイカちゃん)?」
「あ、気付いてくれた~ヾ(゚ω゚)ノ゛ワーイ」
うわ!? なんか今喜びのオーラが出たぞ!?
そんな事を思いつつ、彼女はテクテクと歩いてきてナイフを取り出す。
「で、ミオイちんに言われてここに来たんだね?」
「うん。そうだよ~」
忘れられてはいなかったんだなぁ・・・
あたしはシイカちんに縄を切ってもらい、痺れかけていた腕をぐい~・・・と伸ばす。
「で、みんなは?」
話によると、あたしを置いていったことを最初に気付いたのはなんと大佐らしい。
で、みんなで話し合って誰かがあたしを助けに行くことになって、その白羽の矢にシイカちんがたったらしい。
「戦力的にあたしは部外者っぽいしね」
そっかなぁ・・・・さっきまでミスリルの魔物たちを追い立てたほどの実力なら少なくとも部外者、ってほどじゃないと思うのだけど?
「あたし、感情が爆発したときが一番力発揮タイプらしくって(ノω<)ペチョン」
俗に彼女のヒステリック・ブレイクっていう力があるらしい。感情の高ぶりによって、考えられないほどの力を発揮できる人がいることは知っているけれど、実際に目にしたのは初めてだ。
まぁ、本能が支配しちゃうことが弱点といえば弱点か。
「で、みんな奥に行っちゃって・・・あ、でも道が分かるようにお金を目印にしてるって?」
金だと!?!?
「イスさんなら金の匂いが分かるから・・・って、あれ? あれ? 待ってイスさ~ん○=( ノ>▽<)ノ」
お金お金借金返すお金~~~~~!!!!!!
あたしは走り出す。全力で。
あたしの明るい未来のために!!(握り拳
蒼き石の物語 25『謎のトレジャーハンター現る(ばればれだけど)』
冒険者とは、どのような者たちのことを言うのだろうか?
富を求める者? 名声を求める者?
確かにそれもある。
だが、ほとんどの冒険者は、識者からこう言われている。
『自分の欲を知る者』、と。
おっかねはどこかな~?
と、切実な事を考えつつ、あたしはあたりを見回す。
お金の匂いなんてのは実際には存在しない。あるのは、その事実のみ。
モアレちんやちぇるままの事だから、どうせあたしの習性(言ってて悲しいけど)を把握しきっているはず。
ということはお金はある!!
だけど、あの2人はそう簡単に渡そうなんて考えないだろうし(こういう”イタズラ”が好きなんだよね)
ちぇるままたちが歩いていった方向に来たはいいけど・・・・むぅ・・・・
欠片もありませんよ? 欠片であったらあったで困るのだけどね。
予想するに地面ではなく壁とかそういう意外なとこにあるはず。
走る速度を抑えて、周囲を注意深く見てみる。
あ、見っけ。
ちょっと高いところの壁にお金がめり込んでいる。
あたしは槍を壁に突き刺しそれを足場に・・・・よっと。
ナイスキャッチあたし。見事10Gがあたしの懐に入った。
小さい金額でもお金はお金。特にあたしみたいな貧乏人には重要な収入だ。
それにしても、一体誰がこんな高いところにお金を?
「イスねえさ~ん(ノ>▽<)ノ置いてかないで~」
っと。シイカちんが追いついてきたか。さすが、ヘイストかけた大佐を追いかけ続けただけはあるね。
あたしはこそこそとお金をお財布(特大がま口型)にいれて彼女に向き直る。
「イスねえさんはやいね~(>▽<)ノシ」
ううん・・・ま、まぁ元気な子だとういうのはよく分かるのだけど・・・ここまで存在アピールできる子も珍しいなぁ・・・大佐がどれだけ影薄いか分かるね?
「あ、早速見つけたんだ~」
「うん。でもこれって誰が置いてるの?」
「ダックスさんがやってたよ。さっきモアレさんに何か耳打ちされてからすごい形相でパシられてたヾ(゚ω゚)ノ゛」
・・・ああ・・・・あんの変態神官の仕業か・・・・納得できることがある意味すごいよなぁ・・・
「あ、そういえばシイカちんはどこまで皆と一緒だったの?」
「ここらへんで分かれたよ。イスねえさん、すごく早いからもう戻ってきちゃった」
ということはちょうどここからスタートか。
にしても・・・・なんだろう?
壁に・・・違和感?
あたしは槍を壁から引き抜いて気付く。
堅い・・・そうか、この通路・・・新しいんだ。
さっきあたしが蓑虫になってたところは長い間外気に晒されていたせいか、深く突き刺さっていた。
でも、この壁はまだ掘られて間もないせいかそこまで深くは刺さっていなかった。
っていうことは、必然この場所は最近作られたものということか。
ビーストテイマーや悪魔たちにどういった労力があるかは知らないけれど、こんな通路を作れるとはね~・・・
もしかしたら、軍僧たちの敵って意外と多くてヤバイんじゃないのか?
ああ、でも鉱石探さないといけないし。魔物たちがそんなものに興味あるとは思えないしね。
少し手伝ってこっそり抜け出そうかな~・・・なんて思っていたんだけど。
「ね、シイカちん」
「なに~?ヾ(゚ω゚)ノ゛」
「今回の事件。狙いはどこだと思う?」
「ん~・・・・・・・ハノブだと思う~」
やっぱりそうだよね。
どう考えても悪魔たちの狙いはハノブ。そうでなかったらわざわざ人であるビーストテイマーを仲間にするわけないし、ビーストテイマーも何かしらの目的があって悪魔たちの手伝いなんかしないだろう。
あたしたちみたいな冒険者は基本何しても自由なんだけど(もちろん法律や人としての道徳は求められるけどね)、暗黙の了解として人を害する悪魔たちに協力してはいけない、ってことがある。
もしそれを犯せば、それはつまり全冒険者、そして公社を敵に回すことになる。
特に今回は公の場で従軍僧たちに協力しているんだ。何か大きな目的かメリットがあると見て間違いない。
それが何かは知らないけれど・・・なんにしても厄介だろなぁ・・・
でも、無関係な人が何かに巻き込まれるのを黙ってみているほどあたしは非情な人間にはなれそうにはない。
なし崩しだけど、最後までこの事件の顛末に関わろうと思う。当然ハギンさんの依頼もこなすつもりだけどね。
さて、とりあえず思考はここまで。先に進むとしようか。
「じゃ、行こうか」
「は~いヾ(゚ω゚)ノ゛」
一時間後
「イスさ~ん・・・・」
「なに~?」
「疲れたよ~(。_ _)。」
そりゃそうだ。あたしだって疲れてるんだもん。あれから目印のお金を拾っているのだけど・・・・
「なんでこんなに置いている間隔が長いわけ?」
そうなのだ。最初の目印からしばらくはよかったのだけど、後になればなるほど目印の置いている間隔が長くなってる。おかげで分岐がある道を間違えたのも一度や二度じゃない。
「さすがにこれはきついよなぁ・・・・」
あたしたちは休憩がてらその場に座り込む。
にしてもさっきから悪魔どころか魔物一匹でてこない。
実はこれもあたしやシイカちんの神経をするへらしている一因。
魔物の死体がないことから、先に行った皆が戦闘しているわけではないというのは分かるのだけど・・・
かと言って、それであたしたちがのんびりしていいというわけではない。
魔物とは湧き出るもの。いつどこから出てくるかわかったもんじゃない。
さ~て・・・どうするかね~・・・・
と、煙草に火をつけようとしたところ、奥の通路から。
「わーいまたお金発見~ヾ(゚ω゚)ノ゛」
・・・・・・・・・・・・・・あ、シイカちんはここにいるから今の声は違うよな。
でも、この声ってどっかで聞いたことあるような・・・
なんだか嫌~な予感を抱えつつ、あたしとシイカちんは重い足を動かして奥に向かった。
一体どこまでこの道続くんだか
続く
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