Roll

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White and Blue





黒い世界―。
白波が海を嘲笑っていた。
直後、それは蒼い海の手に引きずり落とされ、悲鳴の声と足掻きの泡を残して死にゆく。
そしてまた新たな白波が生まれ、嘲笑し、死んでゆく。
幾億の白の断末魔と、殺戮に狂い哂う蒼。
三日月が淫靡な風と共に降り立ち、脅かすように海の頬を撫でる。
狂った海にはその脅しすらも届かずに、傍らの空気が縮みこまる。
その足跡が、水面に黄色く煌きながら権力を振り回していた。
砂が怯えながら、虚無の生死を覗き、無意味な権力から目を逸らす。
そうして「それ」に一番最初に気づいたのは、砂、だった。
砂の様子を見て風が天を仰ぎ、小さく息を呑んだ。
世界を我が物にしようと腕を伸ばした月の肩を、誰かが叩く。
煩わしそうに振り返ったその目に映ったのは、世界を惑わす微笑みだった。
何も知らぬ生まれたての白波と、狂いに狂った蒼い海だけが、何も知らずに哂い続けていた。
微笑を持つそれは、ゆっくりと二つに歩み寄り、そっと頬に唇を乗せる。
月の恐怖さえ届かなかったそれが全てを忘れて、そして初めて、微笑みの意味を知った。
黒い全てを吸い込んだ微笑は、霞み、散り、彷徨い、―消えた。

橙が眠りから醒めて、三日月がその存在の前にひれ伏す。
光が飛び、水面に跳ねて、世界を覆ってゆく。
風の心に白が吹き込み、世界を白に染めてゆく。
白波は生も死も忘れ、主役になった砂浜を彩る。
海が厚さを知り、息衝く者の存在を知る。

そしてまた、黒い世界へと、時が進む。

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