空白だらけな箱

幸せはあなたの心の中に。



人は生まれた時、定命(じょうみょう)というものを与えられています。
この定命が尽きるまではこの世で生きていなくてはなりません。
生きることは楽しいことばかりではありません。お釈迦さまはこの世は苦しみの世 の中だと教えていらっしゃいます。
わたしたちは、心の中に真っ暗な「無明」というものを持っています。光りのないこの無明の中に、人間のあらゆる煩悩がつまっています。煩悩というのは、人間の欲望のことです。あれが欲しい、これが欲しい、あの人が羨ましい、あの人が憎い、もっとお金が欲しい、名誉も地位ももっと欲しい、といった欲望で煩悩は誰でも限りなく持っているといわれています。
誰でも生きているうちには、人を羨んで嫉妬したことはあるでしょう。嫉妬が高じて、気がついたら相手を憎んでいたことはありませんか。何かを手に入れたいという欲望は、限りなくて、いくら手に入れても、その瞬間からまた注ぎのものを欲しがってしまいます。
愛されたいと思い、ようやくその人に愛されるようになっても、もっと愛してほしいと思い、心の安まることもありません。
愛したとたん、苦しみがはじまるのが恋というものです。
新しい世紀に期待をかけ、あれもこれもよくなってほしいと祈ってきたのに、さて新世紀に身を置いてみると、ちっともいいことはなく、なんだか前の世紀のほうがよかったような、なつかしいような気がしませんか。
人間はいつも、ないものねだりなのです。そして心はいつも満たされない想いで、ぎしぎし音をあげているのです。
あんまりつまらないし、辛いからいっそ死んでしまおうと思っても定命の尽きていないうちは、死ねないのです。
深夜、思いわずらって眠れない時、誰かに苦しい胸のうちを打ち明け、聞いてほしい時、孤独にさいなまれて、さめざめとひとりで泣きたい時、ふと、手をのばして頁をくってみたい小さい本があれば、どんなにか心が慰められることでしょう。
わたしはそういう時、よく少女の頃から好きだった詩集を枕許に置いて、もうそらんじている詩をくり返し口ずさみ、心が落ちついたものでした。もし、この小さな本があなたにそういう役目をしてくれたら、そんな嬉しいことはないと思います。
どの頁にも、あなたにわたくしが心をこめて語りかけています。
あなたの悩み、苦しみを、どうかわたくしに話して下さい。そうして、この本の中から、わたくしの答えを探して下さい。
できたら、ハンドバックやリュックの中にいつでもこの小さな本をしのばせておいて下さい。あなたのひとりの時のお友だちにして下さい。
あなたの今の悩みや、苦しみや、悲しみは、けっしてあなたひとりのものではありません。個人的な心の悩みは、普遍的なもので、人間すべてが共有しているものなのです。
あなたはけっして、ひとりぼっちではないのです。人間は生まれた時からひとりで生まれ、死ぬ時もひとりで死んでゆきます。孤独は人間の本性なのです。
だからこそ、人は他の人を求め、愛し、肌であたため合いたいのです。
でも人を愛する情熱は必ず、さめるものです。自分の情熱が、または相手の情熱がさめたのを認めた時、人間は苦しみます。
苦しんだこと、悲しんだことのない人は、他者の苦しみや悲しみを思いやり同情することが出来ません。
相手が今、何を求めているか、何に苦しんでいるかを想像することが思いやりです。その思いやりが愛なのです。つまり想像力イコール愛ということです。
他の人が苦しみ、悲しんでいる時、そっとこの本を持たせてあげて下さい。
きっとその人はこの本のどこかの頁から、自分の求めていた声を聞くことでしょう。
あなたはたた、だまってその人の苦しい心の訴えを聞いてあげればいいのです。
答えは、この本のどこかの頁がしてくれます。
生きている限り、わたくしたちは幸せになる権利があります。
人間は幸せになるために、この世に生まれてきたのです。
そして、自分の存在によって、他の誰かをひとりでも幸せにするために生きているのです。
世の中は新しい世紀を迎えても一向に明るいことはないようです。でも、あなたは絶望しないで下さい。未来が若いあなたの手の中にあるのです。
過ぎ去った過去を思いわずらうなく、未来に脅え、心配することなく、生きているこの今の一瞬に全身全霊をかけ、切に生ききって下さい。
幸せはいつもあなたの心の中にいるのです。さあ、あなたの心をのぞきこんで下さい。


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