【現代劇】マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~全40話 40
風起隴西-SPY of Three Kingdoms-全24話 24
【現代劇】イジワルな君に恋をした~Sweet First Love~全24話 24
燕雲台-The Legend of Empress-全48話 48
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覆流年 Lost Track of Time第30話穆澤(ムーヅー)は陸安然(ルーアンラン)の心を手に入れられず、せめて身体だけでも我が物にしようと寝台に押し倒した。しかし安然の空虚な目を見ると、なぜか無性に後ろめたさに苛まれる。「輿入れの日もそんな心のない目をしていたな」「失うものが何もないから…あなたに嫁ぐ時、子が産めなくなる薬を飲んだの」穆澤はなぜ安然がそこまで自分を嫌うのか分からず、激情に駆られて首を絞めた。「私が口にした脅し文句も睦言も全て本心だったのに…そなたは嘘ばかりだ!」すると安然は卒倒してしまう。一方、穆川(ムーチュアン)は二兄を刺激しないよう営造坊(エイゾウボウ)に戻って軍に指示を出していた。そこへ衫越(サンエツ)が駆けつけ、うさぎの燭台を届ける。「小姐が万が一の時にこれだけは守るようにと…」安然は大晦日に皇宮へ向かう前、衫越に穆川への伝言を託していた。「″決して自分を曲げないで、私は死んでも信念を貫く、同じ過ちを繰り返さないように″と…」すると衫越は安然を探しに行くと言って帰って行った。安然はまだ意識が戻らなかった。穆澤は自分の運命を受け入れる覚悟を決めたが、まだ1つだけ自分で選べる事があると気づく。…この生涯にいかに幕を下ろすかだ…安然、ゆっくり眠れ、そなたが目覚める頃には、全て終わっている穆澤は安然を独り残して外へ出た。南星(ナンセイ)はそろそろ移動した方が良いと進言したが、穆澤は逆賊の名を背負って隠れて生きるより、潔く散りたいという。そこでこれまで戦場で生死を共にしてきた兄弟たちを解放することにした。「我が命は今日で尽きる、そなたたちには家族がいるだろう、ここで去るが良い」しかし南星は最後まで慶(ケイ)王のそばにいたいと嘆願、慶王軍も一斉にひざまずき、忠誠を誓った。( ๑≧ꇴ≦)ノ<将士們! ←言いたかっただけw安然の決意を知った穆川は矢も盾もたまらず、自ら軍を率いて二兄の捜索へ向かった。やがて山中で灯りがついた小屋を発見、穆川は寝台に取り残された安然を見つける。「安然?!安然!大丈夫か?」「穆川…どうしてここに?」「町へ向かう蹄の音が聞こえた」「まずいわ…穆澤は皇宮を攻める気よ…」驚いた穆川は慌てて引き返したが、すでに慶王軍は全滅、穆澤は胸に矢を受けていた。将軍は謀反を起こした慶王に止めを刺すべく弓を引いた。その時、穆川が駆けつけ、二兄をかばう。すると皇帝の馬車が現れた。「穆澤…言い残したいことはあるか?」「あなたは万民の上に立つ皇帝、一度も父親だったことはない! 私に与えられるのは評価だけ、愛情などなかった! この命は父皇より賜ったもの、ここに謹んでお返しする!」皇帝は穆澤の言葉に胸が痛み、穆川に任せることにした。「行かせてやれ」穆澤は穆川に支えられながら、母が投げ捨てられた井戸までたどり着いた。「娘(ニャン)…許してください、娘を救えなかった… 九弟、頼みがある…私が死んだら娘の墓の隣に埋葬してくれ」すると穆澤は九弟に短剣を渡し、一思いに殺すよう促した。穆川は二兄を刺すことなどできなかったが、その時、穆澤は最後の力を振り絞って起き上がり、自ら胸を突き刺してしまう。「二哥ァァァァァァァァァァァァァァ!うわあぁぁぁぁぁ!」子供のように泣きじゃくる穆川、その時、ばったり倒れた穆澤の目にちょうど結末を見届けにきた安然の姿が映っていた。朝臣たちは謀反人である穆澤をさらし首にすべきと上奏した。すると皇帝はならば大晦日の騒ぎの時、即座に慶王にひれ伏した者たちも同罪かと牽制する。驚いた朝臣たちはそれ以上、追及できず、皇帝は罪を犯しても自分の息子であると恩情を与えた。皇帝は斉王を皇太子に決めた。冬青(ドンチン)はこれで安然も陸家も安泰だと言ったが、安然は素直に喜べない。「それは穆川が望んだことかしら?」すると安然は慶王府に別れを告げるため、独りで出かけて行った。安然はゆっくり王府を眺めながら書斎へ入った。その時、ふいに穆澤の声が聞こえる。…陸安然、激しくも有意義な人生だった、お別れだ…安然は窓際に立つ穆澤の姿を見たような気がしたが、すぐに消えてしまう。一方、穆川は約束通り二兄を墨(ボク)氏の墓の隣に埋葬した。しかし墓石には何も彫られていない。「二哥、どうか安らかに…また会いに来るよ」穆澤は安然に離縁状と文を残していた。…あの夜、昏睡中だったそなたがうわ言である物語を聞かせてくれたその残酷な悪夢が私を憎む理由なら、夢の中の私になってそなたに謝りたいだがそれほどまでに深く愛された私を羨ましく思う…すると安然は文を燃やしてしまう。「この世は荘周(ソウシュウ)が見る胡蝶(コチョウ)の夢か、胡蝶が見る荘周の夢か…」瀚京(カンケイ)は雨になった。皇太子に封じられた穆川はお忍びで街に出かけ、安然と茶屋で落ち合う。「蘇城へ帰るわ」「決めたんだな」「瀚京は私にとって悪夢の都…ここにいたら悲劇を思い出してしまう 人生をやり直すには離れるしかない」「分かるよ、その傷を癒すには時間が必要だ」「あなたも苦しんだ、でも勇敢だったわ」「安然…君の幸せを祈っている、どんな日もどんな時も笑っていて欲しい」「過去に縛られず、未来を恐れず、今を大事に生きるわ」「会いに来てくれ、待っている」安然は穆川と別れの杯を交わすと、未練を断ち切るように先に席を立った。「行くわ」「元気で」『この世は荘周が見る胡蝶の夢か、胡蝶が見る荘周の夢か』…穆川、昨日の夜、夢を見たわそこは陽光に照らされ、まばゆく輝く世界あなたが微笑み、私も笑っていた…終わり※胡蝶の夢:″荘子斉物論″より、蝶となって百年も遊んだという夢を見た荘周、目覚めてみると自分が夢で蝶となったのか,今の自分が蝶の見ている夢なのか分からなくなったという故事、この世の生のはかない例え( ๑≧ꇴ≦)BS放送も終了しました!やっぱり面白かった!実は番外編があり、5年後に再会する話だったと思います(まだ見られるかどうか不明)管理人は最後が安易なまとめに走らない点も胡蝶の夢でまとめてくるあたりも、パラレルワールド全開でお気に入りです皆さんはいかがだったでしょうか
2024.02.21
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覆流年 Lost Track of Time第29話穆澤(ムーヅー)は護衛・南星(ナンセイ)から報告を聞いていた。陸安然(ルーアンラン)は街に出て衣を買ったが、すぐ戻ったという。「片時も目を離さなかったか?」「採寸のため奥の部屋に入った時以外は…」しかし翊(ヨク)王には怪しい動きがあった。燃灯(ネントウ)大典の準備を任された翊王は灯籠の箱に紛れさせてリン粉を運び込んでいるという。穆澤は翊王が穆川(ムーチュアン)の暗殺を企んでいると気づき、その周到な計画を逆手に取って利用しようと思いついた。一方、皇帝は寵愛する穆川と久しぶりに水入らずで夕食を囲んだ。「緬(メン)国の蜜瓜(ミツウリ)だ、味わってみよ」「感謝します、父皇」しかし蜜瓜を一口食べた穆川は怪訝そうな表情を浮かべた。「どうかしたか?口に合わぬのか?」穆川は慌てて美味しいと答えたが…。大晦日、安然が東屋にいると穆澤がやって来た。穆澤は安然に王府の帳簿を渡し、これからは蕭驚雀(ショウキョウジャク)に代わり管理するよう命じる。「私は皇宮で年越しするため家族と過ごせぬ」「…はい」すると穆澤は安然の寝殿をうさぎの灯籠で飾り付けた。「安然、どこにも行かないでくれ、平穏で幸せな日々が遠からず訪れる…私を待っていてくれ」安然は穆澤の様子がどこかおかしいと怪しみながら、早速、帳簿を確認した。すると半月前に緬国から蜜瓜を10石(セキ)も買っていると知る。穆澤は倹約家のはず、春節とは言え散財するとは思えなかった。「金銀ならともかく、なぜ蜜瓜なんか…」「そう言えば翊王も燃灯大典のために蜜瓜を取り寄せたとか」衫越(サンエツ)から思わぬ情報を得た安然は不審を抱き、さらに帳簿を調べた。「…花火100石?」安然は衫越と一緒に倉庫にある花火を調べた。すると花火の火薬が全て抜き取られている。驚いた安然は蕭驚雀に慶王妃の腰牌(ヨウハイ)を貸して欲しいと頼んだ。「どうかしたの?」「穆澤が謀反を…」その頃、大殿では無事に燃灯大典の儀式が終わり、祝宴が始まった。秦野闊(シンヤカツ)は翊王にそろそろ斉王の身体に毒が回る頃だと耳打ちする。そうとは知らず、大役を終えた穆川は大臣たちと歓談していた。穆澤と穆霖(ムーリン)の思惑が交差する大典、その時、ついに灯籠が爆発して火の気が上がった。臣下たちが逃げ惑う中、穆澤は殿内の騒ぎに紛れて祭壇に仕掛けた火薬に火を入れる。巻き込まれないよう安全な玉座へ逃げたはずの穆霖だったが、思いがけず巻き添えになった。穆川は火に包まれた玉座を見て呆然となった。すると穆澤が穆川の灯した灯籠に翊王が毒薬とリンを仕込んでいたと明かす。「私が毒を除いておいた」「全て知っていたのに、なぜ止めなかった?!」「翊王の計画が実行されなければ父皇と翊王を葬れぬ」「ならなぜ私を助けた?」「誓ったからだ、何があってもお前を守ると…」そこへ慶王軍が雪崩れ込み、臣下たちを包囲した。穆澤は父皇が事故で亡くなり、新たな君主を立てることが当面の急務だと訴えた。臣下たちは慶王に従うほかなかったが、突然、羽林軍が現れ、逆に慶王軍が包囲されてしまう。「さすがは朕の息子だな、慶王殿下」その声は死んだと思っていた皇帝だった。「あの日、大殿で殺しておくべきだった」穆澤は皇帝にすっかり騙された。激情に駆られた穆澤はこれまでの鬱憤を晴らすように自分を蔑む父皇を非難したが、その時、安然が駆け込んでくる。「穆川!…穆川!」しかし安然は穆澤に捕らわれてしまう。皇帝は2人もろとも誅殺せよと命じた。驚いた穆川はその場にひざまずいて命乞いし、皇帝はやむなく穆澤を見逃してくれる。実は皇帝は蜜瓜を食べた穆川の様子をいぶかしみ、密かに検査を命じていた。調査の結果、蜜瓜には火薬の匂いがついていたと判明、しかも翊王が購入した蜜瓜を慶王が全て交換したという。その火薬はすでに祭壇の下にあると分かった。穆澤は蕭驚雀を迎えに王府へ戻った。しかし驚雀は逆賊として生きるつもりはないと同行を拒否する。「穆澤、よくも私の人生を台無しに…私のせいで蕭家は全てを失った 最期にあなたの失態を見られて満足よ、後悔はない」すると驚雀は自ら首を斬り、自害してしまう。安然は倒れた驚雀の姿がかつて雪の舞う宮道に倒れ込んだ自分の姿に見えた。愛する人に嫁ぎ、仲睦まじく暮らせるはずだった安然と驚雀…。奇しくも2人は異なる時代で子を失う悲劇に見舞われた。穆澤は別邸に身を隠した。「陸安然、やはり裏切ったな」「…あの帳簿は私に気づかせるためだったのね」穆澤は絹織物店の店主を脅し、あの日、安然と穆川が密会していたと知った。聡明な安然のこと、帳簿を見れば自分の企みに気づく。そこで安然が穆川の危機に駆けつけるかどうか賭けたのだ。「今となっては後悔している、いっそのこと死ぬまで偽りの幸せに浸っている方が良かった …なぜ九弟を愛しながら私に嫁いだ?逃げる機会もあっただろう?」「大事なものを奪われたからよ…」「その目だ…蘇城で初めて会った時からそんな目をしていたな?何を見ている?!」「あなたの醜い野望が潰える瞬間よ、あなたは至尊の位にふさわしくない」すると激情に駆られた穆澤は安然の首に剣を突きつけた。「ならば穆川ならふさわしいとでも?!」「穆川は決して私に毒酒を飲ませたりしない」「仕方がなかった、正々堂々と生きたかったが、何をしても父に疎まれた」「あなたが選んだ道でしょう?!…あなたは哀れな人よ」「黙れ!確かに心は手に入らぬが、その身体は私のものだ!」穆川は慶王府を捜査し、宮中へ戻った。実は書斎の裏に隠し部屋を発見、ある物を見つけたという。そこで穆川は穆澤の荷物を運び込んだ。皇帝は穆澤が掟を破って亡き生母を密かに祭っていたと知り憤慨したが、最後の箱の中身を見て驚愕する。「二哥の手習いです、評語は父皇の字ですね」他にも戦場から凱旋した際に父皇から賜った賞状もあった。皇帝は穆澤が自分からもらった些細な品まで全て大切に保管していると知る。「…穆澤を呼び戻せ、釈明の機会を与えてやらねばならぬ」皇帝はようやく穆澤を誤解していたと気づき、涙を流した。つづく( ๑≧ꇴ≦)皇帝のせいだったのかーいw
2024.02.20
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覆流年 Lost Track of Time第28話穆川(ムーチュアン)は陸安然(ルーアンラン)を逃がすため、堰堤(エンテイ)の完成式典に乗じて王府から連れ出すことに成功した。穆澤(ムーヅー)は南星(ナンセイ)に追跡させていたが、現地に到着したのは替え玉の冬青(ドンチン)だったと判明する。慌てて捜索するも手遅れ、安然の姿は見つからなかった。穆澤は安然の寝殿の前で座り込み、肩を落とした。…もう戻らぬだろう…しかしその時、安然がひょっこり帰ってくる。「安然!戻ったのか!良かった、良かった…」思わず安然を抱きしめる穆澤、実は安然は穆川の計画を断っていた。『あなたが死んだと思い込んだ時、あなたを失う苦しみに耐えられないと分かったの あなたを残して独りで逃げることなんてできない、私を信じて、すぐに終わる』蕭驚雀(ショウキョウジャク)は亡き兄の敵を討つこともできず、虚しい夜を過ごしていた。すると嬷嬷(モーモー)・容沛(ヨウハイ)から思わぬ話を聞く。実は安然が朝廷に水運を差し出したのは、皇帝に斉(セイ)王との仲を知られたからだった。「皇上は警告する意味で水運を召し上げたのです 兄弟で陸安然を取り合って慶(ケイ)王府が混乱し、その巻き添えで蕭将軍が殺されたと訴えては?」翌朝、驚雀は穆澤の目を盗んで王府を抜け出し、皇帝がいる書房へ乗り込んだ。門衛は直ちに慶王妃を拘束して引きずり出そうとしたが、驚雀は諦めきれず大声で嘆願する。「皇上!話があります!兄は殺されたのです!皇上!」そこへ騒ぎに気づいた皇帝が現れた。蕭驚雀は陸安然が王府に嫁いでからも斉王から寵愛を受けていたと讒言した。それを知った兄・蕭映(ショウエイ)は慶王を守ろうとしたが陸安然の罠にかかり、誤解した慶王に殺されてしまったという。皇帝は激怒、蕭家の恨みを自分が晴らすと約束した。何も知らず翊(ヨク)王に目を光らせている穆澤、すると突然、父皇の使いが現れる。「殿下、側夫人と共に早急に参内せよとのご命令です」一方、穆川のもとにも参内するよう知らせが届いた。聞けば蕭映の死について蕭驚雀が皇帝に直訴したという。穆川は安然の関与が暴かれれば命の危険があると気づき、慌てて父からもらった折り本を探し始めた。穆澤は父皇に追及されても何も知らないと誤魔化した。そこで皇帝は自分を謀った陸安然を即刻、斬首に処すよう命じる。驚いた穆澤はひざまずき、蕭映を殺したと認めるしかなかった。「陸安然は何も知りません、どうか解放してください」安然は御前に戻されたが、皇帝がこれで許すはずもない。その頃、穆川はようやく箱に入れたまま忘れていた折り本を発見、勅命に自ら名を記した。皇帝は2つの卓を準備した。今後、慶王として平穏に暮らしたいのなら料理が並んだ席へ、しかし皇太子の地位を望むのであれば壇上の卓へ来て酒を飲めという。穆澤は迷わず金の酒器から酒を注いで飲もうとしたが、皇帝が止めた。「待て、それは毒酒だ、それでも飲むのか?思い上がりも甚だしい!」「…分かりました」穆澤は仕方なく壇上を降りてもう一つの席に向かったが、皇帝は席に着く前に毒酒を陸安然に渡せと迫る。「従わなければ慶王の座も失う、2人のうちどちらかが飲むのだ 陸安然、どちらを選ぶと思う?」「…殿下の選択なら受け入れます、どんな結果でも悔いはありません」どのみち穆澤は玉座に就けない。安然はこれが最良の結末だとむしろ安堵していた。穆澤は安然に杯を差し出した。しかし生母へ毒酒を渡したあの時の辛い記憶が蘇る。穆澤は思わず安然の手を止めたが、その時、突然、穆川が現れた。すると穆川は安然から杯を取り上げて投げ捨ててしまう。「父皇にお見せしたいものがあります」「川児よ、その決意は今後にも影響するのだぞ?覚悟の上か?」「まだ分かりません、現実から逃げて臆病者になるべきか、権力を手に己が望まぬ者になるべきか 他の道を探しましたが、どこにあるのか見つからなかった ただ私にもかつての父皇のように全力を尽くして守りたい者がいます 以前は志を持つ者と共に奮闘すれば前途は開けると信じていた しかしながら志があるなら他人に頼るべきではない」穆川は苦しむ民のため、愛する人のためにも権力を手に入れる道を選ぶと決めた。「大殿は刑場ではありません、罪名さえ決まらぬ者を殺してはなりません」「いいだろう」皇帝は穆川に預けた勅命を引き取り、懐化(カイカ)将軍に封じて京畿(ケイキ)駐屯軍3万を率いることを命じた。穆澤は喉から手が出るほど欲しかった権力を無欲な九弟にあっさり奪われた。呆然としたまま慶王府に到着した穆澤、しかし安然は激動の1日を過ごしても相変わらず冷静さを失わない。「陸安然、私に嫁いだことを後悔しているか?」「陸家が平穏ならそれ以上は望みません、慶王の栄華は約束された、それで十分です」しかし穆澤は飼い殺しでしかないと怒り狂い、この屈辱を必ず晴らしてみせると誓った。「そなたも帰って休め」穆澤は剣を片手に王妃の寝殿に乗り込んだ。驚いた容沛は自分が入知恵したと訴え、慶王にすがりついて王妃の命乞いをする。しかし覚悟ができていた蕭驚雀は死など恐れないと開き直った。「よくぞ言った、ならどこまで意地を張れるか見てみよう」すると穆澤は嬷嬷を刺し殺してしまう。「あなたは冷酷な人よ…帝位についても蕭家を滅ぼしたわ!」「ふっ、私を良く理解しているな」「あなたを慕っていたなんて、私の見る目がなかった…愚かだったわ 幼い頃の優しさも全て計算ずくだったのね! …王府であなたを愛していたのは私だけだった、お前は2度と誰にも愛されない! それこそお前が受ける天罰よ!」激高した穆澤はついに驚雀に剣を振り上げたが、そこに安然が駆けつけた。「なりません!王妃は身ごもっています!」安然は蕭驚雀が穆澤の子供を産んだことを思い出し、医者を呼んでいた。すると思った通り驚雀が懐妊していると分かる。「陸安然、どうして私を助けたの?」「一途に想う相手となら仲睦まじく暮らせたはず、そんな時、家族を失った 似た境遇の知人がいて、つい口を出しただけ」「…嫁いできたのは穆澤と戦うためでしょう?」しかし安然は何も答えなかった。「そうなのね、なら頑張って、失望させないで」…運命の歯車は穆川と穆澤を敵対する方向に進ませ、皇宮内の情勢は急激に変化したしかしこの新たな展開は誰も幸せにはしなかった…そんなある日、安然は穆川から絹織物店に呼び出された。店主は寸法を測ると言って安然を奥の部屋へ案内、すると穆川が現れる。「君と会うのを避けてきたが、今後は私も遠慮しない、私が片をつける、早く終わらせたい」穆川は愛する人を守るため玉座を目指すと決意、争いもやむを得ないという。「そんな冷酷な顔、初めて見たわ…」「仕方がないんだ」年末が近づき、朝議では大晦日の燃灯大典が議題に上がった。皇帝は例年と同じ様に行うと伝えたが、その時、穆川が今年の祈願役に名乗りをあげる。先を越された翊(ヨク)王は欲深さが見苦しいと牽制したが、穆澤は九弟なら祈願役に相応しいと後押しした。祈願役と言えば例年、翊王が担当していた。穆霖(ムーリン)は穆川に横取りされただけでなく、式典の準備を押し付けられ納得できない。すると秦野闊(シンヤカツ)が真の敵は穆川だと指摘、この機を利用して排除しようとそそのかした。つづくφ(。_。*)カキカキ…誰も幸せにしなかった…?ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ
2024.02.20
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覆流年 Lost Track of Time第27話生きる屍のようだった陸安然(ルーアンラン)が初めて穆澤(ムーヅー)の前で感情をむき出しにした。穆澤は安然の心にまだ自分がいると喜び、慶王府の女主人が安然だと知らしめるべく、蕭映(ショウエイ)に焼香させることにする。しかし蕭驚雀(ショウキョウジャク)は兄の敵だと激高、かんざしを握りしめて安然に襲いかかった。嬷嬷(モーモー)の容沛(ヨウハイ)は咄嗟に王妃にしがみついて止めたが、穆澤は興奮する驚雀を張り倒してしまう。「2度と安然に手出しするな、おとなしくしていれば命は奪わぬ、さもなくば死あるのみだ!」( ̄▽ ̄;)何度目かの″次はない!″穆澤は安然を連れて外に出た。「どうした?なぜ嬉しそうな顔をしない?」「明日は我が身だと感じました」穆澤は安然に同じことはしないと言ったが、安然はそれが嘘だと知っていた。その夜、蕭驚雀はお忍びで蕭軍の軍営に出かけ、兄の忠臣である梁(リョウ)統領を頼った。「将軍の代わりに大小姐をお守りします!」「…ある者を殺してちょうだい」翌日、驚雀は安然を訪ねた。思わぬ客人に警戒する安然、しかし驚雀は安然に手を出せば自分が慶王に殺されてしまうという。「だからあなたに私と同じ苦しみを味わってもらう 斉(セイ)王は武芸の達人で相手が10人でも倒せるとか…でも30人ではどうかしら?!」安然は驚愕し、思わず驚雀の首をつかんだ。「穆川に何をしたの?!」「斉王を弔う鐘が鳴り響くのを待つのね、ぐずぐずしていたら死に目に遭えないわよ?ふふふふ」その頃、清河幇(セイカホウ)に向かっていた穆川(ムーチュアン)は山道で刺客に囲まれていた。安然は急いで清河幇に駆けつけた。冬青(ドンチン)の話では兄が深手を負った斉王を運び込んだという。「小姐、必ず助かります」「そうよね…」しかし部屋に入ってみると、沈長青(シンチョウセイ)が穆川の亡骸を前に号泣していた。( ๑≧ꇴ≦)ウワァァァァァァーッ!傷だらけの穆川はまだ温かく、眠っているように見えた。すると沈長青は安然と穆川を2人だけにするため、妹たちを連れて外に出る。「小姐は陸家と殿下のために耐えてきたのに…殿下が亡くなったらどうなってしまうの?」冬青は思わずしゃがみ込み、涙に暮れた。( ;∀;)どうなってしまうん?安然は穆川を失い、絶望の淵に突き落とされた。「全部、私のせいよ、手練手管(テレンテクダ)を弄したけれど、結局、何もかも失った… 影絵で聞かせた物語を覚えている?あの娘は私なの 気が触れたと思うでしょう?自分ですらそう感じるくらいだもの あの悪夢の中で陸家は滅ぼされ、あなたも死んだ 私が穆澤に嫁いだのは、近くであの男を見張り、あなたと陸家を守るためだった あなたを守った気でいたけれど、あなたの真心を踏みにじっただけ 蘇城で伝えるべきだった、″穆川、あなたが好き″と…」地獄のようなこの世の中で穆川だけが安然に喜びを感じさせてくれた。その穆川が消えた今、安然を今生に引き止めておくものは何もない。安然はかんざしを引き抜き、一思いに首を刺そうとした。しかしその時、思いがけず穆澤が息を吹き返す。「安然…すまない、答えが知りたかったんだ」ズコッ!⊂⌒~⊃。Д。)⊃ 生きてたんかーい!安然は沈長青に穆澤の世話を頼んで帰って行った。何があったのか分からず呆然と見送る冬青、すると沈長青が事情を説明してくれる。実は穆澤がなかなか現れないため探しに出かけたところ、竹林で深手を負いながらも30人の刺客を始末した穆川を発見した。戦いから見て刺客は兵士、恐らく蕭映の配下だという。『間に合って良かった、川弟、陸姑娘への誤解を解きたくて呼んだんだ』沈長青は安然に頼まれて農民を助けたが、疑念を抱いた慶王が自分を人質にして安然を誘き出したという。あの一刺しは沈長青を救うためだった。『誤解だったんだ』『…沈大哥、私は死んだことにしてくれないか、真相が知りたい』すっかり騙された冬青は激怒、思わず斉王を責めたが、兄から騙したのはお互い様だと言われてしまう。屋敷に戻った安然は久しぶりに銀の腕輪を取り出した。「全て知られてしまったわ…」一方、安然が泣いている姿を見た穆澤はてっきり蕭驚雀がまた何かしたと疑った。そこでちょうど回廊にいた嬷嬷に聞いたが、容沛は分からないという。「殿下、とにかく中へ…」「やめておく」蕭驚雀は自分の顔も見ずに帰って行った慶王に深く失望し、泣き崩れた。嬷嬷の話では計画も失敗、蕭家の兵士は1人も戻らず、斉王は無事だという。穆川は不思議と安然の夢の話を信じることができた。居所へ戻り、久しぶりに安然からもらった手紙を取り出した穆川。…心の欲するままに自由に生きて…「陸安然、他人のことばかり案じて、己の幸せは考えないのか?」すると穆澤は安然のお伽話の最後を思い出した。…その娘は″大事な人″と一緒に人里離れた山奥で静かに暮らしたの…「そなたも私と暮らしたいのだな、ならば私も諦めぬ」そんなある日、衫越(サンエツ)が大きな瓜を抱えて慌てて駆けつけた。穆川は安然たちの策を逆手にとり、野菜の中に安然宛ての書簡を忍ばせていたという。中には安然が以前、穆川に書いた文が入っていた。「私の真意を理解したと伝えたいのね…」しかし文の裏に短い伝言がある。…すまなかった、君を信じる…穆川は安然を救い出すと決意、沈長青と冬青に協力を頼んだ。しかし冬青は安然のこと、恐らく拒むという。「本当に安然をこのまま慶王府に置いておくと?万一、本心がばれたら命が危ない」「…確かに私もいつも小姐を案じていました、王府では薄氷を踏むような思いでしたから」そこで穆川は父皇に謁見、堰堤(エンテイ)の完成時に陸安然を立ち合わせたいと嘆願した。放水時は最も危険が多く、経験豊富な安然の力が必要になるという。皇帝は下心がないかと心配したが、穆川は邪な気持ちがあるなら直接、本人に頼んでいたと否定した。慶王府に穆川がやって来た。「慶王殿下…」「もう二哥と呼んでくれないのだな」穆澤は蕭映の配下の動きに気づかず、穆川を危険にさらしてしまったと釈明したが、穆川は責めるつもりはないという。「私は邪魔者、排除されても当然だろう…それより聖旨を伝えたい、側夫人を呼んでください」「…何だと?」皇帝は安然に堰堤の完成式典の際、斉王を補佐するよう勅命を下した。驚いた安然は衫越を代理に行かせると言ったが、穆川は皇帝に背くのかと一蹴する。「完成の日は刻限通りに来るように」すると穆川は帰って行った。穆澤は穆川が安然を奪うつもりだと動揺し、思わず安然を強く抱きしめる。「そなたが私のもとを去るはずない!そうだな?」「当然です、追い出されても残ります」「良かった…絶対にそなたを渡さぬ」穆澤は安然を見送り、南星(ナンセイ)に見張りを任せた。しかし衫越が御している馬車はおとり、すっかり同じ装いをした冬青が乗っている。その頃、すでに安然は船で穆川と合流していた。穆川は放水の際、安然が流されたことにして連れ去るつもりだという。「陸安然、私に任せてくれ… 影絵で話した結末が君の夢だろう?私が叶えてみせる」困惑する安然だが…。つづく(  ̄꒳ ̄)やだもう~びっくりしたわw
2024.02.17
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覆流年 Lost Track of Time第26話斉(セイ)王・穆川(ムーチュアン)は農民襲撃事件で翊(ヨク)王と蕭映(ショウエイ)将軍を弾劾した。蕭驚雀(ショウキョウジャク)は兄を心配していたが、蕭映は数ヶ月の減棒程度の罰だろうと笑う。実は斉王が軍営に乗り込んできた時、蕭映は陸昀(ルーイン)に手を下させ、姉が刺されたと知って逆上したと釈明するつもりだった。「この機に葬れなかったことが悔やまれる」しかし妹から陸安然(ルーアンラン)と侍女の冬青(ドンチン)が決別したと知り、まだ斉王と陸安然を葬る手がありそうだと喜んだ。蕭映は清河幇(セイカホウ)の冬青を訪ねた。冬青にとって今や陸安然は兄を刺した敵、そこで蕭映は陸安然の排除に力を貸してくれるなら清河幇には手を出さないと約束する。「完璧な陸安然にも1つだけ致命的な弱点がある…斉王殿下だ」「人の恋心を利用しようとは何と卑しい策かしら」「冬青姑娘、私は一言も恋仲とは言っていない…ふっ」冬青はうっかり口を滑らせたが、ともかく卑劣な策に手を貸しては清河幇の名が廃ると断った。慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)は蕭映が軍営を抜け出して清河幇へ向かったと知った。清河幇と言えば現在、病床の兄に変わって冬青が差配しているという。「蕭映は油断ならぬ男だ、くれぐれも警戒を怠るな」一方、安然も衫越(サンエツ)から魚が餌に食いついたと聞いた。「腹を立てた様子で出てきたと…」「腹を立てれば立てるほど好都合よ、冬青には無茶せず、慎重に進めるよう伝えて」衫越は将軍である蕭映を相手にするのは危険だと困惑したが、安然は毅然としていた。「弱腰で勝てる相手ではない、穆澤は蕭映に不信感を抱いている 敵と見なせば必ず排除しようとする… 蕭映が握る兵力をみすみす他人の手に渡すわけにいかないもの、大丈夫、私に任せて」蕭映は斉王と安然が恋仲だと確信した。そこで清河幇が強奪していると罪名をでっちあげ、屋敷を包囲してしまう。冬青は蕭映の仕業だと気づき、単独で軍営に乗り込んだ。すると蕭映は安然と斉王の密通の証拠を渡せば兵を退くという。蕭驚雀は兄に言われた通り陸府に配達に来る野菜売りを待ち伏せした。そこで男に金を渡して荷車の中を調べてみると、兄の情報通り密書が出てくる。…酉の刻に西郊の私邸にて会いたし…驚雀は文を元の場所に戻して安然を泳がせ、慶王を訪ねた。穆川は沈長青(シンチョウセイ)の見舞いに出かけた。「冬青、外の兵は?」「実は…蕭映が…酉の刻に西郊の私邸で待っていると…」「分かった、沈大哥を頼んだよ」蕭驚雀は安然と斉王の密通現場を見せるため、穆澤を連れて私邸にやって来た。すると悲鳴が聞こえ、胸にかんざしを刺した安然が外へ飛び出してくる。「安然?!」「迷香を焚かれ、意識を保つために胸を刺したのです 衫越が守ってくれて何とか逃げ出すことができました」すでに曲者はいなかったが、部屋の中には争った形跡あり、衫越が額に怪我をして倒れている。その時、慌てた様子で穆川が駆けつけた。「何があった?!」「ふふ、やっぱりね」驚雀は2人が自分たちが来ると気づいて慌てて芝居を打ったのだと呆れた。穆澤はしばし判断に迷いながら、九弟になぜここへ来たのか聞いた。穆川は蕭映に呼ばれたと答えたが、そこへ蕭映が冬青を連れてやって来る。すると冬青は斉王に伝言した覚えなどないと否定、兄の敵である陸安然の本性を暴きに来たと言い放った。「慶王殿下、陸安然は長らく斉王殿下と恋仲でした 陸家が没落し、慶王府に身を寄せても、斉王殿下との縁は切れず、連絡を取り合っていたのです」驚いた穆川は冬青が蕭映に脅されて偽証していると訴えた。安然も蕭将軍が穆澤を利用して自分たちを葬る魂胆だと非難、そもそも冬青が報復するつもりなら慶王府を出る時、密通を暴くことができたはずだという。確かに蕭映は清河幇を包囲していた。そこで穆澤は冬青に本当の事を明かすなら一切不問にするという。観念した冬青はその場にひざまずき、実は蕭映から清河幇を潰すと脅され、仕方なく従ったと白状した。「全て偽りでした、密書の話も全て嘘です、将軍にそう言えと強要されて…」安然は一気にたたみかけた。「殿下、蕭映のような不忠の輩が殿下の大業に命を捧げるでしょうか?」蕭映はまたしても安然に謀られたと気づき激高、安然を殺そうと迫った。咄嗟の判断を迫られる穆澤。その時、穆澤が蕭驚雀からかんざしを引き抜き、蕭映の首を突き刺してしまう。「哥ァァァァァァァァァァ!」安然の計画は成功、復讐を果たした。しかし穆川も安然の策略だと見抜き、その夜、清河幇に冬青を訪ねる。「嘘をつき続ければ清河幇を救うと同時に沈大哥の恨みも晴らせたはずだ こうなってはどちらも叶わぬが?」「あの場ではそこまで考えが及ばず…」「そうではない、お前は知っていた、ああすれば清河幇も自分も守れるとな 芝居を打ち、陸安然を追い詰めてから潔白だと明かせば、二哥の怒りは行き場を失う 折しも二哥と蕭映との間には深い溝ができつつあった、怒りの矛先は蕭映に向いた…」「殿下、何も申し上げることはありません」すると冬青は慌てて引き上げてしまう。「陸安然…何もかも計算づくなのだな、私もただの駒だとは…」蕭驚雀は後ろ盾である最愛の兄を失った。衝撃のあまり寝殿で茫然自失となる驚雀。すると穆澤が現れ、明日の重陽節は共に丘に登って菊を愛でようという。「そうだ、明日は蕭将軍も同行させよう」翌日、穆川は蕭映将軍が丘で転倒し、急死したと聞いた。どうやら安然と二兄、大切な二人は手の届かぬところへ行ってしまったらしい。…私は大事なものを守り続けられるだろうか…皇帝は蕭映が残した軍隊を私欲のない穆川に託すと決めた。しかし穆川は固辞、闘争とは無縁でいたいという。皇帝はいつか必ず守るべきものと自由を天秤にかけ、選ばねばならない日が来ると言い聞かせた。「ひとまず受け取り、数日後に答えを出せばよい」一方、清河幇ではついに沈長青が目を覚ました。冬青は喜び、安然が兄の看病ができるよう一芝居打って追い出してくれたと教える。「ただ…斉王殿下が…誤解して小姐の肩を刺してしまったの」「穆川が陸安然を?!…まずい」沈長青は穆川を心配し、すぐにでも説明に行きたいと言い出した。「でも小姐と秘密にするとの約束が…」「お前は約束を守れ、穆川のために俺がやる」すると冬青は兄を制止し、斉王に来てもらうことにした。穆澤は怪我をした安然の様子を見に行った。相変わらず他人行儀な安然、最近はめっきり自分に楯突くことはなくなったが、穆澤は従順なふりをしているだけだと分かっていた。「そこまで冷静なのは希望すら失ったからか?」「皇家は誰にとっても心の休まらぬ場所、いわば苦行です」「苦行させるために娶ったのではない!」穆澤の嘆きを聞いた安然はふと最後に見た朝堂での穆澤の姿を思い出し、怒りが爆発した。「では何のためです?″非道な冷血感″と罵倒させるためですか?! 運命を呪って涙し、すれ違う心を嘆いてみせろと?! あなたは大事なものを奪い、私を王府に閉じ込め、それでもなお私を傷つけ続けた! 純真な少女のままでいられるはずなどない!あなたへの情も信頼もその手で奪ったくせに! 永遠に元には戻れないのよ!」安然は当時の穆澤への鬱憤を吐き出したが、穆澤はようやく安然が感情をあらわにしたことに幸せを感じていた。「分かった、その怒りはまだ心に私がいる証拠だ その言葉を聞いて久しぶりに気が晴れた」すると穆澤は身なりを整えて慶応府に来るよう伝えた。つづく( ๑≧ꇴ≦)らんら〜ん! ←違うwここで前世の愛憎を持ってくるとは上手いわ
2024.02.16
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覆流年 Lost Track of Time第25話陸安然(ルーアンラン)は冬青(ドンチン)から沈長青(シンチョウセイ)が無事だと聞いてほっと胸を撫で下ろした。冬青は安然が苦渋の決断だったことを理解していたが、斉(セイ)王のまさかの仕打ちに憤る。「責めないであげて」一方、穆川(ムーチュアン)は冬青の辛辣な言葉を思い出していた。…相手を見誤ったのは殿下ではなく、小姐(シャオジエ)なのかも…「分からなくなった、君は私を他人扱いする、私のことを忘れたかのようだ」その夜、安然はひさしぶりに銀の腕輪を取り出した。「私に失望すれば昔を思って悲しまずに済む、あなたが私を買い被っていただけ、それでいいの だけどやっぱりあなたのことが気になる、誤解されると悲しい」…全てを捨てて慶王に嫁いだ日から陸安然は心の中であらゆる危機の可能性を覚悟していたが、斉王の一刺しは予想外だった静寂な夜の闇の中、その痛みが彼女の心を深く貫いていた…翌朝、安然は窓から衫越(サンエツ)が秋菊に水やりする様子を眺めていた。すると冬青が今日も包帯を取り替えた方が良いと声をかける。「穆川は衝動的に刺しただけで傷は浅いから平気よ この件であの兄弟の間に深い溝ができてしまった でも穆澤(ムーヅー)の本性に気づいたのなら、穆川にとって良い機会だった」しかし穆川も蕭映(ショウエイ)もここで引き下がるとは思えない。安然は穆澤と蕭映が一枚岩ではないと見抜き、再び周到な計画を練ろうと決めた。「一石二鳥が狙えるかも…」↓( ̄▽ ̄;)もうやめとけってw安然は冬青が兄を刺した自分と決別しなければ疑われると考えた。そこで穆澤が屋敷へ来た時を見計らい、わざと冬青を追い出すところを見せる。穆澤は主に口答えした冬青を罰すると言ったが、安然は妹を解放してあの一刺しを帳消しにしたいと訴えた。穆澤は冬青を見逃してくれた。そこで安然は自分のことより斉王を気遣った方がいいと進言する。「蕭軍の軍営に行かれては?斉王殿下が襲撃犯の捕縛に向かったとか…」穆川は農民たちと軍営に押しかけていた。蕭映はそれとなく黒幕が慶王だとにおわせて脅したが、穆川は誰であろうと人命を奪う者は罰を受けねばならないと退かない。すると蕭映は穆川たちを包囲、農民たちを暴徒とみなして矢を放った。穆川は無垢の民に襲いかかった蕭映に激怒、まず自分を殺せと叫んだ。「ただし皇子を殺せばお前たちは一族もろとも極刑は免れぬ!」すると驚いた兵士たちは将軍の命令を無視して弓を下ろしてしまう。そこで蕭映は側夫人の弟・陸昀(ルーイン)を引っ張り出して押さえつけ、無理やり弦を引かせた。「殿下!危ない!」陸昀が思わず叫ぶと、その時、穆澤が現れ、咄嗟に矢を止めた。穆澤は九弟の手前、蕭映を叱責し、穆川を追い返そうとした。しかし穆川は二兄の手を振り払い、大業をなすために民の命を軽視する二兄を厳しく非難する。「理想のために犠牲にして良い命などない」すると穆川は衣の裾を切り落として二兄に投げ渡し、兄弟の縁を切った。「二哥、私への優しさは永遠に忘れない、だが私は己に正直に生きる …蕭将軍!犯人を渡さなければここで生死をかけて戦う!」蕭映はついに剣を抜いた。一触即発となった穆川と蕭映、穆澤はこの場を収めるため仕方なく襲撃犯を引き渡すよう命じる。蕭映は渋々配下を差し出したが、穆川はこの機に乗じて陸昀も解放させた。↓むーちゃんの足あげ、スローにする必要あった?w穆澤は蕭映が陸昀を利用して九弟を殺そうとしたのを知っていた。「私を無視した行動を取るなら、こちらにも考えがある」「殿下、私はただ斉王が大業を阻むゆえやむを得ず…」「九弟に危害を加えてみろ、私がお前を地獄へ送ってやる」一方、穆川はかつての陸家の倉庫で陸昀を衫越(サンエツ)に引き渡した。…陸安然、これで貸し借りなしだ…その夜、安然は弟と再会を果たした。実は陸昀は父からの手紙で二姉の残忍な手口を知り、自分が間違っていたと涙ながらに謝罪する。「姐、蘇城へ帰ろう、ここは危険だ」「昀児、私は帰れない、爹(ディエ)を守るためなの でも安心して、私が残るのはやるべき事があるからよ、先に帰りなさい」「分かった、姐を信じる」こうして陸昀はすぐ蘇城へ発った。「穆川…ありがとう」安然が安堵していると、ふいに穆澤が現れ、安然を抱きしめた。「動くな、しばらくこのままで…」その夜、穆川は幼い頃に穆澤が作ってくれた思い出の木彫りの玩具を取り出した。当時、母を失った衝撃から声が出なくなった穆川、しかし穆澤が不器用ながら玩具を作って遊んでくれた。中でも木彫りの鳥は二兄としては傑作で、片方の翼が折れてしまっても捨てられなかった。「…もし彼が正道を行くなら、そこにどんな魑魅魍魎がいようと共に突き進む覚悟だった だが今となっては彼と魔物にどんな違いがあるというのか」@管理人訳w一方、穆澤は安然の前で久しぶりに木彫りの鳥を作っていた。「九弟の声が戻ってからは彫っていなかった」思えば穆川の声が戻ったのはあの時だ。まだ幼い穆川は兄弟たちに木彫りの鳥を奪われ、穆澤が取り返そうとして袋叩きになったことがある。『二哥を殴るな!』穆澤は取りつかれたように木を削った。すると勢い余って手のひらを差してしまう。しかし手当するどころか、まるで自分を罰するかのようにさらに手の平を切った。安然は唖然としたが、心配する素振りも見せない。「その目は何だ?孤独なのは自業自得だと?私を手段を選ばない人間だと思っているのだろう」「いいえと言えば嘘になります…馬鹿げた世の中です 心が澄んだ君子は正義に殉じるしかない、二殿下こそが歴史を作るお方です」「実に奇妙な世の中だな」すると穆澤は穆川が切り裂いた衣の裾で傷口を覆った。穆澤は安然にいかに九弟が特別な存在かを明かした。かつて自分に最後の餅(ビン)を譲って餓死寸前となったという穆川。あの時、穆澤は九弟にだけは何も求めず、誰にも傷つけさせないと誓ったという。「だが分かっていた、九弟が心の清らかな君子になるほど、私は卑怯者の小人になっていくと…」しかし穆澤はもはや引き返せないと覚悟していた。その頃、穆川は最後にもう一度、鳥の翼を糊でつけていた。しかし折れた翼はあっけなく落下する。「やはり元には戻らない…」つづく(´・ω・)やだ~何これオカルト?w
2024.02.15
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覆流年 Lost Track of Time第24話陸安然(ルーアンラン)と斉(セイ)王・穆川(ムーチュアン)が恋仲だったとつきとめた蕭驚雀(ショウキョウジャク)。そんなある日、穆川がちょうど穆澤(ムーヅー)の留守に訪ねてきた。驚雀はこれを好機とばかりに慶(ケイ)王が呼んでいると偽って安然を呼び出し、穆川が待つ書斎に入ったところで閉じ込めてしまう。安然は蕭驚雀が自分たちに密通の罪を着せるつもりだと分かった。「確かめたいことがあって来た、まさかこんな羽目になるとは…」安然は穆川が農民の襲撃事件を探っていたと気づき、当時、穆澤(ムーヅー)の隠し場所が奥の棚だと思い出した。「殿下、あらぬ誤解を受けないよう背を向けて頂けませんか」穆澤が王府に戻った。すると蕭驚雀が駆けつけ、安然が無断で書斎に入ったと報告、しかもそこには斉王がいたという。「勝手に書斎へ入るのは厳禁、どうすべきかわからず錠をかけておきました」「錠をかけた?」焦った驚雀は安然の弁が立つため、やむを得なかったと言い訳した。安然は奥の棚から農民の名簿を見つけた。赤い線で消されているのが始末した農民らしい。そうとは知らず穆川は背を向けたまま、これが安然の望む生活なのかと聞いた。「私は戸惑った、理解できなかったよ…傷つき、怒りも覚えた でも分かった、君の思いがどうであれ、あの幸せな時間は大切な思い出だと… 君が好きだった、だがもう未練はない、陸安然、どうか幸せになってくれ、心から願っている」「…穆川、ごめんなさい」安然は名簿を眺めながらつぶやいた。穆澤が書斎に到着、蕭驚雀は安然と斉王の姿を見て勝利を確信した。しかし穆澤は取り乱す様子もなく、冷静に対応する。「九弟、お前が来た時、側夫人は書斎にいたか?」「いいや、誰もいなかった」「陸安然?書斎へ勝手に入ることは禁じたはずだが?」「劉(リュウ)執事に殿下が呼んでいると言われ、なぜか監禁されました」すると穆澤はあっさり九弟を帰し、安然にも下がるよう命じてしまう。納得できない驚雀は安然の屋敷の庭にある葡萄を植えたのは斉王だと暴露した。「例え私が企んだことだとしても、2人はかつて想い合う仲だったのです もし情が残っていたら?」「…″私が企んだこと″だと?」穆澤は驚雀をひざまずかせ、最後の警告を与えた。「陸安然に手を出すな、九弟を利用することも許さぬ 今度、慶王府でこんなことが起きたら、王妃の座を失うことになるぞ?」すると穆澤は劉執事を死ぬまで打ち据えるよう命じ、協力した使用人たちには血が流れるまで自ら頬を叩かせた。穆澤は安然を訪ね、2度と王妃が屋敷に近づくことはないと安心させた。しかし急に季節外れの葡萄はもの寂しいと言って葡萄棚に菊の花を飾りつけてしまう。「世話が必要な贈り物は困ります」「忠告する、私が与えたものは受け取ってもらう」穆澤は蕭驚雀の策略に気づいて安然の肩を持ったが、安然と穆川の潔白を信じていたわけではなかった。「丹精を込めて葡萄を育てられるなら、秋菊の世話などたやすいはずだ 時々、確かめに来よう、しっかり世話をしろ」安然は書斎で見た名簿を急いで書き記し、清河幇(セイカホウ)幇主・沈長青(シンチョウセイ)に届けさせた。すると翌朝、沈長青から農民を守ったと知らせが来る。安然は安堵したが、冬青(ドンチン)が聞いた話によると現場に斉王がいたという。「やっぱり穆川も名簿を探しに来たのね…沈大哥に守ってもらいましょう」一方、蕭映(ショウエイ)は慶王に襲撃を予見していた者に邪魔されたと報告していた。「江湖の者のようです、もしや清河幇では?」穆澤は真っ先に安然の顔が浮かんだ。安然と幇主は親しく、その上、書斎で名簿を見る機会もあったからだ。「沈長青を捕まえ、陸安然を呼び出せ、どう動くか見ものだ」安然に沈長青から密書と玉佩が届いた。…計画に変更が出た、申の刻に郊外の別邸で待つ…しかし冬青はなぜ兄が母の形見の玉佩まで同封したのか分からない。安然は自分を誘き出すための罠だと気づき、沈長青が人質になったと分かった。「穆澤が私を疑い始めたんだわ」そこで安然は蕭驚雀を巻き添えにしようと思いついた。安然は蕭驚雀に密書を突きつけ、次は旧友を利用して自分を陥れるつもりかと迫った。身に覚えのない驚雀は言いがかりだとあしらったが、兄の仕業だと疑われ激高、ならば一緒に別邸へ行くと息巻く。安然の思惑通り、そこで安然は冬青に目配せして斉王に知らせに行かせた。蕭驚雀が安然を連れて別邸へ到着すると、兄が人質に取った沈長青と待っていた。「哥?!安然を誘き出すなら先に教えてよ」「なぜお前が?!早く王府へ帰れ」その時、安然は外から穆澤が見ていると気づいた。「なるほど、大将軍が妹のために側室を陥れようとしたのね? もし独りで来たら罠にかかるところだった」しかし蕭映は沈長青が白状したと鎌をかけた。「あなたが農民の名簿を渡して慶王の邪魔をしたとか…」安然は沈長青とはすでに縁を切ったとしらばくれ、粗暴なだけで役立たずだと蔑んだ。そこで蕭映は沈長青の口から布を外してやる。すると沈長青も慶王の計画など知らないと否定し、縄張りで民が襲われれば救うのは当然だと言った。「だが陸安然、まさか玉の輿に乗り、情まで失うとは…」安然と沈長青はわざと言い争いを始めたが、そこへ穆澤が現れた。安然はまだ自分を疑っているのかと落胆してみせた。すると穆澤は事が重要なだけに言葉だけでは信用できないという。「分かりました、私がこの者を殺して疑いを晴らします」安然は穆川が到着するまで時間を引き延ばしていた。しかしいよいよ追い詰められ、ついに沈長青の左胸を刺してしまう。その時、ちょうど穆川が現れた。「陸安然?!」穆川は目の前の光景に激しく動揺、激情に駆られ安然の肩を刺してしまう。穆澤は急いで安然を連れて屋敷に戻った。「私が疑ったせいだ…蕭兄妹の暴走を抑えきれなかった」←(・Д・)え?すると穆澤はこれを機に過去の出来事にとらわれず、安然を信じると誓った。「殿下、疲れたので休みます」穆澤が慶王府へ戻ると、冬青が慌てて駆けつけた。「小姐、一体、何が?!」「いいから早く沈幇主のところへ、とにかくすぐに行って!」清河幇では沈長青の手当てが終わっていた。医者の話では運良く急所が外れていたため助かったが、三月は静養が必要だという。穆川は安堵して弟子たちに医者の見送りを頼むと、ちょうど冬青が飛び込んできた。「哥!しっかり!一体、何があったの?!」「…聞いていないのか?言えるわけがないよな」穆川は兄を刺したのが安然だと教えた。「彼女を分かった気でいたよ、根は善良だと思っていた…しかし」「小姐は善良です、きっと何か事情があったのです」「冬青?!君の兄を殺そうとしたのにまだ忠誠を?」「殿下、小姐は哥を救うため出かけました、そして私に殿下を呼びに行かせたんです」冬青は兄の名をかたって文が届いたと話し、安然も兄も命の危険にさらされていたと訴えた。「だが安然は心臓を狙って刺したんだぞ?…私にはできなかった」「殿下が小姐の肩を刺したと?…殿下、相手を見誤ったのは殿下ではなく、小姐なのかも」すると冬青は帰ってしまう。つづく( ;∀;)これまた悲しい展開
2024.02.14
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覆流年 Lost Track of Time第23話蕭驚雀(ショウキョウジャク)は罠とも知らず豪華な腕輪を身につけ、慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)の逆鱗に触れた。「そなたがこうも欲深く、図々しい女だったとは… 陸安然(ルーアンラン)は私の側室、彼女を傷つけることは私に対する侮辱でもある 加えて何も知らずに賄賂を受け取ってしまう浅はかさ、何もかも王妃に相応しくない 一晩、ひざまずいて反省せよ」すると穆澤は安然にも2度とそんな情けない姿を見せるなと叱責して帰った。その夜、安然は霊奚(レイケイ)の霊位に報告した。「霊奚、蕭驚雀には一晩中、詫びさせる 私のことを怒っていないなら、冥土の入り口で待っていて、いいわね?」翌朝、蕭驚雀は足を引きずりながら寝殿に戻った。安然への怒りが収まらない驚雀、しかし嬷嬷(モーモー)が慶王の心を取り戻すためには耐えるしかないと説得し、おかげで安然には穏やかな時間が戻る。一方、傷心の斉(セイ)王・穆川(ムーチュアン)は相変わらず眠ることができず、食事も喉を通らなかった。そんな中、護衛の逐風(チクフウ)から城北が不穏な状況らしいと聞く。何でも翊(ヨク)王が強引に農地を召し上げ、殺された者までいるというのだ。蕭映(ショウエイ)は妹が側室と一悶着あったと聞いて様子を見に来た。そこで正室として家宴を開き、女主人の度量を示してはどうかと提案する。驚雀は早速、準備を始めたが、家宴と聞いた穆澤はいささか困惑した。「九弟は来るのか?」「はい、嬷嬷が招待状を届けに行ったら、その場でお返事くださいました」実は当初、穆川は宴の誘いを固辞したが、この機会に翊王の件を二兄に報告することにした。家宴の夜、穆川は菓子を差し入れ、翊王が農地を没収していると伝えた。自分が水路の準備を進めたことも原因の一端だという。「父皇に上奏するよ」「それは時期尚早だな」穆川は理由を聞こうとしたが、そこへちょうど安然が到着、話は終わってしまう。家族が揃い、宴が始まった。蕭驚雀は安然と仲直りの杯を交わし、禁酒を解いた慶王にも勧めたが、断られてしまう。「…あれが人生最後の1杯だ」穆川は二兄が安然のために禁忌の酒を飲んだと知り、内心、激しく動揺した。すると驚雀は慶王と安然の強い絆に嫉妬し、馴れ初めを知りたいという。「私も興味がある」穆川の言葉に安然も穆澤も戸惑ったが、安然が思い切って立ち上がった。「私が蘇城へいらした殿下に一目惚れを…でも殿下の目的が陸家だと誤解し、傷ついたのです 心から愛してくれる方でなければ苦労を共にできませんから、それで妹を嫁がせました でも妹の事件を経て殿下の真心を知ったのです、殿下は陸家ではなく私を求めていたと… 今や何もかも失った私がここにいられるのも全て殿下のお陰です」「…側夫人とは古い友だが、その胸に秘めた想いに気づかなかったよ、実に鈍感だな」穆川は安然にすっかり騙されたと笑ったが、深く傷ついていた。蕭驚雀は独り身の斉王に縁談を用意したいと申し出た。すると穆川は想い人がいると明かす。その時、動揺した安然はうっかり杯を倒し、咄嗟に冬青(ドンチン)が自分の失態だと誤魔化して謝罪した。「でも残念ながら生涯、結ばれることはありません 私の独りよがりだったのです、仕事が一段落したらお願いします」家宴はお開きになり、家族は回廊に出てしばし月を見ていた。穆川はそろそろ帰ると伝えたが、その時、容沛(ヨウハイ)が駆けつけ、王妃に何やら耳打ちする。すると激高した蕭驚雀がいきなり安然を平手打ち、驚いた穆川が咄嗟に安然の前に立ちはだかり守った。蕭驚雀はあの腕輪の送り主が不明だと知り、安然の仕業だと訴えた。「私を陥れて葬るつもりね?!」「王妃、もし私が腕輪を準備できたとしても、それを王妃の腕にはめることはできません」これにはぐうの音も出ない驚雀、確かに受け取った贈り物は腕輪だけではない。結局、慶王からまた騒ぎを起こしたと叱責され、寝殿で自省するよう命じられてしまう。穆川は慶王府を出た。…陸安然、嫉妬まみれの慶王府に捕らわれ、本当に平気なのか?…穆澤は安然を寝殿に送り届け、自ら腫れた顔を手当してやった。「腕輪はそなたの策略か?…いや責めているのではない 正直に言おう、そなたが策を弄し、驚雀をやり込めるさまは痛快だった」「この王府で生き残るには時として反撃も必要かと…殿下、疲れたのでもう休みます」「では私もここで休む」ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ@全視聴者安然は背を向けたまま横になった。するとふいに穆澤が腕を伸ばして抱きしめる。(O_O)フリーズ・・・「そう怯えるな、そなたが承諾せぬ限り手は出さぬ」穆澤は安然が宴の席で話した馴れ初めが心に深く残っていた。「私もそなたを追い詰めたが、そなたも私から多くを奪った 引き分けということで矛を収めないか?」( ゚д゚)え?穆澤は安然が自分を夫と認めず、慶王府を我が家とみなしていないことは重々、承知していた。「先は長い…ゆっくり待とう、いつまでも待つ」穆川は翊王の動きを探っていた。昼間に農民の骸を見たが、殴打して殺したのは翊王の配下だろう。しかし1人だけ首の骨を折られて死んでいた。「残忍な手口は軍を思わせる」そこで軍の関与を疑い、調査することにした。そんなある日、蕭驚雀は偶然、侍女たちから側夫人の庭にある葡萄の話を聞いた。何でも側夫人が庭で蘇城の葡萄を育てており、手入れが難しいため斉王が世話していたという。すると驚雀は葡萄棚を命がけで守った霊奚の姿を思い出し、斉王の想い人が安然だと気づいた。安然は冬青から翊王が農民を殺して農地を奪っていると聞いた。そう言えば安然もかつて穆澤と蔡望津(サイボウシン)が書斎で話しているのを聞いた覚えがある。あの時も翊王に殺された農民の骸が多数、発見され、怒った農民たちが翊王府に押しかけていた。『罪もない農民を殺すなんて翊王は残忍ね』当時は安然も翊王を非難したが、今になって思えばそんな単純な話ではなかったのだろう。一方、穆川は城北の農地に蕭映の兵がいることを突き止めた。蕭映と言えば二兄の腹心、そこで翌朝、二兄から直接、話を聞こうと慶王府を訪ねる。しかし穆澤はまだ朝議から戻っておらず、劉(リュウ)執事の案内で書斎で待つことになった。つづく( ๑≧ꇴ≦)穆澤wwwそっちかw
2024.02.13
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覆流年 Lost Track of Time第22話陸安然(ルーアンラン)は慶(ケイ)王府の裏門から穆澤(ムーヅー)の寝所に直接、入った。止めどなく流れる涙、しかし穆澤が来たと分かると身を引き締める。今夜は初夜とあってか、穆澤はいつになく優しかった。「うさぎの灯籠は気に入ったか?」「殿下からの贈り物ですから…」すると穆澤は腰から玉佩を外し、安然に渡す。「私の心と同じく、大切にして欲しい…信じられぬかもしれないが私の本心だ そなたと幸せになりたい気持ちに偽りはない」穆澤は酒を準備したが、安然は禁忌のはずだと訝しんだ。「…酒を飲まぬ理由を教えよう、私は8歳の時、この手で母に毒酒を渡した」安然はかつて皇后に封じられた時、穆澤の生母の廟に案内されたことを思い出した。当時、穆澤は良(リョウ)妃が生母を毒殺して骸を井戸に捨てたと話している。「良妃は侍女をまるで虫けらのように扱っていた 何も知らぬ私は身分差ゆえだと思っていた、真相をあとで知ったよ 良妃は私が毒酒を母親に手渡して殺せるか否かを試したのだ」結局、生母は息子の手を汚せないと杯を穆澤から奪い取り、自ら毒酒をあおったという。「私が殺したようなものだ…だから酒の杯を見る度、目の前で息絶えた生母を思い出してしまう 父皇はすべて知っていたよ、どんなに努力しても私を疎んじるわけだ 所詮、父皇にとって私は一夜の過ちによる汚点だからな 私も自分のやり方が嫌いだ、しかし選択肢がない」穆澤はそっと涙をぬぐい、安然と夫婦の杯を交わした。穆澤は禁忌を破ることで安然への誠意と真心を示し、優しく抱きしめた。「陸家は私が守ると約束する」しかし安然は黙ったまま、どこか冷めた目をしている。「なぜそんな目をしている?」「どんな目をしろと?私はもう殿下のもの、至らぬ点は改めます…」すると安然は自ら外衣を脱ぎ始めた。「気が進まぬことはするな、私は慶王、無理強いなどはせぬ」「これが側室の務めですので、無理強いが嫌なら私の方から…」「陸安然?!私を好色な男だと?」安然は穆澤が制止するのも無視して衣の紐を解こうとしたが、激高した穆澤が止めた。「欲しいのは生きる屍ではない、そんな態度で私を馬鹿にするつもりか?!」穆澤は安然がわざと自分を怒らせていると気づき、寝所を出て行ってしまう。安然は無我夢中で屋敷へ続く通路を走った。そこへ冬青(ドンチン)が駆けつける。「小姐、大丈夫ですか?」「自尊心の高い男は屍には興味がない…読みが当たったわ」一方、傷心の穆川(ムーチュアン)は部屋に閉じこもったまま、気がつくと夜も更けていた。すると村人が稲が腐っていると叫ぶ声がする。「青枯れ病だ…田を焼くしかない」穆川は稲まで安然の急な心変わりのように半年で豹変したと肩を落とした。「決断は早い方が良い、害が広がる前に…」安然への想いを込めた″安心稲″、しかし穆川は全てを消し去るように焼き払ってしまう。蕭驚雀(ショウキョウジャク)は今夜が安然の輿入れだと知り、悲しみに暮れていた。しかし思いがけず穆澤が寝殿に現れる。驚雀は側室ならしきたり通り正室に茶を献じて挨拶すべきだと文句を言ったが、穆澤はあっさり認めてくれた。「いいだろう、明日、来させる、好きにやるが良い」安然は何とか初夜を逃げ切ったが、永遠に同衾を逃れることはできないと分かっていた。そこで今のうち毒を飲み、子が産めぬ体になろうと決める。冬青は薬湯を準備したものの、どうしても渡せなかった。「ここで逃げ道を考えていたら何もできない」すると安然は半ば強引に薬を取り上げ、一思いに飲んでしまう。「冬青、まだ泣いてはダメ…もうすぐ霊奚(レイケイ)の初七日よ?蕭驚雀と片をつけなくては」翌朝、安然は挨拶のため蕭驚雀の寝殿を訪ねた。すると嬷嬷(モーモー)が沸騰した湯で煮立てた茶碗に茶を入れて準備する。安然は熱さをこらえて驚雀へ茶を献上したが、驚雀はわざと話を長引かせて受け取らなかった。やがて安然は熱さに耐えかね、茶碗を落として割ってしまう。「王妃に何てことを!ひざまずきなさい!」嬷嬷は安然が当然、拒むと知りながら命じたが、驚いたことに安然は破片の上にひざまずき謝罪した。予想外の展開に驚雀は呆然、安然の衣が血に染まる様子を見て怖くなってしまう。「…目障りよ、出て行って!」冬青は血だらけの安然を支えて回廊を歩いた。次々にすれ違う侍女たち、当然ながら正室が嫉妬に駆られて側室をいじめたと思い込む。しかし安然はこれも穆澤の警告だと分かっていた。「つまり小姐が慶王殿下を興ざめさせたので、あんな仕打ちを?」恐らく穆澤はこの王府で誰に頼るべきか知らしめたかったのだろう。「あの人は毎日、剣の稽古の後、ここを通るの」するとその時、穆澤が回廊へ上がってきた。穆澤は安然の怪我に気づいて欄干に座らせた。傷は明らかに破片で切ったように見えたが、安然は転んだと言い張る。「そんな見え透いた嘘をつくとは…私の真心を拒否しているのか? なぜ普通の女子のように泣きつかぬ?」「殿下からの警告です…殿下に仕返しを?」「お見通しか」すると安然は痛みを我慢してその場にひざまずいた。「この慶王府で生きて行くには殿下を頼るしかありません 私に才覚があれば霊奚も王妃に殺されずに済んだはず 怖いのです、眠ったら最後、目覚めないのではないかと…」「心配はいらぬ、そなたを傷つける者は私が許さぬ」穆澤はこの時、霊奚の死の原因が蕭驚雀だと知った。一方、蕭驚雀は安然の件が慶王の耳に入るのを恐れていた。しかし嬷嬷は慶王の意向に従っただけだとなだめ、それより正室祝いの品を見てはどうかという。実は贈り物の中には安然が紛れ込ませた腕輪があった。穆澤は自ら安然の傷の手当てをして帰した。これも安然が従順な側室を演じたおかげだろう。「嫉妬深い蕭驚雀が知れば大騒ぎするはず、そうだ、王妃への贈り物を届けてくれた?」「ご心配なく」忘れもしないあれは王妃となって5年後の誕生日。安然は驚雀がはめていた膠東(コウトウ)の翡翠の腕輪に気づき、叱責したことがあった。『工部侍郎の岳父は翡翠商を営む、ずい分と気前がいいわね… 朝廷は綱紀粛正の最中よ?汚職の根源である工部から貢物をもらえば殿下の立場は? 禁足して反省しなさい!』そこで安然は冬青に葡萄棚の下を掃除するよう頼んだ。「王妃が来たらひざまずかせるから… それから穆澤を呼ぶことも忘れないで、この芝居には穆澤が必要よ」安然の思惑通り蕭驚雀は翡翠の腕輪を気に入り、早速、はめた。すると劉(リュウ)執事が汁物の差し入れがてら、側室が今朝の叱責を慶王に告げ口し、薬まで塗らせていたと吹き込む。激怒した驚雀は安然を懲らしめるため陸府へ、一方、衫越(サンエツ)は慶王に助けを求めに向かった。蕭驚雀は葡萄棚で水やりをしていた安然をひざまずかせた。すると嬷嬷が身体に傷がつかないよう作った柔らかい鞭で安然を打ち始める。「やめよ!」そこへ知らせを聞いた慶王が現れた。穆澤は安然の足から再び血が流れているのを見て憤怒、鞭を奪うと見せしめに嬷嬷を激しく打ちつける。「王妃、殿下を奪ったと私をお恨みなのですね?だから霊奚を突き飛ばして殺したのですか?」驚雀はてっきり気を失っただけだと思っていたが、実は霊奚は頭を石に強打していた。「だって…軽く押しただけよ?!」布石は打った。「どちらにしても霊奚は戻ってこない、私はここで失礼します あ、殿下、王妃にお尋ねください、その腕輪の出所を… それはめったに入手できない翡翠です、その色なら陸家の私邸が10軒は買えるでしょう まさか霊奚の命や王府の名声より腕輪が大事なんて…」穆澤は大きくため息をつくと、驚雀を霊奚が亡くなった葡萄棚へ連れて行った。「跪下(クィシア)!」つづく( ๑≧ꇴ≦)アンラン恐っ!まさかアンランがラスボスじゃないよね?!w
2024.02.11
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覆流年 Lost Track of Time第21話清河幇(セイカホウ)で倒れた穆川(ムーチュアン)。思いがけず陸安然(ルーアンラン)が訪ねてくれたが、穆川に突きつけた言葉はあまりに辛辣だった。「私たちはただの知己、私はあなたの二哥を愛し、大瀚(ダイカン)の慶(ケイ)王殿下に嫁ぐの」「違う!君の心には私がいる、誰に脅されたんだ?!お願いだ、私を頼ってくれ」「…生き埋めにされた時、暗闇と絶望の中で脳裏に浮かんだのは慶王殿下の顔だった あの騒ぎがなければ一生、気づかなかったかもね…」「ごぅら(够了)!…ならば私は?君にとって私は何だ?」しかし安然は居たたまれなくなり、黙って出て行ってしまう。その時、穆川は戸をつかんだ安然の腕から覗く銀の腕輪を見逃さなかった。穆川は安然の馬車を追った。安然は御者に振り切るよう命じたが、冬青(ドンチン)は病み上がりの斉王に早駆けは身体に障ると諌める。仕方なく安然は馬車を止めて降りた。すると穆川が駆けつけ、安然の腕をつかむ。「私を想わぬのならなぜこの腕輪を?!」「…細工が気に入ったからです、でも誤解を招くようなら止むを得ません」安然は腕輪を投げ捨て、これで縁も切れたと冷たく言い放った。霊奚(レイケイ)は留守番中、安然のために小豆湯を作っていた。すると清河幇から戻って来た冬青が現れる。「小姐にもお辛い事情がある…私たちが腹を立てたら誰にも苦しみを吐き出せなくなってしまう」「別に気にしてなんかいないからね、だって小姐は私が一生、お仕えする人だもの」ただ霊奚は想い人を拒絶して慶王に嫁ぐと決めた安然のことが心配だった。「もっと賢く頼れる侍女になれれば…小姐の力になれるのに」「あなたはそのままで十分よ」穆川は熱も下がって居所に戻ったが、まだ酒に溺れていた。そこへ九弟が高熱で倒れたと聞いて穆澤(ムーヅー)がやって来る。穆川は到底、二兄と話す気分ではなかったが、ふいに何とも言いようのない虚しさに襲われ、二兄への怒りを爆発させた。「以前はこう思っていた、安然の嫁ぐ相手が誰であれ輿が門をくぐるまでは諦めない… 誰であろうと全てを捨てて取り戻してみせると… それがまさか安然の嫁ぐ先が慶王府だったとは!」穆川は力の限り酒瓶を地面に叩きつけて割った。「これまで安然との出会いは天の配剤だと思っていた、でも結局、すれ違った」一方、安然は穆川からもらったうさぎの燭台をながめていた。「これからは長い夜が続く、心細い闇の中でこの光を頼りに進むだけ」その時、葡萄棚の水やりに出た霊奚の悲鳴が聞こえた。穆川が植えた葡萄が枯れていた。冬青は落ち葉から漆の匂いがすると気づき、恐らく午後に部屋を塗り直した者が汚水を捨てたのだという。すると突然、安然が血相を変えて飛び出していった。冬青は葡萄棚を霊奚に任せ、安然を追いかけたが…。蕭驚雀(ショウキョウジャク)は安然が輿入れしても居所を変えず、慶王府への通路を作らせたと聞いて激怒した。「えこひきいよ!…この屋敷の女主人は誰なのか思い知らせてやる!」驚雀は通路から陸府へ乗り込んだが安然は留守、そこで腹いせに嬷嬷(モーモー)に命じ、美しく飾られた中庭をめちゃくちゃにした。驚いた霊奚は嬷嬷を止めようとしたが、その隙に驚雀が葡萄棚を荒らしてしまう。一方、安然は山道から投げ捨てた銀の腕輪を血眼になって探していた。冬青は日が昇ってから自分が探すと訴えたが、安然はどうしても今夜中に見つけるという。「私に明日なんてないの、葡萄は枯れ、あの人を失った…腕輪だけは失いたくない!」しかしその頃、霊奚は安然の大切な葡萄棚を守るため側夫人ともみ合いになり、突き飛ばされて気を失っていた。安然はついに腕輪を見つけ出し、冬青と急いで屋敷へ戻った。すると中庭が誰かに荒らされ、霊奚が葡萄棚で倒れている。「霊奚?どうしたの?」安然は霊奚を抱き起こそうとしたが、その時、霊奚の頭に大量の血糊がついていると分かった。「霊奚…そんな…」慶事を祝う真っ赤な帷はまるでこの屋敷を血に染めているように見えた。…そして私に告げる、また人失うことになったと…安然は憎い帷を引きずり下ろし、放心状態のまま葡萄棚の下で朝を迎えた。。・゜・(ノД`)・゜・。霊奚は衫越(サンエツ)が丁重に埋葬してくれた。冬青に促されてようやく寝殿に戻った安然、すると机に霊奚が作ってくれた小豆湯がある。安然はすでに腐り始めている小豆湯を無我夢中で食べ始めたが、その時、穆澤が現れ、器を払いのけた。「蘇城(ソジョウ)では毒にやられ、今回は侍女が死んだ、一体、何を企んでいる?」「…霊奚の死が私の企みだと?!一緒に育ったのよ?!悲しんで何が悪いの?! 謀略しか頭にないあなたには分からないのよ!」しかし穆澤は何があろうと予定通り嫁いでもらうと言い放ち、帰ってしまう。慶王府に戻った穆澤は密室に入り、母の霊位に陸安然を娶ると報告した。「安然も九弟も傷つけてしまった、私にはもう分かりません どうすれば普通の幸せが得られるのか…」←( ゚д゚)え?すると穆澤は安然の髪を供えて書斎へ戻った。一方、傷心の穆川の耳にも霊奚の訃報が届く。そこで日が暮れてからこっそり弔いに出かけたが、ちょうど安然と冬青が葡萄棚で冥銭(メイセン)を燃やしていた。「霊奚は正しい、私は変わった、いつもは何でも話せたのに、でも今は… 霊奚の純粋さが怖くて全て隠した 欣然(シンラン)を嫁がせた時、万全の策を練ったはずが、霊奚の件をすっかり忘れていた」穆川は全て安然の企みだったと知り呆然、引き返してしまう。冬青は斉王に気づき、釈明して来ると言った。しかし安然が止める。「これでいい、この方がお互いのためよ」安然はそのまま冥銭を焚き続けながら、あの時の祈祷師の言葉を思い出していた。…万物は運命に身を委ねる…流れる大河を途中でせき止めれば新たな流れが生まれる…だが流れを止めることはできない、誰にもその頃、穆川は慶王府にいた。穆川は自分が花嫁を迎えに行くと申し出たが、穆澤は必要ないという。しかし穆川は行かせて欲しいと懇願した。翌朝、花嫁を迎えに来たのは穆川だった。安然は一瞬、動揺したが、穆川は紅蓋頭をかぶった安然の表情を読み取ることはできない。「恐れ入ります、斉王殿下」一行は急な雨に降られ、穆川はやむなくやぐらの下でしばし雨宿りすることにした。その時、花嫁の輿に気づいた民たちが慶王府に嫁ぐ陸家の長女を揶揄する。꒳ ̄)<妹が不貞を働き離縁されたが、その隙に姉が皇家に取り入ったんだ꒳ ̄)<妹の夫だろう?とっくにデキてたんじゃないのか?安然はただ目を閉じて黙っていた。すると穆川は安然がこんな辱めに耐えられるとは思わなかったという。「今日は未練を断つために来た、正直に答えてくれ 君が瀚京(カンケイ)に来たのも計算ずく、妹の密通をでっち上げたのは陸家を守るためか?」「シィー」「私のことも計画の1つだった?」「…是」「私が渡した雪蝉子(セツセンシ)と鉤吻(コウフン)は妹を嫁がせるためか?そしてあの毒は自ら飲んだ?」「…是」安然は目的のため家族を傷つけ、穆川の真心まで利用したと認めた。「冬青、雨が止んだわ、行きましょう」花嫁の輿が慶王府に到着した。穆川は思わず馬を飛び降り、安然の背中に問いかける。「後悔しないか?」「…しないわ」すると安然は慶王府の敷居をまたいでしまう。…残酷な宿命は慶王府の高い屏によって天地を2つに隔てた穆川は塀の内側に立ち入ることができない陸安然が華やかな檻の中に囚われた瞬間、塀の外の広い世界はまるで色を失ったようだった…つづくヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノすごい展開がこれでもかと続く…
2024.02.09
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覆流年 Lost Track of Time第20話最後に愛しい人とかけがえのない時間を過ごした陸安然(ルーアンラン)。「穆川(ムーチュアン)…あなたからの贈り物、ずっと大切にするわ」すると穆川は安然の額にそっと口づけした。「また明日」穆川は幸せを噛みしめながら安然と別れたが、まさか安然が涙ながらに自分の背中を見送っているとは知る由もなかった。穆川の贈り物は手作りのうさぎの型の燭台だった。安然はしばらく炎を眺めていたが、ふと穆川の最後の言葉を思い出す。「また明日…(でも明日になれば、あなたは私を嫌いになる)」一方、慶王(ケイオウ)府では穆澤(ムーズー)が側室・蕭驚雀(ショウキョウジャク)の舞を見ていた。安然を手に入れることができず上の空の穆澤、その時、護衛の南星(ナンセイ)が陸安然の来訪を伝えに来る。「大事な話があると書斎でお待ちです」すると穆澤はさっさと出て行ってしまう。「殿下?!」穆澤は陸家が皇家お抱えの商家となった今、何の話かと訝しんだ。「今さらどんな返事をするつもりだ?」「…あなたに嫁ぎます、側室としてお迎えください、その代わり陸家を自由にして欲しい」安然はどう戦おうと皇家に勝てないと負けを認め、怯える日々に疲れたという。すると安然は誠意を示すため、自分の髪を一掴み切って差し出した。「これを夫婦の証しに、私の決意を裏切らないでください」…もはや私に残されたものはこの身ひとつだけ…安然の背中を見送る穆澤の手には安然の黒髪があった。穆澤は早速、陸家に人を送って慶事の準備に取り掛かった。何も知らず安然に会いに来た穆川は呆然、感情的になって花嫁の部屋に押し入ろうとする。「安然!なぜ二哥に嫁ぐんだ?!訳を聞かせてくれ!」慶王の使いは必死に斉(セイ)王を制止していたが、穆川は簡単に諦めそうもない。そこで安然は冬青(ドンチン)に伝言を頼んだ。冬青は安然の言葉を伝えた。「″水面に散った花は心の求めるままに流れゆく″と、小姐(シャオジエ)のためを思うならご理解を 殿下が寝殿に立ち入れば小姐のお立場に傷がつきます」「冬青、お前なら安然の本心が分かるはず、一夜のうちに何があったんだ?!」「小姐は常に信念に従って行動します、嫁ぐと決めたのはご本人の意思です 殿下はあくまで小姐の知己なのです」「嘘だ!私の想いに気づかぬはずがない!」しかし冬青は執着すれば苦しみが増すだけだと突き放した。「全てご納得の上、決められたのです…どうぞお引き取りを」「納得?何が納得だ…私は納得できぬ、決して!」霊奚(レイケイ)は安然の斉王への仕打ちに困惑、安然を問い詰めた。「小姐はすっかり変わってしまった…成人の儀からまるで別人のようです! 私を子供扱いするけれど、私だって小姐の気持ちくらい…」「甘やかし過ぎたようね!口答えはおやめ!」「そんな言い方…小姐なら絶対しない!」すると霊奚は泣きながら寝殿を飛び出してしまう。やがて瀚京(カンケイ)は雨になった。傘も差さず町をさまよう穆川。安然はなぜ一夜で豹変したのか、まさか二兄を本当に愛しているのだろうか。その頃、穆澤は陸家を訪ねていた。婚礼準備が進む様子に満足げな穆澤、すると安然が慶王府に移りたくないという。「女の妬みは怖い、諍いを避けて平穏に暮らしたいのです」「ふっ、平穏だと?慶王府は尼寺ではないぞ?」←誰が上手いこと言えとw穆澤は安然が何か企んでいると疑いながら、それがどんな策略なのか期待してしまう自分がいる。しかし安然は至って殊勝に振る舞った。「この屋敷は慶王府と隣接しています、庭に通路を作りますのでこのまま住み続けても?」「ふむ…はお、よかろう、ただ一度は輿入れしてもらうぞ それから九弟の関係は清算しておけ」「私と斉王殿下は清い関係です」「逃げるだけではダメだ、思いを断ち切らせねばな…いいな? それから決して涙は見せるな、そなたを娶る気が失せる、虐げる楽しみもな」傷心の穆澤は清河幇(セイカホウ)にいた。沈長青(シンチョウセイ)はびしょ濡れのまま泥酔している穆川を見つけたが、こんな哀れな姿を見るのは初めてだった。「私には大事な人がいた…待っていてと言われたから私は待った、ずっと待ったよ 信じて待ち続けてやっとその時が訪れた、でも手を伸ばした瞬間、泡のように消えてしまった ふっ、あはははは…うっ…分からないんだ…私の何が悪かったのか… 許して欲しいけれど、何が悪かったのか分からない…他の男に嫁ぐなんて…」すると穆澤は高熱を出して倒れてしまう。蕭驚雀は慶王が陸安然を娶ると知り、激しい嫉妬に駆られた。何とか思い止まらせようと説得したが、かえって叱責され、引っ叩かれてしまう。「出て行け!」穆澤は驚雀の兄・蕭映(ショウエイ)の反発を予想し、軍営を訪ねた。予想通り蕭映は辺境の平定に忙しく、翊(ヨク)王まで手が回らないと遠回しに牽制する。「戦場で共に血を浴びた戦友として率直に申せ」すると蕭映は蕭家に対する仕打ちに失望したと嘆き、妹に正室の座を与えて欲しいと嘆願した。「辺境の兵力でどうだ?」「すぐ呼び戻しましょう」「では明日から蕭驚雀が慶王府の女主人だ」穆澤は安然の部屋にうさぎの燭台があることを見逃さなかった。そこですぐ侍女たちに新しい飾りを届けさせる。「陸小姐がうさぎがお好きだからと殿下が特別にご用意しました 普通の提灯よりも可愛らしくて素敵ですね」しかし赤いうさぎの提灯はかえって安然を鬱々とさせてしまう。「あの男の思い通りにはさせない、奪われたものをひとつづつ取り返す」←え?振り出し?その時、突然、沈長青が現れた。配下に何度、安然を呼びに行かせても門前払い、我慢の限界に来た沈長青は首に縄を付けても連れて行くという。「穆川はボロボロだ、うわ言のようにあんたの名前を呼び続けてる、一緒に来い!」「分かった、一緒に行くわ、話をつける」沈長青は穆川を本当の弟のように可愛がっていた。そんな穆川が心底好きになった相手なら何とかしてやりたい。つづく( ๑≧ꇴ≦)ここに来てスムージーのツンデレ発動それにしても皆、上手いね~地味だけどw
2024.02.08
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覆流年 Lost Track of Time第19話穆川(ムーチュアン)は愛する陸安然(ルーアンラン)のため、父皇に事情を話して陸軽舟(リクケイシュウ)を救おうとした。そもそもこれは身内の争い、しかし陸欣然(ルーシンラン)が自害したこともあり証拠がない。一方、冬青(ドンチン)は欣然の骸が蘇城(ソジョウ)で母親の隣に埋葬されたと安然に報告していた。安然はそれより父が心配だったが、冬青は斉(セイ)王が何とかしてくれると励ます。「そのためには大きな代償が必要かも…水運は陛下の宿願だった、陸家から奪う好機だわ」安然の予想通り皇帝は陸軽舟を釈放する代わりに陸家の船や港の権利を朝廷に差し出すよう条件を出した。穆川は父皇のやり方に反発し、二兄に協力を求めた。しかし穆澤(ムーヅー)の反応は冷ややか、陸家が水運を握りながら無傷でいられたのも皇帝の慈悲に過ぎないという。「目の前の肉を手放すとでも?」兄の言葉に激高した穆川は思わず机を叩いて立ち上がった。「まるで強盗だ!卑怯にも程がある!」「それが帝王の手段だ!」「帝王の手段?…もう二哥とは食卓を囲めない」すると穆川は食事の途中で帰ってしまう。実は穆澤は欣然が偽造した密書を持っていた。安然が泣きついてくるなら陸軽舟の潔白を証明しても良いが、果たして頭を下げる相手は自分なのか、皇帝なのか。陸欣然の騒ぎが祟って陸家の業績は急激に落ち込んだ。ここまでの赤字は初めてのこと、今は蓄えを切り崩して船員たちに給金を出している。しかし皮肉なことに陸家を見限った船員たちが大量に辞めたことで、赤字は減っていた。安然は新規の注文を止めるよう通達し、来月一日に瀚京(カンケイ)で会合を開くことにする。「あと少しだった…陸家の船は国中を結べたのに…」家業を手放す覚悟を決めた安然は穆川と落ち合い、皇帝に謁見したいと頼んだ。安然は36港を束ねる双魚令(ソウギョレイ)と譲渡証を献上した。その代わり複雑な水路で混乱が起きないよう水運の管理を任せて欲しいという。皇帝は安然が平凡そうな娘に見えて聡明だと気づき、管理を認めて少し話をすることにした。「川児から母親の話を聞いたか?」穆川の生母は南霄(ナンショウ)の公主だった。皇帝は南霄を制圧した際、公主に一目惚れ、側室として娶ったという。しかし皇帝が寵愛しても想い人がいた公主は心を閉ざしたまま、我が子さえも遠ざけた。そして想い人が戦死したと知った公主は首を吊り、あとを追ったという。皇帝は当時のことを思い出し、思わず目が潤んだ。「川児は母親に似ている」奇しくも穆川は生母と同じ言葉を口にした。『陸安然が好きです、彼女が苦しむ顔を見ていられません』穆川は安然を娶りたいと言ったが、皇帝は母と同じ道を歩ませたくないという。そこで皇帝は父親に平穏な老後を遅らせたいなら今後一切、穆川と会ってはならないと命じた。安然が宮殿を出ると外は激しい雪になっていた。…陸安然、お前が愛を手にすることは贅沢な望みなのよ…あの苦しかった10年、どうしてまた同じ苦しみを味わうことに?…結局、私は籠の鳥のまま死ぬ定めなのね…もう疲れてしまったすると10年後の哀れな自分が現れ、結末を覆す以外に逃げ道はないと助言する。穆澤が再び皇帝に即位すれば、永遠に囚われの身となるのは必至だ。『でもどの道、穆澤から逃げられない、何度、やり直しても陸家は救えず、深みにはまるだけ… 陸安然、あきらめなさい』「嫌、イヤよ!何としてでも陸家を救う!」この時、安然は気づいた。時を遡ったのはやり直すためでも天の慈悲でもないこれは運命からの警告だと…。避けようとするだけでは何も変わらない。そして安然は決意した。この過酷な定めに立ち向かおうと…。 ←イヤイヤイヤ…前も言ってなかった?w陸軽舟は釈放された。安然は陸家を守れなかったと謝ったが、父は全力を尽くしてくれた娘を労う。「蘇城で待っていて、もう一度だけ戦いたいの…必ずまた会えるわ」←また戦うのか~いw一方、穆澤は安然が自分との婚姻を拒むため、家業を手放したと知った。「実に恐ろしい女だ、だが見ていろ、そう簡単には思い通りにならぬ」そこで常時、刺客に陸軽舟を見張らせるよう命じた。冬青は兄と相談し、陸軽舟を雲隠れさせる計画を立てた。しかし慶王の配下が尾行しているため逃げ切れず、失敗に終わってしまう。一方、穆川は愛する人を守ることができず、自分の不甲斐なさを嘆いていた。これでは安然に合わせる顔がない。すると霊奚(レイケイ)が独りで訪ねて来た。屋敷へ戻った霊奚は斉王が明日の誘いを喜んでいたと安然に報告した。しかし霊奚には安然が斉王を想いながら、なぜ心を隠すのか分からない。すると安然は穆川を月に例えた。「彼は月のような人、私の苦しい旅路の唯一の慰めなの でも月には手が届かないでしょう?夜空を明るく照らしてくれるだけで十分よ」穆川に会うのは明日が最後になる。安然はせめて穆川の運命だけは変えたいと願った。翌日、安然は初めて令嬢らしい華やかな装いで街に出た。穆川は美しい安然に見惚れながら、手作りの贈り物を渡す。「あ、後で見てくれ、でどこへ?」「少し歩きたいの」安然と穆川はしばし日常を忘れて大街を散策、やがて日が暮れる頃、川辺で暖を取りながら酒を楽しんだ。「以前ならお酒や町歩きは退屈だった、でも今は悪くないと思う」すると穆川はこっそり露店で買った操り人形を取り出し、一目惚れの物語を聞かせると言って告白しようと計画した。しかし安然が自分の知っている一目惚れの物語を先に聞いて欲しいという。「蘇城の王(ワン)という商家に娘が1人いたの、18歳の時、護衛に一目惚れ、結婚を誓った だけど娘の初恋は悲劇に終わる…」安然は架空の物語として自分の体験した壮絶な人生を明かした。「…その後、娘は天から機会を与えられ、想い人と再会するの でも娘は一目惚れした自分が愚かなだけだったと気づいただけ、それからどうなったと思う?」結末はまだ安然にも分からない。すると穆川は振り出しに戻れるのなら宿命などにこだわらず、毎日を楽しく生きればいいと言った。率直な感想を聞いた安然は娘が大事な人と一緒に人里離れた山奥で静かに暮らしたと締めたが、そんな夢はもう叶わない。「もし来世があったら何をしたい?」「皇子に生まれず、世界を旅したい…君は?」「私は…誰かの妻となり、共白髪になるまで仲睦まじく、平凡に暮らしたい」安然は穆川のために花火を買っていた。美しく燃え上がる花火を見ながら、安然はかつて大晦日に穆川が花火を届けてくれたことを懐かしむ。「穆川、改良された稲が実り、黄金色に輝けば、この花火のように美しいわ」「その時、君はどこに?」「一緒に豊作を見届けたい」つづく( ;∀;)むーちゃんを月に例えるなんて素敵
2024.02.07
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覆流年 Lost Track of Time第18話弟・陸昀(ルーイン)を盾に慶(ケイ)王から妾として輿入れするよう迫られた陸安然(ルーアンラン)。そこで安然は思い切った賭けに出た。「死んでも殿下の側室にはなりません 軍営に残るかどうかは昀児が決めること、そもそも弟と私は腹違いです 我が身と引き換えにする価値はない 姉として弟の身を案じてはいましたが、やはり思い直しました 人には運命がある、武人になりたいのならなればいい、手柄を立てるのは大切です」すると安然は言いたいことだけ伝えて帰ってしまう。穆澤(ムーヅー)は予想外の安然の態度に驚きを隠せなかった。…陸安然め、常に予想外の答えを返してくる…沈蘭渓(シンランケイ)の四十九日。安然はすっかりやつれた父を心配し、陸欣然(ルーシンラン)と一緒に母の魂を蘇城(ソジョウ)へ連れて帰るよう頼んだ。陸軽舟(ルーケイシュウ)はこれを機に安然も戻って人生をやり直せと言ったが、安然は陸昀を説得してから連れて帰るという。こうして陸軽舟はひと足先に都を発つことになった。しかし荷物を運んで馬車に乗る時になって突然、蕭映(ショウエイ)が兵士を率いて乗り込んで来る。何でも陸軽舟が北臨(ホクリン)と通じていると密告があり、ただちに荷物を調べるというのだ。すると驚いたことに陸家が北臨に武器を密売している証拠が発見された。「私は潔白だ!」後ろ暗いところがない陸軽舟は胸を張って屋敷を出て行ったが、安然は誰が父を罠にはめたのか知っていた。安然は憤慨して陸欣然の部屋に乗り込んだ。すると書卓に書き置きだけが残されている。…次は可愛い弟の番…火鉢は消えていたが暖かかった。「まだ近くにいるはず、私は軍営に行ってみる、霊奚(レイケイ)は屋敷で待機して 冬青(ドンチン)は幇主たちを呼んできて」しかし安然は山道を駆けている最中、馬が罠に引っかかり、落馬してしまう。霊奚は帰りの遅い安然を心配していた。そこで衫越(サンエツ)に迎えを頼んだが、安然は軍営にいなかったという。清河幇(セイカホウ)へ出かけた冬青はまだ戻らず、仕方なく霊奚は斉(セイ)王に知らせることにした。気を失っていた安然はようやく目を覚ました。すると陸欣然が慶王府の侍衛を連れて自分を見下ろしている。安然はいつの間にか赤い衣をまとい、手足を縛られ、棺に寝かされていた。「陸欣然!この日のために気が触れた振りをしていたの?!」「こうでもしないと恥はすすげないし、娘(ニャン)の仇も打てなかったわ!」「(はっ)私の娘を殺したのはお前なの?」「その通り」慶王妃だった欣然は穆澤が塩や鉄を密売していると知っていた。あの日、偶然、衫越が埠頭で乱闘騒ぎだと報告するのを耳にし、すぐにこれが好機だと分かったという。「でも爹まで…」「あの人が愛しているのはお前だけ、私はただの庶子よ お前は使用人にも愛され、昀児すらお前を慕ってる!こうなったのも全部、お前が悪いのよ! 慶王妃になっても穆澤の目にはお前しか映らない、どうして?…どうしてなの?! どうして誰も私を見てくれないの!…ふふふ、あはははは~! お前をここに埋めてやる、なぜ赤い衣を着せたか分かる?2度と転生させないためよ! …蓋をして!」陸欣然は復讐を果たし、慶王に報告した。「良くやってくれた、そなたがこれほどの策士だったとは… 文を見た時には信じられなかった」穆澤も安然の弱みを握るためとは言え、欣然が本当に自分の父を陥れるとは恐れ入った。こうして欣然は自分も安然に勝るとも劣らない知謀があると証明し、安然の名で再び嫁ぎたいという。「安然はもう現れません…私が″旅立ち″を見送りましたから」穆澤は欣然を抱き寄せ、明日から欣然が慶王府の女主人だと喜ばせてから安然の居場所を聞いた。「埋めました」するとそれまで優しかった穆澤の顔色が一変、いきなり欣然の首をつかんで埋めた場所を教えるよう迫る。欣然は例え殺されても教えないと拒否したが、顔に剣を突きつけられ観念した。「…案内します」陸欣然は穆澤を連れて城楼に登った。どんなに尽くしても報われず、哀れむどころか己の手を汚して恥をさらしたと蔑まれるとは…。「安然の居場所を吐けば命は助けよう」「ふふ、私は己の欲望と向き合ってる、でもあなたは? あなたは安然を愛しながらも虐げ、疑っている!認めたら? 安然の前ではあなたはまるで卑屈な犬よ!」「最後にもう一度聞く、陸安然はどこだ?!」「想い人の居場所など教えるものですか、これが私の復讐よ」すると欣然は城楼から身を投げてしまう。穆澤は咄嗟に欣然の腕をつかむことに成功したが、欣然はこの期に及んでも穆澤が案じるのは安然だけだと気づいて絶望した。「行き先が天国だろうと地獄だろうと、私が陸安然を生まれ変わらせない!」欣然はかんざしを抜いて穆澤の手を刺し、落下した。穆川と清河幇は依然として安然の居所を突き止めることができなかった。その頃、死を覚悟した安然は穆川との幸せな時間を思い出し、後悔に苛まれる。…運命がやり直す機会をくれたのに…なぜ私は全てを捨ててあなたと共に生きなかったのかしら穆川は占い師を頼った。占いでは安然が地中の奥深くにいると示し、やがて占い師がある場所を特定する。「瀚京(カンケイ)中の邪気が集まっています、ここに間違いない」その時、付近を探していた穆澤が掘り起こされたばかりの柔らかい土に気づいた。「ここだ!」穆澤は手が血だらけになっても掘り続けた。やがて棺が見つかり、安然は危機一髪のところで救出される。穆川は安然を抱きしめ涙したが、その様子を穆澤が見ていた。穆川は安然を無事に屋敷へ送り届けた。命に別状がないと分かって安堵したが、一体、なぜこんなことになったのか。すると冬青は場所を移してから説明した。何も知らなかった穆川は自分が片をつけると安心させ、安然の世話を頼んで参内すると決める。「安然には私がついていると伝えてくれ」穆澤は穆川がいない隙を狙って安然を訪ねた。冬青は安然が話せる状態ではないと断ったが、穆澤は強引に入ってしまう。「私の行く手を阻むな」穆澤は眠っている安然の顔に手を伸ばした。しかし陸欣然に安然への想いを見抜かれたことを思い出してふと手を止める。その時、安然が目を覚ました。驚いた安然は重い身体を起こして逃げるように離れたが、穆澤にはなぜ安然が自分に対していつも身構えるのか分からない。「そなたを侮っていた、まさか九弟を誘惑し、夢中にしていたとはな」すると穆澤は陸軽舟が娘にはめられたと知れば病がぶり返すだろうと脅した。安然は嫌悪感をあらわにしたが、穆澤は平然と目的のためなら手段を選ばないと言い放つ。「陸安然、そなたの父は国を裏切り敵と通じた ただの濡れ衣か、それとも本当の売国奴か…それを決めるのはそなただ 今なら側室として迎えてやる、ただし拒むなら慶王府の犬にする」「どうして私を娶りたいの?」「そなたが憎いからだ!そなたは私を罠にはめ、腹心を奪った 私はそなたが最も嫌悪する手段で報復し、痛めつけてやる!今までのことを後悔するがいい! 3日だけ猶予を与えてやる、慶王府から逃げられると思うなよ?!」つづくヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ何この展開?!衝撃走る!でも最終的な判断が占いって…え?www
2024.02.06
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覆流年 Lost Track of Time第17話母の突然の死に打ちのめされる陸安然(ルーアンラン)。その頃、慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)は蔡望津(サイボウシン)との面会を終え、監房を出た。「殿下、それからあの日、私を呼びに来たのは王妃の侍女・翠翠(スイスイ)でした 報告をためらったことが仇となってしまった、今となってはもう手遅れです」すると蔡望津は命をもって潔白を示すと決め、落ちていた短剣を拾って自分の胸を刺してしまう。「殿下…私と王妃の間に不貞はありませんでした 陸安然の策略の駒にされたことが唯一の心残りです」それが蔡望津の最期の言葉となった。「蔡望津よ、あの世で待て、いつか会いに行く」翠翠はすでに失踪していた。護衛・南星(ナンセイ)の報告では陸家の港を最後に足取りが途絶えたという。穆澤はやはり安然が陸家を守るため、数々の謀略を巡らせ自分を陥れたと気づく。「そうはさせぬぞ」一方、陸昀(ルーイン)は安然が陸家を守るため、徐清策(ジョセイサク)だけでなく母親まで犠牲にしたと責めていた。すると激怒した冬青(ドンチン)に引っ叩かれてしまう。「少爺!それ以上、言ったら私が許しません!」その時、離れから錯乱した陸欣然(ルーシンラン)の悲鳴が聞こえて来る。二姐は軟禁され、全て安然のせいだと泣き叫んでいた。「あれはどういう意味?!」「…どうせ信じてくれないでしょう?」安然はもはや言い訳する気力もなく、母の弔いに戻ってしまう。陸昀は安然に深く失望し、慶王の右腕である蕭映(ショウエイ)の軍営に身を寄せた。知らせを聞いた安然はかつて陸昀が戦死したことを思い出し、急いで連れ戻しに向かう。しかし軍営は警固が厳しく門前払い、そこで安然は穆川(ムーチュアン)を頼ることにした。穆川は水路の整備に取り掛かっていた。しかし荘園を持つ権力者たちはなかなか立ち退きに応じず、手を焼いている。そこで安然は力で圧倒するしかないと助言し、太平の世で暇を持て余している軍の兵士に任せてはどうかと提案した。「そうか、最近、蕭映の軍は新兵を迎えた、交渉役にはぴったりだ」「斉(セイ)王殿下、それでお願いです、弟を軍営から連れ戻してくださいませんか?」「よせよ、水臭い」穆川はむしろ安然が自分を頼ってくれたことが嬉しかった。公務に駆り出された陸昀は姉の差し金だと気づき、斉王に猛抗議した。しかし穆川は安然がこれまでいかに民を助け、守って来たかを説き、大将軍にも引けを取らない功績だと教える。「都で生きる者は誰でも心に苦悩を抱えている 陸欣然のせいで安然も陸家も辛酸をなめた、計り知れない苦しみだ …家業を継がないのはお前の勝手だ だが母親は急逝、父親は病になり、姐姐は心を病んだ 陸家で唯一の男であるお前が責任を果たさなくてもいいのか?」南星は翊(ヨク)王の私邸から見つかった五石散を慶王府に持ち帰った。五石散は幻覚作用のある薬で、都の貴人の間で密かに流行っているという。「翊王は薬の密売で儲けています」すると今度は蕭映が慌てて駆けつけた。斉王が公務のため新兵を借りに来たが、どうやら目的は陸昀だという。皇帝の聖旨も下っており拒否できず、斉王が陸昀を現地へ帯同し、令牌を託して全権を委ねていた。「翊王の私邸を立ち退き対象の一覧に加えろ」穆澤は九弟が安然に利用されたと気づき、陸昀を取り戻す策を思いついた。夫人を失った陸軽舟(ルーケイシュウ)はすっかり気落ちして一回り小さくなった。錯乱した陸欣然はますます手がつけられなくなり、夫人の位牌を持ち出して騒ぎを起こす。それでも安然は数少ない陸家の家族だと見逃した。安然は信仰深かった母の位牌を莫懸寺(バクケンジ)に納めた。「ここに木があったはずだけど…」かつて安然は出征した陸昀の無事を祈るため、莫懸寺を訪ねていた。その時、確かにこの場所で大木に下がっている願掛けを見た覚えがある。…大事な人が愛に恵まれ意のままに生きられますように…札には記名がなかったが、大師によれば願掛けした人の植えた小さな苗木がこうして立派に育ったという。するとぼんやりしていた安然の前に苗木を抱えた穆川がやって来た。「木を植えれば願いが仏の耳に届くと聞いたんだ」その苗木にはあの時の札がついている。安然は穆川の深い愛情に気づき、胸がいっぱいになった。「名前を書いたら?大事な人に届くように…」「はお」安然と穆川がお参りを済ませて仏堂を出ようとした時、突然、穆澤が現れた。「もう帰るのか?…だが邪気を払おうとしても無駄だ、陸家の福運はとうに尽きている」穆川は辛辣な物言いの二兄を諌めたが、安然は臆することなく生き延びてみせると言い返す。しかし穆澤は帰り際、安然に忠告した。「よくよく仏を拝んでおくことだ、これからも陸家が安泰で、可愛い弟にも加護があるように…」安然は慶王が何か勘付いたのではないかと心配した。そんなある夜、悪夢にうなされた安然は眠れなくなり、寝床を出て水を飲むことにする。すると冬青が駆けつけ、急ぎの伝言で慶王の使者が訪ねて来たと伝えた。なんでも陸昀が翊王の私邸の取り壊しで翊王配下と衝突して負傷、蕭将軍の軍営に戻って手当てしているという。安然は弟が人質に取られたと気づき、夜更けにもかかわらず慶王府を訪ねた。しかし家職から明朝に出直して欲しいと追い返されてしまう。安然は一睡もせず門の前で待ち続けた。やがて正門が開き、参内する穆澤が現れる。「あれは忠告ではなく警告だったのですね?」「怪我の程度は軽い、ただこの先、どんな目に遭うかは誰も分からぬ そなたの魂胆はお見通しだ、私は人の敷いた道は歩かぬ、私と一緒に誤った道を正すのだ」「再び陸家の娘を娶ることを陛下が許すかしら?」「妾なら知らせる必要はない」すると穆澤は日が暮れる前に返事をするよう命じた。穆川は朝議のあとに二兄を引き止めた。しかし穆澤は穆霖(ボクリン)の私邸を陸昀が取り壊したのは狙い通りだという。「穆霖は気が荒く執念深い、軍営を離れればかえって陸昀の命が危うくなるぞ?」そこへ翊王が通りかかった。「陸昀を一生、閉じ込めておくんだな、一歩でも外に出たら必ずこの手で葬ってやる」穆川は陸昀を助け出す術がなく、せめてしっかり面倒を見て欲しいと頼むしかなかった。屋敷に戻った安然は陸昀を救う方法を考えあぐねた。その時、霊奚(レイケイ)が不意に実の姉弟でも陸欣然と陸昀は安然と大違いだとこぼす。「(はっ!)私と昀児は生母が違う、男子が武人を目指すのはよくある話よね …賭けてみる」安然は慶王府を訪ねた。「まだ日は高いがもう決めたのか?」「早々に決断しました…私は死んでも殿下の側室にはなりません」つづく( ๑≧ꇴ≦)/<ヤーッ!!! ←そこっ?w
2024.02.04
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覆流年 Lost Track of Time第16話陸安然(ルーアンラン)は慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)に別れを告げ、屋敷に戻った。すると娘の帰りを待っていた陸軽舟(ルーケイシュウ)にいきなり引っ叩かれてしまう。「お前の企みか?こんな手段で陸家を守るなら命をかけても止めるべきだった!」いくら欣然(シンラン)の醜聞が自業自得とは言え、姉として妹を諭すどころか、それを利用して名誉を傷つけるとは…。しかし安然は決して過ちを認めなかった。「王府に嫁いでこんな騒ぎを起こし、放置すれば災いは陸家に及ぶ、それだけはさせない 爹(ディエ)、弁解はしません、こうなると分かっていたわ、だから後悔はしていない」陸軽舟は口答えした娘に激怒、反省するまでひざまずけと命じて行ってしまう。その夜は激しい雨になった。穆川(ムーチュアン)は葡萄棚を心配して様子を見に来たが、びしょ濡れのままひざまずく安然を見つける。驚いて駆け寄る穆川、すると安然は安心したのか意識を失った。沈蘭渓(シンランケイ)は娘がうなされながら斉(セイ)王の名を呼ぶのを聞いて2人の関係に気づいた。そこで気を利かせて斉王に介抱を頼んで出て行く。夫は口には出さないが、窓を開けて安然の部屋を心配そうに眺めていた。「…大夫の話では悩みを抱えた上、長期の疲労で身体に邪気が入ったとか 私には分かります、あの子のしたことは全て陸家のためよ」陸軽舟は安然が独りで全てを抱え込んでいたと知り、むやみに叱ったことを後悔した。夜も更けた頃、安然は目を覚ました。穆川はまだ熱があると気づいて眠るよう勧めたが、安然はこんな平穏な時を寝て過ごしてはもったいないと笑う。「用が済んだら蘇城(ソジョウ)へ戻るわ、2度と都へは戻らない」「水利が整ったら会いに行くよ、明日の開耕式には来いよ?」その頃、穆澤は侍衛の南星(ナンセイ)から新たな塩と鉄が到着すると聞いていた。「今や港は混乱し、よからぬ輩も紛れ込んでいる、決して見つかるなよ?」翌朝、安然の寝所に父と母がやって来た。父は薬湯を置いてすぐ店に出かけて行ったが、安然は母が取りなしてくれたのだと気づく。すると沈蘭渓は珍しく娘が着飾っていることに気づいた。「なぜ今日はおめかしを?」「逢引きよ、ふふ」沈蘭渓は娘の戯言に呆れたが、安然は至って真面目だった。「今まで時間を無駄にしてきた、今さら恥じらっていたら大損しちゃうわ」そこで沈蘭渓は自分のかんざしを外して安然の髪に挿した。そのかんざしは陸家に嫁いだ時、夫からもらったものだという。「斉王殿下は温かくて誠実な方ね…きっと最良の伴侶になるわ」沈蘭渓は明朝に夫と蘇城へ戻るため、今夜は斉王を招いて食事をしたいと言った。「分かったわ、娘(ニャン)、ご馳走にしてね、必ず殿下と戻るから!」安然は笑顔の母に見送られ、開耕式に出かけて行った。開耕式には多くの農民が集まった。穆川は安然に新種の稲の名前を″安心稲(アンシントウ)″に決めたと教えたが、実は安然はその由来を知っている。「衣食足ること安心の始めなり…って意味でしょう?」かつて穆川は慶王府に新種の稲を届け、名前の由来を明かしていた。しかしそれは表向きの説明だという。すると穆川は安然の手を取った。「″安″の文字は安然から取った、君は自分を瀚京(カンケイ)という牢獄に閉じ込めてしまっただろう? だから君が国中を歩く代わりにこの稲を各地に植えようと思ったんだ ″安心″は個人的な願いだ」安然は当時も籠の鳥になった自分のために穆川が心を痛めてくれていたと知った。「何も気づかなかったなんて…ありがとう 私は近々、蘇城へ戻り、あなたと離ればなれになってしまう、それに今の陸家は…」「身分などすぐ消える煙と同じだ、私は気にしない…私が戻る場所は君だ」一方、埠頭では思わぬ揉め事が起きていた。衫越(サンエツ)が荷揚げしていたところ、2組の客が荷の取り合いになり、乱闘騒ぎになってしまう。困った衫越は屋敷に駆けつけが、安然は留守だった。沈蘭渓は夫が仕事中のため自ら仲裁に出かけたが、混乱の中で何者かに頭を殴られ倒れてしまう。実はその騒ぎを利用し、南星が港から密かに塩や鉄を運び出していた。その頃、安然は開耕を祝い、農民たちの輪に入って穆川と一緒に踊っていた。「前に″待って″と言ったでしょう?今日やっと言える…」しかし大事な言葉を伝える前に思わぬ訃報が届く。「小姐!大変だ!」…まさか、運命を変えたはずなのに…安然は母の棺を前に取り乱した。心配した穆川は安然を慰めようとしたが、激しく拒絶されてしまう。「穆川、帰って…帰ってよ!」穆澤は投獄された蔡望津(サイボウシン)に会おうとしなかった。しかしその夜、蔡望津からある思い出の品を受け取り、ついに地下牢へ向かう。すると穆澤はいきなり短剣を牢へ投げ入れた。「あの時の短剣をまだ持っていたとはな…」…あれは蔡望津が賊に襲われ、瀕死の使用人から食料を取り上げようとしている時だったちょうど軍営に戻る途中だった穆澤が通りかかり、見咎められてしまう『食い扶持は自分で稼げ、その気骨もないなら死ぬがいい』すると穆澤は自分の短剣を投げ渡して帰ったそんなある日、蔡望津が首級を持参して穆澤の軍営に現れた『殿下のお陰で己の尊厳を取り戻し、立ち直りました!』実は蔡望津は科挙の論文で先帝の実名を書いて罰せられ、一族全員が流刑になったしかし途中で山賊に襲われ、自分だけ生き残ったという『殿下の叱咤で仇打ちの決意を…このご恩は忘れません』蔡望津は穆澤のために命懸けで働くと約束、忠誠を誓った…「あの時の短剣と小指を添えれば許してもらえる思ったか?」「殿下…許しを請うつもりはありません、ただどうしてもご忠告したくて… 陸安然に用心してください」慶王が陸安然と盟約を結んでから計画は失敗続き。確かに安然の関与を示す証拠はないが、蔡望津はそれがかえって怪しいという。思えば安然を救ったという闇医者は行方知れず、投獄した柴広(シバコウ)は何者かが逃がしていた。学長に差し向けた刺客は全滅したが、遺体の傷は明らかに清河幇(セイカホウ)の手によるもの、しかも水雷が使われた形跡もあったという。しかし穆澤は安然が自分の計画を阻止して何の得があるのか分からなかった。すると蔡望津はある可能性に気づいたという。「陸家を朝廷の闘争から遠ざけるためかと…」安然は母の棺の側から片時も離れなかった。「娘…こんなに力を尽くしても救えなかった、何をしても無駄なの?」そこへ穆川がやって来た。「さっきはごめんなさい」「怒っていない、誰にも謝る必要はないよ」穆川にできることは傷ついた安然にただ寄り添うことだけだった。「私の人生は苦しみばかり…私が悪いのなら天はなぜ私ではなく家族を罰するの?」「大丈夫、今に幸せになるよ」「こんなに努力しても悲しい結果になるなんて、どれだけ頑張ればいいのか…」「君は幸せになる、必ずね」つづく(꒪ꇴ꒪〣)うわっ!シナリオを変えても宿命は変えられないのね…助けて司命!
2024.02.03
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覆流年 Lost Track of Time第15話穆川(ムーチュアン)は太平倉(タイヘイソウ)に陸安然(ルーアンラン)を案内、封印の紙に一言書いて欲しいと頼んだ。…天下太平倉廩(ソウリン)実ちる…そして2人は一緒に国璽を押し、この倉を開けずに済むよう願う。久しぶりに権謀術数から解放され、子供のようにはしゃぐ安然。そこで穆川に瀚京(カンケイ)を離れるつもりはないのか聞いた。穆川は近郊の水利が整うまでは離れられないと言ったが、確かに二兄にとっては都にいない方がいいのかもしれない。すると思いがけず安然が瀚京を離れるつもりだと知った。「じぇんだ?!あの時、君はもう少し待ってと言ったね…つまりその時が来たと?」安然の笑顔を見た穆川はその意味を悟り、今度は安然が少し待つ番だと笑った。「いいわ、今度は私が待つ」一方、蕭驚雀(ショウキョウジャク)の登場で追い詰められた陸欣然(ルーシンラン)は下策に出た。穆澤(ムーヅー)に媚薬入りの生姜湯を届け、強引に寵愛を得ようとしたのだ。普段なら警戒心の強い穆澤だったが、欣然の哀れな姿が非業の死を遂げた母と重なり、うっかり生姜湯を飲んでしまう。すると急に頭に血が上り、身体の様子がおかしくなった。「殿下の子供が欲しいのです、お願いです!」欣然は慶(ケイ)王にしがみつき懇願したが、穆澤はもうろうとしながらも護衛を呼んで難を逃れた。穆澤が正気に戻った頃、穆川がやって来た。慶王妃の騒ぎを耳にした穆川は、婚姻を道具にすれば相手が二兄を寄る辺だと見なすのは仕方がないと諌める。「二哥、私はあなたの幸せを望んでいる…せめて家では警戒を解き、心を許せる相手が必要だ」しかし穆澤にとって婚姻は権力と地位を守る手段、安心感を与えてくれるのは情ではなく権力だと信じていた。「もしそんな相手と出会えたら私も俗世の喜びを味わってみるとしよう、で、本題は何だ?」「あ、そうだ、今日は太平倉で最初の封印式を執り行ったんだ」穆川は嬉しそうに記念の品を見せたが、穆澤は安然が書いた封印だと知って内心、穏やかでない。一方、安然の屋敷にも翠翠(スイスイ)から慶王府で騒ぎがあったと知らせが届いた。…もうすぐ全てが終わるのね…安然の計画もいよいよ終盤に来ていた。軟禁された陸欣然をよそに慶王府は側夫人の輿入れを盛大に祝った。そして安然の提案通り、婚礼のあとは高貴な婦女たちを招いて宴が開かれる。蕭驚雀は大胆にも正室だけに許される鳳凰のかんざしを挿し、この機に自分こそ本当の女主人だと知らしめた。一方、令宮の欣然は今日が側夫人のお披露目の宴だと知り激高した。「私は嫁いで久しいのに慶王妃を知る貴族はいない…誰も私の顔を知らないわ!」すると翠翠が計画通り欣然を煽った。「王妃、側夫人などたかが武将の妹、一目見ればどちらが真の女主人か分かるはずです」「そうよ、その通りだわ!」陸欣然は見張りに金をつかませ、側夫人お披露目の宴に乱入した。欣然と驚雀は客人の前で嫌味の応酬、やがて欣然が驚若の鳳凰のかんざしを引っこ抜いてしまう。宴席は騒然となったが、そこへ騒ぎを聞いた穆澤が駆けつけた。「やめよ!…欣然、そなたの行いがどんな結果を招くか分かっているのか?」「殿下は私を殺せない、だって陸家との繋がりが断たれてしまうもの」穆澤は仕方なく慶王妃が病で乱心していると謝罪し、侍女に欣然を寝殿に連れ帰るよう命じた。安然は宴をあとにする翠翠に目配せした。そこで翠翠は予定通り蔡望津(サイボウシン)の部屋を訪ね、助けを求める。「王妃が変です!すぐ来てください!」陸欣然は蔡望津だけには本音を打ち明けられた。「知って欲しかったの、一度でいいから私がいるということを…私こそが王妃なのよ? なぜ誰も私の姿が見えないの?」「…少なくとも私には見えています」欣然は選んだ相手を間違えてしまったと後悔し、思わず蔡望津に抱きついて泣いてしまう。するといきなり蕭驚若が婦人たちを引き連れ乗り込んで来た。「あらあらあら…皆さん、ご覧になった?」一方、安然は回廊で全てが終わるのを待っていた。その時、王妃の寝殿から欣然の断末魔のような叫び声が聞こえてくる。…晴らすべき恨みは全て晴らした…慶王府の醜聞はあっという間に広まり、慶王は皇帝の逆鱗に触れた。「これがお前が戦功と引き換えに娶った賢妻か?! いいか、間男と淫婦はまとめて打ち殺せ!」しかし穆澤は処罰すればかえって噂を認めることになると訴える。「密通が真実ではないものの、王妃は自ら生家に戻ると申しております」「勝手にせよ!」陸欣然は見事に慶王府の面目を潰してくれた。このまま陸家が瀚京(カンケイ)に留まれば噂を長引かせるだけ、穆澤は安然に1日も早く都を離れるよう命じる。「陸家を見逃してくれるなら私の力で償います、今後は殿下に忠誠を… 都での商いを辞め、港も手放します」「分かれば良い、下がれ」安然はついに穆澤との縁を断つことに成功、帰ることにした。しかしふいに穆澤が呼び止める。「陸安然…私が最も残念に思っていることは何だと?」「殿下、ご教示ください」穆澤は何か言おうとしたが、結局、そのまま安然を帰した。安然は陸欣然を引き取って屋敷に戻った。錯乱した欣然は怯えて食事を取ろうとしなかったが、安然の説得でようやくまともな料理にありつける。「いずれにせよあなたのお陰で陸家は泥沼を抜けられた でも私たちのしこりは今世では消えないわね」…醜聞は疫病のように瀚京に広まった陸家は貴族たちから唾棄され、その名声は地に落ちたが、陸安然はようやく皇室との関わりを断てたついに幕を下ろした花朝節の夜に立てた計画しかし陸家を守れたと安堵した頃、運命は安然のあずかり知らぬ所で危険な罠を仕掛けていた…つづく( ๑≧ꇴ≦)えーっ!アンラン、嬉しそうに帰って行ったのに…どうなるの?!いよいよ後半戦!お楽しみに〜(←誰?w
2024.02.02
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覆流年 Lost Track of Time第14話陸安然(ルーアンラン)は厚かましくも自分を牽制しようとした陸欣然(ルーシンラン)にどちらが本当の主か分からせた。欣然はなぜ安然が王妃の寝殿に詳しいのか分からず、恐ろしくなってしまう。「私を怒らせない方がいい、それで徐清策(ジョセイサク)の遺体をどうするつもり?」すると欣然は科挙の件で追及されるのが嫌で、安然を黙らせるために遺体を盾にしたと白状した。「そうならそうと言ってくれればいいのに…」そこで帰り際、安然は庭の槐(エンジュ)の木を切れば時折、聞こえる不気味な泣き声が消えると教えてやった。安然は今回の不始末を追及される覚悟で慶(ケイ)王に目通りした。しかし穆澤(ムーヅー)は上機嫌、聞けば朝議で厳(ゲン)尚書の遺書を証拠に翊(ヨク)王を糾弾し、反腐敗派の高官たちから支持を得ることに成功したという。蔡望津(サイボウシン)の話では慶王が最後に徐清策の名誉回復を訴えたことが決定打となっていた。「″なぜ厳尚書を守れなかったのか″と嘆いてみせたのだ、皆、感動していたぞ?」その時、安然は全く同じ局面があったことを思い出した。かつて徐清策が翊王に殺された時も穆澤の口から同じ言葉を聞いている。『なぜ徐兄を守れなかったのか…』当時も穆澤は朝議で徐清策の名誉回復を訴え、高官たちの支持を得ていた。今になって思えばあの時も穆澤が反腐敗派の旗手として名を上げた徐清策を殺し、その罪を翊王に着せたのだろう。「あなただったのね…」まさかこんな恐ろしい人間と10年も枕を共にしてきたとは…。安然は急に気分が悪くなり、思わずその場にへたり込んでしまう。すると安然の露骨な嫌悪感に憤慨し、穆澤がそばまでやって来た。「どうした?そんなに腹立たしいのか?朝廷とは冷たく残酷な世界だ 今日のところは大目に見るが、そのような態度は2度とを許さぬ」一方、穆川(ムーチュワン)は科挙の徐清策の名誉回復に奔走していた。しかし証拠となる科挙の答案が全て燃えかすとなり、なす術ない。すると貢院の傅与南(フヨナン)が思いがけず答案を持って現れた。実は万が一のため、今期の答案だけは場所を移して保管していたという。穆川は改めて答案を採点し合格者を発表、徐清策は第一位の状元となった。穆澤は朝議の後、穆川を連れて廃墟と化した寝殿を訪ねた。穆澤と穆川の母は身分が低く、早世している。残された幼い兄弟は何の後ろ盾もなく冷遇され、この部屋で肩を寄せ合い生きて来た。実は当時、穆川は空腹の兄に最後の焼餅(シャオビン)を譲り、飢え死にしかけたことがある。「あの時、誓ったのだ、絶対にお前を守ると…」「そのために誰かを傷つけても?」穆澤は徐清策が正義のため命を捨てると思わなかったと嘘を付き、自分を疎む父皇や翊王と戦う必要があると訴えた。「約束する、もう誰も死なせない、私を許してくれるか?」「悲しいけれど他に道はないんだね、これは皇族の悲哀か、世の定めなのか」すると穆澤は九弟だけは権力争いに巻き込まれて欲しくないと願った。「おまえは稲香居士(トウコウコジ)のままでいろ、決して失望させない」安然が徐清策の遺品をまとめていると、冬青(ドンチン)が駆けつけた。「陸欣然が独りで外出したそうです、ただ蔡望津も両親の墓参りに行ったとか…」安然は当時を思い出してぴんと来た。あれは安然が出産して間もない頃、欣然から赤子の健康を願うお守りをもらっている。欣然はお守りをもらいに行った時に賊に襲われ、危ないところを墓参りに来ていた蔡望津が助けていた。確かその時、欣然は背中に刀傷を負い、蔡望津が薬草で手当てしている。「やはり今度も2人は寺へ行ったのね…行きましょう」陸欣然は人里離れた草屋に入っていた。なぜ過去を変えても同じことが起こるのか。安然は困惑しながらも、ともかく欣然が帰るのを待ってから寺を訪ねた。そこには怪しい祈祷師が独り、何でも占いで安然が来ると分かっていたという。「心配せずとも先ほどの娘の求めは拒んだ あの娘の目の奥に血が見えたのだ、それも近しい家族の血が… 血に染まるのは我が寺の呪物、とてつもなく邪悪で陰惨な呪いがかかっている」祈祷師はその呪物を安然に見せた。それは忘れもしない欣然が息子にくれたお守り、まさかこれが息子の健康を願うためではなく呪うためだったとは…。するとやはり欣然はその日、背中を負傷、翠翠(スイスイ)の話ではすでに手当てされていたという。穆川が葡萄棚の手入れに来た。この時期に葡萄を帷で覆って温室にするとあとが楽だという。安然は火の番をすることにしたが、穆川は浮かない顔をしていた。「実は二哥と話したんだ…やはり放ってはおけない …安然、君は退路を残しているのか? 君が秘密を抱えているのは分かっている、鍵を握るのは二哥、陸昀(ルーイン)、陸欣然だ 二哥は朝廷争いの渦中、そばにいれば君も陸家も飲み込まれるぞ? 私を信じてくれ、何が起きようと君と共に戦う 言えないなら無理に言わなくていい、自分を追い詰めるな」しかし安然は頑なままだった。穆川は困惑したが、ふいに安然が振り返る。「腕輪の刻印を見たわ、逃げ道はある、もう少し待っていて欲しい」「待つよ」そんな中、陸昀がいつの間にか書き置きを残し、屋敷を出て行ったと分かった。…大姐、これからは思いのままに生きていきます…二姐を憎まないで、学長の暗殺計画を教えてくれたのは彼女なんだ穆川は欣然が計画を知ることができたのは二兄が指示したからだと分かった。「欣然はこの機に乗じて私を殺そうとしたのね…」安然は欣然への憎しみを募らせ、必ず片をつけると誓った。安然は慶王府を訪ねた。屋敷は慶事の準備で大忙し、聞けば慶王が蕭映(ショウエイ)将軍の妹・蕭驚雀(ショウキョウジャク)を側室に迎えるという。…驚雀を娶るのは数年後のはず、なぜ今なの?…穆澤は安然を蕭将軍を紹介するために呼んでいた。すると蕭映は妹が輿入れするにあたり、安然が王妃だった時と全く同じ条件を出す。「正室と同等の待遇にて妹をお迎えいただきたい」そこで安然も当時と同じ言葉で将軍を諌めた。「苦労して地位を築かれた殿下が妻を軽んじる愚か者だと嘲笑されても構わないと?」実は安然には妙案があった。「婚礼のあと、高貴な婦女たちを招いて宴を開いては? 殿下の蕭家への敬重と蕭小姐への愛慕を皆に示せます」安然はほくそ笑んだ。家柄で勝る蕭驚雀の登場は陸欣然のとどめとなるだろう。一方、欣然は慶王が側室を娶ると聞いて激しく動揺していた。「闘わなくては…策を考えるのよ」穆川の念願だった食糧庫・太平倉ができた。そこで安然を驚かせるため、目隠しして案内する。実は太平倉は科挙の件で父皇からもらった褒美だった。「瀚京(カンケイ)だけでなく、各地に建設命令を出してくれた 陸家の港がある町、すべてに朝廷の倉庫が作られる」つづく(  ̄꒳ ̄)ムーヅーとアンランは怒ってる時の方が上手いね
2024.02.01
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覆流年 Lost Track of Time第13話京兆尹(ケイチョウイン)府で出火。太学へ向かっていた陸安然(ルーアンラン)も騒ぎを聞きつけ、急遽、現場へ向かった。するとちょうど徐清策(ジョセイサク)を助けに来た弟・陸昀(ルーイン)の姿を見つける。「昀児!」安然は思わず弟に向かって飛び出したが、駆けつけた穆川(ムーチュアン)が止めた。「危ない!」しかし徐清策は陸昀だけ逃がし、独り燃え盛る建物に残ってしまう。「この徐清策、血をもって科挙の不正が排除されることを願う 私の死後は科挙が公正に行われんことを…そしてすべての受験生に公平な道を!」徐清策は落ちていた役人の剣を拾うと、自ら首を斬りつけた。安然は徐清策の自害に激しい衝撃を受け、卒倒した。医者の話では命に別状はないものの、長年の心労に刺激が加わって頭に血が上ったという。「ごめんなさい、徐先生…私のせいよ…ごめんなさい…」「安然、何を悩んでいるんだ?」穆川はうなされる安然を心配そうに見ていたが、今度は貢院(コウイン)でも火災だと知らせが来た。貢院に火をつけるよう命じたのは慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)だった。蔡望津(サイボウシン)が徐清策の説得に失敗、急ぎ答案を灰にして証拠を隠滅するしかない。しかし科挙の不正は瀚京(カンケイ)中が知るところとなり、太学の学長には手を出せなかった。穆川は答案のすり替えと貢院の火災に二兄が関与していると気づき、慶王府に穆澤を訪ねた。「澹(タン)州では軍の腐敗のためだと釈明していたが、今回は何のため?」「自分のためだ」「二哥…あなたのことが分からなくなった」すると二兄に失望した穆川は帰ってしまう。蔡望津は斉(セイ)王を警戒したが、穆澤は決して九弟に手を出さないよう釘を刺した。その夜、安然は血まみれの徐清策に責められる悪夢を見て目を覚ました。霊奚(レイケイ)と冬青(ドンチン)は安然の意識が戻ったと安堵したが、安然は悔恨の念で憔悴しきっている。「穆澤が徐先生に目をつけた時、止めるべきだった…」「あの時は霊奚が慶王の手中にあって仕方がなかったのです」冬青の話を聞いた霊奚は自分が原因だと知り、安然を苦しめてしまったと泣きながら叩頭した。その時、ちょうど見舞いに来た穆川は思わぬ安然の言葉を聞いてしまう。「…他人の人生を奪った私に陸家を守る資格などある?」穆川は安然も今回の不正に関わっていると疑い、冬青と霊奚を下げてから確かめた。「誰かに脅されたのか?騙されたとか?…霊奚を人質にされたのか?!」しかし安然は言い訳せず、わざと悪ぶって見せる。「いいえ、私が徐清策を慶王に推薦したの たとえ弟の友だちでも己の手柄のために利用させてもらう」「陸安然!人の命を何だと思っている!…一体、本当の君はどれなんだ?!」穆川は安然の心が読めず、憤怒して帰ってしまう。翌朝、安然は徐清策の無念を晴らすため、太学の学長を訪ねた。しかし学長は厳(ゲン)尚書を恐れて告発できず、せいぜい徐清策の答案の写しを渡すことしかできないという。安然は思わずひざまずき、このままでは徐清策が浮かばれないと訴えた。「こんな屈辱的な死に方をして、あの世で安らげるでしょうか?」その頃、姉に裏切られた陸昀は斉王を頼っていた。「殿下!証拠ならあります!」実は徐清策の答案の写しを太学の学長が持っているという。斉王に見張りをつけていた蔡望津は穆川が学長の屋敷へ向かったと報告を受けた。学長はともかく斉王が真相を知れば正義を貫き、慶王の前途が断たれることは必至だろう。「帝王の道に犠牲は付きもの、学長を消し、斉王も始末せよ」その話を慶王妃・陸欣然(ルーシンラン)が立ち聞きしていた。「天がくれた好機ね…」そこで欣然はわざと陸昀に慶王が学長を殺すよう命じたと知らせた。「安然に言っても信じてくれないと思って…」一方、安然に説得された学長は参内するため屋敷を出ようとしていた。すると潜んでいた刺客が現れる。ちょうど穆川が駆けつけ難を逃れたが多勢に無勢、しかし危ないところで安然が清河幇(セイカホウ)を連れて戻ってきた。沈長青(シンチョウセイ)は配下と共に刺客を退けたが、黒幕を吐かせる前に自害してしまう。安然は証拠を持っている学長の身の安全を守るため、沈長青に護衛を頼んでいた。穆川はようやく学長が安然から徐清策の名誉回復を頼まれ、皇帝に上奏するつもりだったと知る。すると穆川は学長の陳情に同行すると約束、屋敷を沈長青に任せて帰ることにした。安然は別れ際、足を負傷した穆川に薬を差し出したが、昨夜の恫喝で気まずい穆澤は素直になれず無視してしまう。仕方なく先に帰ることにした安然、その時、慌てて穆川が引き留めた。「おい!一度、無視したくらいで諦めるなよ!」安然は穆川のすねにある大きな切り傷を手当てした。するとふいに穆川が包帯を巻いている安然の手を握り締め、安然の苦しみを理解したいという。「何でもいい、話してくれないか?」安然は激しく動揺し、薬瓶をうっかり落とした。「二哥と盟約を結び、 不正の片棒まで、でも今度は徐清策のために二哥を敵に回すようなことを… 盟約のために瀚京(カンケイ)に来たんだろう?安然、何がしたいんだ? 」しかし何も言えない安然は拾い集めた破片をただ強く握りしめるしかなかった。「(はっ!)分かった分かった、もういい、無理強いした私が悪かった でも忘れないでくれ、今後は私が力になる」穆川は慌てて安然の手を開き、傷ついた手のひらを手当てした。翌日、穆川は学長と一緒に皇帝に謁見した。不正の証拠を見た皇帝は激怒、穆川に調査を任せる。一方、穆澤は蔡望津が弟を傷つけたと知り、怒り心頭だった。蔡望津は斉王が偶然、居合わせたため巻き込まれたと釈明したが、穆澤は学長の暗殺に乗じて九弟を殺すのが目的だったと見抜く。すると蔡望津は斉王の存在が慶王の首を絞めることになると警告し、ひざまずいて嘆願した。「斉王は殿下の右腕ではなく災いの種、帝王への道は一歩間違えれば、奈落の底です 殿下ができぬなら、私にお任せを…どうか私を踏み台に!」穆澤は腹心に手をかけることができなかったが、腹いせに蔡望津の玉の冠を切り付け、壊した。「今度、九弟を負傷させたら、その時こそ貴様の首を斬る!」穆澤は剣を収めたが、科挙の不正はすでに皇帝の知るところとなった。しかし穆澤にはすでに対処法があるという。「厳尚書を始末し、翊(ヨク)王に罪を着せるのだ」安然は厳尚書が自害したと聞いた。しかも遺書には科挙の不正が翊王の指示とあったという。霊奚は都の恐ろしさを知って帰郷したいと訴えたが、実は安然も近々、帰るつもりだった。「でもその前に徐先生の遺体を引き取らなくちゃ、蘇城に埋葬してあげましょう」すると慌てて翠翠(スイスイ)がやって来た。実は徐清策の遺体は陸欣然がすでに引き取り、安然を呼んでいるという。安然は遺体を引き取るため欣然を訪ねた。しかし欣然は高位を笠に安然を牽制しようとする。「自分の身分を分かっているの?」「王妃の座は私が譲ったのよ?…その気になれば明日にでも取り返せる この屋敷のことも全て把握しているわ」夜になると時折、泣き声のような音が聞こえること、閨房の鏡台の近くの窓がきしんだ音を立てること、窓辺の長椅子が珍しい玉のため固いこと、屏風に描かれた鹿が全部で6頭いること、安然は全て言い当て、欣然を怯えさせた。「ここは私の屋敷、私を怒らせない方がいい、それで徐先生の遺体をどうするつもり?」つづく( ゚ェ゚)ん?貢院の火事は事故なのか?
2024.01.30
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覆流年 Lost Track of Time第12話清廉潔白な徐清策(ジョセイサク)の行く末を案じる陸安然(ルーアンラン)。すると居所に突然、慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)が現れ、安然が慌てて閉めた窓に手を挟んでしまう。「何かご用ですか?」「私を敵のような目で見るのはなぜだ?私を恐れているのか?」安然は困惑し、今さらながら慶王の手を案じた。「心配には及ばぬ」「借りは作りたくありません…特に殿下には」安然は穆澤の手に薬酒を塗って手当した。「この薬酒は強い、匂いを嗅ぐのも御法度では?」「何のことだ?」「酒を断っておいでなので…(ハッ)」安然はうっかり口を滑らせ、慶王が酒を飲むところを見たことがないと誤魔化した。しかし穆澤は疑念を深め、蘇城(ソジョウ)を訪れる前に面識があったかと確認する。安然は言葉に詰まったが、その時、陸昀(ルーイン)がやって来た。「姐(ジェ)!徐先生が書物を借りたいと…あ、慶王殿下」「徐先生とは誰だ?」穆澤は徐清策が蘇城の才子で、優秀ながら名もない庶民の子だと知った。そこで帰り際、安然に答案のすり替えに最適だと告げる。実は当時、徐清策は科挙に合格後、穆澤に仕えて翊(ヨク)王に殺されていた。安然は合格しなければ徐清策を助けられると考え、また3年後の再受験があると楽観する。「異存はありません」「明日は私の誕辰だが、良い前祝いとなった」すると穆澤がふいに安然へ手を伸ばした。驚いた安然は無意識に避けてしまい、気まずくなってうつむいてしまう。穆澤は改めて安然の乱れた髪を直してやると、合格発表後に侍女を迎えに来るよう伝えて帰って行った。翌日、穆澤は寝殿の密室に作った母の廟を訪ねた。「娘(ニャン)…今日は私の誕辰、私が最も憎む日です、誰もあなたの名を知らない いつの日か私があなたを宗廟へ入れると約束します、そして永遠に祀らせる…」そうとは知らず、慶王妃・陸欣然(ルーシンラン)は穆澤の歓心を買おうと手作りした長寿麺を届けた。しかし穆澤は激怒、長寿麺をひっくり返してしまう。「安然が何を企んでいようと役に立つ、だがそなたは庶子だ 役立たずを養ってやっているのだぞ?…皇家の婚姻は遊びではない 王妃の座を横取りしておいて我が物顔でのさばるのなら容赦しない」安然の計画は成功、翠翠(スイスイ)からの知らせで欣然が慶王を怒らせたと分かった。ただそのせいで協力してくれた翠翠が辛い目に合っているという。安然は責任を感じたが、冬青(ドンチン)は翠翠もいつか抜け出せると励ました。陸欣然は安然を牽制するため、弟を抱き込もうと考えた。しかし安然を慕う陸昀は二姐が自分たちの仲を引き裂いて陸家の財産を狙っていると気づく。「いい加減にしてくれ、二姐は慶王妃になった、願いは叶っただろう?これ以上、何も望むな」欣然は弟にも相手にされず、安然への憎しみを募らせた。「必ずあの女の本性を暴いてやるから」科挙の試験が終わった。手応えがあった徐清策は意気揚揚と合格発表を見に行ったが、驚いたことに落選してしまう。こうして計画通り厳子韫(ゲンシウン)が第一位で合格、安然は慶王府へ霊奚(レイケイ)を迎えに行った。穆澤は約束を守って霊奚を呼んでくれたが、衛兵たちはまだ霊奚を解放してくれない。「かつての盟約は婚姻であったが、こたびは口約束ゆえ信用しきれぬ そこでこの盟約書に署名してもらおう、信義に背いた者は責めを負うとな」しかも穆澤は衛兵の剣で霊奚の指を切りつけ、その血で署名するよう迫った。安然は仕方なく鮮血で名を記したものの憤懣やるかたない。その時、蔡望津(サイボウシン)が安然を見送るため、手を差し出した。「陸小姐、こちらへ…」そこで安然はかんざしを抜き、去り際に蔡望津の手を傷つけ、鬱憤を晴らした。蔡望津は回廊で傷ついた指を見ていた。そこへちょうど陸欣然が通りかかり、蔡望津が怪我をしていると気づく。心配した欣然は薬を届けたが、慶王と安然が改めて盟約を結んだと聞いて落胆した。しかし思いがけず厳尚書を取り込むために安然が答案すり替えに一役買っていたと知る。「その才子は王妃と同郷ですよ?」一方、霊奚は屋敷へ戻り、冬青と再会を喜んだ。安然は一安心したが、不正に手を貸してしまった自責の念に駆られてしまう。その時、陸昀と徐清策が帰って来た。安然は3年後の科挙まで陸家が徐清策を援助すると申し出たが、徐清策は蘇城へ戻るという。陸欣然は弟と安然を離間させるため、陸昀に科挙の不正を暴露した。「優しい姐に聞いてみたら?徐清策と厳尚書の息子の答案をすり替えたかどうか 信じられないなら太学の学友に頼めばいい みんな名家の子息でしょう?状元の答案くらい手に入るはずよ」陸昀は厳子韫の答案を手に入れ、安然の部屋を訪ねた。「答案がすり替わっている、徐先生が本当は状元だった」「知っているのね…いずれ説明する、でも徐先生には言わないで」安然は相手が厳尚書の息子のため、騒ぎになれば徐清策もただでは済まないと警告した。しかし陸昀は姉の裏切りに深く失望し、徐清策に答案すり替えの真実を明かしてしまう。激情に駆られた徐清策は思わず屋敷を飛び出した。慌てて後を追う陸昀、すると冬青が安然に陸欣然と陸昀が会っていたと報告する。安然は衫越(サンエツ)に陸昀を頼み、急いで慶王府を訪ねた。徐清策は貢院に駆けつけたが、門は堅く閉じていた。そこで嘆願の太鼓を叩き、足を止めた人々に自分の答案がすり替えられたと訴える。大役を終えた穆川(ムーチュアン)はちょうど慶王府にいたが、貢院での騒ぎを聞いて急いで向かった。安然は呑気に茶を飲んでいた欣然を引っ立て、慶王の前に突き出した。実は欣然がすり替えの件を漏らし、計画が台なしになったという。穆澤はちょうど厳尚書からなぜ露見したのか問われたばかり、これで疑問が解けた。しかし焦った欣然がこれも全て安然の企みだったと訴える。「弟は徐清策の答案を太学の学長に見せていました 最初から安然は殿下の策を潰す気だったのです! 策を弄して婚姻を逃れ、こたびも殿下の邪魔を…信じてはいけません!」「よく言うわ、我々の計画を知って昀児を学長のもとへ行かせ、すり替えに気づかせたくせに 騒ぎを大きくして策を潰し、私と昀児の離間をも企てたのね? ともかく今はあなたに構っている暇はない! 殿下、とにかく徐清策を黙らせなくては…殿下の元で用いては?賢才ゆえ役立つはずです」「今回は原因を追求せぬが、事が落ち着いたら沙汰を下す、陸安然、学長はそなたに任せる」「はい」欣然は沙汰を待つのが安然ではなく自分だと知り、愕然となった。その頃、穆川は貢院に駆けつけ、調査をするよう迫っていた。しかし傅与南(フヨナン)は取り調べなら京兆尹(ケイチョウイン)府が行っていると言い訳する。「さらに調べるべきであろう? 科挙が権力と金に汚されたら、国を思う熱き血の行き場は?!賢才をどう集める?!」「もし調べれば貴人の関与が表に出ることになり、斉(セイ)王も困ることになるのでは?」「どういう意味だ?」「殿下、どうか行動は慎重に…」その時、穆川は慶王府で厳尚書を見かけたことを思い出した。一方、蔡望津は投獄された徐清策を説得していた。「私も同じ書生でした、お気持ちは分かります…でも成り代わったのは吏部尚書の息子 真実を暴き、功名を取り戻せても、仕官の道は険しい うちの殿下に仕えては?いずれ官職も与えられましょう」しかし徐清策は投獄されてもなお、それでは科挙の公正を取り戻せないという。蔡望津は徐清策が何年も合格できなかったのは出自のせいだと指摘、名もない才子が頭角を現すなど愚かな夢だと言い聞かせた。安然は慶王に答案すり替えを漏らしたのが陸昀だと知られるのを恐れ、その前に欣然に罪を着せて手を打った。「でもまさか昀児が徐清策を学長に会わせていたなんて…」科挙の試験の後、陸昀は徐清策と一緒に太学の学長を訪ね、答案を見てもらっていた。もし学長のもとに答案の写しがあるなら一刻も早く処分する必要がある。急いで冬青と一緒に太学へ向かった安然、しかし急に馬車が停止した。「小姐、京兆尹府で火事です!」つづく( ๑≧ꇴ≦)アンランw色々と激し過ぎるwww
2024.01.27
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覆流年 Lost Track of Time第11話皇帝は慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)の出自を知っていた。かつて酔った勢いで良(リョウ)妃の侍女に手を出してしまった皇帝、しかし当時は子が少なく、皇子の誕生を喜んだものだ。「それが…なぜあの子は暗く沈んだ目をするようになったのか」一方、皇位を狙う穆澤はこれまでのような正攻法では無理だと思い知った。しかし皇帝が今回の科挙で翊(ヨク)の選んだ試験官や出題者を交代させたことから、蔡望津(サイボウシン)は勢力を広げる好機だと進言する。そこで跡目争いに一貫して不干渉を貫いている老臣・厳(ゲン)尚書を懐柔しようと企んだ。実は厳尚書の息子は妓楼に入り浸りで科挙も連敗、合格を手助けしてやれば強力な後ろ盾になるだろう。その頃、陸安然(ルーアンラン)も陸昀(ルーイン)と冬青(ドンチン)を伴い瀚京(カンケイ)に入った。安然は弟を戦へ行かせまいと都の太学に入学させるつもりだが、陸昀はまだ大将軍になる夢を諦めていない。すると安然は途中で馬車を降り、弟と冬青を先に行かせて慶王府を訪ねた。昨日のことのように思い出される10年間の記憶。何も知らずに幸せに暮らしていた日々から一転、息子も陸家も全て失うことになろうとは…。その時、回廊で霊奚(レイケイ)を折檻している慶王妃・陸欣然(ルーシンラン)を見つけた。欣然は笑いながら霊奚の顔を水甕につけていた。激情に駆られた安然はいきなり欣然を突き飛ばし、霊奚を救う。「(はっ!)お前…生きていたの?!」安然は呆然とする欣然を捕まえ、水責めにした。「私のおかげで王妃になれたでしょう?あなたの娘(ニャン)は立派な最期を遂げられたわ」母の死を知らなかった欣然は激高したが、過去を思い出した安然は正気ではいられなかった。「今こそ陸家と毓児(ユーR)の恨みを晴らしてやる!」安然はついに欣然の顔を沈めたが、その時、斉(セイ)王・穆川(ムーチュアン)が駆けつけ止めた。安然は穆澤に騒ぎを起こしたことを謝罪し、霊奚を返して欲しいと頼んだ。しかし澹(タン)州の功績だけでは不十分、穆澤は誠意を見せて欲しいと条件を出す。それは厳尚書の放蕩息子を科挙に合格させろという無茶な要求だった。穆川は霊奚を安然に返すよう二兄に掛け合った。しかし穆澤は誠意がなければ信頼できないという。確かに安然の身辺で起こった事を思えば疑念を抱くのは当然だった。そこで穆川は1日だけでも霊奚と過ごさせてやりたいと頼む。穆澤は弟が安然を好きだと気づいたが、穆川はあくまで知己だと否定した。「分かった、お前の望み通りにしよう」思えば九弟の頼み事は珍しい。穆澤はそんな穆川の願いを叶えてやりたいと思ったが、その実、安然が霊奚と共に過ごす事で愛着が募り、必ずや取り戻すべく尽力すると踏んでいた。穆川のおかげで無事だった欣然。実は慶王が安然に毒を盛った事をすでに知っていると聞き、慌てて弁明に駆けつけた。しかし穆澤は真相など興味はなく、問題なのは陸家と陸安然が自分の役に立つかどうかだという。「慶王妃の座を守りたければ無用な面倒を起こすな、分かったか?」「でも…」「出て行け!」欣然は仕方なく引き下がったが、このままでは死んだ母が浮かばれない。すると偶然、回廊で蔡望津と出くわした。欣然は慶王の信頼を失ったと泣きついたが、蔡望津の話では慶王が安然の狼藉を叱責、罰も与えたという。「殿下に寄り添い、支え続ければお気持ちは伝わりますよ」欣然は王府で唯一、自分と向き合ってくれる蔡望津に好感を持った。安然は瀚京に屋敷を構えた。…息子を合格させてもらった恩があったのね…安然は今になってようやく厳尚書が急に穆澤になびいた理由を知ったが、到底、不正の手助けなどできない。「別の方法で霊奚を救うわ」そもそも穆澤との盟約は慶王府に出入りするための口実、安然が瀚京に来た本当の目的は陸欣然だった。穆川は霊奚を連れて安然の屋敷を訪ねた。喜ぶ安然だったが、霊奚の手首に残った傷に気づいて涙を流す。「ごめんなさい…全て私のせいね…」しかし霊奚は安然さえ無事なら幸せだと訴え、実は婚礼の日に自害するつもりだったが、穆川が止めてくれたと明かした。夜食を終えた穆川は安然たちが水入らずで過ごせるよう中庭にいた。すると安然が酒を持ってやって来る。「何をしていたの?」「葡萄棚を作っていた、普通のとは違う、わざと木の隣に立てるんだ 木に合わせて棚の高さを上げればツルも上に伸びて行く 花の季節、実りの季節、季節ごとに景色が変わる、面白いだろう?」安然は穆川の説明を聞きながら呆然となった。当時、穆澤も安然を喜ばせるため慶王府に葡萄棚を作ったが、穆川と全く同じ説明をしている。つまりあの葡萄棚は穆川の受け売りだったのだ。…何もかもあなただった…穆川は泥酔した安然から酒を取り上げた。すると酒を取り返そうとした安然はうっかりつまづいて穆川の胸の中に倒れてしまう。「どうして黙っていたの?」「葡萄棚のことか?」「違う、違う…人を見る目があると思っていたのに、何も見えてなかった…」穆川は思わず安然の肩に手を回したが、その時、陸昀の声が聞こえて慌てて離れた。「殿下!葡萄が届きました!」陸昀は蘇城から届いた葡萄の苗を持っていた。安然は必ず迎えにいくと約束し、霊奚と穆川を見送った。陸昀は姐と斉王がお似合いだとからかい、慶王に嫁がなかったのも天の思し召しだという。その話を壁の向こうで穆川と霊奚が聞いていた。「子供が知ったような口を…」「本当は好きなくせに、もったいつけちゃって」霊奚は嬉しそうに微笑む斉王を見て思わず失笑する。すると穆川は辛い時には甘い物が効くと霊奚に飴を持たせた。冬青も思い合う安然と斉王の幸せを願った。しかし安然が瀚京へ来たのは陸家を皇家の争いから遠ざけるため、穆川と結ばれては本末転倒だという。「では次の計画が?」「霊奚の話では欣然は慶王府で冷遇され、侍女の翠翠(スイスイ)に八つ当たりしているらしいわ」穆澤の誕辰を前に慶王府には次々と贈り物が届いた。すると翠翠が欣然に王妃として贈り物の1つも贈らねば無作法だと助言する。安然は欣然が誕辰という好機に必ず食いつくと読んだ。「穆澤は誕辰を憎んでいるのにね」冬青は安然の計画の意図を知り、さぞや不興を買うだろうと気づく。その時、陸昀が友人を連れて来た。陸昀は科挙を受けるため上京した友人・徐清策(ジョセイサク)を屋敷に泊めることにした。しかし徐清策は安然が一緒に暮らしているとは知らなかったと遠慮する。そこで安然は気を使わせないよう、宿代の代わりに弟の勉強を見て欲しいと頼んだ。一方、穆澤と蔡望津は厳尚書の息子の替え玉を探していた。しかし瀚京で学のある者と言えば大半が名家の子息、答案をすり替えて不正に気づかれれば大ごとになる。さらに穆川の出題は″瀚京が抱える課題″と難問だった。狭き門になるのは必至、そこで蔡望津は地方の書生にまで手を広げるよう進言する。穆澤は果たして安然が命令通り動いてくれるのか気になっていた。安然はかつて科挙で状元となった徐清策と面識があった。今回は自分が弟を都に連れて来たせいで出会いが早まったのだろう。当時、徐清策は権力争いに巻き込まれ、非業の死を遂げていた。その夜、安然は部屋の窓から机に向かう徐清策を眺めていたが、突然、穆澤が現れる。「何をしている?」驚いた安然は慌ててつっかえ棒を落とした。「危ない!」窓が勢いよく落ちると、穆澤は咄嗟に手を伸ばして挟んでしまう。つづく( ๑≧ꇴ≦)ちょwアンランwwwやり過ぎ笑ったわ
2024.01.26
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覆流年 Lost Track of Time第10話慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)は捕縛された高承賢(コウショウケン)と話を付けることにした。すでに高承賢は腹を括って待っていたが、穆澤は利用価値があるなら殺す必要はないという。高承賢はあっさり寝返り、翊(ヨク)王を裏切って慶王に忠誠を誓った。しかしいきなり侍衛に腕を捻られ、踏み付けにされてしまう。「陸(ルー)家と慶王府は今や身内の間柄、そなたが陸安然(ルーアンラン)を陥れたことは分かっている 私の犬になるなら、咬みついて良い相手と触れてならぬ者をしかと見極めねばな」「分かりました…」激しい雨が続く中、町に告示が張り出された。支援米強奪の首謀者は柴広(サイコウ)、陸家は無実だという。驚いた穆川(ムーチュアン)は役所にいる二兄を訪ねたが、そこには復職した高承賢がいた。「二哥、高承賢の処罰は?!」「奴は役に立つ」穆澤は弟に帳簿を渡し、秦野闊(シンヤカツ)が翊王の金庫となり、軍が搾取した裏金が絶えず翊王に流れていると教えた。「高承賢は生き証人なのだ」「ならば父皇に帳簿を渡せば…」「だからお前は子供なのだ!それでは警戒されて徹底的な追求ができない 奴を使えば軍の腐敗を一掃できる」すると侍衛が駆けつけた。この豪雨で土石流が発生し、支援米の輸送隊が生き埋めになったという。穆澤は高承賢に崩壊現場の復旧と被災者の救出を命じ、穆川には必ず高承賢に罪を償わせると約束した。清河幇(セイカホウ)に帰った穆川は部屋に閉じこもり、ひとり煩悶していた。すると安然が雨に濡れて戻った穆川を心配し、薬湯を差し入れる。「不愉快でも身体は大切にして…触れ書きを見たわ」「澹州の民に申し訳ない、君にも…」安然は穆川が責任を感じる必要はないと言ったが、慶王を止めるなら今しかないという。「まだ間に合うわ、慶王がさらに道を外れることがあったらどうする? その時には兄弟の仲も戻らなくなってしまう…自分をしっかり持って」翌朝、穆川は独り清河幇を飛び出して行った。穆川が何をするつもりか分からなかったが、安然も沈長青(シンチョウセイ)に協力を頼み、先手を打つことにする。すると投獄された柴広の前に安然が現れた。「取り引きに来たの、慶王はあなたを米泥棒の主犯にしたわ 清河幇を裏切ればあなたの家族も唾棄され、生き地獄を味わう でも私に協力してくれるなら家族の平穏な生活を約束する」脱獄した柴広は妓楼にいた高承賢を引きずり出して短剣を突きつけた。「慶王を呼んで来い!」何事かと集まって来た民衆、その様子を安然は冬青(ドンチン)と一緒に高楼から見下ろしていた。やがて知らせを聞いた慶王がやって来た。すると柴広は濡れ衣を着せられたままでは死ねないと訴え、高承賢に真実を話すよう強要する。仕方なく高承賢は自分が黒幕だったと認め、しかも分け前が7対3だったと明かした。高承賢に向けられる民衆の激しい憎悪、その時、沈長青が背後から斬りかかり、裏切り者の柴広を始末して高承賢を解放してくれる。穆澤は幇主に感謝したが、沈長青は頭脳明晰な慶王なら悪人を懲らしめてくれると民衆を煽った。穆澤は引くに引けなくなった。そこで騒ぎを収めるためひとまず高承賢を投獄しようとしたが、思いがけず穆川が高承賢に恨みを持つ民たちを引き連れてやって来る。「高承賢のような権力を笠に着る輩が大勢の人を苦しめている! これ以上、犠牲を出してはならない!本人に償わせるべきだ!」穆澤はともかく役所で話そうとなだめたが、穆川は譲らなかった。すると穆川は穆澤の前でひざまずき、直訴状を掲げる。「澹州(タンシュウ)の民に代わり、慶王殿下に直訴します! どうか勅使の特権をもって、この場で高承賢を斬首に!」高承賢は驚いて慶王にすがりつき、盟約があると口を滑らせた。穆澤は民の矛先が自分に向くのを恐れ、咄嗟に侍衛の剣を抜いて高承賢の首を斬ってしまう。翌日、穆川は役所の兄を訪ねて謝罪した。穆澤は鬱憤を晴らすように剣術を稽古していたが、結局、穆川を許してくれる。「まさか弟に怒るはずないだろう?」その夜、安然と穆川は2人で祝杯を上げた。「帰郷したら弟を連れて瀚京(カンケイ)へ行くわ、あなたは?」「明日、二兄と帰るよ」安然は穆川が食糧庫の案を皇帝に上奏するつもりだと分かった。「瀚京で再会しましょう」帰路に着いた慶王一行、しかし山中で奇襲に遭った。穆澤も自ら剣を手に応戦したが多勢に無勢、何とか刺客を排除したものの、侍衛が慶王を救うため犠牲になってしまう。馬車は火矢で燃やされ手遅れ、大事な証拠もろとも灰になった。穆澤は朝堂で澹州の平定を報告し、高承賢の長年の悪事を見過ごして来た秦野闊を処罰するよう上奏した。しかし皇帝は事件の真相を暴いた慶王に褒賞を与えただけで終わらせてしまう。そんな中、皇帝は久しぶりに戻った九皇子を歓迎した。穆川は持ち帰った新種の稲を献上し、陸家を手本に食糧倉庫を提案、皇帝は民を思う九皇子に関心し、科挙の出題を任せるという。驚いた翊王・穆霖(ムーリン)は官職もない九弟には荷が重いと反対した。すると皇帝は確かに重積を担うには官職が必要だと失笑する。「詔を下す、九皇子・穆川を斉(セイ)王に封じる」こうして穆川は農事と水利を任され、安平街(アンヘイガイ)の屋敷を賜った。穆澤は自分のために死んだ昭烈(ショウレツ)の無念を思うと居たたまれず、独り皇帝を訪ねた。実は澹州で翊王と秦野闊が高承賢に搾取を命じた証拠を入手しながら帰路で賊に襲われ、侍衛が殺されたという。「私と九弟も死にかけました…」しかし皇帝は穆澤の野心を見抜いていた。今や澹州では慶王を″清廉にして文武両道、戦場では勇敢にして民の心に寄り添い、賢王の風格あり″と評している。あえてここで胸の傷を見せてまで翊王の処罰を迫るとはいささかやり過ぎだろう。「良(リョウ)妃がそちの出自を隠していたな、朕が知らぬとでも思ったか? …慶王の座を守り、養生せよ、余計なことは2度と考えなくて良い」蔡望津(サイボウシン)は慶王が戻ったと聞いて書斎へ駆けつけた。しかし慶王はどこか様子がおかしい。「何が軍功だ、戦績を上げても全ては徒労に終わった… もう結果は決まっていた…とっくの昔にな! 私は父皇に疎まれていたのだ…だから何をしても無駄だった!」虚しく積み上げられた戦の記録、穆澤は全て床にぶちまけ、嘆き悲しんだ。すると蔡望津が慶王を励まし、奮起させる。「今までの努力は陛下の歓心を買うためですか? 殿下は偉業を成して歴史に名を残すお方、違いますか?! 目指すは至尊の位、昭烈が天から我らを見ていますよ?」「その通りだ」つづく( ๑≧ꇴ≦)ムーヅー上手い!
2024.01.25
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覆流年 Lost Track of Time第9話皇帝の勅命で澹(タン)州に入った慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)。駐屯軍都尉(トイ)・高承賢(コウショウケン)は不正を隠すため上辺だけ取り繕い、やり過ごすことにした。しかしかえって足元を見られ、慶王は善行と称して飢えた民に米を無料で配ってしまう。一方、清河幇(セイカホウ)にいる陸安然(ルーアンラン)は冬青(ドンチン)から慶王の様子を聞いていた。どうやら自分の贈り物が届いたらしい。その時、早朝から出かけていた穆川(ムーチュアン)と沈長青(シンチョウセイ)が戻って来た。安然の警告通り柴広(サイコウ)を警戒していたところ、高承賢に文を送ろうとして捕まったという。沈長青は安然のお陰で清河幇の名を汚さずに済んだと感謝し、拱手した。すると安然は昨夜の自分の無礼を謝罪し、償いに妹を差し出すという。沈長青はうろたえて逃げようとしたが、安然は失笑した。「生き別れの妹よ?」安然は当時、穆澤から沈幇主の生き別れの妹を探し出した話を聞いていた。その時の冬青は高承賢の屋敷の侍女で、いたぶられて容姿が変わっていたが、腕にある蝶のあざで分かったという。安然は冬青のあざを見た時、すぐその正体に気づいていた。「冬青の腕には蝶の形のあざがあるの」冬青は袖をまくって沈長青にあざを見せた。「本当に私の哥哥なの?」沈長青は黙って冬青の手を左ではなく右胸に当てると、冬青はその意味を悟って涙した。こうして柴広の捕縛と兄妹の感動の再会を演出した安然。計画は全て順調に見えたが、その頃、高承賢が陸家に横流しの罪をなすりつけようとしているとは知る由もなかった。安然と穆川は町に出た。穆川はさすがに何もかもお見通しの安然に困惑したが、安然は自分の労力を知らないだけだとはぐらかす。「私は君より1つ年上だぞ?人を子供扱いして」「ふふ(だって私はあなたより10年、長く生きてる…)」「ほら、また弟を見るような目だ」すると穆川はこのまま一緒に澹州の水利を整え、それから遊歴に出かけようと誘った。しかし安然は陸家を守るため、慶王のもとへ行くという。思いがけない返答に言葉を失う穆川。「出会いと別れ、一期一会よ、でも知己との縁はとこしえに続く…分かるでしょう?」「はお」その時、陸家の蔵から煙が上がるのが見えた。安然と穆川は慌てて駆けつけたが、待っていたかのように高承賢が配下を連れて現れる。高承賢は穆川を安然の護衛と誤解、2人を捕らえようとした。そこへ穆澤がやって来る。「やめよ!…高将軍、彼は我が国の九皇子・穆川だ」穆川はようやく二兄が勅命で盗賊の討伐と支援米の調査に来たと知った。すると高承賢が陸家の蔵で水害の支援米を見つけたと報告、証拠の米を差し出す。「陸安然、何か言うことは?」「…私の潔白は殿下がご存知のはずでは?」しかし穆澤は安然を助けず、結局、安然は連行されてしまう。穆川は安然の仕業ではないとかばったが、実は安然が二兄の澹州行きを知っていたと聞いた。「陸安然は私に″澹州で待つ″と伝えて来た、支援米を調べるよう仕向けたのも陸安然だ 何もかも陸安然の手のひらの上で転がされていた 陸安然からは我々がはっきり見えているが、我々にとって陸安然は雲をつかむよう…」「陸安然の意図が何であれ事実は明白だ、高承賢と通じていた清河幇の柴広を捕らえてある!」穆澤は収監された安然を訪ねた。安然は拷問で両肩を脱臼、慶王がこの機を利用して輿入れしなかった自分への鬱憤を晴らしたのだと気づく。すると穆澤は安然の肩をはめ込みながら、策を巡らせたのは自分に下るためかと聞いた。安然は激痛のあまり涙を流しながら、役立つ女子だと示して信頼を取り戻したかったと訴える。しかし穆澤は何より他人に動かされることを嫌った。「もっと壮大な計画があると思ったが、こんな惨めな姿をさらすとは…」「殿下、私はまだ生きています、なぜこれで終わりだと?」「…はお、楽しみにしておく」安然は裁きの場で潔く罪を認めた。翌日、慶王一行が安然を連れて帰京し一件落着、高承賢はすっかり気が緩んでしまう。その夜、高承賢は側近たちと祝杯を挙げた。金がつまった豚の丸焼きも届いて宴もたけなわ、しかし中身がただの石や紙切れだと分かる。そこへ瀚京(カンケイ)城へ戻ったはずの慶王たちが現れた。安然は自分が護送されれば高承賢がボロを出すと分かっていた。そこで牢に面会に来た穆川に先手を打ってもらうことにする。安然の予想通り高承賢はすぐ動き出した。柴広が捕らわれたとも知らず、清河幇に金を回収するよう鳥文が届く。穆川は密かに金をすり替え、この時を待っていた。「翊(ヨク)王も私を見捨てたのか…」開き直った高承賢は安然を道連れにしようとしたが、穆澤にあっけなく蹴り飛ばされてしまう。その夜、安然は澹州府衙で慶王と顔を合わせた。安然は穆澤の協力に感謝したが、思いがけない事実を知る。実は慶王は10日前から柴広を管理下に置いていた。「10日前…つまり私が捕えられた日?」安然は穆澤がやはりわざと自分を投獄したのだと知り、思わず乾いた笑いが出てしまう。「手土産は足りていない、残りは都へ戻ってからもらうとしよう …なぜそんな目で私を見る?」「余も更けました、これで失礼します」安然はまたしても穆澤にしてやられた。…帝王の心に情などない、最初からそうだった、慶王府での日々はすべて偽りだった…陸安然、あなたの人生は何だったの?穆澤は回廊を歩いて行く安然の後ろ姿を見ていた。「私を見る目が何やら気になる…まるで古い知己を見るような目だ」…陸安然は穆澤に対し、恨みしかないと思っていたただ再びその術中にはまると、かつてに比べれば些細な罠であっても、やはり傷ついたしかしその傷は愛ゆえではなく、10年を無為に捧げた後悔、そして憎しみからだった…安然はどこか元気がなかった。穆川は二兄のせいだと気づき、宮中では身を守るため用心深くなってしまうとかばう。「でも公正を重んじる人だ、私は二哥のことを知ってる 時に策を弄するのは朝廷で生き抜くための術なんだ」「もういい、あの人の何を知っているの?!」安然は昔を思い出して声を荒らげたが、その時、急な雨に降られた。そこで穆川は安然と軒下でしばし雨宿りする。「確かに知らない…でも心の暗い部分は人に見せなくていい、自分が分かっていればいいんだ 私はただ二哥の幸せを願っているだけ…陸安然、君の幸せもね」穆川は安然に自分の上着をかけたが、安然は必要ないという。「君は私を刃から守ってくれた、上着くらい貸すよ」「いつ私が守った?」「蔵で襲われた時だよ」「…勘違いよ」安然は気まずそうに否定したが、穆川は言葉を偽れても行動は偽れないと笑った。「君のことが分かりかけてきたよ、先は長い、時間はまだある」つづく(  ̄꒳ ̄)やっと字幕で見たのにイマイチピンと来ない安然と穆澤の心理作戦w
2024.01.24
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覆流年 Lost Track of Time第8話陸安然(ルーアンラン)の訃報を知り、蘇城(ソジョウ)へ急ぐ穆川(ムーチュアン)。…一目でいいから君に会いたい、これ以上、人生に悔いを残したくないんだ…穆川は気が急くあまり安然の幻を見ては本物ではないと気づいて落胆した。一方、安然は冬青(ドンチン)に説得され、穆川に手紙で元気だと伝えることにした。「九殿下が来たらこれを渡して…」しかし穆川が都からわずか2日で到着、農民から九皇子が田んぼにいると知らせが届く。安然はすぐ駆けつけたが、穆川はまた安然の幻覚が現れたと誤解した。「対面しなければ、これからもこんな風に君の幻が現れてくれるかもしれない…それもいい」「私が幻だと?」そこで安然は穆川の腕をつかんだ。「私は生きてる、バカね、幻と現実の区別もつかないの?」穆川は目の前にいる安然が本物だと気づき、思わず抱きしめてしまう。安然は空腹の穆川のため、焚き火で川魚を焼いた。喜んだ穆川だったが、二兄ならすぐ偽装に気づくはずだと心配する。しかし安然は盟約のための結婚のため、妹が嫁いでも同じことだと安心させた。「今は様子見ってところ…欣然(シンラン)のことだから上手くやっているはずよ?」するとよほど疲れていたのか、穆川はいつのまにか木にもたれかかって眠ってしまう。「穆川、私に自分が好きか聞いて?…私もあなたが好き」安然は熟睡している穆川に自分の上着をかけ、屋敷へ戻った。安然は穆川宛ての手紙を燃やすよう頼み、朝一番の船で出立することにした。母は病み上がりの娘の澹州(タンシュウ)行きを反対したが、父は水害で大きな被害を受けた澹州を見過ごすことができないという安然に理解を示してくれる。しかし安然にも気がかりがないわけではなかった。二夫人の死が因果応報だと分かっていても母は母、弟は深い悲しみに打ちひしがれている。何より慶(ケイ)王府へ同行した侍女・霊奚(レイケイ)のことが心配だった。「欣然の機嫌を損ねるようなことがあれば罰を受けるかも…」冬青はいずれ救い出す機会があると励ましたが、なぜ澹州へ行くのかまだ知らない。実は安然は穆澤(ムーヅー)が皇帝の勅命を受け、水害支援物資を奪う盗賊の討伐で澹州に向うと知っていた。安然はこの機会を利用し、再び慶王に近づくつもりだという。「黒幕である高承賢(コウショウケン)の首を穆澤への手土産にする 陸家を救う鍵を見つけるには慶王に近づかなくては…」翌朝、安然は父と母に見送られて馬車に乗り込んだ。すると車の中に穆川がいる。「衫越(サンエツ)に聞いたよ、朝一番の船だって 私も澹州に用があってね、一緒に乗せてくれないか?」従者の衫越は何とも気まずそうな顔をしていたが、穆川は遊歴の最後の地が澹州だと釈明した。「澹州は雨季の度に洪水が頻発する、根本的な解決策がないかずっと探っていたんだ」安然は衫越が変な気を回したと分かったが、穆川の同行を受け入れた。穆川と一緒に旅する束の間の幸せ、しかしその頃、陸府に慶王の侍衛が現れた。陸軽舟は侍衛に真実を打ち明けた。当日は家庭内の諍いで安然が妾に毒を盛られて倒れ、急遽、欣然を身代わりにするしかなかったという。調査を終えた侍衛は慶王府に戻ると、陸軽舟から預かった安然の手紙と玉佩を届けた。屋敷内で聞き込みしたところ、安然が毒を盛られたのは事実だという。…毒を盛られるも闇医者の手により命拾いしました、澹州での再会を楽しみにしています…「なぜ澹州なのだ?」その時、慶王府に皇帝の使者がやって来た。皇帝は澹州で盗賊による物資強奪が横行しているため、慶王に盗賊一掃を命じるという。…私が澹州へ行くとなぜ分かった?あの女人、ますます面白い…果たして陸安然の狙いは何なのか。澹州の現状は想像以上に深刻だった。民たちが飢えに苦しむ中、店先では白米が高額で売られている。そこで安然は陸家の倉庫から備蓄している食糧を開放した。これで民も支援物資が届くまで食いつなげるが、水路や田畑の修復には人手が足りない。すると穆川は名案が浮かんだ。「清河幇(セイカホウ)でしょう?」「なぜ知ってるんだ?」「内緒よ」実は安然は当時、慶王府で清河幇の幇主・沈長青(シンチョウセイ)と対面していた。穆川と沈長青は旧知の間柄、そこで穆川は澹州分舵(ブンダ)から人手を借りたいと頼んだ。事情を聞いた沈長青は快諾し、早速、腹心の柴広(サイコウ)に指示を出したが、なぜか安然は失笑する。実は安然は柴広が裏切り者だと知っていた。あの時、沈長青は慶王が逆賊・柴広の排除に協力してくれたと感謝している。『危うく清河幇は天下の笑い物になるところでした』安然は先手を打ち、清河幇こそ高承賢と手を組んで支援物資を強奪している盗賊だと非難した。「善人面とは笑わせるわ」言いがかりをつけられた沈長青は激怒、慌てた穆川も何か証拠があるのかと尋ねる。安然は船を襲う盗賊の手口が明らかに江湖(コウコ)の手練れだと訴え、疑うなら襲われた船を調べれば分かると言った。「どんな技を使ったか、刀傷を見れば分かるはずよ それに高承賢は盗賊すら討伐もできないのにあれだけ羽振りがいい、おかしいと思わない?」その頃、穆澤の馬車が澹州へ入った。すると見知らぬ男が現れ、主人に頼まれたと言って米と文を渡して去って行く。…米問屋と駐屯軍が支援米を横流ししている…穆澤は安然の仕業だと分かった。「何度、私を驚かせるつもりだ」その夜、冬青は燃やさずに持っていた安然の手紙をこっそり穆川に渡した。穆川は文をひとまず懐にしまい、星空を眺めている安然のもとへ向かう。「澹州に来た真の目的は?盗賊のことも清河幇のことも君は知り過ぎている 最も効果的な方法で沈大哥を焚きつけるなんて…」安然は穆川の鋭い指摘に動揺したが、陸家の港がある町のことに詳しいのは当たり前だとはぐらかした。しかし穆川は何よりあの無礼な態度が安然らしくないと困惑する。「私の何を知っていると?」「人を見る目はある」「…私もそうだと思っていた、でも今なら分かる、嘘や演技で人を騙すのは簡単よ 誰かのことを理解するどころか、時には自分さえ見失ってしまう」「私を心から信頼できないと?」「違うわ」安然はそこで話を終わらせ、水を注いで勧めた。その時、うっかり茶碗が傾いて水をこぼしてしまう。穆川は慌てて手紙を取り出し、無事を確認して安心した。「誰からの手紙?」穆川は安然の手紙だと明かさず、独りで読み始めた。…時々、思うの、人の世に潜む魑魅魍魎は妖怪より醜い…どす黒い企みは田んぼの泥より汚い…人生とは長い夢のよう…純粋なあなたはこれからも心の欲するままに自由に生きて「言いたかったのはこういうことなのか」穆川は急に安心し、確かに人は簡単に理解できないものだと笑った。しかし自分の手紙だと気づいた安然はヘソを曲げて部屋に戻ってしまう。「私の真心を世間話のネタにするなんて無神経ね」沈長青は安然の話を思い出して悶々としていた。…捜査の手が伸びれば高承賢は清河幇に罪を着せようとするはず…大事な仲間を守ろうと思わないのですか?一方、穆澤は高額で売られている米が確かに水害の支援米だと報告を受けた。蔡望津(サイボウシン)はなぜ陸安然が自分たちのために証拠を集めたのか分からなかったが、穆澤は贈り物をありがたく受け取るという。つづく( ゚ェ゚)そうか、てっきり9皇子のおかげで嫁ぐのが嫌になったのかと思ったけれど、姨娘を片付けるためだったのね〜って今さらw
2024.01.23
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覆流年 Lost Track of Time第7話姉の成婚を阻止すべく桃酥(トウソ)に毒を盛った陸欣然(ルーシンラン)。するとその夜、安然(アンラン)が激しく血を吐き、意識を失ってしまう。医者はすでに手遅れだとさじを投げ、毒の回りの速さから食べ物が原因だと言った。陸軽舟(ルーケイシュウ)はならば夕食かと考えたが、柳鳴玉(リュウメイギョク)は同じ物を食べた自分たちに症状がないと否定する。その時、侍女の霊奚(レイケイ)は安然が桃酥(トウソ)を食べたことを思い出した。しかし桃酥は夫人の手作り、まさか我が子に毒を盛る母などいない。陸軽舟は沈蘭渓(シンランケイ)なら無関係だとかばったが、その時、冬青(ドンチン)が口火を切った。「犯人は二小姐です」冬青は安然を訪ねた欣然だけが桃酥に毒を盛る機会があったと指摘した。実は数日前にも婚礼祝いだと言って毒入りの頬紅が届いたが、安然は騒ぎにならないよう侍女・翠姑(スイコ)への罰だけで済ませたという。すると沈蘭渓も二夫人が自分の病を長引かせていたと暴露した。何も知らなかった陸軽舟は呆然、そこで冬青は夫人の部屋から観音像を持って来る。「奥様の病は二姨娘(イーニャン)が贈った観音像に隠された薬のせいでした ちょうど大夫もいます、この観音像を調べてもらってはどうでしょう?」驚いた欣然は父の前でひざまずき、追い出された翠姑が母を恨んで陥れたのだとかばった。柳鳴玉は娘の機転に便乗し、翠姑には薬の知識があったと証言する。「きっと薬舗に牛膝(ギュウシツ)を買った記録があるはずよ」その時、冬青が観音像を床に落として割ったが、何も入っていなかった。「二姨娘、私は牛膝とは言っていません」柳鳴玉はまんまと安然の策略にはまり、馬脚をあらわした。すると開き直った柳鳴玉は、頬紅の毒も桃酥の毒も全て自分の仕業だと認める。激高した陸軽舟は離れで柳鳴玉を棒打ち50回に処し、医者に診せてはならないと命じた。陸昀(ルーイン)は母の所業にうろたえるばかり、欣然は父にすがって母を救おうとしたが、冷たくあしらわれてしまう。しかし柳鳴玉の捨て身の行動には驚くべき狙いがあった。陸軽舟は夜が明けても安然を救うため奔走していた。もはや安然の命は風前の灯、その時、花嫁の迎えの一行が陸府に到着してしまう。すると欣然が安然の婚礼衣装をまとって父の前に現れた。「姐姐が死んだら陸家の娘は私1人、慶王府に嫁ぐのは私よ もう迎えが来ている、待たせると九皇子にバレて陸家は終わるわ」陸軽舟はこれが柳鳴玉の企みだと知った。今さらながら柳鳴玉の恐ろしさにわなわな震える陸軽舟、しかし陸家を守るためにはそれしか方法はない。「爹、ここでお別れね…そうだ、私の娘は慶王の岳母になる 医者にも見せず万一のことがあれば、この恨みは絶対に忘れないから」陸欣然は紅蓋頭で顔を隠し、替え玉だとバレないように霊奚を侍女として付き添わせた。何も知らない穆川(ムーチュアン)は傷心の中、兄嫁を連れて都へ出発する。実はその頃、解毒した安然は元気な姿で柳鳴玉の前に立っていた。「なぜ…生きているの?」「あの桃酥は冬青がすり替えたの、私が飲んだのは自分で用意した毒よ」柳鳴玉は驚いたが、それでも輿に乗ったのは欣然だと勝ち誇った。しかし安然は一笑に付す。「双魚令も持たない庶子が嫁げばどうなると?慶王が役立たずを手元に置くかしら?」そこへ冬青が現れ、棺が届いたと報告した。「二娘、どうぞ安らかに」すると安然と冬青は出ていってしまう。その夜、慶王府では盛大な祝宴が開かれた。穆川は空元気を出して酒を飲まないニ兄に代わって客人の相手をし、嫌がらせに来た翊(ヨク)王も上手く追い返す。しかし夜も更けた頃、穆川は閑散とする中庭で独り、意気消沈した。「…おめでとう」一方、穆澤(ムーヅー)は花嫁が待つ寝所に入った。しきたり通り夫婦の杯を交わすことにしたが、安然は受け取らない。穆澤は仕方なく安然の杯も空け、確かに情で結ばれた結婚ではないが、協力関係を結ぶ意味でも交わすべきだと戒めた。その時、背後から急に安然が抱きつき、衣を脱がせようとする。穆澤は思わず安然の手を握ったが、その白魚のような指でぴんと来た。「陸安然は外で働き、何事も自分でこなす…このか細く柔らかい手はそぐわない」穆澤が紅蓋頭を外すと、花嫁は陸安然ではなく庶子の陸欣然だった。「姐姐は死にました」欣然は姉が婚礼の直前で倒れ、父が町中の医者を呼んだが手遅れだったと説明した。しかし安然には急死する病などなかったはず、穆澤は姉妹で共謀したのではと疑う。「私を愚弄すれば陸家がどうなるか考えなかったのか?」「愚弄などするはずありません…姐姐は遺言で陸家を私に託しました 陸家の双魚令を継承するのは私です、娶ってくださるなら陸家の全てを差し出します」「言っておく、私に必要なのは陸家と陸安然だ… 今は追求しないが、いずれ片はつける 陸欣然、陸家の実権を握るがいい、さもなくば若妻が早逝しても気に留めぬ」すると穆澤は出ていってしまう。穆川は重い腰を上げて帰ることにした。その時、霊奚が慌てた様子で回廊を走って行く様子を見かける。侍女が主の初夜に寝所を離れてどこへ行くのだろうか。霊奚は回廊で命を絶とうとしていた。しかし穆川が現れ、短剣を奪われてしまう。「めでたい婚礼の夜に何をしている?!」「九殿下…実は小姐が亡くなりました」霊奚は嫁いだのが替え玉の陸欣然だと明かした。欣然親子が安然に毒を盛り、穆川が到着した頃には虫の息だったという。「詔には″陸家の娘″とだけ、名前はありませんでした 老爺は陸家に災いが及ぶことを恐れ、陸欣然を嫁がせたのです」霊奚も陸家を守るため協力して同行したが、芝居はもう終わりだという。すると穆川は霊奚が死ねば花嫁が偽物だと証明することになると説得、取るものも取り敢えず馬にまたがった。…蘇城へ調べに行く…本当に安然が殺されたなら必ず仇を討つ一方、安然は次の手を準備していた。すると冬青がせめて九皇子だけには元気な姿を見せるよう進言する。その頃、一晩中、走ってきた穆川は竹林の中で休憩していた。「陸安然、もうクタクタだ…」穆川はもうろうとしているうち、安然の幻覚を見てしまう。つづく(  ̄꒳ ̄)いや〜どうするの?これ
2024.01.20
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覆流年 Lost Track of Time第6話蔡望津(サイボウシン)が結納品を持って陸(ルー)府にやって来た。柳鳴玉(リュウメイギョク)はてっきり娘の縁談だと誤解して歓迎したが、実は慶(ケイ)王の代理だという。その時、穆澤(ムーヅー)が現れた。「私の求婚相手は安然(アンラン)だ」柳鳴玉は慶王が侍衛に成りすまして安然を懐柔したと知り呆然、すると安然はすでに自分の心なら決まっていると言った。「私は慶王殿下に嫁ぎます」陸軽舟(ルーケイシュウ)は宮中の恐ろしさを分かっていた。しかし安然は野獣が逃げた獲物を諦めるはずもなく、かえって征服欲を募らせることになると警告する。「安心して、何もかも承知の上よ、万全の策を講じれば陸家は泥沼にはまらずに済む」一方、柳鳴玉は安然の玉の輿を妬み、嫁ぐ前に手を打とうと考えた。陸欣然(ルーシンラン)は今さら手遅れだと泣きじゃくったが、母は慶王が策を弄して安然に近づいたのは陸家の娘だからに過ぎないという。「もし陸家に娘が独りだったら?殿下はどうするかしら…」その夜、穆川(ルーチュアン)は陸府に安然を訪ねた。「昨日、二哥と会ったんだ…」穆川は安然が自ら籠の鳥になるのは二兄を深く愛しているからなのかと落胆する。しかし安然は愛ではなく取り引きだと言い放った。「水運を掌握した以上、しがらみは避けられないの、翊(ヨク)王か慶王か… 帝王の心は冷酷なものよ、この道を選んだあの人に情などないわ」穆川は安然の選択に困惑しながら、結婚祝いと称して銀の腕輪を渡した。「時間がなくて蘇城の店で買ったんだ」安然は穆川がなぜ買ったなどと嘘をつくのか分からなかったが、黙って受け取った。「安然、必要な時は私が力になるよ」「分かってる」安然は瀚京(カンケイ)城へ戻る慶王と九皇子を見送った。婚礼まで半年、その間に陸家の問題を片付けなくてはならない。すると早速、敵が動き出した。陸欣然から頬紅が届いたが、かつて薬舗で働いていた冬青(ドンチン)が蓖麻(ヒマ)が入っていると気づく。「使い続ければ顔がただれるところでした」陸欣然は何日経っても安然の顔に異変が現れないと訝しんだ。何でも安然は侍女たちに帳簿を調べさせているとか。柳鳴玉も確かに最近、大夫人・沈蘭渓(シンランケイ)の顔色が良いと首を傾げた。しかし大夫人の部屋に変わらず観音像があったことから心配ないと高を括る。すると側仕え・翠姑(スイコ)が大夫人に捕らわれたと知らせが来た。安然は第二夫人から贈られた白粉に毒が入っていたと報告した。「白粉をうっかり落として店に持ち込んだところ、香りが変だと言われたの 調べると蓖麻が入っていたわ…きっと翠姑の仕業よ 帳簿を調べたら翠姑が釣り銭の額をごまかしていた 咎めるつもりはなかったけど、私に恨みでも?」沈蘭渓は黒幕がいるなら白状すれば見逃すと言ったが、翠姑は主を裏切らなかった。「私がやりました、悪事がバレるのを恐れて…」翠姑は陸家の掟により棒打ち50回となった。柳鳴玉と陸欣然は安然が全て知りながら仕掛けてきたと気づく。腹心を失った柳鳴玉は悲しみに暮れ、必ず復讐すると誓った。「娘は欣然1人になる、双魚令はあなたのもの、慶王殿下もあなたのものよ…」一方、穆澤は国境を侵した北臨(ホクリン)を討つため戦場にいた。そして半年にわたる激闘の末、穆澤はついに凱旋を果たす。穆澤は皇帝から褒美として陸安然との婚姻を賜ったが、蔡望津は正室を名門から選び、安然を側室にするよう進言した。しかし穆澤は安然がいない陸家なら何の価値もないという。「あの者なら軍船を作ることも可能だろう、陸安然を取り込めるなら戦功も惜しくはない」穆川は慶王の使者として結納品と共に蘇城へ入った。しかし陸家には顔を出さず、田んぼの様子を見に行ってしまう。農民は病気の苗を抜いたおかげで見事な穂が出たと喜んだ。「さすがは稲香居士(トウコウコジ)ね」その声は安然だった。安然と穆川は2人だけでしばし一面の稲を眺めていた。「力になってくれると言ったわね…あなたは各地を遊歴したから色々と知っているはずよ」しかし安然は口ごもってしまう。「どうした?何だよ?」「…農業に詳しいでしょう?毎年ここへ来て指導してくれない?」「それだけ?驚いた、新しい品種の研究がしたいんだ、君に口添えしてもらおうかな」安然は結局、穆川に打ち明けることができなかった。その夜、安然はロウソクの灯りで偶然、銀の腕輪の細工に文字が刻まれていると気づいた。…今宵は美しき夜、良き人に出会えた、あなたを愛し、背かないと誓う…安然はこの腕輪を作ったのが穆川だと気づき、ようやく穆川の自分への想いを知って涙があふれてしまう。一方、冬青は安然が穆川から毒をもらえなかったと知り、思い切って九皇子を訪ねた。「殿下、鉤吻(コウフン)と雪蝉子(セツセンシ)を頂けませんか? 実はあの時の男たちに付きまとわれています 劇薬の鉤吻を飲んでも3刻以内に雪蝉子を飲めば死なないと聞きました」穆澤はそれが安然の計画だと気づいた。翌朝、穆川は陸府を訪ねた。安然はちょうど中庭の亭(アズマヤ)で独り茶を飲んでいたが、幸せな花嫁には見えない。「どうしたんだ?そんな憂い顔で… 安然、もし君が笑顔を失わず、家族を守れる道があればどうする?」「そんな上手い話、あるはずないわ」「これでも皇子だ、父皇に頼んで陸家と手を組み、水路を整えて田を広げることができたら? 陸家の水運を狙う者も私がいれば手を出せぬはず…面倒が起これば私が解決する」しかしもはや手遅れ、安然は穆川まで巻き込むわけにいかなかった。「(もう少し早ければ考えられた…) 皇上の詔が下ったのよ?今さら断れば陸家がどうなるか… 心遣いに感謝します、でも殿下の本心は分からない、慶王や雍王と何が違うのかしら?」「私まで陸家を狙っているというのか?」安然の思わぬ言葉に穆川は落胆し、鉤吻と雪蝉子を置いて帰ってしまう。穆川は安然の計画を知っていた。「冬青、あなたが九殿下に頼んだの?」「小姐が九殿下に対して後ろめたさを感じないよう勝手な真似を…」冬青は罰を請うたが、安然は覚悟を決めた。「どうせ叶わぬ夢、これで良かったのかも…」するとその夜、案の定、陸欣然が現れた。安然は母が差し入れてくれた好物の桃酥(トウソ)を食べていた。そこで欣然は安然が目を離した隙に桃酥に毒を盛り、何食わぬ顔で帰って行く。「娘、安然は私の目の前で桃酥を食べたわ、これでうまく行くはずよ」柳鳴玉は娘の報告を聞いて安堵したが、黒猫は何かを察したように腕から飛び降りた。つづく(ΦωΦ)シャーッ!
2024.01.19
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覆流年 Lost Track of Time第5話酒館で意気投合した陸安然(ルーアンラン)と穆川(ムーチュアン)。すると通りで揉め事の声がする。2人は店を出て現場へ駆けつけると、妓楼の前で都尉(トイ)の高承賢(コウショウケン)が娘を虐げていた。憤慨した安然は女将に大金を出して娘を身請け、自由にしてやる。冬青(ドンチン)は見ず知らずの自分を助けてくれた恩人に忠誠を誓い、安然の侍女になりたいと懇願した。侍女の霊奚(レイケイ)は安然が連れて来た新しい侍女に嫉妬、闘志を燃やした。しかし冬青の境遇を聞いて同情し、これからは自分が味方だと励ます。実は冬青は客の相手を嫌がり、その度に殴られて傷だらけだった。聞けば幼い頃、家が洪水で流され、両親や兄と一緒に避難するもはぐれてしまい、養父に拾われたという。最初は平穏な日々だったが、やがて養父が怪我で働けなくなり、博打や酒に溺れて暴力を振われ、妓楼に売られていた。安然は冬青の痛々しい腕に薬を塗りながら、偶然、蝶のような不思議なあざがあると気づく。「大丈夫、私が家族を見つけてあげる」冬青はすでに家族の記憶も薄れていたが、かろうじて兄の珍しい体質だけは覚えていた。「哥は心臓が左ではなく右にあるんです」安然は母の病が治らないのは第二夫人・柳鳴玉(リュウメイギョク)のせいではないかと疑っていた。しかし薬も食事も問題がないと分かり、母の部屋を調べることにする。霊奚と冬青は夫人の部屋にある第二夫人からの贈り物をかき集めて調べたが、結局、何も出てこなかった。沈蘭渓(シンランケイ)は考え過ぎだと娘を戒めたが、安然は諦めきれず殿内を見回す。その時、母がいつも手を合わせている観音像に目を止めた。「あれも柳鳴玉からの贈り物では?」すると安然は観音像を床に落として割ってしまう。観音像の中には漢方の生薬が入っていた。安然は早速、医館を訪ねて調べてもらったが、牛膝(ゴシツ)は血を補う薬で毒性はないという。そこで冬青が夫人の薬の処方を見せた。「あ、これはいけません、肺の薬は出血を抑えますが、牛膝は気血を補う薬 併用すれば激しい咳で意識を失うか、下手をすれば喀血で死に至ります」(  ̄꒳ ̄)やっぱり…今日は花朝節(カチョウセツ)、安然は帰り道で母親に灯籠を買ってもらう幼い男の子を見かけた。「少し独りで歩きたいの、2人は同じ観音像を探してくれる?」安然は2人と別れ、うさぎの灯籠を買って川に流した。そこへ穆川がやって来る。「毓児(ユーR)に会いたいのかい?…この前、酔って話していたよ、うさぎの灯籠を作れってね」「毓児は飼っていたうさぎの名前なの、池に落ちて死んでしまった」安然は手を合わせ、我が子の来世の平穏を祈った。…毓児、母は戻ったわ、でも全てを挽回できてもあなたには会えないのね…すると穆川も蓮の灯籠を流して手を合わせた。「私も母に会いたくてね…もしも…いや、やめよう、母の魂は戻りたくないだろうから」「考え過ぎよ、私たちは故人を偲べばいいだけ 去った人の分まで日々を楽しむの、再会した時、話してやれるように」「悟りきってるな」穆川はまさかその言葉を10年前に自分が言ったとも知らず、敬服した。「そうだ、実はうさぎの灯籠を作ったんだ、取ってくるよ!」安然は穆川を待つ間、船頭がなぜか客を断っている様子を見かけた。聞けば全て貸し切りのため、どの舟にも乗せられないという。ぴんと来た安然は船着場へ向かい、船頭に舟を借り上げた貴客の名は″穆″か確認した。「その通りさ、ある娘との出会いを企んでいるんでね、邪魔してはダメだよ」(  ̄꒳ ̄)スムージーめ…(違うw)何もかも偶然ではなかった。安然は10年前の橋での出来事を思い出し、必ず穆澤が近くにいると気づく。すると橋の上で穆澤が男と立ち話ししていた。「叔父を使って信頼させたとはいえ、陸安然は手強いですよ?」「付け入る隙はある、今夜のうちに落としてみせるさ しょせん女は惚れた男には逆らえない」安然は呆然となった。…過去でも現在でもあなたから逃げられないのね…最初から私への愛などなかった、出会いすら巧妙に仕組まれた罠だったなんて…ここで逃げても別の策を仕掛けてくる…ならば逃げずに立ち向かおう、私から攻めるしかない安然は橋を渡ると、真下にちょうど舟が来たことを確認、あえて自ら落下した。…今度は自分の意志よ穆川は姿が見えなくなった安然を探して人混みをさまよっていた。すると橋から人が落ちたと騒ぎになっている。穆川が慌てて駆けつけると、驚いたことに二兄が安然を抱き止めていた。2人を追いかけた穆川だったが、穆澤と一緒に月老廟に入って行く安然を見て深く傷つき、うさぎの灯籠を落として帰ってしまう。穆澤は月老廟でも安然を手に入れるための策を弄していた。しかし安然は簡単にはなびかず、おみくじの籤(セン)が全て大吉に変えられていることまで見破られてしまう。「殿下は自分が欲しいものは必ず手に入れるのですか?」「私に言わせれば手に入れたいものがあれば、どんな手段でも講じればいい」安然はその言葉が真実だと知っていた。…穆澤、欲しいなら何でもあげるわ、受け取るか受け取らないかはあなた次第よ…「ではお心に従って殿下に嫁ぎます、私を慶王妃として正式に娶ってください」「やはり非凡な小姐だ」すると穆澤は腰から玉佩を外し、婚約の証しとして安然に渡した。「共に白髪になるまで添い遂げよう」「殿下、覚えておいてください、私たちは盟約で結ばれた仲、色恋とは無縁です」「分かっている、明日、陸家に挨拶に行く」それは10年前、穆澤が慶(ケイ)王だと知らずに受け取った玉佩だった。あの時はまさか陸家が極刑を言い渡され、この玉佩を投げ返すことになるなど誰が考えただろう。穆澤が宿に戻ると九弟が部屋の前で待っていた。「どうした?益(エキ)州での害虫駆除はどうした?」「二哥に菓子の差し入れに…でこの地で何を?」穆澤は個人的な用事だと話し、実は蘇城陸家の娘・安然を娶ると報告する。「陸家は国の水運を一手に握っている 我々には夢があったな?水害を防いで餓死者をなくすことだ その娘と組めば夢が実現できる 彼女は心が広く、並の女と違う、陸安然こそ王妃に相応しい」穆川は突然の報告に動揺し、思わずむせてしまう。すると穆澤はふと幼い頃の苦労を思い出し、腹違いの兄弟とは言え、穆川の情は生涯忘れられないと感謝した。「明日、陸家に同行するか?」「あ…遠慮するよ、用事もあるし」その夜、穆川は田んぼで独りやけ酒を飲んだ。美しい細工が施された銀の腕輪を眺めながら、出会うのが遅かったと悔やむ穆川。まさか10年前、その腕輪を安然に贈ったことなど知る由もない。つづく( ゚ェ゚)てか…先に穆川とまとまっちゃえば良くない?
2024.01.18
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覆流年 Lost Track of Time第4話陸安然(ルーアンラン)が目を開けると、なぜか10年前のあの日に戻っていた。自作した水雷の実験、そして海賊に襲われる船…。すると助けに向かった船にはやはり蔡望津(サイボウシン)の侍衛になりすました若き穆澤(ムーヅー)の姿があった。安然は自分が本当に過去に戻ったと確信し、いきなり憎き穆澤に斬りかかってしまう。手練れの穆澤は安然の攻撃を簡単に交わし、咄嗟に安然を抱きしめ、流れ矢から守った。実は10年前も同じように穆澤は安然を流れ矢から助けている。しかし命を救った英雄でも安然の心を動かせないと知った。復讐に失敗した安然は水雷の煙のせいで侍衛を海賊と誤解したとごまかした。「商売で来たわけじゃなさそうね? 船に上等な油木(ユギ)が使われている、貨物が積めないから商船ではない それにあなたの侍衛、その武芸は宮中の貴人に学んだものでしょう?」安然の鋭い指摘にたじたじの蔡望津。そこで娘に名前を尋ねたが、安然は二度と会うこともないと言って引き上げてしまう。穆澤は娘の船の双魚(ソウギョ)の紋章に気づき、陸家の嫡女・陸安然だと分かった。「当初の策では籠絡できぬかと…」「たやすい相手なら翊(ヨク)王に先を越されていたさ…」安然は母・沈蘭渓(シンランケイ)と弟・陸昀(ルーイン)に再会、2人の元気な姿に感激もひとしおだった。しかし唐突に武館に通うのをやめて家業を継ぐよう弟を戒めたせいで、大将軍を志す陸昀を怒らせてしまう。安然はともかく霊奚(レイケイ)に頼んで母の薬を別の医者に調べてもらうことにした。「陸家の者には秘密にね…それから口に入る物は全て毒が入っていないか調べて」一方、柳鳴玉(リュウメイギョク)と陸欣然(ルーシンラン)は急によそよそしくなった安然に困惑していた。…宮中は過酷な世界、争いに巻き込まれたら陸家はまた皆殺しになる…今度は決して同じ轍を踏まない安然は過去の記憶を思い出しながら先手を打つことにした。安然は柳鳴玉が準備してくれ衣装を欣然に渡した。思った通り翌日、成人の儀に現れた陸欣然は首や手をかきむしっている。娘の衣装を見て驚きを隠せない柳鳴玉、そして10年前と同じように陸軽舟(ルーケイシュウ)は安然に双魚令を贈った。すると案の定、叔父・陸延(ルーエン)が異論を唱えようとする。しかし安然は叔父を制した。「阿叔が陸家に何をしたか話すわ 先月、阿叔の船が2隻、沈んだけれど、高波のせいだと言ったわね?」そこで安然は船を調べさせた衫越(サンエツ)を呼び、証言させる。実は船の甲板の下に隠し倉があり、密かに穀物や茶葉、織物を積んで重量を超えたため沈んだと分かった。何も知らなかった陸軽舟は欲のため犠牲者を出した弟に激怒、内通していた柳鳴玉も見限り、陸延は陸家を追い出されてしまう。その夜、安然は中庭で密会している陸欣然と蔡望津の様子を見ていた。「花を贈ればいいのに…あれなら女心をつかめるわ」「陸小姐、何を見ている?」安然が振り返ると10年前と同じように偶然を装って穆澤が現れた。「ささやかな誕辰祝いだ」安然は化粧箱の中身を知っていたが、ふたを開けると花ではなく、水系図が入っている。しかし興味を示さず、さっさとふたを閉じて脇に置いた。「陸小姐、私が何か気に障ることを?なぜ敵意を向ける?」「…慶(ケイ)王殿下、こんなことをして何が楽しいの? 素性を隠して陸家と盟を結ぼうだなんて滑稽じゃない?」穆澤は自分の正体がバレていると知り、確かにつまらない策を弄したと認めた。すると安然は水系図を置いたまま帰ってしまう。部屋に戻った安然は衫越を呼び、念のため追放された叔父を見張るよう頼んだ。穆澤のことを考えれば考えるほど虚しさに襲われる安然、そこで気晴らしに酒館へ出かけることにする。一方、陸欣然は姉の衣装に細工したと教えてくれなかった母を責めていた。柳鳴玉は伝える時間がなかったと釈明したが、どうやら安然を侮っていたらしい。しかし所詮は小娘、それより娘を慶王の腹心に取り入らせることが先決だった。「あの人に嫁げたら陸安然なんてお呼びじゃないわ」その頃、安然は酒をあおっていた。「酔えば憂いは消えてくれる、今はとことん飲んで忘れたい」霊奚は泥酔した安然を心配して馬車を頼みに行った。しかし独りになった安然は酒がないと気づき、ふらふらと回廊へ出てしまう。その時、ちょうど2階へ上がって来た男とぶつかった。泥酔した安然は男が憎き穆澤だと思い込み、個室に引き込んでからんでしまう。安然は母の病に必ず何か裏があると踏んでいた。しかし霊奚は夫人の薬も食事も問題がなかったと報告する。すると慌てた様子で衫越が戻って来た。実は陸延が翊王の配下と密会、その後、人相書きで見たお尋ね者と一緒に港へ向かったという。罪人をかくまえば死罪になる。安然は翊王が叔父を利用して父を罠にはめ、事が済んだら陸家の水運を手中に収める計画だと気づいた。安然は県衙に助けを求めたが、門は閉まっていた。どうやら役人はすでに翊王に買収されたらしい。港には安然の成人の儀を祝うため駆けつけた船が100隻、全て調べるにも半年はかかる。結局、安然は穆澤を頼るしかなくなった。穆澤は少しもったいぶってから戸を開けた。「陸小姐、何の用かな?」安然は慶王が蘇城(ソジョウ)へ来た目的なら知っていると切り出し、取り引きを持ちかける。「近頃、翊王に手を焼かされているの、これまで金銭で解決して来たけれど、今回は… 陸家がどの道を選ぶかは殿下の態度次第です」「私が何とかしよう」「私がいる限り陸家が翊王につくことはありません あなたの求めには民の利になるのなら手を貸しましょう」慶王は通報を受けたとして自分の兵に港を捜索させた。慌てた県衙も急いで駆けつけ、陸延が呆然とする中、無事にお尋ね者が捕まる。屋敷で報告を聞いた安然は安堵したが、その時、村人が駆けつけ、田んぼで騒ぎだと知らせた。穆川(ムーチュアン)は10年前と同じように田んぼで苗を抜いていた。元気な九皇子の姿に思わず涙ぐむ安然、しかし穆川はなぜか安然を知っている。「君か…」「覚えているの?」「忘れたのか?この前、絡んできただろう?」安然は何の事か分からなかったが、ともかく穆川の言う通り苗が病気だと農民に説明した。安然は穆川を食事に誘った。そこでようやく安然が酒館でからんだのが穆川だったと知る。「覚えていないの…私、何かした?」「かんざしで殺されそうになった」「酔って人間違えを…」「構わないよ、酔うのも悪くない、人生は一度きりだ」「さすが九皇子ね」「なぜ私の正体を?!」安然はうっかり口を滑らせ、実は遊歴した際、ある皇子が野良仕事をしていると聞いたとごまかした。するとすかさず穆川も商人なのに水利に私財を費やす者がいると聞いたとやり返す。「おかげで蘇城の泥池は立派な田んぼになったそうだ」つづく(  ̄꒳ ̄)うむ…筋書きを変えても結局、運命は変えられないのか?
2024.01.17
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覆流年 Lost Track of Time第3話慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)と九皇子・穆川(ルーチュアン)は病床の父皇を見舞った。その時、皇后は姜(キョウ)侍医から薬湯を受け取り皇帝に飲ませたが、皇帝は激しく血を吐き、絶命してしまう。葬儀は滞りなく終った。父のいなくなった寝宮で呆然とたたずむ穆川、すると穆澤が現れ、弟を抱きしめた。「今や私の肉親はお前だけになった」それから3日後、昏睡していた慶王王妃・陸安然(ルーアンラン)がついに目を覚ました。侍女・霊奚(レイケイ)は九皇子が採って来た血参(ケツジン)のお陰だと喜んだが、戦死した陸昀(ルーイン)は安然が眠っていた1ヶ月の間に埋葬されたという。最期の別れもできなかったと涙する安然、しかし慶王が弟の仇を討ってくれたと知った。実は皇帝が崩御、3日後には慶王が即位するという。感激した安然は慶王が戻ったと聞くや、おぼつかない足取りで寝殿を飛び出し、穆澤のもとへ駆けつけた。「良かった、意識が戻ったんだな 陸昀の死は四弟の残忍さを知らなかった私のせいだ だがもう心配ない、今後は私が命を懸けて君と家族を守る」「はお」穆澤は新帝に即位、安然は皇后に封じられた。するとその夜、穆澤は安然に出自の秘密を明かす。実は亡き良(リョウ)妃は実母ではなく、生母は墨(ボク)氏だった。良妃は墨氏を利用して妃の位を手に入れると、邪魔になった墨氏を毒殺して井戸へ捨てたという。当時まだ幼かった穆澤は全てを知りながら何もできず、井戸から母の骨を拾って埋葬し、自分の寝所にこっそり位牌を祀ることしかできなかった。しかし安然はこれから自分たちが生母の霊を慰められると励まし、義母の位牌に拝礼する。「苦難は過ぎ去り、穆澤が玉座につきました…どうぞご安心を」景和の時代となり3年。宮中は落ち着きを取り戻し、安然も辛い過去から立ち直ろうとしていた。大晦日には家族が集まって花火を楽しみ、安然は穆澤に第二子の懐妊を報告する。再び幸せを手に入れたかに見えた安然だったが…。2ヶ月後、穆澤と穆川の育ての母でもある皇太后が急死した。皇帝は侍医・姜林甫(キョウリンフ)の誤診として即刻、死罪にしたが、穆川はなぜ調査もせず殺したのかと憤る。実は皇帝は翊(ヨク)王一派の赦免を約束していたが、この3年の間に全員が謎の死を遂げていた。遠回しに関与を疑われた穆澤は激怒、穆川に禁足を命じてしまう。安然は穆川が監禁されたと知り、見張りを脅してまで強引に面会した。事情を知った安然は後宮にいても皇帝の残忍な噂は耳に入っていたと明かしたが、信じたくなかったという。「もう見て見ぬふりはできない、私たち家族が目を覚まさせなくては…」安然は含光(カンコウ)殿を訪ねたが、穆澤はすでに安然が穆川と会っていたことを知っていた。安然はなぜ穆川に皇太后の死因を調べさせず、腹心だった姜侍医まで処刑したのかと迫った。もし皇太后の死が本当に姜侍医のせいなら、先帝の死にも疑問が湧くという。核心を突かれた穆澤は憤怒、その姿にはもはや安然が愛した小侍衛の面影はなかった。「朕を疑うとは…いつから心変わりを?九弟が腕輪を贈った時からか?」「私と九弟を疑うと?」「潔白だと天に誓えるか?」「不義を働いたなら雷に打たれて死ぬわ…ならあなたも誓える? その手を汚さずに皇位を得たと…人の誠意を信じようとせず、大志さえ捨ててしまった 変わったのはあなたの方よ!」「陸安然!ふぁんすー(放肆)!」穆澤は思わず安然に手を上げた。「そなたの后位も陸家の栄華も朕が与えてやったのだ!その恩を仇で返すとは! 陸安然…口答えする前に陸家のことを考えるんだな、本分をわきまえよ」穆澤は皇位と引き換えに多くの人間を犠牲にしていた。腹心の蔡望津(サイボウシン)は皇后と清(セイ)王に勘づかれたからには早々に手を打つべきだと進言する。そんなある日、安然は偶然、含光殿の前で父皇に会いに来た蕭(ショウ)妃の息子・麟児(リンR)と出くわした。「皇后娘娘、母妃が折ったウサギをあげます これは母妃しか折れないウサギだよ、尻尾を引っ張ると飛び跳ねるの」折り紙を見た安然の顔色は一変した。そのウサギは確かに毓児(ユーR)が溺死した池に落ちていた折り紙だ。安然は息子を殺したのが蕭驚雀(ショウキョウジャク)だったと気づき、寝殿に乗り込んだ。しかし皇帝が陸家を見限ったと知った驚雀は開き直り、次々に残酷な真実を告げる。実は穆澤は当時から驚雀が殺したと知っていながら伏せていた。しかもすでに陸家は北臨(ホクリン)に武器を密売したとして捕縛され、今にも処刑の聖旨が出るという。さらに弟の戦死も穆澤の策略だった。穆澤は翊王を失脚させるため秦野闊(シンヤカツ)を買収、文を偽装させて援軍を足止めさせたという。朝堂では皇帝が陸一族の極刑を命じていた。ただし皇后だけは後宮にいて内情を知らなかったとし見逃すことにしたが、突然、安然が現れる。朝堂は騒然、すると穆澤は朝臣を下げ、安然と向き合った。「3つ質問があるわ、皇位を懸けて答えて…陸家を皆殺しにするのは港と船隊が狙い?」「その通りだ」「弟の先陣が全滅したのはあなたの策略ね?」穆澤は安然が全て知っていることに驚いた。「翊王を失脚させる好機だった、だが陸昀の死は想定外だった」「想定外?徹底的にやるのがあなたの主義でしょう?」「それは…」「最後の質問よ、毓児を殺したのが蕭驚雀だと知っていたの?答えて!」「…当時、蕭映(ショウエイ)の兵力の方が勝っていた、やむを得なかった」安然は穆澤が愛していたのは自分ではなく皇位だったと知った。絶望の中、朝堂をあとにした安然は雪道で倒れ、流産してしまう。目を覚ますとすでに日が暮れていた。明日は陸家の処刑、すると妹の陸欣然(ルーシンラン)が訪ねてくる。霊奚は陸家を助けて欲しいと泣きついたが、安然は妹が裏切ったと気づいていた。「霊奚、席を外して、護国夫人は私に話があるはず…」陸家をはめたのは誰であろう陸欣然だった。偶然、皇帝が陸家を潰すつもりだと知り、皇家側につくと決めたという。陸家で見つかった密売の証拠は全て欣然の指示で叔父の陸延(ルーエン)が用意していた。「陸欣然…いつかバチが当たるわよ?」「ふふ、最後に勝つのは私よ」欣然はいきなり安然に襲いかかった。危ないところで霊奚が駆けつけ助けたが、激怒した欣然に刺殺されてしまう。「霊奚!」安然は寝台から転がり落ちるように這い出したが、霊奚はそのまま事切れた。「欣然!なぜなの?!」すると欣然は恐ろしい真実を告げた。「もうそろそろ教えてあげましょうか? あの日の桃酥(トウソ)は姐に用意したの、まさか自分の母親を殺すなんてね」婚礼前夜、両親と最後の夜を過ごしていた安然は霊奚が持って来た桃酥を食べようとした。しかし母から太ると注意され、咄嗟に母の口に押し込んでしまう。まさかあの桃酥が母の命を奪ったとは…。翌日、陸一族は処刑された。その夜、監禁されていた穆川は毒酒を賜り、安然を案じながら静かに最期の時を待つ。ちょうど同じ頃、安然は含光殿にいた。…皇位や富など儚い幻あなたの野望のために大勢が命を失い、多くの血が流れたあなたに嫁いだせいで私の人生は破綻し、こんな結末を迎えることに「燃えろ!全て燃えてしまえ!」安然は寝殿に火を放ち、あっという間に炎に巻かれてしまう「穆澤、自分の弟まで殺すなんて…」やがて寝殿の天井が崩れ始めたするとなぜか青空が顔を出し、陽の光が差し込むその時、何か大きな爆発音がした…安然が目を開けると霊奚と衫越(サンエツ)がいた。「小姐?小姐?…大丈夫ですか? 小姐の様子がおかしいわ、明日は成人の儀なのにどうしよう」「成人の儀?」その光景は確かに10年前と同じだった。つづく( ๑≧ꇴ≦)終わった!w
2024.01.16
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覆流年 Lost Track of Time第2話陸安然(ルーアンラン)が慶(ケイ)王・穆澤(ムーヅー)に嫁いで5年。安然は世子・毓児(ユーR)を授かり、妹・陸欣然(ルーシンラン)も蔡望津(サイボウシン)に嫁いでいた。しかし穆澤は政務で忙しく、今日も安然の誕辰だというのに留守だという。欣然は弟・陸昀(ルーイン)と一緒にささやかな祝宴を囲んだが、姐夫への不満を募らせた。「蕭驚雀(ショウキョウジャク)を側室に娶っておいて陸家にはお金や船を差し出させるなんて、あんまりよ」「蕭映(ショウエイ)ほどの勇猛な将軍は得難い人材よ、その妹を身内にしただけ」安然は穆澤の心にいるのが自分なら構わないと寛容だったが、陸昀はこれも姉に後ろ盾がないためだと分かっていた。「姐(ジェ)…私も北臨(ホクリン)へ戦に行く、賊を退治するだけの″王妃の弟″で終わりたくないんだ」欣然は弟の出征に大反対だったが、安然は志高い弟の背中を押した。その夜、安然と毓児が中庭にいると、慶王が帰って来た。毓児は父王の元へ駆け出し、母と一緒にずっと待っていたと訴える。しかし安然は船の設計図を見ていた時、息子に引っ張り出されただけだと釈明した。「例の軍船か?」「車船(シャセン)というの、人力で動かす羽根車を積み、速さは普通の船の10倍よ」穆澤は自分のために尽力する安然に感謝しながら、今年も誕辰祝いに花を贈った。今も仲睦まじい安然と穆澤、すると侍女が駆けつけ、側夫人が倒れたと知らせる。実は蕭驚雀は懐妊していた。5ヶ月後、蕭驚雀のお腹も次第に目立って来た。戦場では兄が功績を上げ、妹は懐妊、蕭家は安泰に思えたが、驚雀は側室として庶子しか産めないと不満が募る。そんなある日、驚雀は回廊で遊んでいた毓児の凧糸に足がひっかかり、危うく転びそうになった。憤怒した驚雀は罰と称して腹いせに世子の手を何度も叩き、泣かせてしまう。幼い毓児は理不尽な側夫人に反発、思わず蕭驚雀を突き飛ばした。『父王に叩かれたって言いつける!生まれてくる弟や妹も許さないぞ!』駆けつけた乳母が謝罪し、騒ぎが大きくならないよう世子を池に連れて行ったが…。造船房から帰って来た安然はすでに冷たくなった我が子と対面した。乳母・雲娘(ウンジョウ)が釣りの餌を取りに戻ったわずかな隙に毓児が池に転落、溺死したという。聞けば安然の留守中、毓児と側夫人の間で諍いが起こっていた。「目を覚まして…母が戻って来たわ…」息子の亡骸を抱きしめ悲嘆に暮れる安然、その時、侍女・春児(シュンジ)が池から走り去る側夫人を見たと証言する。激情に駆られた安然は剣を片手に側夫人の寝殿に乗り込んだ。しかし慌ててが穆澤が駆けつけ、剣を奪い取られてしまう。「やめろ!安然!」蕭驚雀の無実を証明したのは妹の陸欣然だった。欣然は毓児が池に落ちた頃、側夫人を莫懸寺(バクケンジ)で見たという。「本当?嘘なら一生、子にも恵まれず、無惨な死を遂げると誓える?」「…誓うわ」結局、毓児は事故死と断定され、春児は雲娘をかばって嘘をついたとし、2人とも処刑されてしまう。しかし穆澤は蕭驚雀が毓児を殺したと気づいていた。その夜、驚雀は裁きが済んだと安堵していたが、思いがけず慶王に厳しく追及されてしまう。「確かに皇族の子は平民より早死にするものだ、子など失ってもいい、だが好き勝手は許さぬ! 過ちを犯したのなら償わなければな」蕭家が多数の私兵を抱えていると知っていた穆澤はこの機を利用し、まんまと全ての兵を献上させた。安然は息子を失っても冷静な穆澤に失望し、造船房に閉じこもった。穆澤とはすっかり疎遠になり5ヶ月。安然は完成した車船が無事に進水したのを機に屋敷へ戻った。しかしちょうど蕭驚雀が男子を出産、慶王府でお披露目の宴が開かれる。安然は顔も出さず、ここぞとばかりに驚雀は女主人のように振る舞った。安然は母屋の喧騒を離れ、中庭へ向かった。すると偶然、祝宴を抜け出した九皇子・穆川(ムーチュアン)と再会する。穆川は老僧からもらったという銀の腕輪を贈ったが、安然は遠回しに自分を慰めてくれていると分かった。「私も死に別れた人がいる、でも悟ったんだ 残された我々は去った人の分まで日々を楽しむ、再会した時に話してやれるように…」「ありがとう、頂くわ」そこへ穆澤がやって来た。穆川は兄の手前、独り身なので渡す人がいないと言い訳したが、そのせいで安然から意中の相手がいると見抜かれてしまう。「彼女は…他の令嬢たちとは全然違う、利発で魅力がある、志を語る時、目が輝くんだ 農作業が終わったら訪ねるつもりだった、でも…他の人に嫁いでいたよ」安然はまさかその相手が自分だとは知らず、縁がなかったのだと慰めた。安然は穆川の励ましのおかげで、久しぶりに気分が晴れた。するとその夜、穆澤が早世した息子のために放った灯籠を見かける。驚いた安然が慶王の書斎へ駆けつけると、書卓に毓児の思い出のおもちゃがあった。その時、穆澤が書斎に戻って来る。「我が子への想いをどうして隠していたの…毓児のことを忘れたと思っていたわ」「自分の子を忘れるはずない…安然、今の私にはもう君しかいない」実は穆澤は九弟から安然が″なぜ息子の死を悼んでいるのは自分だけなのか″と嘆いていたと聞いていた。こうして安然の信頼を取り戻した穆澤。2人は再び仲睦まじい夫婦に戻ったが、安然に再び不幸が襲いかかる。数日後には帰還すると聞いていた弟が伏兵に襲われ戦死、形見の品として血まみれの鉄兜だけが戻ってきた。安然は衝撃のあまり卒倒し、心労が祟って昏睡状態となった。穆川は参内した兄に代わって付き添っていたが、侍医にも打つ手はないという。「ただ血参(ケツジン)なら効くかも…しかし宮中の蓄えは尽きました」「私が採りに行く、絵を描いてくれ」侍医は危険だと警告したが、穆川は愛する安然をこのまま見過ごすわけにはいかなかった。一方、朝堂では帰還した将軍・蕭映が翊(ヨク)王・穆霖(ムーリン)を告発していた。上奏によれば翊王は叔父・秦野闊(シンヤカツ)と結託し、援軍を出さなかったという。そのため陸昀の先陣が全滅、証拠も証人も揃っていた。「これは陸将軍の軍営で見つけました、陸将軍は翊王の軍費着服の証拠を得ていたのです ゆえに翊王は口封じのため秦将軍を足止めしたのです、これが真の敗因です」翊王は皇太子候補の筆頭だった。穆霖は慶王の策略だと訴えたが、激怒した皇帝から親王を剥奪され、禁足を命じられてしまう。これを不服とした穆霖は激情に駆られ、父に暴言を吐いた。「もうろくした老いぼれめ!私を廃してこの国を根無草に渡すつもりか?!」穆霖は直ちに朝堂から引きずり出されたが、皇帝は頭に血が上って倒れてしまう。穆澤は密かに皇后・林婉貞(リンエンテイ)と接触した。皇后には実子がなかったが、その代わり幼くして生母を失った穆澤と穆川を我が子のように育てて来た。「あなたが太子の座を狙っているのは知っていた 皇上が目を覚ましたら、早く太子を立てるよう勧めるわ」しかし穆澤には別の考えがあった。皇后は穆澤の提案に呆然となったが…。つづく(  ̄꒳ ̄)さていよいよ次回は最終回です・・・・・( ゚д゚)え?!
2024.01.14
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覆流年 Lost Track of Time第1話景和(ケイワ)3年2月、瀚京(カンケイ)城全てを失った皇后は自ら寝殿に火を放ち、あっという間に炎に巻かれた『あなたに嫁いだせいで私の人生は破綻し、こんな結末を迎えることに』物語は10年前にさかのぼる…蘇城(ソジョウ)で最大の商家・陸(ルー)家。陸家には男勝りで聡明な嫡女・陸安然(ルーアンラン)がいた。その日は男衆を引き連れ、大河で自作の水雷を試していたが、偶然、航路で海賊に襲われる船を発見する。安然は早速、水雷を使って海賊を蹴知らすことに成功、そこで凄腕の侍衛と出会った。「師父はどなたです?うちの男衆を鍛えて欲しいの」「それがすでに他界しています」「じゃああなたは?報酬ははずむわ」しかしその船は先を急ぐという。安然はまた縁があればと無理強いせずに帰ったが、侍衛の男は娘の船の双魚の紋章が陸家のものだと知っていた。「あの娘が安然だ、間違いない」翌日、18歳になった安然は成人の儀を迎えた。母・沈蘭渓(シンランケイ)は咳が酷く欠席となったが、第二夫人・柳鳴玉(リュウメイギョク)が準備してくれた美しい衣装に身を包んで儀式に臨む。会場には安然が海賊から助けた慶(ケイ)王府の使者・蔡望津(サイボウシン)も祝いに駆けつけていた。陸軽舟(ルーケイシュウ)はこの機に娘を後継者に指名、36港の船隊を動かせる双魚令を託した。しかし陸延(ルーエン)が兄に横槍を入れ、庶子とは言え唯一の男子である陸昀(ルーイン)が当主になるべきだと訴える。すると安然を慕う陸昀が姉こそ後継者にふさわしいと表明した。焦った柳鳴玉は陸延に引き下がるよう目配せ、その場を取り繕う。こうして安然は家業を引き継ぎ、新当主を祝う宴が始まった。安然は身体中が痒くなり、早々に祝宴を切り上げた。「どうしてこんな時に湿疹なんて…」屋敷に戻った安然が回廊でふてくされていると、思いがけず蔡望津の侍衛と再会する。「どうしてここに?」「私の主人が陸小姐の祝賀会に招かれてね…まさか君だったのか」「あなたの主人も陸家と商談?この前は翊(ヨク)王で今度は慶王… そんなに暇なら水害対策を進めてくれればいいのに(ボソッ」瀚国は水の国、水害が多いのは仕方ないが、災害支援の食糧は役所に中抜きされ、民に届くのは米ぬかだけだった。すると侍衛は被災者の支援もさることながら、災害を防ぐことが根本的な解決だという。「国中を巡る無数の水路を活用する、運河の整備が最上の対策だ 陸家が港を管理するのも同じ目的では?ならば朝廷と協力する事で大業の成就は早まるだろう」「…朝廷より自分を信じるわ」安然は同じ志を持つ侍衛に一目置いたが、役人と関わるのはごめんだった。「そうだ、誕辰祝いを…それから痒み止めだよ」侍衛の贈り物は花だった。「あなたの名前は?」「…次に会った時に」「次はないかも」「あるとも…じゃあこれで」翌日、陸軽舟は慶王の誘いを丁重に断った。蔡望津は好機を逃さぬよう柔軟になるべきだと戒めたが、陸軽舟はこれが自分のやり方だという。「陸家の望みは巨万の富より一家の平安です、ご理解ください」一方、安然は回廊で父と使者の話が終わるのを待っていた。そこへ腹違いの妹・陸欣然(ルーシンラン)が駆けつける。欣然は姉の目当ても使者かと焦ったが、安然は侍衛を待っていると釈明した。しかし屋敷へ来たのは使者独りだと分かり落胆する。その時、村人が駆けつけ、田んぼで騒ぎだと知らせた。農民たちは安然のために道を開けた。何事かと思えば見知らぬ青年が勝手に田んぼに植えた苗を引き抜いている。「捕まえて」すると村人たちは青年を羽交い締めにして安然の前に連行した。「放蕩息子なら賭場や妓楼で遊んだら?泥遊びの何が楽しいの?」しかし青年は苗が病気だと訴え、最終的には稲が全滅してしまうと説明する。確かに苗を割いてみると蜘蛛の巣のような白い糸を引いていた。安然は青年に謝罪した。そこで早速、農民たちと一緒に苗を調べることにする。青年はあの頑固な農民たちがなぜこの若い娘には従順なのか首を傾げた。すると陸家の従者・衫越(サンエツ)がこの田んぼを作ったのが小姐だからだと教える。「川を整備して3本の水路を引いた、土は洪水で流されて来た泥だ」「それを全部独りで?」驚いた青年は娘に名前を聞くと、自分の身分は明かさず、いつの間にか姿を消した。その夜、安然は妹に誘われて花朝節(カチョウセツ)の縁日に出かけた。安然は縁結びの祈願で月老廟(ゲツロウビョウ)へ行きたいと言う妹と別れ、侍衛を探すことにする。しかし橋を渡っている時、前から来た男とぶつかって川へ落下してしまう。「小姐っ!」侍女・霊奚(レイケイ)は慌てて下をぞき込んだが、ちょうど船に乗っていた侍衛が安然を抱き止めてくれた。「劇的な再会だな」「小侍衛?!」侍衛は穆懐恕(ムーカイジョ)と名乗り、次男坊だと明かした。2人はしばし舟遊びを楽しんだが、ふいに穆懐恕が実は安然に一目惚れしたと告白する。「分かっている、私はしがない護衛だ、あるのは志だけ」「富や名誉に興味はない、相手に求めるのは″誠実な愛″だけよ」すると安然は穆懐恕の頬に口づけした。翌日、安然は穆懐恕を船まで見送りに行った。「私を忘れないでね」「迎えに来るよ」そこで穆懐恕は約束の品として玉佩を贈った。「共白髪になるまで添い遂げよう」「もちろん」しかし2ヶ月経っても穆懐恕から何の音沙汰もなかった。欣然宛てに届いた蔡望津の文によれば、穆懐恕も慶王のもと北臨に出兵したという。果たして無事でいるのだろうか。そんなある日、港に瀚京からの船が到着した。安然は待ちきれず港に駆けつけたが、やはり穆懐恕からの文はない。すると偶然にも田んぼの青年と再会した。「君が水路で水を引き込み、幅も深さも増したことで港が発展したんだね」「私ひとりの力じゃないわ、父が協力してくれたおかげよ」青年は稲香居士(トウコウコジ)と名乗り、凛とした安然にすっかり魅了された。陸家に突然、朝廷の使者がやって来た。何事かと思えば安然が皇帝から縁談を賜ったという。「慶王・穆澤(ムーヅー)とは相思相愛の間柄と聞く、当人の願いを汲み婚姻を許可する 9月8日に瀚京にて婚儀を執り行う」「あの…人違いでは?」「大胆な!皇上のご厚情を無にすればどうなるか分かっておるのか?!」安然は動揺しながらも陸家を守るため、聖旨を受け取るしかなかった。「おめでとうございます、慶王妃 来月8日に九皇子殿下が王妃を迎え、都まで付き添われます」すると使者は慶王からの文を安然に渡して帰った。…安然、無沙汰をしたね、北臨との戦で忙しく便りが書けなかった…真実を明かそう、大瀚王朝の二皇子、これが私の本当の身分だ…戦功の褒美に婚姻の許しを請うた…父皇には色恋を咎められ、翊(ヨク)王には平民を娶る気かと冷笑された…だが構わぬ、そなたと生涯を共にすると決めたのだ…瀚京で待っている安然が結婚を約束した穆懐恕の正体は慶王だった。いよいよ安然が嫁ぐ日を迎えた。真紅の婚礼衣装に身をつつんだ安然、しかしそこへ侍女が駆けつける。「小姐!夫人がお倒れになりました!」母は朦朧としながらも安然の美しい姿を見られたが、そこで血を吐き、息絶えてしまう。「阿娘を置いてなんていけない…」悲しみに暮れる安然、その時、九皇子一行が陸府に到着してしまう。父は心を鬼にして安然を母から引き離し、母の願いは娘を良家に嫁がせることだったと明かした。「嫁いで幸せになり安心させてやれ」安然は後ろ髪を引かれる思いで寝殿を出た。中庭では兄嫁を迎えに来た九皇子が待っている。その時、ふいに風が吹いて花嫁の紅蓋頭がめくれ上がった。安然は使者の九皇子・穆川(ムーチュアン)が稲香居士だと気づき、呆然となる。「あなたが九殿下?」安然は泣いていた。「何かあったのか?」「いいえ…全て順調よ」この時、陸安然は母の急逝という人生最大の悲しみに襲われていた誰が予想しただろう都へと向かう安然の運命の絵巻にあれほど苛烈な物語が綴られていようとは…つづく( ゚д゚)長っ!これ50分もあるのね全30話なので楽勝だと思ったら甘かったわwそしてまたまた勝手なルビですがご了承くださいませw
2024.01.12
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