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行き止まりは、どこにもなかった
新!コテ派な日々~第十一話~(番外?Dead Data@第一話)
「チィッ…あと何匹居る?」
「分かんない…数えられる数じゃないし…」
「人型は逃げられただろうかな…連絡取りようがないから不安だが…」
「無事…だよね?無事だと、いいな…」「…だな。」
まさかのシリアス展開?全然雰囲気が違う今回だが、
事の発端はやはり、たった数時間前の事である。
……数時間前。
糊塗霧「ロドクよ。」ロドク「お、おう。なんだ?開けた瞬間その巨体は怖ぇよ。」つい閉じたわ一回。
糊塗霧「以前に、私は台本を書いたりしてたんだが、知ってたか?」ロドク「あー、ユキが言ってた奴か。まぁな。」
糊塗霧「その後も何度か書いててな。少しずつ調整しつつやっと完成した。」
ロドク「はー。つったって、それ演じるのって難しいだろ。え、で、やるのか?」
糊塗霧「やる。やらせてくれ。その許可を頼む。」ロドク「まー…実質世界全部管理は俺だもんな。まぁ、いいんじゃね?」
ロドク「てか普段そもそもそんな許可取らんだろ。どしたん、急に。」
糊塗霧「いや…っていうのも…実は私、新たな能力に目覚めてな。それも使う。危険を伴うかも知れんのだ。」
ロドク「唐突過ぎる。つーかお前、ただでさえ結構チートだってのに能力二重ってどうなん…」
糊塗霧「お前には言われたくない。で、どうなんだ?いいのか?」
ロドク「その上でも許可は出すけども。何?他の許可は出てんの?」糊塗霧「出てる。」
ロドク「さっすが、悪ノリは好きだねぇ、ドクイロのコテなだけあるわ…んで?」
糊塗霧「ん?」
ロドク「もう許可は出したけども。一応聞かせとけ。一体どういう能力だよ?」
糊塗霧「大体わかるんじゃないのか?」
ロドク「いやー…わかんねぇ。俺これまで作った能力は大体出したと思うんだが」コテが他に能力持ってた事…
糊塗霧「って事は私のオリジナル能力なのか?普段から小説を書いてるからな…。」
ロドク「?小説関わりなのか?」糊塗霧「フフフ。能力名を付けるなら、“ストーリー・テラー”と言った感じだな。」
ロドク「ストーリーテラー…?あっ、判った!あの能力か!、ってコテ関わりないだろそれ?何でお前が?」
糊塗霧「小説を書いてるって部分での共通項から私に付いたんじゃないか?てか、アレも能力か?」
ロドク「いや、どれ?」糊塗霧「他の人間のプロフは全部頭に入ってるんだが。」
ロドク「あー。まぁそれは単なる特性かな。」糊塗霧「…そうか。」
ロドク「どこまでやれるやら。」糊塗霧「かなりやれるぞ。かなり刺激的なストーリーになる予定だ。」
ロドク「…まー、死にはしないだろうけども。無茶しすぎんようになぁ。てか、その台本は見ていいの?」
糊塗霧「ダメだ。…と言っても、細かな部分は我々で各々やるからな。大筋は決まってるが」
ロドク「…分岐する予定なのか?」糊塗霧「するかもしれん。オリジナル性をたっぷり出してくれよ。」
ロドク「はー。アドリブがモノを言うのか…おーまぁ、サクサクやってこうぜ。」
糊塗霧「あぁ。やるぞ。では、スタートだ。能力…発動!!」キイィイイイン…
ロドク「お…?あれ、何か意識が遠のいて…」糊塗霧「全体的に世界観が違うからな、かなり干渉を受けるだろう。」
糊塗霧「さ、頑張ろうか…。終幕まで、一時…さよなら…だ…。」
コテキャラの世界。
それは夢に溢れ、とても楽しい世界であろう。
自分の分身であるコテに自分以上の能力を授け、
想像上の世界の中で無敵となり主人公となって楽しむ。
それはよくある事。それは、人々の夢。
それを誰も咎めはしない。
とは言え、自身にとって大きな黒歴史になる事は間違いない訳だが…。
個人で楽しんでる段階であれば危険も無ければ迷惑も掛けない。
ただ、それが…。
その夢が”大き過ぎた”時…
それは自分だけじゃない、相手や世界にまで大きな影響や被害を及ぼす災害に成り得る。
そうなってくると、もう、それは個人の楽しみで看過出来るレベルではなくなる。
…そうなると、かならず、止めに来る者がいる。その事を忘れないで頂きたい。
これは、大きくなりすぎた“夢”の哀れな結末を綴る物語となろう…。
【Dead Data~溢れた夢~】
「……?」
私は一体………誰だったか。
目を覚ました私はまず当たりを見回す。目に入ったその風景は、覚えがある。
この世界は、確か…そう。恐らく現実の世界とは別の世界だ。そして、自分たちもまた、人間とは別の存在。
固定ハンドルネーム…インターネットの世界で名乗る名前の事。それらの名前に付けたキャラクター的存在。
それが、固定ハンドルネームキャラクター。通称コテ。自分はそんな存在の一つの筈だ。
…と言うのは解ってる。が、その他の記憶が無い。
自分がどういうコテなのか、その名前、その能力、今この世界の状況、それら全ての記憶が抜け落ちている。
…ただ、一つ分かることは…眼前に広がる世界は、自分の記憶とは完全に食い違ってるという事だ。
この世界は…ネットの架空空間をベースに色んな国々、人々のコテ達が集まり作られた世界。
皆がそれぞれの想像や技術を活かして作られたのがこの街なのだが…目の前に広がるのはただ、廃墟だ。
人気も全く無く、あちこち建物は傷みがが激しい。植物や植木があった形跡もあるが全て枯れてる。
電気系統も殆ど動いては居ない。水道の類もまともにあるかどうか…。
一体この世界に何が起こったと言うのか?その記憶すら全く存在してない。
ふと、近くに噴水だったと思われるオブジェがあるのを見つけた。
水は流れてない。が、溜まったままになっている水がそこにはあった。
水に変色は見られない。一度頭を冷やす為にも顔でも洗おう、と私は噴水に近づき、覗き込む。
…期待もあった。自分の顔を見れば、そこから記憶が呼び起こされるかもしれない、と。
だが、水に映った自分は、想像以上に真っ更で、記憶に影響を及ぼすとは思えない物だった。
白い体色、目・口・鼻と言った顔の部品が一つも無い。
頭の上にある耳で、辛うじて基本的なコテ、“猫モチーフの型のコテ”である事が分かる程度だ。
不思議と呼吸や会話は問題なく出来そうだ。
試してみたが声はちゃんと出たし、周りを見る事も出来てる。それがまた、尚不思議なのだが…。
個性らしい個性が存在しないコテ。余りにも無個性でコテらしくない。それはまるで…
“元々あった物を削り、白く塗りつぶした”かの様な姿であった。
自分の記憶の欠けも、その思考をさらに強くする要因となっている。
この世界だけじゃない。自分自身にも何かがあったのは明白だ。…しかし、何があったのだろうか…。
意味のない自問自答、長い沈黙が続く中、視界の端に何かが動いたのが見えた。
「…なんだ?」
注意深く、動いた物が見えた辺りを探す。
自分の他に人が居なさそうだ、と思ってた矢先だ。もし、誰か居るなら現状の確認の為にも、是非接触しておきたい。
「!」
見間違いじゃなかったらしい。瓦礫の奥からヒョコッ、と小さなコテが現れた。
四本の足を持ち、カサカサと蠢く球体の様な姿。その背には小さく炎が灯っている。
そんな、まるで虫の様なコテは私に気付いたのか、こちらをじっと見つめながらその場に立ち尽くしている。
「あ、あー…。警戒しないでくれ。私は怪しいものじゃない…。
少々尋ねたい事があるだけなんだ、この、街の事について…それだけでいいんだが…」
言葉を慎重に選びながら、彼(あるいは彼女?)に話しかける。
彼(あるいは彼女?)がここの常連、もしくは住人のコテであるなら…
もしかするとココで何があったか、その現状を知っているかも知れない。
不審に思われたり警戒されぬよう、なるべく妙な動きはしないように、距離もそのままに相手の応答を待つ。
…ふと、焦げ臭いと感じる。…鼻は無い様に見えたが、機能自体は存在してるらしい。
臭いの元は、目の前の相手だろうか…?背に火を背負って居るしな。
この呑気な思考を、私はこの後すぐに後悔する事になる。この時はこの思考が呑気とも…
自分に警戒心が足りなかったとも思ってなかったのだが。
ゴォオオオオオオオ!!!!
突如、目の前に巨大な火柱が上がり、一瞬で辺りが熱気に包まれる。
どうも、あの虫型のコテは問答無用で相手に襲い掛かる自我や思考の少ない、動物に近いコテだった様だ。
「…まずい!」
即座に私は走り出す。
道は一応は分かるから平気だが、果たして体力が持つか…。
と、思っていたが相手はどうやら追い掛けては来なかった。
…もしや彼は縄張りを持ち、私がその縄張りへ侵入したから威嚇してきたのだろうか?
それとも、発言に何か問題があったのか?怒らせてしまっただけだったのか?
確認したい所だが、まだ遠目に火柱は見えている。流石に今すぐ戻ろうと言う気にはならない。
仕方がないので探索するとしようか…。
攻撃されたとは言え、自分の他にコテを見たんだ、全くコテが居ない訳じゃないかもしれない。
彼(もしくは彼女?)の他にコテが居るのなら、情報収集は必要だ。
この後自分がどう過ごしていくか見通しも立っていくだろうし。
この街の中心部に近い、“中央広場”へと向かう事にする。
今居たのは少し街外れの商店街の様な場所。本来ならここにも人は居そうなもんだが、近寄れないので第二候補だ。
中央の広場は昔からの憩いの場。店は少なくともコテが集う場所だった。
ここであれば、コテに会う可能性も高いしそれに、この広場はそれなりに広く、見通しがいい。
最悪何らかのコテの攻撃が来てもある程度の応戦がし易い場所とも言えるだろう。
…自分が戦闘が出来るタイプのコテなのかが疑問ではあるが。
そんな訳で、私は中央広場へと足を向けた。
…は、いいのだが。思った以上に中央広場は凄惨な状況だった。
先程居た商店街近くよりさらに人気を感じない。と言うより人が入れる場所がそもそも少ないのだ。
建物は殆どが崩れ、その瓦礫が広場を埋め、かなりエリアが狭まってる。
どこかに隠れようにもどの建物も屋根が無い。爆発でもあったのか、と思うほどの破損具合だ。もしくは台風か?
植木が枯れているのはここもやはり同じだが、乱暴に無理矢理へし折られ、投げ飛ばされた跡すらある。
床には黒いシミや何かによって攻撃された跡。具体的には刃物や鈍器に依る破損が見られる。
微かにどこからか漂う死臭すらある。
…それら全てが、ここで過去に激しい戦闘が起こった事を容易に想像させた。
「本当に何が起こったんだ…。」
記憶の片隅にあるここに住まうコテは、大抵が強い戦闘力を有してた。
特殊な能力だとか、武器に扱いに長けているだとか、意思が強いだとか。
それが、そんなコテ達が住んでいた街が破壊され、こうも人が居なくなる事など起こり得ない。…そんな筈だった。
だと言うのに…何故だ?何故こんな有様がここに在るんだ?
誰に聞くでもない疑問が、私の中で何度も出てきては消える。
今、この疑問に答えてくれるコテは誰も居ない。…解っている。
だが、それでも…疑問を抑えつける事は出来ず、誰ともなく尋ねずには居られなかった。
「…これから私はどうなって行くんだ…。どうしていけばいい…?」
つづく
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