『えこちゃん』のホームページ

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Burnabyでホームステイ


 たくさんの人垣の中から私の名前が書かれたボードを探し出す。
 あった、私の名前だ。
 それを持っていたのは男の人だった。

 『きっとお父さんだ』

 心の中でそう思った。
 はじめましての挨拶をすまし車に乗り込む。
 もう英語の世界だ。
 私が待っていた英語の世界。

 車の中は二人きり。
 ステイ先のBurnabyまで緊張が張り詰めていた。
 家に着くとおばあちゃん、お母さん、Shelly、いとこが私を待っていた。
 とってもあたたかい笑顔を持っている家族だった。
 私は安心した。

 それから一ヶ月もの間、私はこの家でお世話になった。
 インド系フィジー人の家族。
 カナダに移民してもう10年以上にもなる。
 だから娘Shellyの英語は流暢だった。
 年も近く、面倒見も良いShellyはいつも私の宿題を手伝ってくれた。
 おばあちゃんは英語がわからない。
 話せるのは「ハロッ」のひとこと。
 だけど私には、毎朝おばあちゃんと二人きりの時間があった。
 家族は仕事や学校に出かけるのが早く、
 私が学校に行く支度をする頃は誰もいないのだ。

 おばあちゃんは毎朝きまって紅茶をいれてくれた。
 大きなスプーンでお砂糖をどーっさり入れた愛のこもった甘い紅茶。
 そしてパンを焼き、私にいつも聞く一言。

 『アンダ??』

 私はきまって答えた。

 『Thank you, nanny』

 アンダとは卵のこと。
 年老いたしわしわの手にゆで卵を一つ持ち、聞いてくるのだ。
 私とおばあちゃんの関係は
 『アンダ』、この一語で成り立っていた。
 時には私から

 『Nanny, アンダ』

 っとおねだりした。
 一年後、この土地をもう一度訪ねた時も
 私とおばあちゃんは『アンダ』一つで当時を懐かしんだ。

 ここでの食事は基本的にインドカレーだった。
 初めは、まずいな、このまま続いたら飽きちゃうかもっと思っていた自分が馬鹿みたい。
 確かにインドカレーはほぼ毎日だったが全く飽きなかったのだ。
 一口にカレーといってもその種類、味はすべて違っていた。
 なすカレー、チキンカレーが特に好きだった。
 おばあちゃんとお父さん、それにお母さんはいつも右手でカレーをほうばる。
 私も試してみたいと言って手で食べたことがあった。
 それがなかなか難しい。
 Rottiという小麦粉で作ったナンのようなものと一緒に食べるのだが、
 水気のあるカレーは下に落ちるばかり。
 ところがおばあちゃんやお父さんは、何ということもなくペロッと食べる。
 感心した。
 いくら小さい頃からの習慣とはいえ、こんなにも難しかったとは。
 それにしても手で食べるなんて日本では叱られてしまうこと。
 19年にも及ぶ日本での生活で自然に身についたそんな習慣が手伝って、
 手を口に持っていくときは、なんとも不思議な申し訳ない気持ちだった。

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